ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 67】顔が赤いのは…

ムーンブルク城再建の初日、1日の作業を終えたおれたちは今後の話し合いも済ませ

デルコンダル王が用意してくれた食事を、それぞれが思い思いに楽しんでいた。

 

城に集まった男たちを『仲間』にした王子は、男たちに旅の思い出を話しながら

にこやかに談笑していた。

 

そこへ「王子さま!」と王子を呼ぶ、女の甲高い声があたりに響いた。

 

 

今まで大声でバカ騒ぎしていた男たちも、一斉に声のする方へ眼を向けた。

 

そんな男たちの視線をものともせず、ミリアが真っ直ぐに王子のもとへと走ってくる。

自分が呼ばれたことで思わず立ち上がった王子にミリアが抱きついていった。

ミリアはうるんだ目で王子を見つめると、そのまま背伸びして王子の頬にキスをした。

 

突然現れたミリアの大胆な行動に、男たちは「おぉ~!」とどよめいた。

 

「ヒューヒュー! 熱いね」

「見せつけてくれるぜ!」

 

男たちが口笛を吹いてはやし立てると、王子とミリアは見つめあって微笑んだ。

堂々とした若い2人の様子に、男たちはさらに歓声をあげて盛りあがった。

 

 

ミリアの後ろから、船員と思われる太った男が息を切らせて走ってきた。

男はルプガナ船団長のもとへ行き、額の汗をぬぐいながらぺこぺこと頭を下げている。

 

元々、救援物資や燃料を乗せた船が今夜、ムーンブルクの海岸に到着する予定だったが

どこかで王子の噂を聞きつけたのか、ミリアがどうしても一緒に行きたいと言い張って

強引に乗ってきてしまったのだという。

 

「まったく... 危険な目に遭ったこともあるというのに。懲りない娘だな」

 

船団長は言葉ほど怒っているわけでもないようだ。ゆっくり娘のもとに近づいていくと

ミリアを抱き寄せて頭をなでた。

 

 

「相変わらずね」そんなミリアたちの様子を見ていたナナがポツリとつぶやいた。

 

「はじめて会ったとき、ミリアは王子にひとめぼれして、ラダトームに一緒に行くって

 強引に船に乗り込んできたよな。あの親父さんも別に娘を叱ったり止めることもなく

 甘やかして船に乗ることを許したせいで、結果的に妖術師にさらわれたってのによ。

 まったく。おまえの言うとおり、あの親子はあの頃とまったく変わってねえよな」

 

おれの発言にナナも苦笑いする。

 

「でもね、相手のこととか周りのこととか気にせず、自分に素直に行動できるのって

 ちょっとうらやましくもあるのよね。あの子、あたしたちのこととかほったらかしで

 自分の気持ちのままに王子に向かっていくでしょ? あれだけ素直に生きられたらって

 妬ましく思ったこともあったわ」

 

 

ミリアと出会って船でラダトームに向かっていた頃、ナナはいつも不機嫌だった。

おれは、王子にベタベタするミリアにやきもちを妬いているんだと思っていたが

それはおれの勘違いなのか? ナナはただ、ミリアの素直さを妬んでいただけなのか?

 

おれは以前、ナナは王子のことを好きなのかもしれないと思い、ナナが望むなら

王子とミリアの結婚をぶち壊してやってもいいとナナに言ったことを思い出した。

 

あのとき、ナナはおれの話が理解できないといった様子で、王子とミリアの結婚にも

なにも感じていないようだった。

 

 

あのときのナナの様子からもかすかな予感はあったが、今のナナの話で確信した。

 

ナナが好きなのは王子じゃない!

… ということは……

 

思わず、喉の奥がゴクリとなった。

 

 

「おまえにも、素直な気持ちのままに向かっていきたい相手がいるのか?」

 

おれは思いきってナナに聞いてみた。

心臓の音が、ナナにも聞こえるんじゃねえかという勢いで高鳴っている。

 

ナナはまっすぐにおれを見つめた。

近くにあるたいまつの炎に照らされて、さっきからずっとナナの顔は赤く輝いていた。

 

 

だが、今おれを見つめるナナの顔が赤いのは、決して

たいまつの炎のせいだけじゃないはずだ!!

 

 

 

バシッ!!

 

おれをまっすぐに見つめるナナの瞳に勇気をもらって、思いきってナナに向かって

身を乗り出そうとしていたおれは、後ろから誰かに力いっぱい背中を叩かれた。

 

「いてっ!」と叫んで振り返ると、オルムとレオンが肩を組んでおれを見ていた。

 

f:id:john0910:20171215030610j:plain

 

オルムとレオンはそれぞれエールの瓶を片手に、ふらふらした足取りでにやけている。

 

やれやれ。こいつらの顔が赤いのも、どうやらたいまつの炎のせいではなさそうだ。

 

 

「ぼうず、残念だよな」

「おれら、くやしいよな」

 

オルムとレオンは肩を組み、ゆらゆら左右に揺れながらおれに話しかけてきた。

 

「痛って―な。この酔っぱらいどもめ! いったいなんの話だよ?」

 

「おれたちはさ、姫様のために心を込めて手づくりの誕生日プレゼントを渡しただろ?

 なのによぉ、あの王子のステッカーがすっげえいいものになっちまったじゃねえか。

 おれたちのプレゼントの方があんなステッカーより勝ってるって思ってたのによぉ、

 今じゃすっかり霞んじまっただろ? おれはそれがくやしくってなぁ!」

 

レオンが大げさに泣きまねをする。

 

 

「そんなことないわよ。みんなからもらったプレゼントは、全部あたしの宝物よ!」

 

ナナがあわててオルムとレオンに言ったが、酔っぱらいの耳には入っていないようだ。

 

「おれたちはいいんだよ、別にな。ただ、ぼうず! てめえは夜通し貝殻を拾っただろ?

 てめえのその一途な想いが報われねえってのは、おれは納得がいかねえんだよ!」

 

「オ、オルムッ! て、てめえ、なに言ってんだ!」

 

おれはオルムにつかみかかろうとしたが、オルムはふらふらした足取りにもかかわらず

おれの攻撃を巧みにかわした。

 

 

「おれたち、海の男をなめてもらっちゃ困るぜ。おれたち海の男ってのはよ、常に

 海と海岸の安全に目を光らせてんだよ。あるとき、船員の1人がおれに言ってきた

サマルトリアの王子が、ザハンの海岸で夜通し不審な動きをしていた』ってな。

 おまえは気づいてねえかもしれないけどよ、それでおれはしばらくぼうずのことを

 警戒していた時期があるんだぜ。ところが、その実体は…」

 

オルムはそこでいったん話を止めると、クックックッと喉を鳴らして笑い出した。

つられてレオンも笑い出す。

 

 

「姫様のために夜通し貝殻を拾っていたんだもんな! 月明かりを受けてキラキラ輝く

 綺麗な貝殻を選んで徹夜で拾い集めていたなんてよ、けなげで涙が出るぜ、おれは」

 

オルムは腕を目に当てて泣く真似をする。隣でレオンも同じ格好をしている。

 

 

「おいっ、てめえら! ふざけんな、この野郎!」

 

おれは叫んで2人を捕まえようとするが、2人はふらついた足でおれから逃げると

さらに声を張り上げて言った。

 

 

「姫様! おれたちのプレゼントなんてどうでもいい。

 ただ、ぼうずのプレゼントは…。ぼうずが姫様のために

 夜を徹して拾い集めた、強い想いが詰まった貝殻だけは

 大事にしてやってくれ!」

 

「一途なカインの気持ちを、受け入れてやってくれ~!」

 

オルムとレオンは大声で叫び、大声で笑いながらふらふらと逃げて行く。

 

 

「うるせえっ! てめえら、いい加減にしろよ!!」

 

おれは、笑いながらふらふらと逃げて行くオルムとレオンを必死で追いかけた。

 

 

今、おれの顔が赤いのもたいまつの炎のせいではないな、

ちくしょう!!

 

 

 

この創作物語のあるあるですが (;´∀`)

カインとナナが良い雰囲気♡になると、必ずお邪魔虫が登場するという… (´;ω;`)

 

 

カインも思い出していましたが、王子とミリアの結婚をぶち壊してもいいと言ったとき

「おまえは自分の気持ちに素直になれよ」というカインの言葉を受け、ナナはカインに

自分の素直な想いを伝えようとしますが、そこへ急にあらわれた王子が、カインたちに

「男なら必ず知っている『おたのしみ』ってなに?」と聞いてきて... ( *´艸`)

 

【創作 23】 王子がリセット - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

 

カインがナナに背中を貸した翌日、高熱を出したカインをナナが看病して2人きり♡

そのときは兄想いの可愛い妹たちに邪魔されちゃいましたよね ( *´艸`)

 

【創作 30】 兄想い - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

 

今回もかなり良い雰囲気になりましたが、酔拳が得意技の(?)酔っぱらい2人組

オルムとレオンにからまれました ( *´艸`)

 

オルムとレオンは、カインがあげた誕生日プレゼントのことを気にしていて、一応

本人たちとしてはカインの恋を応援しに来てあげたつもりなんですけどね ( *´艸`)

 

なかなかすぐには進展しないものの、少しずつ近づいているカインとナナ (*´ω`*)

読んでくださるみなさまも、どうか長い目で見守ってあげてください♡

 

 

あっ。前回、わざわざ話を途中で切ってまで『VIP待遇』で登場させたミリアですが、

ここで登場させたのには深い意味はありません(... 言っちゃった (∀`*ゞ)エヘヘ)

 

ナナが船旅の間ずっと機嫌が悪かったのは「やきもち」ではなくて、自分に正直な

ミリアが妬ましかっただけだとカインにわかってもらうためだけに出しました (;´∀`)

 

 

しばらく登場の機会もなかったので、ここらへんで出しておこうかなという感じです。

 

王子とミリアはずっと両想いで順調で、なにも問題がないから書くことがないだけで

(作者もナナと同じく)別にミリアのこと嫌ってるわけじゃないのよ!

 

 

さて、ムーンブルク再建の夜はいったいいつまで続くのでしょうか (;´∀`)?

もう少し我慢して読んでくださいね☆

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ