ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑪】 ティアの大冒険 ~進路~

あたしたちは勇者の泉を出て、ローレシア南のほこらをめざして歩き始めたの。

でも、洞窟では毒蛇に襲われたりクリフトが倒れたり、いろんなことがあったでしょ?

 

回復魔法を受けて体力的にはまったく問題ないんだけど、なんだか疲れちゃったのよ。

あたしたちは洞窟を出てすぐの場所で、ひと晩休んで英気を養うことにしたの。

 

 

あたしはクリフトにホイミしてもらってたから、身体は元気で早く目覚めちゃったわ。

それで、みんなが起き出すまでの間はクリフトと話をしてすごすことにしたのよ。

 

 

「ゆうべはよく眠れなかった」と言うクリフトは、勇者の泉で清めの水を飲んで

解毒もできているはずなのに、真っ赤な顔で汗だくになってるし、歩き方も変だし

話の途中で木に頭をぶつけるし、しどろもどろでまともに話すことも出来ないのよ。

 

 

本人は「平気です」と言ったけど、木に頭をぶつけたのが良くなかったのね、きっと。

 

「あたしのこと好きって言えば、あたしも死んだりしないって約束してあげる」って

言ってるのに、汗だくになってまごまごして「好き」すらまともに言えないのよ。

 

 

それでもなんとかようやく消えそうな声で言ってくれて、あたしたちはお互いに

「命を大事にする」と誓い合ったんだけど、やっぱりクリフトの様子は心配だわね。

 

あとでティメラウスかリオスさんが起きたら、このことを相談してみようと思うの。

 

 


太陽が昇ってあたりが明るくなると、ぐーぐー寝ていたティメラウスとリオスさんは

ようやくもぞもぞと起き出したわ。

 

 

「姫さま、そろそろサマルトリアが恋しくなる頃でしょう。今朝は私が腕をふるって

 朝食を準備しましょう。カイン殿下直伝の特製スープを飲めば、元気が湧いてきて

 気持ちも晴れやかになりますぞ!」

 

ぐっすり眠って元気になったティメラウスが、ニコニコしながら陽気に言ってきたわ。

 

 

勇者の泉で、バプテスマのおじいさんから携行用のお水をたくさんもらったのよね。

そのお水でスープを作るってことね。

 

 

「ティメラウス様、微力ながら私もスープ作りのお手伝いをいたしましょう!」

 

クリフトが腕まくりをしながらティメラウスに声をかけている。

 

う〜ん、変ねえ。さっきまであんなにまごまごしていたというのに、今のクリフトは

人が変わったように張りきっているわ。

 

 

2人が調理を始めた隙に、あたしはリオスさんの腕をつかんで木陰に連れて行ったの。

 

 

今朝の出来事を話して「クリフトはおかしくなったんじゃないかしら?」と尋ねると

リオスさんは豪快に吹き出した。

 

 

「ぶははははっ! クリフトにあたしのこと好きかって聞いたんっすか? そりゃあ

 クリフトもぶったまげて、木に頭をぶつけてもしょうがねえっすな。ぷぷぷ」

 

あたしがこんなに心配してるのに、リオスさんはお腹を抱えて笑っているのよ。

 

 

「笑いごとじゃないわ。好きって言えば約束するって言ってるのに、クリフトったら

 いっぱい汗かきながらまごまごしてばかりで、まともに声も出せなかったのよ」

 

あたしが抗議の声をあげても、リオスさんはまだ「ひーひー」笑い続けているわ。

 

 

「うははは。それで正解っす。クリフトはどこもおかしくねえし、至極まともっすよ。

 おじょうちゃん、安心してくだせえ」

 

 

「でもっ…!」

 

さらに抗議しようとするのを、リオスさんは「しーっ」と人差し指を立てて止めたの。

 

 

「ほら。見たくだせえ、おじょうちゃん。あれがおかしくなった奴ですかねぇ?」

 

リオスさんはなおもニヤニヤしながら、振り返ってクリフトたちに目を向けたの。

あたしも振り返って見たわ。

 

 

あたしと話してたときはあんなにおろおろしてて、動きもぎこちなかったというのに

今のクリフトは晴れやかなスッキリした顔をして、ティメラウスの指示を聞きながら

テキパキと俊敏に動いているの。

 

さらに、ティメラウスと何か話しながら、ときおり笑顔まで見せているじゃないの!

 

 

あたしたちの視線を感じたのか、ふいにこっちを見たクリフトはあたしと目が合うと

少し顔を赤らめて、照れくさそうな笑みを浮かべながら軽く頭をさげてきたのよ。

 

 

「どうだい? おじょうちゃん。まともじゃねえか? おかしな奴には見えないだろ?」

 

リオスさんが笑って聞いてくる。

 

 

「そうねぇ...」

 

あたしは首をかしげながらつぶやいたわ。

確かに今のクリフトはどこも変じゃなく、いつもの真面目なクリフトにしか見えない...

 

 

「また、気になることがあったら、なんでもあっしに相談してくだせえ。あっしは

 おじょうちゃんの味方だし、困ったときはいつでも相談に乗りますからね!」

 

リオスさんが親指を立てて言ってくる。

 

 

「ありがとう、リオスさん!」

 

頼れる人がいるって良いわよね!

あたしは笑顔でうなずいたわ。

 

 

「へへへっ。勇者の泉は不発だったけど、おもしれえことになってきたな。ついて来て正解だったぜ!」

 

 

「えっ? なにか言った?」

 

 

「いえ、なんにも。そろそろスープも出来上がる頃じゃねえっすか? 戻りますかね?」

 

あたしはリオスさんに促されて、ティメラウスとクリフトのところに戻った。

 

 

「出来ましたぞ。カイン殿下直伝の特製スープ! さあ、姫さま。どうぞ召しあがれ」

 

ティメラウスはニコニコしてあたしに出来たてのスープを手渡してきたわ。

 

 

「うん。美味いぜ! ...いや... でも... カイン殿下の味とはちょっと違うかもしれねえな」

 

あたしの隣でクリフトから器を受け取って、さっそくグイッと飲んだリオスさんが

あごに手を置いて微かに首をかしげた。

 

 

リオスさんの話を聞きながらあたしも飲んでみたけど...... そうね、ちょっと違うわね。

 

「うん、そうねぇ… このスープも美味しいんだけど、おにいちゃんのと比べると

 ひと味足りないって感じなのよね…」

 

 

リオスさんは大きくうなずく。

 

「そうそう、なんか足りねえんっす。それがなにかはあっしにもわかんねえっすけど」

 

 

首をかしげるあたしたちを見ながら、ティメラウスもスープに口をつけた。

 

「うーん、確かに。なにかはよくわからないけど、ちょっと足りないのは感じるな」

 

ティメラウスもあたしたちと同じように難しそうな顔をして首をかしげたの。

 

 

「えっ? そうなんですか? 私にはとっても美味しいスープだと感じるんですが....」

 

クリフトがあたしたちの顔を見回す。

 

 

「このスープもすごく美味しいのよ。でもね、おにいちゃんのとはなにか違うの。

 おにいちゃんのつくる料理はそりゃあもう、とにかく絶品なんだもの。そうだわ!

 サマルトリアに帰ったら、おにいちゃんに本物をつくってもらいましょうよ!」

 

 

「賛成っ!」

 

おにいちゃんの料理を思い出したのかしら、リオスさんの喉がごくりと音を立てたわ。

 

 

「私のような身分の者が、カイン殿下の料理をいただくのはおこがましいような

 気持ちになりますが、機会があるのであればぜひとも食べてみたいですね」

 

クリフトも目を輝かせている。

 

あたしたちはその後も、おにいちゃんの絶品料理について話しながら食事を続けたの。

 

 

おにいちゃんのには劣るとはいえ、ティメラウスのつくったスープも良かったわよ。

 

あたしたちはあっという間にたいらげると、また南に向かって歩き始めたの。

 

 

ティメラウスのスープのせいかしら? おにいちゃんの料理の話をしたせいかしら?

歩き始めてすぐ、あたしは無性にお魚料理が食べたくなってきちゃったの。

 

おにいちゃんが焼いて特製のソースをかけたお魚は本当に本当に美味しいのよ。

あぁ、あのお魚が食べたい...

 

 

「ねえ、このあたりの海でお魚を捕まえられないかしら? 前に王子たちと一緒に

 ローレシアからサマルトリアまで歩いたときは、途中で魚釣りしたのよ」

 

あたしが前を歩くティメラウスとリオスさんに声をかけると、リオスさんは歩きながら

振り返って首を横に振ったの。

 

 

「このあたりは難しいっすね。ローレシア城からリリザの町あたりは、海水も温かくて

 海流も穏やかだから、魚も浅いところにいるんっすけど、こっちの方は水も冷てえし

 波も荒いんでね、かなり深いところじゃないと食えるような魚はいねえんっすよ」

 

 

「そう… 残念ね。あたし今、すっごくお魚が食べたい気分なのよねー」

 

あたしはため息まじりにつぶやいた。

 

 

「姫さま。進路は変わりますが、ここからローレシア城に向かうことも出来ますよ。

 そんなにお魚が食べたいのであれば、ローレシア城の方へ向かいましょうか?」

 

クリフトが尋ねてきたわ。

前を歩くティメラウスとリオスさんも「どうする?」と言った様子で立ち止まった。

 

 

そうね。いくら貧乏国とはいえ、ローレシアに行けば魚料理ぐらいはあるわよね。

 

でも……

 

ローレシアで王子に会うのは良いんだけど、サイラスには会いたくないのよね」

 

 

「サイラス…様? 青の騎士団の…?」

 

あたしはサイラスの顔を思い浮かべながら苦々しい思いでうなずいたの。

 

 

「礼儀とか作法にうるさいのよ、サイラスって。サマルトリアの姫君なのに… とか

 いちいち文句を言ってくるの。あいつに会うなら、ローレシアには行きたくないわ」

 

あぁ。サイラスの説教じみた言い方を思い出したら、すごく嫌な気分になってきたわ。

 

 

「ここだけの話、私もサイラス卿には会いたくないですな。姫さまの従者ということで

 さすがに邪険にはされないだろうけど、我々は歓迎もされないでしょうからねぇ…」

 

やっぱりみんな考えることは同じね。

ティメラウスも、苦笑いしながら小声であたしの意見に同意してきたのよ。

 

 

  サマルトリアでは嫌われ者のサイラス ( *´艸`)(私は好きよ (≧∇≦)♡)

 

 

「おまえは入ったばっかりで知らないかもしれないけどよ、青と緑の騎士団はそれぞれ

 自分たちの方が優れた騎士団だと主張して長く覇権争いをしてるんだ。特に団長の

 サイラス卿とモルディウス卿は、ライバル心むき出しで争っているんだぜ」

 

あたしたちの話を聞いてぽかんとしてるクリフトに、リオスさんが説明してくれたわ。

 

 

「へぇ~、そういう経緯があるんですね」

 

クリフトは納得したようにうなずく。

 

 

「途中でローレシアに行って、サイラスにも会ってきたってモルディウスに知られたら

 クリフトは緑の騎士団でみんなからいじめられちゃうんじゃない?」

 

あたしが脅すように言うと、リオスさんもニヤリとしてクリフトをひじで突いたの。

 

 

「そうだぜ、クリフト。ただでさえ、おじょうちゃんやじいさんと一緒に旅に出て

 モルディウス卿にはにらまれてるっていうのに、サイラス卿とまで会ったりしたら

 あんた、サマルトリア緑の騎士団から除名されちまうんじゃねえか?」

 

あたしもリオスさんもからかってるのに、クリフトは真面目な顔で身震いしたのよ。

 

 

「そ、それは困りますね。お魚を食べたい姫さまのご要望は叶えたいところですが、

 緑の騎士団で肩身の狭い思いをするのは避けたいですし...。う~ん、困りました…」

 

困った顔でうなりながら頭をかくクリフトを見て、あたしは思わずぷっと吹き出した。

 

 

「なに言ってんのよ。もう答えは出たじゃない。あたしとティメラウスは、サイラスに

 会いたくない。あなたもローレシアに行ったせいでいじめられたくない。じゃあ

 ローレシアに行くのはやめましょ。あんな貧乏国で無理にご馳走してもらわなくても

 さっさと南のほこらに行ってお師匠様に会って、すぐサマルトリアに帰ればいいわ」

 

 

「よろしいのですか、姫さま?」

 

クリフトが遠慮がちに尋ねてくる。

 

 

「いいわ。ローレシアには行かず、このまま南のお師匠様のところへ行きましょう!」

 

あたしはこの冒険の主人公らしく、仲間たちに堂々と宣言してやったわ。

 

 

「では、先に進みましょう」

 

ティメラウスとリオスさんは再び南のほこらへ向けて歩き始めたわ。

 

 

あたしとクリフトも後に続いたんだけど、あたしはすぐに後悔し始めていたの。

だって、やっぱりお魚が食べたいんだもん!

 

 

 

「... ん? 魚のにおいがするな」

 

しばらく進むと、前を歩くリオスさんが首を伸ばしてふんふんと鼻を鳴らし始めたの。

 

 

「え? 魚のにおい?」

 

あたしもマネしてにおいを嗅いでみたけど、お魚のにおいなんて全然しないわよ。

 

 

「まちがいねえ! ひゃっほ~い。魚がこっちにやって来てるぜ、おじょうちゃん!」

 

リオスさんは嬉しそうに振り返った。

 

 

魚がこっちに来る?

どういうことかしら? 海にいる魚が海から跳ねて道まで飛んで来るってこと?

それとも魚が歩いてくるの? まさかね...

 

あたしがきょとんとしていると、リオスさんは前方を指さして大声をあげたの。

 

 

「ほら、来ましたぜ!」

 

 

リオスさんの指さした方を見ると、太ったおじさんが大きな身体を揺らしながら

のしのし歩いてくるのが見えたわ。

 

 

 

あのおじさんが、お魚?!

 

 

 

 

今回の話は完全につなぎです... (;´∀`)

 

次の話につなげるため、無理やり「お魚が食べたい!」とティアに言わせました☆

(とばっちりでティアとティメラウスにディスられたサイラスはお気の毒 ( *´艸`))

 

(さらに余談ですが... (;'∀'))カインおにいちゃんの影響なのか、なにかにつけて

ローレシア「貧乏国」と言うティアが、私のひそかなお気に入りです ( *´艸`)

 

 

最初からローレシア南のほこらに向かう途中で「商人に出会う」という展開にしたくて

適当な商人(Ⅲの男商人とか)を出そうと思っていたんですが、姫さまとクリフトと

ブライのそっくりさんで旅をしていて、商人と言ったら... ねぇ ( *´艸`)

 

創作物語なので『あのおじさん』を登場させちゃうことにしました~ヾ(*´∀`*)ノ

 

リオスに「魚がやって来たぞ!」と言われて登場した "あの商人“ ( *´艸`)

 

魚とはどういうこと?

彼の正体やいかに?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ