ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑨】 ティアの大冒険 ~魔法~

キングコブラに喉元を噛まれて卒倒しちゃったクリフトをティメラウスが背負い、

あたしたちはバプテスマのおじいさんがいる泉をめざして洞窟を進んだの。

 

 

癒しの泉にたどり着くまでの間にクリフトが死んじゃうんじゃないかって、あたしは

怖くて怖くてたまらなかったわ。

 

 

ようやく泉に到着して、清めの水を飲ませてもらえるってところまで来たというのに

クリフトったら、毒のせいで頭がおかしくなっちゃったのかしら?

 

バプテスマのおじいさんに「どうか姫さまを助けてください!」と懇願したあげく

完全に意識を失ってしまったのよ。

 

 

 姫さまを助けてください!

 

 

ぐったりして水を飲まないクリフト。

しょうがないから、あたしが「秘伝の方法」でクリフトに水を飲ませてあげたの。

 

「秘伝の方法」は、お母様のお部屋でこっそり読んだ本の中に書いてあったわ。

 

 

あたしも試すのはちょっと恥ずかしかったけど、しょうがないでしょ?

全部、気を失ったクリフトが悪いのよ!

 

 

あたしのおかげで水を飲めたクリフトは、バプテスマのおじいさんの魔法を受けて

ようやく目を覚ましたの。

 

 

ゆっくりと目を開けてあたしの顔を見たとたん、クリフトはすぐにがばっと飛び起きて

「ご無事ですか?」と聞いてくるのよ。

 

 

自分が死にかけたっていうのに、なに人の心配してんのよ! バカじゃないの!

 

 

「クリフトのバカ!」と叫んだら、張りつめていた緊張の糸がぷつっと切れたのか

あたし、涙が止まらなくなっちゃった。

 

 

わぁわぁ泣き出したあたしを、クリフトは優しく抱き締めて謝ってくれたけど、

あたしをこんなに不安にさせといて、ちょっと謝ったぐらいじゃ許せないわよ!

 

あたしは「クリフトのバカ」と言いながら、クリフトの胸をこぶしで叩き続けたの。

 

 

「姫さまに怖い思いをさせて、こんなに心配をかけて、私は本当に大バカ者です。

 どうぞ気のすむまで叩いてください」

 

クリフトはあたしにこぶしでどれだけ叩かれても、じっとしたまま耐えていたわ。

それだけじゃなく、あたしをあやすように背中をゆっくり優しく撫でてくるの。

 

だんだん、あたし1人で怒ってるのがバカらしくなってきて、叩き疲れたあたしは

クリフトの胸に顔を押しつけたわ。

 

涙をクリフトの服でふいてやったの。

 

 

おにいちゃんからもらった「身かわしの服」は、あたしの涙でベタベタになったけど

ふんっ、あたしを泣かせた罰よ!

 

 

「こ、こほん。ん、んんん…」

ティメラウスが軽く咳払いする。

 

咳払いを聞いたクリフトは、慌てた様子であたしからパッと手を離したわ。

 

 

あたしも身体を離してクリフトを見上げると、クリフトは真っ赤な顔をしているの。

 

見上げるあたしと目が合うと、クリフトはさらに真っ赤になって落ち着かない様子で

額から噴き出た汗をぬぐい出したわ。

 

 

「ねえ、本当に解毒できたの?」

 

あたしは心配になって尋ねたわ。

 

だってクリフトは身体も熱いし、心臓もすごくドキドキしてるし、顔も真っ赤なのよ。

まだ毒が残ってるんじゃないかしら?

 

 

「へへっ。大丈夫ですぜ、おじょうちゃん。これは毒の影響じゃねえっすから」

 

リオスさんがニヤニヤと笑いながら、クリフトをひじで突いている。

 

リオスさんにつつかれたクリフトは顔を赤らめてうつむきながら、額に浮いた汗を

何度もぬぐって頭をかいているの。

 

 

「こ、こほん。姫さまはクリフトよりご自分の心配をなさった方がよろしいですぞ」

 

あたしの顔を見てティメラウスが言うの。

 

 

あ〜っ! いっけない!

 

ボロボロ泣いて、まぶたをクリフトの服で思いっきりごしごしぬぐったんだもの。

あたしのまぶたは腫れあがって、きっと相当ひどいことになっているわ。

 

いや~! 冗談じゃないわ! あたしは気高く美しいサマルトリアのお姫さまなのよ。

可愛らしいお姫さまなのに、泣きはらした醜い顔なんて誰にも見せられないわよ!

 

 

あたしは慌てて両手で顔を隠しながら、バプテスマのおじいさんに尋ねたわ。

 

「ねえ、おじいさん! あたし、この泉の水で顔を洗ってもいいかしら?」

 

 

「ほほほっ、こちらへいらっしゃい」

 

おじいさんが案内してくれるのを、あたしは指の間から見ながらついて行ったわ。

 

 

おじいさんに案内された場所でしゃがみこんで顔を洗うと、さすがに清めの水ね。

腫れぼったくなっていたまぶたもスッキリして、気分も爽快になったわ。

 

 

「ありがとう、おじいさん」

 

あたしはおじいさんにお礼を言うと、視界がスッキリした瞳でクリフトたちを見たの。

 

 

あたしから少し離れたところにいる3人。

水の流れる音でよく聞こえないけど、ティメラウスがクリフトになにか小言を言って

リオスさんが笑いながら「まぁまぁ」となだめているのが目に入ったわ。

 

 

あたしたちが再びクリフトたちのいる場所に歩いて戻ると、バプテスマのおじいさんは

クリフトに近づいて、クリフトの肩から腕までを両手でポンポンと叩き始めたの。

 

クリフトが戸惑いつつもされるがままになっていると、おじいさんはクリフトの身体を

反転させて背中から腰までを叩く。

 

叩き終わると、再びクリフトを反転させて真正面から見つめてにっこり微笑んだの。

 

 

「わしは感動したんじゃ。おぬしが自分の命も危ういというのに、最期の力を振り絞り

 必死でわしにこちらのおじょうちゃんを助けてくれと頼んできたことにな」

 

おじいさんはいったん振り返ってあたしを見た後、クリフトを見上げて微笑んだ。

 

 

「えっ? 私が姫さまの助命を?」

 

キングコブラに噛まれてから記憶がないクリフトがきょとんとしたので、おじいさんは

何があったか話して聞かせたのよ。

 

 

「...... そうですか、私は自分の命に変えても姫さまをお守りすると心に誓いましたので

 その想いがとっさに出たのでしょうか…」

 

バプテスマのおじいさんから話を聞いたクリフトは少し照れ臭そうにつぶやいた。

 

 

クリフトの言葉に、おじいさんは満足そうにうなずきながらこう言ったの。

 

「戦闘力をつけて敵の攻撃から守ってやるのも大事じゃが、癒しの力を身につけるのも

 同じく大事だとは思わんか? まだおぬしは魔力が低くて強力な魔法はとても使えぬが

 魔法を使いこなす素質は持っているようじゃ。少しの癒しを与える程度の魔法なら、

 今でも授けてやれるじゃろう。どうじゃな? おぬし、呪文を覚える気はあるか?」

 

 

クリフトはもちろん目を輝かせたわ。

 

 

「わ、私に癒しの呪文を授けてくださるとおっしゃるのですか? そうなのであれば

 このクリフト、ありがたく頂戴いたします!」

 

クリフトはその場でひざまずくと、胸に手を当てておじいさんに深々と頭を下げたの。

 

 

おじいさんはクリフトを立たせると、泉の前へ連れて行き、なにか言葉を伝えたわ。

 

 

★ クリフトは「ホイミ」の呪文を覚えた。呪文リストにチェックすること。

 

 

「良かったわね、クリフト」

 

戻って来たクリフトに声をかけると、クリフトは嬉しそうに満面の笑みを見せたのよ!

 

 

「へへっ。良かったな、クリフト。宣言どおり、おじょうちゃんを命がけで守った

 甲斐があったじゃねえか!」

 

リオスさんも嬉しそうにクリフトに駆け寄って肩を叩いている。

 

 

「魔法を覚えたことで浮かれることなく、これからも精進するのじゃぞ!」

 

言葉では厳しいことを言いながら、ティメラウスもニコニコ笑っているわ。

 

 

あたしたちはバプテスマのおじいさんに丁重にお礼を言って、泉をあとにしたの。

 

 

洞窟を出るまでにまた敵が襲ってくるか心配だったけど、大量のキングコブラの死骸に

きっとみんな恐れをなしたのね。

 

あたしたちは1度も襲われることなく、勇者の泉の洞窟から出られたのよ。

 

 

ジメジメぬるぬるした暗い洞窟から、陽が差す明るい林道に出られてホッとしたわ。

 

 

「ねえ、クリフト。おじいさんから教えてもらった魔法がちゃんと使えるのか、ここで

 あたしに試してみてよ!」

 

洞窟を出て林道のわきで座ってひと休みしながら、あたしはクリフトに頼んでみたの。

 

 

「姫さま。お加減が悪いのですか?」

 

クリフトが心配そうに聞いてくる。

 

 

「ううん、たいしたことないわよ。ただ、さっき毒蛇に嚙まれたとき、リオスさんに

 毒の治療しかしてもらってないの。傷跡はそのままなのよ。それにクリフトを連れて

 奥の泉までずっと歩き続けて疲れちゃったの。あなたの魔法がどれほど効くのか

 あたしが実験台になってあげるわ」

 

あたしが説明するとクリフトはうなずき「では、僭越ながら...」と目を閉じた。

 

 

精神を集中させたクリフトが呪文を唱えると、柔らかい光があたしを包み込んで

蛇に噛まれた指の傷跡はふさがっていき、身体には力がみなぎってきたわ。

 

 

「すごいわ! すっかり回復したわよ!」

 

あたしが喜んで叫ぶと、あたしの指先の傷がふさがっていくのを見たティメラウスと

リオスさんも「おお~」と歓声をあげたの。

 

 

あたしたち3人が大喜びするのとは対照的に、クリフトはなぜか青ざめていったわ。

 

 

「どうしたんだ、クリフト?」

 

異変に気づいたティメラウスが声をかけると、クリフトはおどおどと肩をすくめながら

今にも消えそうな小さな声で言ったの。

 

 

「...... 誠に申し訳ありません.... 姫さま、みなさま。どうやら今の1回の詠唱で、私は

 魔力を使い果たしたようです...」

 

 

「はぁ~っ? たった1回しか唱えてないのに、もう魔力が無くなったっていうの?

 信じられないわ。おにいちゃんは最初から何度も回復の魔法を使えたのに?!」

 

あたしは驚いて大声をあげたわよ。

 

 

だって、たった1回よ。

1回、唱えただけなのに?!

 

 

「おそらくカイン殿下は、長年の修行で魔力を充分に身に着けてから呪文を覚えたので

 覚えてすぐの段階でも何度も使えたんだと思います。私は、魔法の修行はこれまで

 1度もしてこなかったので、そもそも基本的な魔力が足りていないのかと......」

 

クリフトはしょんぼりとうなだれながら、消えちゃいそうなほど力ない声で言ったの。

 

 

「まぁ、1度も修行してこなかったんだから魔力がなくてもしょうがねえよな。今から

 ローレシア南のほこらに行って、カイン殿下のお師匠さんに会ってくるんだろ?

 弟子入りのお願いと同時に、魔力が低いことも相談してくればいいんじゃねえか?」

 

リオスさんが励ますように言ってくる。

 

 

「うむ。グランログザー殿なら、きっと力になってくれるだろう。そうと決まれば

 さっそくほこらへ向かいましょうか」

 

ティメラウスが立ち上がって言ってきた。

 

 

リオスさんも一緒に立ち上がると、2人は南に向かってゆっくりと歩き出したわ。

 

 

「しょうがないわねぇ。お師匠様のところに行ってお願いしてみましょう」

 

あたしも立って2人について行く。

 

 

「ほら、クリフト。行くわよ」

 

あたしが振り向いてガックリと座り込んでいるクリフトに声をかけると、クリフトは

うなだれたままのろのろ立ち上がり、トボトボとあたしの後について来たわ。

 

 

もう、世話が焼けるわね!

 

 

 

 

自分が瀕死なのにバプテスマのおじいさんに「姫さまを助けて」と懇願したクリフト。

 

この心意気を認められて、ご褒美に念願のホイミを教えてもらえましたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

ちなみに捕捉ですが

ティアが3人から少し離れた場所で顔を洗っているとき、ティメラウスはクリフトに

「おまえは臣下の身分でありながら姫さまになんてことを…」と文句を言い、リオスが

「まぁまぁ、じいさん。固いこと言うなよ」と2人の間を取り持ったんでしょうね

(知らんけど ( *´艸`))

 

 

念願の呪文を習得したクリフト☆

実践として、ティアに唱えてみたまでは良かったものの、魔力(MP)が低すぎて

ホイミ1回でMPは空っぽに… (;´Д`)

 

せっかく習得したのに、ホイミ1回しか使えないなんて… すっかり落ち込むクリフトを

慰めつつほこらへと進むティアたち。

 

 

果たして、グランログザー師匠は助けてくれるのでしょうか? そしてクリフトは

当初の望みどおり、無事にグランログザー師匠に弟子入りできるのでしょうか?

 

 

それ以前に、何事もなくローレシア南のほこらへたどり着けるでしょうか ( *´艸`)?

 

 

 

次回もお楽しみに〜 ヾ(*´∀`*)ノ