ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 23】 王子がリセット

心配そうにおれの顔を見つめながら、おれの手を優しく握るナナの手を振りほどき

おれは足早にほこらへと戻った。

 

さっきナナが触れたおれの額と手は、ほこらに入ってからもずっとジンジンと熱く

このまま本当に熱が出て、ぶっ倒れちまうんじゃねえかと思った。

 

ナナが王子を想うのなら、おれはどんなことをしてでも協力してやる!

そんな強い覚悟を決めてナナを呼び出したのに、思いもよらない展開になった。

  

おれを心配しながら、涙を浮かべておれをじっと見つめるキラキラとした瞳.... 

優しく、強く、心までつつみこむようなあたたかくてやわらかい手のぬくもり...

おれは今のままでいい、これからもずっと元気で笑っていて欲しいと願う言葉... 

 

... さっきの... ナナのおれへの態度は... まるで...... いや... そんなことあるわけねえ...

...... でも... いや、ありえねえとは思うが... もしかしたらナナは... おれのことを......?

 

 

「カイン!」

 

振り返ると、おれを追いかけて来たらしいナナが息を弾ませて立っていた。

真剣なまなざしで、おれを見つめている。

 

「あ、あの... あたしっ...」

 

 

「カイン! ナナ! なんだあ、こんなところにいたのか。探してたんだよ!」

ふいにおれの背後から声がして、王子が笑顔でおれたちの方へと駆け寄ってくる。

 

なにか言いかけていたナナは、出鼻をくじかれたようで口をつぐんだ。

 

笑顔で走ってきた王子は一転して真面目な顔になり、おれに尋ねてきた。 

「なあ、カイン。きみも男だから、もしわかるのなら教えて欲しいんだ」

 

「ああ? なんだよ、マジな顔して。おれでわかることなら答えるぜ」

 

「昨日、きみとナナが『ぼくとミリアの結婚の話が進んでる』って言ってただろ?

 本当にそんな話があるのか、サイラスに聞いてみたんだよ。するとサイラスは

『殿下のご成婚の話は出ております。ただ、すぐにというわけではありません。

 お妃様を迎えるにあたって、殿下には「ある心構え」をしていただきますので。

 その心構えは、戻ってから大司教様にお話ししていただきます』って言うんだ」

  

「妃をもらう際の心構え」か... 心構えって言葉が適切かどうかはわからねえが

サイラスの言おうとしてることは、そりゃやっぱり「おたのしみ」のことだよな。

 

おそらくローレシア城では、男女のことを何もわかっていなさそうなこいつを見て

誰が王子に「それ」を教育をするか、家臣たちでクソ真面目に議論したに違いない。

 

結果、大司教に白羽の矢が立った。

 

王子が帰ったあと、大司教が王子を大聖堂に呼んで「子孫繁栄の大切さ」とか

「初夜の迎え方」なんて話を、真剣な顔で大真面目に語っている姿が想像できた。

 

人選も場所選びもバッチリじゃねえか! 

なんせ大聖堂は、子孫繁栄の話を大真面目に語るにはピッタリの場所だからな。

 

... 腹の奥から笑いがこみ上げてきたが、真剣な王子の顔を見てなんとかこらえた。 

 

「サイラスは『男なら知ってて当然』みたいな言い方をするんだよ。それなのに

 ぼくが尋ねるとモゴモゴしてハッキリ答えないんだ。もう気になって仕方ないよ。

 きみも男だからさ、カインなら教えてくれるだろうと思って聞きに来たんだ」

 

王子は不満げな様子で、先ほどサイラスと交わしたという会話を再現してくれた。 

 

「サイラス。どんな『心構え』なのか、きみがわかる範囲で教えてくれないか?」

 

「私がわかる範囲...。いや、それは、妻を娶る年代の男なら知ってることなんです」

 

「じゃあ、サイラスも知ってるのかい? それなら、ローレシアに帰ってからとか

 話は大司教からとかそんなもったいぶらずにさ、今すぐここで教えてくれよ」

 

「え...ええ、まあ、私も知ってはおりますが...。え、ええっと、そ、それはですね...

 あの~、男が主導権を持っておこなう儀式というか... あぁ、なんと言うべきか...

 ああ、やはり私の口からは申し上げられません! ローレシアに戻られてから

 大司教様に詳しくお聞きくださいませ。では、私は失礼いたします!」

 

サイラスはペコリと一礼すると、逃げるように去ってしまったらしい。

 

 

堅物サイラスが、まごつき変な汗をかきながらなんとか説明しようとしたものの

断念して真っ赤な顔でワタワタと逃げ出す様子が目に浮かぶ。

 

f:id:john0910:20171207061755j:plain 殿下のご命令であっても、だ、男女の秘め事に関しては、私の口からは

な、何も申し上げられませんっ...(*_*)


 

...... だめだ。もう抑えきれねえ...

おれは腹を抱えて笑いだした。

 

「えっ? カイン、なんで笑うんだい? ぼく、なにか変なこと言ったかな?」

ポカンとしている王子の顔を見ると、ますます笑いが止まらなくなった。

 

「ねえ、ナナ。ぼく、そんなにおかしなこと言ったかな?」

 

えっ?!  あ、あ、あたし、な、なんにも知らないわよ!

恥ずかしそうに顔を赤らめたナナが、うろたえながら王子から顔をそむける。

そんな様子までがおれの笑いを誘う。

 

「ねえ、カインってば。いつまでも笑ってないで、知ってるんなら教えてくれよ。

 あ、そうだ。妻を娶る歳の男が全員知ってるんなら、アルファズルもわかるよね。

 アルファズルに聞いてみようかな」

 

「...... そ、それは... やめとけ」

 

おれは片手で腹を押さえながら、もう一方の手を伸ばして必死に王子を止めた。

 

アルファズルはどんなことであっても、王子の疑問には真剣に答えるだろう。

あの険しい顔のジジイが、この王子に真面目に初夜の手ほどきをするだなんて...。

 

f:id:john0910:20171209035214j:plain 王子がお望みなら、わしが男女関係について教えてやろう!

 

 

「ぶはっ」 

また、大きな笑いの渦が襲ってくる。

笑いすぎて立っていられなくなり、おれはしゃがんでヒーヒー言いながら笑った。


腹を抱えて大笑いしているうちに、ナナと王子のことや、さっきおれとナナの間に

起きたことなど、なにもかもどうでもよくなってきた。あとは野となれ山となれだ。

 

ようやく笑いがおさまり、おれは立ち上がると王子の肩に腕をまわした。

「どうせ、帰ったら大司教から話を聞くんだろ。今は知る必要ねえってことさ。

 あと数日で帰るんだから、そんな躍起になって聞いてまわることもねえだろ。

 さ、もう寝ようぜ。明日からは、いよいよローラの門の視察だからな」

 

「う、う~ん。まあ、そうだよね。いずれわかることだもんね」

王子は少し不服そうだったが、おれの言葉にうなずいた。

 

「じゃあ、おやすみ。ナナ」

「おやすみ、また明日な」

 

ナナは王子の話を聞いている間はずっといたたまれないといった様子だったが

おれが王子のボケっぷりに大笑いしたのを見て、少し安心したらしい。

肩を組んだおれたちを見て微笑んだ。

 

「ええ。2人とも、おやすみなさい」

 

おれは王子の肩に腕をまわしたまま、ナナに背を向けて寝床へと向かった。

まったく、まさかこいつにこんなことで助けられるとはな。

 

 

※ サイラス・アルファズルの挿絵とセリフはカインの脳内を再生しました ( *´艸`)

 

完全なおふざけ回です... (;´∀`)

でも、ちゃんと理由のあるおふざけなんですよ!( ↓ ここから言い訳 (;´∀`))

 

ずっと元気がなく、1人で悩み、おかしな発言をするカインを心配していたナナ。

 

ナナの心配をよそに、カインは「後悔しないように自分の気持ちを大切にしろ」

「意地はってもいいことない」「自分に素直になれ」と言って去って行きます。

 

ひそかに想いを寄せる相手から「自分の気持ちに素直になれ」と言われたら... 

カインの言葉をしっかりと受け止め、去って行くカインを走って追いかけるナナ...

 

ヤバい! この流れだと、素直になったナナが本気でカインに告白しちゃう!

いや、まだダメだ! 告白するのはまだ早い!(← いじわる作者が降臨~ (;´∀`))


ナナの告白を回避するにはどうすれば...? よしっ! 天然王子にボケてもらおう!

... こんな感じで書きました~ ( *´艸`)

 


以前に「果たして王子は『おたのしみ』を知っているのか?」について

コメント欄であれこれ話しているのがすっごく楽しかったので

【創作 ⑥】 おたのしみは...。 - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

17歳の男の子が知らないはずないけど、王子だから知らないってことにして

天然王子には、さんざんボケまくってもらいました~ ( *´艸`)

 

 

見つめ合い、手をつなぎ、かなりイイ雰囲気♡ になっていたカイン&ナナの関係も

王子のボケにカインが笑って笑って笑いまくるうちに、普段の関係に逆戻り (´;ω;`)

 

さて、これから王子も含めた3人の関係はどうなっていくのでしょうか (*´ω`*)


次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ