ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 ⑩】 幸せな10日間

サマルトリアまで歩いて行くことになり、わけのわからない荷物を持たされて

王子を追いかけ部屋を出たところ、訪ねて来ていたミリアに呼び止められた。

 

「王子さま」

 

「やあ、ミリア。昨日はどうもありがとう。おかげですっかり元気になったよ。

 サイラスがきみに無礼を働いたみたいで悪かったね。代わりに謝るよ」

 

「そ、そんな。私は大丈夫。王子さまが元気になったなら、それでいいの。

 それよりみなさん、お出かけですか?」

 

「ああ、うん。サマルトリアにね、みんなで帰国の挨拶に行くんだよ。

 平和になったことだし、散歩がてら歩いて行こうってことになってね。

 そうだ、もし良かったら…」

「あなたも一緒に行く?」

 

王子よりも先にナナが言ったから驚いた。王子もびっくりした顔でナナを見る。

おれたちの視線など意に介さないように、ナナはかすかに微笑んでいた。

 

「あ、ありがとう。でも、お父様と一緒にルプガナへ帰らなくてはいけないの。

 船の手配とか、運航日程表の書き換えとか、いろいろと忙しくなるみたい。

 あと、よくわからないんだけど、私は私でなにか準備することがあるんだって。

 だからすぐに帰らなくちゃいけなくなって、今はそのご挨拶に来たの」

 

ミリアが準備すること......おれはチラッと後ろにいたナナの顔を見た。

ナナも意味ありげな視線を送ってくる。

 

「そうか。残念だね。気をつけて帰ってね。船団長やオルムにもよろしく」

何も気づいた様子のない王子はあっさりと右手を差し出した。

 

「はい。王子さまも、みなさまも、どうぞお元気で......」

王子をまっすぐ見つめながら、ミリアの小さな手が万感の想いで王子の手を握る。

 

そして見つめ合ったまま、ミリアは王子の元へ歩み寄ると、つないだ手をはなし

両手で王子の肩のあたりに軽く触れ、爪先立ちになり、王子に顔を近づけた。

 

やべえっ! おれは慌てて後ろを向くと、ティアの前に立ちふさがった。

ナナもつないでいた手をパッと離して、リーナの目を覆った。

 

「え? なになに?」

「どうしたの~?」

チビ2人は気づいた様子もなく、無邪気な声をあげた。良かった。

 

するなとは言わねえが、時と場所と状況を考えてからしろよな!

ガキどもには刺激が強すぎるんだよ、ったく! ホント世話が焼ける奴らだぜ。

 

おれたちはそのままミリアに見送られて、ローレシア城を出発した。

ミリアはおれたちの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていた。

 

 

こうして始まった珍道中。

最初は嫌々ついて行くだけの旅だったが、予想外に楽しかった。

 

女3人でつくったというサンドイッチは、なかなかうまかったし

木の実を拾ったり魚釣りをしたり、あらためてやってみるとおもしろかった。

 

突然のスコールに見舞われたときは、全員でわめきながら木陰まで競争した。

 

獲ったもので飯にするときは「誰が釣った魚の方が大きい」だの

「誰がとった木の実が1番甘いか」だの毎回毎回大騒ぎだった。

 

王子が焼いた魚が生焼けで、ティアに怒られてるのを見ながら大笑いして

「まかせてられないわ」とティアが焼いた魚は崩れるぐらい丸焦げで

悔しがるティアを見てまた大笑いした。

 

歩くのに疲れると、全員で一列になって草原に寝転がって休み

寝たまま草の上をゴロゴロ転がって先に進んだこともあった。

 

童心に帰って、子どものようにはしゃぎまわるのも悪くなかった。

 

楽しんでたのはおれたちだけじゃない。

 

リーナも、生まれて初めてのおでかけがよほど嬉しかったのか

なにを見てもニコニコと笑って、疲れも見せずに元気いっぱいだった。

 

普段ならすぐに「もう帰りたい」「歩けない」などと言い出すティアも

自分よりガキのリーナが何も言わないのに弱音を吐けないとでも思ったのか

一度も文句を言わずにしっかりとした足どりで歩いていたし

足元の悪いところではリーナの手を引いてあげるなどの成長も見られた。

 

とにかく毎日が楽しくて、当初は早く終わらせたかったはずなのに

このままサマルトリアに着いてしまうのがなんだかさみしいような気がした。

 

これからは王子の即位やムーンブルクの再興などで忙しくなる。

確かにこんな風にすごせるのは、これで最後かもしれない。

 

今さらどのツラさげてと思い、声に出す気はさらさらなかったが

おれは「歩いて行こう」と言ってくれたナナに感謝していた。

 


出発して10日もすると、サマルトリア城の城壁が見えてきた。

 

かつて、おれが戻って来たときの城下町はひどいもんだった。

あちこちに死体が転がり、町は死臭が漂い、地面はドラゴンの足跡でボコボコで

人の気配がまったくなかった。

 

今は綺麗に整備され、人が戻り、活気を取り戻していた。

ハーゴン軍が攻めてくる前よりも、もっと明るい町になったかもしれない。

 

......おれは旅の終わりを惜しみながら、城下町へと進んで行った。

 

 

 

王族として重い使命を科せられることが多い王子たちも、立場をなくせば

今が青春ど真ん中の17歳 (*´ω`*)

 

ときには使命とか立場とか忘れて、思いっきり楽しんで欲しいですよね (^_-)-☆

砂漠のオアシスで水かけ合って遊んだみたいに、ワイワイ遊んで欲しくて

たっぷりはしゃぎまくって遊べる10日間をプレゼントしました~ (≧▽≦)

 

ミリアも連れて行っても良かったんだけど、ミリアは体力なさそうだし

花嫁修業もあるし、ミリアがサマルトリアに行ったところで何するんだ?

というのもあってルプガナに帰しました。(ファンの方、ごめんなさい (;´∀`))

 

ここまで読んでくださったみなさまに、恒例の(?)おまけネタ ↓↓

王子よりも早く、ナナがミリアに「あなたも一緒に行く?」と誘ったのは

カインに「ミリアのこと嫌いなのか?」と言われたのを気にしてたから。

 

カインは驚きはしたけど、ナナの心理には気づいてないんですけどね (´;ω;`)

カインの言葉を気にするナナのけなげな乙女心もちょっとだけ入れてみました。

 

 

次からはサマルトリア城ですよ!

お楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ