ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑩】 ティアの大冒険 ~約束~

勇者の泉でキングコブラに噛まれて倒れちゃったクリフトを、奥の癒しの泉へ運び

清めの水で解毒してもらったわ。

 

解毒してくれたバプテスマのおじいさんは、クリフトが命の危機に瀕してもあたしを

守ろうとする姿に感動したと言って、クリフトにホイミの呪文を教えてくれたのよ。

 

 

洞窟を出て覚えたばかりの呪文を試したまでは良かったんだけど、クリフトったら

これまで魔法の修行をしてこなかったから、魔力が全然備わってないんですって!

 

たった1回の詠唱で、魔力をすべて使い果たしちゃったなんて言うのよ。

 

しょうがないから、あたしたちはお師匠様への弟子入りに加えて、クリフトの魔力が

低いことを相談するために、ローレシア南のほこらに向けて歩き始めたの。

 

 

「2人とも、これまでよく戦ってきた。ここからは私らが先導しよう。敵が出てきたら

 また前に出て戦うがいいですぞ」

 

ここから先は、ティメラウスとリオスさんがあたしたちの前を歩いてくれるみたいよ。

 

 

2人が前を歩いていたら、敵はビビって近寄って来ないと思うんだけど、ここまで

あたしもクリフトも充分に戦ってきたから、もう戦わなくてもいいんですって。

 

 

「ねえ、そういえばお宝探しが途中になっていたけど、良かったの? リオスさん」

 

あたしは前を歩くリオスさんに尋ねたわ。

 

洞窟にはまだお宝があったかもしれないのに、あたしが毒蛇を呼び寄せちゃったせいで

うやむやになっちゃったもの。

 

 

「癒しの泉の近くに落とし物の毒消し草があってね、おじょうちゃんが泣いてる間に

 拾って来ましたよ。あっしはお宝のにおいをかぎ分ける鼻を持ってるんっすけどね、

 存分に嗅ぎ回っても他にお宝はなさそうでした。うん、あの洞窟はハズレっすね。

 まったくにおわねえっす」

 

リオスさんはふんふんと鼻を鳴らすと、両手を広げて肩をすくめたの。

 

 

「そう、残念ねぇ…」

 

とびっきりのお宝を見つけて、帰ってからおにいちゃんに自慢したかったのに。

 

 

結局はなんのお宝も得られないまま、あたしが毒蛇の巣穴を引っかき回してみんなを

危険に巻き込んだだけだったのね。

 

 

ハァ…

さすがに落ち込んじゃうわ…

 

洞窟にはろくなお宝もなかったし、魔力を使い果たしちゃったクリフトはさっきから

ずっとしょんぼりしちゃってるし... なんだか元気に歩ける気分じゃないわね...

 

 

あたしもクリフトも癒しの魔法を受けて体力的には充分だったけど、長く歩けるような

心境じゃなかったから、あたしたちは無理せず今日は近くでひと晩休むことにしたの。

 

 

 

翌朝ーーー

身体が元気だったこともあって、あたしはまだ薄暗い早い時間に目が覚めちゃった。

 

ティメラウスは火のそばでごろりと寝転んでまだグーグー寝ているし、火の当番だった

リオスさんもみんなの荷物を積み上げたところに寄りかかって寝ていたわ。

 

でも、ゆうべあたしのすぐそばで寝ていたはずのクリフトの姿が見当たらない!

 

 

あたしがあたりを見渡すと、あたしたちから少し離れた場所で、こちらに背を向けて

クリフトは一心不乱に剣を振っているの。

 

 

「こんな朝早くから何してるの?」

 

あたしがクリフトの背中に声をかけると、クリフトは雷にでも打たれたかのように

ビクンと身体を大きく震わせたの。

 

 

「おおおお... おはようございます、ひ、ひ、姫さま。おおお早いお目覚めで...」

 

クリフトはぎこちない様子で振り返りながら、あたしに挨拶してきたわ。

 

 

「なにしてるの?」

 

 

「ああああの... ゆゆゆうべは... よ、よく眠れなかったので... けけ、剣の稽古を...」

 

稽古のせいかしら?クリフトは真っ赤な顔をして汗だくになっているわ。

 

 

「まぁ! 寝不足だっていうのに、朝からそんな汗だくになって稽古することないわ。

 ねぇ、こっちに来て休憩したら?」

 

あたしは近くにある木の根元を指差して言ったの。ここなら涼しいはずよ。

 

 

「あ... は、はい...」

 

クリフトは剣をしまいながら歩いて来たけど、関節が上手く曲がらなくなったみたいに

ギクシャクとした変な足取りなのよ。

 

 

「ねえ、本当に解毒できたの? 顔もずっと真っ赤だし、歩き方もおかしいわよ」

 

まだ毒が残っているのか、魔力がなくてショックのあまりおかしくなっちゃったのか

クリフトはなんだか明らかに変よ!

 

 

「か、身体はまったく問題ありません。すこぶる元気です! わ私が緊張しているのには

 べ別の意味がありまして...」

 

クリフトはぎこちなく歩きながらあたしのそばに来て、木の根元に腰を下ろした。

 

 

「別の意味ってなによ?」

 

 

「あ... はい。ゆうべ、みなさまがおやすみになってから、リオス様が私を起こして

『落ち込んでるから、元気が出る話をしてやる』と言って話してくださったんです。

 あの.... その.... 勇者の泉で... ひ、姫さまが私に水を飲ませてくれたということを...」

 

クリフトはそこまで言うと、真っ赤になって額から噴き出た汗をぬぐっている。

 

 

やだ。クリフトにそんな顔されたら、あたしまで恥ずかしくなってきちゃうじゃない!

 

「しょ、しょうがないでしょ? あんたがぐったりして水を飲もうとしないんだもの!」

 

 

「は、はい。あの... と、とても... き、貴重な経験でありがたく思っています。ただ、

 気を失っていてまったく覚えていないのがとても残念であり... いや、でも私が気を失っていたからこそ、

 姫さまに水を飲ませてもらえたということは、気を失っていて良かったのかという思いもあり、いや

 でもやはり、せっかくの素晴らしい体験をまったく覚えていないのは非常に無念だという思いが強く...」

 

 

クリフトはまた1人でなんかぶつぶつ言ってるけど、構ってられないわ!

あたしはあたしで自分の行動の正当性をちゃんと主張しなきゃいけないわよね!

 


「お母様のお部屋で読んだ本に書いてあったのよ。ある国の王子様が眠ったままの

 お姫さまをこの方法で目覚めさせたんですって。だからあたしも試してみたのよ。

 なんか文句あるって言うの?」


あたしがクリフトをにらむと、クリフトは慌てた様子で首を激しく横に振ったわ。

 


「文句だなんて、めっそうもありません! 姫さまのおかげで助かりました。姫さまは

 私の命の恩人です。姫さまへのご恩に報いるため、このクリフトは命をかけて...」

 


「だめっ!」

クリフトの言葉をさえぎり、あたしは手を伸ばしてクリフトの口をふさいだ。

 


「もう、あんな思いをするのは絶対に嫌よ。あたしを守るのはいいわ。だってあたしは

 高貴なお姫さまですもの。守って当然よね! でも、命をかけるのは絶対にだめっ!

 あたしの許しなく勝手に死んじゃうだなんて、あたし絶対に許さないんだから!」

 

あたしの言葉を聞くと、クリフトは穏やかに微笑んで力強くうなずいたの。

 


「はい、わかりました。もう2度と姫さまに怖い思いをさせないとここに約束します。

 私クリフトは、姫さまのお許しなく勝手に死んだりしないことをここに誓います」

 

クリフトは胸に手を当てて一礼したわ。

 


「約束よ」

あたしが小指をさし出すと、クリフトは「はい、約束します」と小指を絡めてきたの。

 


「姫さまも約束してくれませんか?」

 

小指を絡めてげんまんしたまま、クリフトがあたしを見つめて真剣な顔で言ってくる。

 


「危険なことは絶対になさらず、お命を大事にすると約束してください。姫さまに

 もしものことがあったら、このクリフト....... いや、王様や王妃様、カイン殿下が

 どれほど嘆かれることか...」

 

クリフトは落ち着かない様子で小指を外すと、真っ赤な顔をしてあたしから目をそらし

しきりに額の汗をぬぐっている。

 

 


「… あたしのこと好き?」

 


「えっ?!」

 

ビックリして大きくのけぞったクリフトは、後ろの木に思いっきり頭をぶつけたの。

ゴンッという鈍い音がする。

 


「キャア! もう、なにやってんのよ。危ないじゃないの! 大丈夫?」

 

あたしが尋ねると、クリフトは後頭部をさすりながら身体を起こした。

 


「こここれぐらい平気です。それよりも、ひ、姫さま.... 今ほどのご発言は...??」

 

 

あたし、変なこと言ったかしら?

クリフトは激しく動揺しているわね。

 


「前にね、おねえちゃんたちと話したことを思い出したのよ。ミリアおねえちゃんは

 王子に会えないときはいつも『王子様が元気で幸せでありますように』とルビス様に

 お祈りしてるんですって。ミリアおねえちゃんの話を聞いて、ナナおねえちゃんが

『ティアちゃん、人を好きになるってこういうことよ』ってあたしに言ってきたの。

 だから、クリフトもあたしのこと好きなのかしらって思ったんだけど、違うの?」

 


「ああ.... あの... わわ、私は.... その...」

 

 

しどろもどろなクリフト ( *´艸`)

 

 

クリフトはますます真っ赤な顔になって、額からは汗がダラダラ流れているわ。

 


さっき、木に頭をぶつけたことで、さらにおかしくなっちゃったんじゃないかしら?

まともに話も出来ないじゃないの。

 

 

「もし、クリフトがあたしのことを好きなら、あたしも死なない! って約束するわ。

 だって好きな人が死んじゃうってすごく悲しいもの。ねぇ、クリフトはあたしのこと

 好きなんじゃないの? 違うの?」

 

 

「ちちち… ちちが、違い…… ません...」

 

クリフトは大きく息を吐き出しながら、消え入りそうな声でやっと返事したの。

 

 

「じゃあ、好き?」

 

あたしが尋ねると、クリフトは汗をふきながら無言でこくこくとうなずいたわ。

 

 

「ちゃんとあたしのこと好きって声に出して言ったら、約束してあげる!」

 

だって、さっきからクリフトはまごまごしててまともに話も出来ていないんだもん。

 

あたしがわざわざ約束してあげるんだから、ちゃんと言ってもらわないとダメよね。

「好き」ぐらい簡単に言えるでしょ?

 

 

「あ、あの... えっと... す、す、す...…」

 

う~ん、ダメね。まだクリフトは大量の汗をかきながらまごついてるわ。

 

 

やっぱりまだ毒が抜けきっていないのか、頭をぶつけておかしくなったに違いないわ。

あとで2人が起きたら、ティメラウスとリオスさんに相談してみようかしら?

 

 

クリフトは胸に手を当てて目を閉じると、大きくふーっと息を吐いて目を開けたわ。

 

そして...

 

「す......すす... 好き......です、姫さま」

 

声は小さいけどようやく言えたのよ。

 

 

「わかったわ。あたしも約束してあげる。あたしも勝手に死んだりしないわ!」

 

あたしは再び小指を差し出したの。

 

 

クリフトは手の汗を服の裾で何度もぬぐってから、震える手で小指を絡めてきたわ。

 

 

まともに歩けないし、しゃべり方も変だし、汗だくだし、手まで震えているんだもん。

絶対にどこかおかしいわよね。

 

 

やっぱりあとでみんなが起きたら「クリフトが変なの」って相談しよーっと。

 

 

 

 

うぶな純情少年のクリフトを翻弄する小悪魔ティアちゃん ( *´艸`)

 

一応、このクリフトはあのクリフトと別人という設定だけど、クリフトと名乗る以上は

「ひめに もしものことが あっては    このクリフト……」を言わせたい (・∀・)ノ

 

そう思って、お互いに「いのちだいじに」を誓い合う話にしようと決めました (^_-)-☆

 

 

「... このクリフト......」のセリフを別の世界線にいる姫さまはポカーンと聞き流したけど

こっちの姫はティアですから ( *´艸`)

 

聞き流しはせずに「死んで欲しくないってことは好きってことよね? じゃあ、好きって

ハッキリ言ってよ。2文字なんだからすぐに言えるでしょ? ほら!ほら!」と ( *´艸`)

 

汗だくのクリフトをどんどん追いつめて「好き」と言わせることに成功~ヾ(*´∀`*)ノ

 

クリフト、よくガンバったね◎

 

クリフトにとっては一世一代の大告白だったんですが、クリフトの真剣な想いは

ティアに届いたんでしょうか (;´∀`)?

 

 

あと、ティアは「好きな人が死んじゃうってすごく悲しい」と言いながら、クリフトに

「絶対に死んじゃダメ。あたしの許可なく死んだりしないと誓って」と誓わせましたが

果たして、そんな自分の気持ちには気づいているのでしょうかねぇ (*´ω`*)?

 

 

真剣告白されたというのに、ティメラウスかリオスに「クリフトが変なのよ」

相談するつもりのティア (;'∀')

 

相談されたおじさん(もしくはおじいさん)はなんと返事するんでしょうか ( *´艸`)

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ