ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 30】 兄想い

熱が下がり体力も回復したおれは、汗を拭き着替えをすませて外へ出た。

今日は1日中寝てたらしい。陽は傾きかけて、夕焼けが空を赤く染めていた。

 

ぐうぅ~と腹がなり、空腹に耐えられなくなったおれは手持ちの食材を確認した。 

 

いいぞ、干し肉がいくつかあるな。

適当に野草を入れて煮込むのもいい。

 

干し肉が口の中でトロけるぐらいやわらかくなるまでじっくりと煮込めば

食べやすく消化にも良いし、病み上がりの身体で食うにはちょうど良いだろう。

 

おれはさっそく調理にとりかかった。 

 

 

勇者の泉で王子と合流したころ

王子が携帯する干し肉や乾パンを、そのままで食おうとしていることに驚いた。

狩りをして得た獲物も、王子はただ丸焼きにして食うことしか知らなかった。

 

「なにも調理しねえのか?」と王子に尋ねると「調理?」と驚いた顔をされた。

 

話を聞いてみると、王子は生まれてから一度も料理をしたことはないらしい。

力まかせに剣を振り回しているが、包丁を握ったことは一度もないのだと言う。 

 

おれはガキの頃に「料理の修行」と称して、王妃によって厨房に放り込まれた。

王妃は「立派な王様になるためには、剣の修行より大事な修行よ」と言っていた。

 

まだガキだったおれは王妃の言葉を素直に信じて、毎日毎日料理の修行に励んだ。

厨房にいるジジイの料理長に料理の基本から徹底的に叩きこまれ、若干12歳で

「坊ちゃんにはこれ以上、なにも教えることはございません」と言われた。

 

「剣より大事な修行」を終えて満足していたおれに、料理長は衝撃の発言をした。

本来、料理とは身分の低い者が従事するものであり、王族が関わるものではなく

おれの修行は親父には絶対に内緒で、秘密裏におこなわれていたのだという。 

 

おれを長年にわたってだましていたことがバレても、王妃はケロッとして言った。

「剣しか使えない王様より、料理も出来る王様の方がカッコいいじゃないの」

 

王妃の言い分にはあきれたが、あんなババアでもたまには良いことをするようで

実際に旅を始めてみると、料理を学んでいたことは大いに役に立った。

  

ナナも、ムーンブルク王妃からひと通りの基本的なことは習ってきていたが

おれみたいに干し肉を調理したり、獲物をさばいたりしたことはなかったそうだ。

 

ハーゴン討伐の旅をしてる間は、魔物を呼び寄せるから頻繁には出来なかったが

たまにおれが手持ちの材料で食事をつくると、王子もナナも大喜びだった。

「初めて食べるよ」「本当においしいわ」と言って旺盛な食欲で平らげてくれた。

 

 

そんなことを思い出しているうちに、干し肉と野草は良い状態に煮えたようだ。

うまそうな匂いがあたりに漂い始める。

 

「カイン! 寝てなくて大丈夫なの?」

 

目を覚ましたナナがテントから出てきた。

陽が暮れて薄闇が周囲を覆い始める中、ナナの心配そうな顔がぼんやり見えた。

 

「おうっ、もう大丈夫だぜ。それより干し肉を煮たんだけど、おまえも食うか?」

 

「まあ! 料理が出来るようになったってことは、もうすっかり元気になったのね! 

 ああ~、良かった。本当に嬉しい。カインの料理も久しぶりね、いい匂い~♡」

 

ナナは嬉しそうにおれの隣に座った。

 

ナナの分の肉と野草を取り分けてやると、おれは肉にかじりついた。

空腹の身体にやわらかく煮えた肉の旨みがしみわたる。今回も完璧な出来だ。

 

 

「ところでよ。さっきから姿が見えねえが、アルファズル達はどこ行ったんだ?」

 

「カインの状態がすごく悪かったでしょ。そんなひどい風邪がうつったら大変だから

 アルファズルに頼んで、3人には先にムーンペタに行ってもらったのよ」

 

「......!」

 

飲み込みかけた肉が喉に詰まりそうになり、おれはこぶしで胸を叩いた。

 

3人は先にムーンペタに行った... だと?

... ということは... 今夜は2人きり...!?

 

 

「アルファズルは『自分がカインの面倒をみてやる』って言ってくれたんだけど

 カインが熱を出したのはあたしのせいよ。だから、あたしが残るって言ったの」

 

「おれが熱を出したのは単なるおれの不注意だ。さっきも言ったけど、おまえは

 なに一つ悪くねえんだ。だから、ナナが責任を感じることなんてねえんだよ」

 

「ううん。別に責任感だけで残ったんじゃないの。..... あなたのことが... 心配で......

 ...... 離れたくなかったの」

 

ナナは小さな声でつぶやくと、サッと顔をそむけておれに背を向けた。 

 

 

思わずゴクリと喉が鳴る。

 

「...... ナナ」

 

おれは意を決して、手を伸ばしナナの小さな肩に触れようとした。

 

 

 

 

「うわぁ~! すっごくいい匂い~」

 

暗闇から聞き慣れた声が聞こえてきて、おれは慌てて手を引っこめた。

 

「ホントだ~、すっごくおいしそうな匂いがする~。あたし、お腹すいちゃった」

 

ティアとリーナが駆け寄って来て、おれとナナの間にドカッと腰を下ろした。

 

2人の後ろから歩いて来たアルファズルが、おれの真正面に座った。

アルファズルは、おれの目や舌の状態、腕の曲げ具合などを入念に観察する。

 

「うむ、もう大丈夫なようじゃな。高熱さえ下がれば、すぐ動き出せるようにと

 ナナがおまえの体力回復のためにずっとベホマをかけ続けたことが功を奏したな」

 

ナナがおれにベホマをかけ続けた? アルファズルの言葉におれはナナの顔を見た。

3人が来たことでこちらに向き直っていたナナは、恥ずかしそうに顔を赤らめて

再びおれから顔をそむける。

 

ナナの一連の態度におれの胸は高鳴った。

顔を赤らめておれから目をそらすナナを、おれは熱い視線でじっと見つめていた。

 

そんなおれの顔のすぐ近くに、突然ティアとリーナの顔がドンと割り込んできた。 

「おにいちゃん! 良かったわね~♡」

「元気になって、ホントに良かった~♡」

ティアとリーナがおれを見上げて、嬉しそうにはしゃいだ声を出した。

 

「............」

 

 

「...... おまえらさ、ムーンペタに行ったんじゃなかったのかよ」

 

「行ったけど、おにいちゃんのことが心配だから戻って来たに決まってるじゃない。

 あたしたちが出発するとき、おにいちゃんたら真っ赤な顔してふうふう言ってて

 あたしやリーナちゃんが呼びかけても何にも反応しないで眠ったままだったのよ。

 もう、心配で心配でたまらなかったわ。おにいちゃんのことはすごく心配だったし

 ナナおねえちゃんが、おにいちゃんをたった1人で看病するのも可哀想でしょ。

 だからアルファズルにお願いして、みんなでここに戻って来ることにしたのよ。

 どう? あたしたちって、すっごくおにいちゃん想いのいい妹でしょ!

 

「でしょ!」

ティアの後ろからリーナが身を乗り出し、キラキラした目でおれを見つめてきた。

 

「..................」

 

無邪気な妹たち2人の瞳が「褒めて♡、褒めて♡」と無言で訴えてくる。

「......... あ~、おまえたちはいい妹だよ。こんなやさしい妹がいて幸せ者だぜ」

 

 

風邪がうつるかもしれないのに、ムーンペタならゆっくりと休めるのに、それでも

おれを心配して戻って来た妹たちに「なんで帰って来たんだよ」なんて言えない。

おれは仕方なく調子を合わせた。

 

ティアとリーナは「うふふふふ」と嬉しそうにおれを見上げて笑っている。

 

 

おれは嬉しそうに笑う妹たちを見ながら、表情を変えずに心の中で叫んだ。

ちくしょう! おまえら、せっかくのいいところを邪魔しやがって!!

 

 

 

この物語のカインは私の理想を具現化しているので、料理上手です ( *´艸`)

3人パーティでの旅を想像したときに、カインならあり合わせのものでササッと

おいしい料理をつくってくれそうな気がしますよね~ (≧▽≦)

 

 

昨夜は、背中を貸し「1人で悲しまないようにそばにいる」と言ってくれたカイン。

その翌日また2人きりの夜・回復して元気になったカイン・温かいカインの手料理...

このほっこりした状況に、めずらしくナナが素直になり2人はイイ雰囲気 (*´ω`*)♡

 

これは進展か?! ってところで、おにいちゃん想いの憎めない妹たちが乱入 (;´∀`)

 

少しずつ縮まって来てるけど、カインとナナの距離はまだまだですね...  (´;ω;`)

 

 

ナナがベホマをかけ続けてくれたおかげで、早く回復したカインヾ(*´∀`*)ノ

明日からまた元気に再出発して、そろそろムーンペタに到着できそうですね (^_-)-☆

(もう連載も30回になっちゃったし、そろそろ話を先に進めないとね (;´∀`))

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ