ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑧】 ティアの大冒険 ~清めの水~

勇者の泉の洞窟に入ったあたしたち。

 

リオスさんがほら穴からお金を拾ってきたのを見て、あたしもとびっきりのお宝を

見つけてみせるわ! と、張り切って壁に開いていた穴に腕を突っ込んだあたし。

 

 

その穴は毒蛇の巣穴だったみたい

 

あたしは穴の中にいたキングコブラに指を噛まれ、頭痛と震えが止まらなくなったの。

 

 

 

あたしに噛みついてきた毒蛇は、クリフトが走ってきて斬り捨てたんだけど、あたしが

巣穴を引っかきまわしちゃったせいなのか、反響するぐらいの大声を出したせいなのか

洞窟のいたるところからキングコブラがうじゃうじゃとわいて出て来ちゃったのよ。

 

 

あたしたちの大ピンチをティメラウスが助けに来てくれて、あたしはリオスさんに

毒の治療をしてもらって元気になったわ。

 

 

うじゃうじゃわいて出てきた大量の毒蛇も、クリフトとティメラウスが退治してくれて

やれやれとみんながホッとひと息ついたところで、暗闇に隠れていた大きな毒蛇が

クリフトに襲いかかってきたの!

 

 

喉元を噛まれて倒れるクリフト。

 

ティメラウスがすぐに立ち上がって毒蛇にとどめを刺してくれたんだけど、クリフトは

バタリと倒れたまま動かないの...

 

 

「クリフト、しっかりしろ!」

 

毒蛇を一刀両断したティメラウスが、地面に倒れたままのクリフトを抱き起こしたけど

クリフトはまったく反応しない…

 

 

「クリフトッ!」

 

あたしが2人のそばにしゃがみこんで叫ぶと、クリフトは薄っすらと目を開けたわ。

 

 

「.... ひ、姫さま.... は、はやく.... 早く.... お、お逃げください...」

 

クリフトは荒い呼吸を繰り返しながら、うつろな目であたりを見回してつぶやく。

 

瞳は微かに白濁していて、目は開いているけどよく見えていない感じに思えるわ。

 

 

「クリフト、しっかりして!」

 

クリフトの肩をつかんで揺すろうとしたあたしをリオスさんが止めた。

そのままリオスさんは素早く袋から毒消し草を取り出し、クリフトの喉元にあてたの。

 

毒消し草を傷口にあてるとクリフトは一瞬ぴくんと身体を震わせたけど、その後も

呼吸は荒いままで目の焦点も合ってないわ。

 

 

「ダメだ。毒性が強すぎるのと、噛まれた場所が悪すぎるな。毒のまわりが激しくて

 毒消し草が効かねえ!」

 

リオスさんは悔しそうに唇を噛む。

 

 

クリフトは白濁した焦点の合わない瞳を動かし、ぼんやりとあたりを見回しながら

「姫さま、姫さま」と何度もうわごとのようにつぶやいている。

 

 

「すぐに奥の泉へ向かうぞ。たとえ猛毒でも清めの水を飲めば解毒できるはずじゃ!」

 

ティメラウスがクリフトを背負って立ち上がり、あたしたちに向かって叫んだ。

 

 

リオスさんがクリフトの荷物とたいまつを持って、ティメラウスの後に続いて歩く。

 

あたしも急いで2人を追いかけようとしたけど、怖くて怖くて脚がもつれちゃった。

 

 

「姫さま、大丈夫ですぞ。クリフトはまだ生きておりますからな!」

 

背中にクリフトを乗せたティメラウスが振り返って励ますように言ってくる。

 

 

「そうだぜ。安心しな、おじょうちゃん。この先の泉にある清めの水はどんな猛毒も

 一瞬で解毒して、失った体力も一気に回復できる魔法の水だって評判だからよ。

 クリフトもすぐ元気になるさ」

 

リオスさんも、明るい声であたしの背中をポンポンと叩きながら言ってくれたわ。

 

 

ええ、そうよね。

前に王子と一緒におにいちゃんを探しにここへ来たとき、王子も猛毒を受けたのよね。

 

たしかあのときの王子も1人で歩けないぐらいフラフラだったけど、おにいちゃんが

バプテスマのおじいさんのところへ連れて行って水を飲ませたらすぐに回復したのよ。

 

 

でも.......

 

「.... でも、もし... 癒しの泉に着く前にクリフトが死んじゃったら...」

 

あたしは自分で言った言葉に自分で怖くなって、ぶるっと身震いしたわ。

 

 

クリフトが死んじゃう?!

嫌よ、そんなの! 絶対に嫌っ!

 

 

 

「大丈夫。バプテスマほどの能力の持ち主なら、おそらく蘇生も出来るだろう」

 

ティメラウスが力強く言ってくる。

 

 

「万が一のときは、あっしがサマルトリアに戻ってカイン殿下を連れて来ましょう。

 安心してくだせえ、おじょうちゃん。どんなにまずい状況になっても、カイン殿下が

 必ず助けてくれますよ!」

 

リオスさんも励ましてくれる。

 

 

おにいちゃん...

おにいちゃんなら、助けられるわよね?

 

お願い、おにいちゃん!

クリフトを守って!!

 

あたしは心細くて泣きそうになりながらも、祈る思いで奥の泉に向かって歩き続けた。

 

 

うねうねとした洞窟の先を左に曲がると、ざあぁっと水が流れる音が聞こえてきたわ。

 

地底に広がる大きな泉。

その泉のほとりにローブを着た小柄なおじいさんが座っているのが見えた。

 

 

「おお~い、助けてくれ!」

 

ティメラウスが泉の奥に声をかけると、おじいさんがこちらに駆け寄ってきた。

 

 

「おお、こりゃあ酷い状態じゃな。これは大変だ。すぐに清めの水を飲ませねば!」

 

バプテスマのおじいさんはティメラウスに背負われたクリフトを見て顔色を変えると、

ティメラウスを手伝ってクリフトを奥の泉のほとりへと運ぼうとした。

 

 

そのとき!

 

今までうわごとのように「姫さま...」とつぶやいていたクリフトがカッと目を見開き

おじいさんの腕をつかんだの!

 

 

「姫さまを... どうか姫さまを助けてください! どうか.... どうか姫さまの治療を!」

 

さっきまであんなにぐったりしてたのに、どこにそんな力が残っていたのかしら?

クリフトはおじいさんの腕を力いっぱい握って懇願しているの。

 

 

おじいさんは困惑した顔でクリフトとあたしの顔を交互に見た後、クリフトに向かって

「... ああ、大丈夫。姫さまの治療は私にまかせなさい」となだめるように言った。

 

 

おじいさんの言葉を聞いたクリフトは安心したように微笑み、ゆっくり目を閉じた。

 

クリフトが目を閉じると同時に、おじいさんの腕をつかんでいたクリフトの手が

だら~んと力なく垂れ下がった。

 

 

「いかんっ、急げ!」

 

ティメラウスとおじいさんは、ぐったりしたクリフトを泉のほとりへと連れて行った。

 

 

 

泉の水を飲ませて、おじいさんが癒しの魔法を唱えればクリフトは回復するはずよ!

 

なのに.....

おじいさんが泉の水をすくってクリフトに飲ませようとするんだけど、クリフトは

目を閉じたまま反応しないの。

 

ティメラウスが目を覚まさせようとクリフトのほっぺたをぺちぺちと叩いたけど

クリフトはまったく動かないわ。

 

それでも口を開けさせて水を流し込もうとしたけど、水はクリフトの唇からこぼれて

胸のあたりに垂れていくだけなの...

 

 

「くそっ、どうすれば...」

 

クリフトたちの様子を見ていたリオスさんが地団駄を踏んでいる。

 

 

どうしようか考えていたとき、あたしはふとあることを思い出したの!

お母様のお部屋にある本を、お母様に隠れてこっそり読んだときのことよ。

 

本の中では『ある国の王子様が、眠ったままのお姫さまを目覚めさせる方法』として

書いてあったんだけど、きっとこの方法ならクリフトに水を飲ませられるわ!

 

 

「貸して!」

 

あたしはおじいさんからお椀を奪うと、泉の水をすくって自分の口にふくんだの。

そして、そのままクリフトに口付けた。

 

 

「ひ、姫さっ!」

「な、なんと!」

「なにをっ!」

 

 

近くでおじいさんたちの驚く声がしたけど、あたしは構わずに唇を半開きにして

自分の口の中の水をクリフトの口の中にゆっくりと注ぎ込んだの。

 

 

お椀から飲ませようとしたときとは違って、こぼれることなくクリフトの口の中に

水が注がれていったわ。

 

そして....

クリフトの喉がごくりと音を立てたの!

 

 

「飲んだわよ!」

 

あたしは唇を離して叫んだわ。

 

 

「おじいさん、早く!!」

 

あたしはバプテスマのおじいさんの腕をつかんで、癒しの魔法をせがんだ。

 

 

おじいさんは(ティメラウスもリオスさんも)その場に突っ立ったままあたしたちを

ポカーンとした顔で見てたけど、あたしが揺さぶるとようやくハッと我に返ったの。

 

 

「神よ、旅立たんとするこの若者に今、祝福を授けたまえ!」

 

おじいさんは胸の前で十字を切ったわ。

 

 

次の瞬間、クリフトの身体はビクンと跳ね上がり、青白い顔に赤みが差してきたの。

そしてクリフトはゆっくりと目を開いた!

 

 

「姫さま、ご無事ですか?! 毒は? お怪我は?!」

 

目を開けてあたしを見たクリフトは、飛び起きてあたしの肩をつかんできたの。

 

 

「バカッ!」

 

あたしはクリフトのほっぺたを叩いた。

 

 

自分が死にかけたのに、なんであたしの心配してんのよ!

 

 

いきなりあたしに怒鳴られて引っ叩かれたクリフトは、ほっぺたを手で押さえながら

ポカンとした顔であたりを見回した。

 

 

自分が泉の前にいること、自分の目の前にバプテスマのおじいさんがいることに驚いて

クリフトは大きく目を見開いている。

 

 

「えっと... ここは? 私はいったい...」

 

きょろきょろしているクリフトに、リオスさんがこれまでの話を聞かせたの。

 

 

クリフトが毒蛇に喉を噛まれたこと

倒れたクリフトをティメラウスが背負って、この泉まで運んできたこと

泉の水を飲ませ、バプテスマのおじいさんの癒しの魔法を受けて目を覚ましたこと

 

 

クリフトは毒蛇に襲われて喉を噛まれてからの記憶がいっさいなかったみたいで、

リオスさんの話を聞いてからは恐縮した様子でペコペコと頭を下げ始めたの。

 

 

「遠くまで私を運んでくださったティメラウス様には感謝の気持ちでいっぱいです。

 リオス様にもご迷惑をおかけいたしました。そして、バプテスマ様には私の命を

 救っていただき、本当に感謝しております。みなさま、ありがとうございます」

 

クリフトは3人にペコペコ頭を下げると、静かにあたしの近くへとやって来たわ。

 

 

「姫さま、ご心配をおかけして申し訳ございません。姫さまを守ると誓いながら

 とんだ醜態をさらしまして...」

 

クリフトはすまなそうに言ってくる。

 

 

「クリフトのバカッ!」

 

あたしは大声で叫んだ。叫ぶと同時に、大粒の涙が瞳からどんどんあふれてくる。

 

 

「すっごく.... ひっく... すっごく怖かったんだから! クリフトが... ひっく... このまま

 死んじゃうんじゃないか.... ひっく.... 死んじゃったら... ひっく.... あたしはいったい...

 どうすればいいのって.... ひっく.... 本当に、本当にすっごく怖かったんだからぁ!」

 

あたしは我慢できなくなって、その場で「うわ~ん」と泣きだしちゃった。

 

目をこすって涙をぬぐいながら見ると、クリフトがおろおろしてるのが目に入ったわ。

 

 

「…… いけよ、男だろ」

 

少し離れたところから、リオスさんが誰かにささやいている声が聞こえてくる。

 

 

あたしがしばらくそのまま声をあげて泣き続けていると、クリフトの腕がゆっくりと

あたしを優しくつつみ込んできたの。

 

あたしの顔はクリフトの胸に押しあてられるような形になったわ。

 

 

清めの水を飲んで解毒できたはずなのに、まだどこかに毒が残っているのかしら?

クリフトの腕は微かに震えているわね。

 

それに解毒されて熱も下がったはずなのに、クリフトの身体は燃えるように熱いのよ。

 

そして、さっき止まりかけた心臓が止まりかけた分だけ余計に拍動しているのかしら?

クリフトの心臓がどくどくと大きな音を立てているのが聞こえてくるの。

 

 

「怖い思いをさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした。姫さま」

 

クリフトの声が真上から聞こえてくる。

 

 

あたしを抱き締めてくる腕...

どくどくと動いている心臓...

 

あたたかいクリフトの身体...

いつも通りのクリフトの声...

 

 

クリフトは生きてるのね!

 

 

目を閉じてクリフトの胸の鼓動を聞いているうちに、さっきまでの恐怖心が急速に

しぼんでいくのを感じたわ。

 

そして、恐怖心が薄れていくのとは反対に、怒りがムクムクと湧いてきたの。

 

 

「バカッ! クリフトのバカッ! 自分が死にかけてるくせに、あたしに早く逃げろと

 言ったり、おじいさんにあたしを治療しろと頼んだり。なんてバカなの!

 あんたは大バカ者よ!」

 

あたしは抱き締められたまま、クリフトの胸をこぶしでドンドンたたいた。

 

 

「.….. はい、私は大バカ者です」

 

微かに笑うクリフトの声が聞こえてくる。

 

 

あたしはしばらく「クリフトのバカ」と言いながら、クリフトのあったかい胸を何度も

こぶしで叩き続けていた。

 

 

 

お互いに素直になれない意地っ張り同士(でも名コンビ♡)「カイン&ナナ」に対して

「素直なむっつり・クリフト」と「素直なお子ちゃま・ティア」の方がすんなりと

進展しそうだと思っていましたが、クリフトの命の危機をきっかけに急接近 (≧∇≦)♡

 

 

勇者の泉でクリフトが仮死状態になり、ティアが「怖かった 。゚(゚´Д`゚)゚。」と泣いて

クリフトがおろおろしながらも、泣いているティアをハグしてよしよしヾ(・ω・`)

 

この展開は冒険の当初から考えていたんですが、実際にキングコブラに襲われた場面で

「仮死状態のクリフトが、果たして自発的に水を飲めるのか?」という疑問が湧き

「ええい、口移しもさせちゃえ!」と急きょ追加しました ( *´艸`)♡

 

 

「ナナに後ろから抱きつかれた!」と喜ぶ17歳(もうすぐ18歳)のおにいちゃん。

4歳下の妹が、ハグもキス(一応の名目は口移しだけど)も先に済ませたと知ったら

どんな反応するんでしょ ( *´艸`)?

 

 

イイ雰囲気のクリフト&ティア (*´ω`*)

カインおにいちゃんを差し置いて、この先どこまで仲が深まるんでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ