ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 97】会いたい人

ミリアのおふくろに誘われたナナは、ミリアの花嫁衣裳を見に行くことになった。

 

おれはナナと離れて自由に動ける時間が確保できたのが嬉しくて、ナナがミリアの家に

入っていくのを見届けると、上機嫌で王子の肩に腕を回して歩き出した。

 

王子は不思議そうな顔をしながらも、おれに肩を組まれたまま素直についてきた。

 

 

おれと王子は今度は港の西側へやって来た。

 

先ほど、おれたち3人がいたのは港の東側で、入出港の船が行き交って賑わっていたが

西側は近々出港する予定のない船がズラリと停泊しているだけで閑散としている。

 

 

おれはゆっくり歩きながら、停泊している船を1艘1艘じっくり眺めてまわった。

 

なんせ探しているのは小型の快速船だ。

大型船の陰に隠れて見落とす可能性もある。

 

 

「カイン、何を探しているんだい?」

 

おれに肩を組まれて、ここまでおとなしくついて来た王子が聞いてきた。

 

 

「ああ、雷神丸さ」

 

「雷神丸? きみ、雷神丸に乗りたいの?」

 

 

「ばーか。ただでさえ船酔いするおれが、船に乗りたいなんて思うわけねえだろ。

 おれが探しているのはオルムだよ。雷神丸があれば、オルムはこの町にいるからな」

 

「オルム? オルムに会いたいの?」

 

 

おれがオルムに会いたがっている理由がまったくわからないのだろう。

王子はきょとんとした表情を見せた。

 

 

停泊している船をひと通りぐるりと見てまわったが、雷神丸の姿はなかった。

 

「オルムに会って話しておきたい大事なことがあるんだけどよ。くそっ! オルムめ、

 ルプガナにはいねえみたいだな。うまくどこかの港にでも停泊してくれていれば、

 ルーラですぐに会いに行けるけど、海の上にいる場合はどうしようもねえからな。

 えっと... とりあえず、オルムが今どこにいるのか聞いてみねえと...」

 

おれは周りを見まわして人を探した。

 

 

ちょうどそこに、船内の掃除でもしていたのか、雑巾とバケツを手にした若い男が

近くの大型船から降りてきた。

 

 

「なあ! ちょっといいか?」

 

おれが若い男に声をかけると、男は「はい!」と言って愛想よく微笑みかけてきた。

 

 

 装備については目をつぶってくださいな ( *´艸`)



 

「雷神丸はどこに行ったんだ?」

 

「ら、雷神丸... ですか!?」

 

おれの質問に男は困った顔を見せた。

 

 

近くでよく見ると、男はおれたちと同じぐらいか、もっと若く見える少年だった。

 

「おまえ、新入りか?」

 

「あ、はいっ! ぼくは最近入ったばかりで、船のこととかよくわからなくて...。

 えっと、船のことを聞きたいんですよね? ぼく、わかる人呼んできます!」

 

少年は、おれの返事を聞く前に、勢いよく走って行ってしまった。

 

 

「ねえ、カイン。きみにはついてくればわかるって言われたけど、全然わからないよ。

 オルムに何の用があるんだい?」

 

少年が戻ってくるのを待つ間、手持ちぶさたになったのか王子が話しかけてきた。

 

 

「まぁまぁ。焦らなくても、そのうちわかるって! 実はオルムの他に、あともう1人

 呼びてえ奴がいるんだよな。まぁ、『あいつ』はきっと今ごろ村にいるだろうから

 別に探す必要もねえんだけどな」

 

 

「もう1人? 村にいる? なんの話だ?」

 

「へへっ」

 

まったく気づいていない王子を前に、おれは得意げに鼻の下をこすってやった。

 

 

 

「なんだなんだ。またおまえたちか?」

 

背後で大きな声がして振り向くと、先ほどの少年がルプガナ船団長を連れて一緒に

こちらに歩いて来ていた。

 

 

「船に興味のある若い男がいるって聞いて、船乗りになりたいという若者がいるのかと

 急いで来たのによ。まさか、それがおまえたちだったなんてな。けっ、がっかりだぜ。

 それとも、冷やかしじゃなくて、本当に船に興味があるのか? もしかして、おまえ

 皇太子をやめて、船乗りにでもなるつもりか? もし、なりてえんなら歓迎するぜ」

 

おれたちの前まで歩いて来た船団長は、ニヤニヤ笑いながらおれをからかってきた。

 

 

「えっ!? 皇太子?」

 

少年は驚いた顔でおれを見てきた。

 

 

「なんだ。あんたたち、自己紹介してなかったのか。こいつはサマルトリアの皇太子、

 そしてこっちはローレシアの新国王。こいつら2人とも『ロトの子孫』だぜ」

 

「ええっ!? この人たちが、あの有名な『ロトの子孫』なんですか!?」

 

少年は目を丸くして、おれと王子の顔を交互に見比べた。

 

 

「まさか、こんなところでロトの子孫に会えるなんて! 夢みたいだ。ぼく、みなさんが

 ハーゴンを討伐した冒険の話を聞いて以来、ずっと憧れていたんです。あ、あの...

 握手してもらえませんか?」

 

少年は服の裾で手をぬぐうと、興奮した様子でおれたちに向けて手を差し出してきた。

 

 

こんな風にあらためて絶賛されると少し照れ臭いような気もしたが、おれたちは

求められるまま少年と握手をした。

 

 

「あれ? 『ロトの子孫』はもう1人いるよな。姫はどこへ行ったんだ?」

 

船団長はあたりを見まわした。

 

 

少年はいい奴そうに見えたが、王子とミリアの話は極秘情報とされているからな。

 

おれは船団長の隣に近づくと「ナナはミリアの花嫁衣裳を見に行った」と耳打ちした。

 

船団長は顔をほころばせた。

 

 

秘密にされて気を悪くするかと思ったが、少年はおれたちがロトの子孫だということで

頭がいっぱいのようで、おれの内緒話を特に気にしている様子はなかった。

 

 

「おっと、話がズレたな。あんたたち、船のことが聞きたいってことだったよな」

 

「ああ。そうだった。雷神丸がどこに行ったのかを聞きてえんだよ」

 

 

「雷神丸? また船に乗りてえのか?」

 

船団長にも王子と同じことを言われて、おれは小さく舌打ちした。

 

「あんたも王子と同じこと言うんだな。おれが船に乗りてえなんて言うわけねえだろ」

 

 

「はははっ。そうだった、そうだった。こいつはハーゴンを倒したすごい勇者様だけど

 船に乗るとゲーゲー船酔いするんだぜ。なかなかおもしろい奴だろ?」

 

船団長は隣にいる少年に笑いかけた。

 

少年はどう反応したらいいのかわからないようで、困ったような笑みを見せた。

 

 

「おい、おれの船酔いの話なんてどうでもいいんだ。おれはオルムに会いてえんだよ。

 ここに船がねえってことは、あいつ、雷神丸に乗ってどっか行ってんだろ?」

 

「樫の棒の野郎か? えっと... どこ行ったんだったかな? そんなに知りたいんなら

 向こうで調べてやってもいいぜ」

 

船団長は港の奥をあごでしゃくった。

船の運航表を記録した紙が事務所に置いてあるから、ついて来いということらしい。

 

 

ピピン。おまえはどうする?」

 

船団長は隣に立っている少年の頭をクシャっとなでながら、優しく尋ねた。

 

 

「あ、えっと...。 ぼくは今から、船に積んであるロープの片づけをしようかと...」

 

頭をなでられたピピンという少年は、船団長を見上げながら答えた。

 

 

「そうか、頼むな。あと、こんな時間だから、それが終わったらもう帰ってもいいぞ」

 

船団長は目尻を下げ、父親のように穏やかな表情でピピンに微笑みかけた。

 

 

「はい。ありがとうございます。それじゃあ、ぼくは今から片づけに行ってきます。

 では、みなさん。ぼくはこれで」

 

ピピンはぺこりと頭を下げると、船に向かって走って行った。

 

 

ルプガナ船団長はピピンが船に入っていくのを見送ると、おれたちの方に向き直った。

 

「なんか可愛いらしく見えるんだよな、あいつ。ミリアは可愛い大事な一人娘だけど、

 おれは息子も欲しかったんだよ。ピピンを初めて見たとき、もしおれに息子がいたら

 ちょうどこれぐらいの歳かなって思ってしまってな。それ以来、ついつい目をかけて

 可愛がっちゃうんだよな」

 

 

船団長は照れたような笑みを見せた。

 

「へえ。あんた、息子が欲しかったのか」

 

「息子と一緒に大海原を航海できたら最高だろ? ミリアが生まれて、おれの野望は

 夢のままで終わるかと思っていたんだけどな。あいつは本当の息子じゃないけど

 いつかピピンと一緒に海に出られるようになったら、おれがずっと願い続けていた

 最高の気分を味わえるんじゃねえかってな、今はひそかに夢見てんだよ」

 

2人で海に出る姿を思い浮かべているのか、船団長は遠くに視線を向けた。

 

 

「確かに、あいつは素直でいい奴そうだよな。ただ、息子の代わりのピピンと大海原も

 良いけどよ、あんたはこれから『孫と一緒に大海原』が実現できるんじゃねえか?」

 

おれは王子の顔を見てニヤリと笑った。

 

 

「おお、その手があったか!」

 

船団長もニヤニヤしながら王子を見た。

 

 

「孫がたくさんできればよ、1人ぐらいは船乗りにしてもいいだろ。あんただって

 ルプガナの立派な代表者なんだし、あんたの後継者も必要になってくるもんな」

 

おれの言葉に船団長は大きくうなずいた。

 

 

「そうだよな。なによりローレシア王の後継者が必要だと思って半ば諦めていたけど、

 もし孫がたくさんいれば、おれの後継者だって出来るんだよな!」

 

 

「ああ、そうさ。王子がガンバって4人ぐらい孫をつくってくれたら、あんたも

 ピピンと孫と3代で大海原へなんて、さらに壮大な夢も叶うぜ」

 

 

「孫が4人か。そりゃあ、賑やかで良いよな! 楽しみだぜ」

 

 

「よ、4人!?」

 

おれと船団長が2人してニヤニヤしながら王子を見ると、王子はおれと船団長の顔を

きょろきょろ見ながら目を白黒させた。

 

 

「おおっと、いけねえいけねえ。つい調子に乗って、また話がズレちまったな。

 おまえたち、樫の棒の野郎の行方を捜していたんだったっけ?」

 

船団長は顔を真っ赤にして恥ずかしがっている王子をしばらくニヤニヤ眺めていたが

ふと思い出したように言った。

 

 

「ああ。そうなんだ。ちょっと大事な用事があってな。あいつが今、どこにいるのか

 調べて欲しいんだ」

 

「わかったぜ。ついて来な」

 

おれたちは船団長に先導されて、港にある事務所へと向かった。

 

 

 

今回も、ドラクエシリーズのキャラを登場させてみましたヾ(*´∀`*)ノ

 

ルプガナ船団長には『息子と海に出る夢』があったという設定で、息子になりそうな

キャラをドラクエシリーズから探して、ピピン」を選びました☆

(息子っぽいキャラは他にもっと適任がいるのかもしれないけど、私はドラクエ

 Ⅵぐらいまでしか知らない... (;´∀`))

 

ピピンは気の優しそうなキャラ(だと思う)ので、息子としてはイイ感じですよね☆

 

 

さて、前回の話ではカインの意図がわからなかった方も、今回でわかりましたか?

 

ゲームブックを読みこんでいる方なら、わかるかな~ (≧∇≦)♪

 

カインが他にも呼びたい奴がいると言っているもう1人は「レオン」です(これは

「あいつは今ごろ村にいるだろう」というカインの言葉でわかりますよね ( *´艸`))

 

 

ナナに内緒で、カイン・王子・オルム・レオンで何かをしようとしていますよ☆

 

ゲームブックでも、この4人で『あること』をしてナナを喜ばせましたよね (^_-)-☆

 

 

そうです!あのサプライズイベント』ですヾ(*´∀`*)ノ

(王子はまだわかっていませんが ( *´艸`))

 

あの『サプライズイベント』に向けて、まずはオルムの行方を探しましょう!

 

そして、レオンは? 本当にテパの村にいるんでしょうか?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ