ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ②】 ティアの大冒険 ~初戦闘~

旅立ちの朝。あたしはお父様とお母様にご挨拶に行き、2人にあたたかく見送られて

ちょっとウルウルしちゃったわ。

 

その後、おにいちゃんにも「つらくなったらいつでも帰って来いよ」なんて言われて

泣きそうになりながらも、えいやって気持ちを奮い立たせて出発を決めたのよ。

 

 

それなのに、おにいちゃんたら...!

 

あたしには優しいこと言って頭をなでながら、裏ではティメラウスやリオスさんと

「あいつ、草を持つの嫌がるぜ」なんて言ってあたしのこと笑ってたんだって!

 

 

ひどいわ! あたしのいたいけで繊細な乙女心をもて遊ぶだなんて許せない!

 

あたしは追いかけてくるクリフトを振り切り、1人で城下町をズンズン歩き続けた。

 

 

城下町の入口にある門を抜けると、南は林道へ続く道、東は草原とに分かれている。

今回は「勇者の泉」を目指すから東側の草原を歩いて行くのよね。

 

 

あたしを笑い者にするようなあんな人たちは置いて、あたしだけで行ってやるわよ!

もう1人で行くことに決めたわ!

 

 

あらためて気合を入れて町の入口に立つと、どこからか強い風がビューッと吹いてきて

草や木がザワザワと音を立てて揺れる。

 

 

あたしは思わずゾクっとして鳥肌が立っちゃったけど、こ、怖いんじゃないわよ!

風が冷たくて寒く感じたのと... ほ、ほら、あれよ! 武者震いってやつよ!

 

 

 

「姫さま、どうかお待ちください。およばずながら私もお供いたします」

 

門の前で立ちつくしていると、クリフトが小走りであたしに追いついてきた。

 

 

  お供いたします、姫さま!

 

 

「ふ、ふん。どうしても一緒に行きたいって言うのなら、行ってあげても良いわよ」

 

あたしは腕を組んでクリフトを見あげた。

 

 

「おじょうちゃん、怖いんですかい?」

 

クリフトの後ろから来たリオスさんがニヤニヤといやらしい笑い顔で言ってくる。

 

 

「ここから先、1人で行くのは淋しくて我々のことを待っていたんでしょう」

 

ティメラウスもニヤニヤ笑っている。

 

 

「ふんっ! この旅はクリフトが主役だってさっきおにいちゃんが言ってたのよ。だから

 しょうがなく待っててあげたんじゃない。あたしはあくまでクリフトの護衛だもの。

 主役を差し置いて護衛だけが先に行っちゃうなんておかしいでしょう? だからこそ

 あたし、ホントは1人でも行けるけど、し、仕方なく待っててあげたのよ!」

 

 

怖がりだと誤解されると困るもの。

あたしは3人に大声で言ってやったわ。

 

 

「私を待っててくださったんですか。姫さまはやっぱりお優しいですね。感激です」

 

クリフトはキラキラした目であたしを見る。

 

 

「ほほ。まぁ、そういうことにしますか」

 

ティメラウスはリオスさんと目を合わせてニヤニヤしながらうなずいた。

 

 

ふん! なによ2人ともニヤニヤと気持ち悪い顔で笑っちゃって! いやらしい人たち!

 

 

「あんたは、あんな風になっちゃダメよ」

 

あたしはクリフトに言ったんだけど、クリフトは「姫さまが私を待っててくれた」

なんか1人でへらへら笑ってる。

 

 

はぁ〜、大丈夫かしら。この旅...

先が思いやられるわね

 

 

サマルトリアを出たあたしたちは東に進路を取り、草原を歩き始めた。

 

 

なだらかな上り坂を歩く。

 

おにいちゃんたちがハーゴンをやっつけたから、歩いていても平和そのものね。

魔物の姿はまったく見えないわ。

 

 

「腕試しはいいけど、無駄な殺生はするなよ。戦うのは襲われたときだけだからな!」

 

旅に出る前、おにいちゃんに言われたの。

 

 

そんなことわかってるわよ。

腕試ししたいからって善良な生き物をこちらから襲うだなんて、賊のやることだわ!

あたしはお姫さまだもん、そんな野蛮なことするわけないわよ。

 

 

…… それにしてもヒマね。

これじゃ、修行じゃなくてただの遠足だわ。

 

 

「姫さま、ごらんください。あそこに野ねずみの親子がいますよ、白くて小さくて

 可愛いらしいですね〜」

 

隣を歩くクリフトが小声で言ってきた。

 

クリフトの指さす方を見ると、草原の先に確かに白いねずみの親子が見える。

 

 

背中にぞわっと悪寒が走った。

 

「ねずみなんて可愛いわけないじゃない! あんなものを可愛いと思うだなんて、あんた

 頭おかしいんじゃないの?」

 

あたしはクリフトをにらみつけた。

 

 

「い、いや。か、可愛いくないですか? あんなに白くて小さくてふわふわしてて...」

 

クリフトはしどろもどろになりながらも、あたしに反論してくる。

 

 

「なによ。白くて小さかったら可愛いって言うのが、もうおかしいのよ。白くても

 小さくても、気持ち悪いものは気持ち悪いの! あたし、ねずみが大嫌いなのよ。

 これからあたしの前でねずみの話はいっさいしないちょうだい!」

 

あたしがピシャリと言いきると、クリフトは「はい...」と言って小さくなった。

 

 

ふん、ねずみが可愛いなんて言うからよ。

 

 

あたしたちの後ろでティメラウスとリオスさんがまたニヤニヤしてるのが見えた。

 

ティメラウスとリオスさんの顔を見ていると、あたしはまただんだん腹が立ってきて

後ろの2人を無視して歩みを早めた。

 

クリフトが歩調を合わせてついてくる。

 

 

しばらく歩いていると、前方の草むらでカサッととなにかが動くのが見えた。

なんだろう? と思って目を向けると、薄茶色の野ウサギがいるじゃないの!

 

 

「ねえ! クリフト。見てよ、あそこに野ウサギがいるわ。可愛いわね~!」

 

口を一生懸命に動かしながら目の前の草を食んでいるのがとっても可愛いわ!

 

 

「え、ええ。確かに可愛いですが、別にさっきの野ねずみと大して変わらない気が......

 

クリフトがぶつぶつなにか言っている。

 

 

「は? なんか言った?」

 

 

「いえ、なんでもありません。おっしゃるとおり、とても可愛らしい野ウサギですね」

 

クリフトは慌てた様子で言ってきた。

 

 

「そうでしょ~。可愛いわよね~」

 

 

「はい、とっても。... でも実際は野ウサギを可愛いと言っている姫さまが、1番可愛いんですけどね...

 まぁ、大きな声で言えるわけないですが…

 

クリフトがまたぶつぶつ言ってるけど、どうでもいいわ。だってクリフトの話より

ウサギさんがとっても可愛いんだもの〜。

 

 

「あ~。ウサギさんが草を食べてるのを見てたら、なんだかお腹すいてきちゃったわ。

 ねえ、お昼にしましょうよ」

 

あたしは振り返って、ティメラウスやリオスさんにも声をかけた。

 

 

2人がうなずいたので、あたしたちは近くにある大きな樫の木の下に腰を下ろした。

 

 

「あたし、早起きしていっぱい作って来たのよ。さあ、召しあがれ」

 

あたしはバスケットを開け、広げたシートの上にサンドイッチを出した。

 

 

「んじゃ、遠慮なく。... うん、うまい」

 

リオスさんが早速つまんで声をあげた。

 

 

「ふむ、なかなかの出来ですな」

 

ティメラウスも満足気にうなずく。

 

 

「姫さまの手づくりですか! まさか姫さまの手料理をいただける日が来るなんて...」

 

クリフトは手を震わせながらサンドイッチを取ると、何度も咀嚼して飲み込んだ。

 

「うん、とても美味しいです。感動です、まるで夢のようです!」

 

 

「うふふ、なんとデザートもあるのよ。ほら、ここに...… キャアアアッ!

 

みんなに褒められてすっかりイイ気分になったあたしは、さらに褒められようと思って

とっておきのデザートを出そうとした。

 

 

なんてことよ?!

あたしが用意してシートの脇に置いていた砂糖菓子にアリがたかっているじゃない!

 

 

小さなアリたちに混じって、毒々しい色をした巨大なアリもいるわ!

しかも、その巨大なアリは硬そうな大きなあごであたしを狙っている!

 

 

  毒々しい硬い表皮と鋭いあごを持つアイアンアント

 

 

「きゃああぁ!」

 

 

「姫さまっ!」

 

 

★ アイアンアント 2体 HP10 攻撃力 7 守備力 10(数字は適当です (;´∀`))

 

 

 

あたしは飛び掛かってきたアリに渾身のパンチで応戦したけど、なんて硬いの?!

あたしが殴ったぐらいじゃビクともしない。

 

クリフトが銅の剣で斬りつけると、硬い鉄の表皮に少しだけ傷が入った。

でも、すぐさまアリの逆襲にあって、クリフトは腕を噛まれちゃったわ。

 

 

「クリフトになにするのよ!」

 

あたしはクリフトが銅の剣で斬りつけた表皮の傷を思いっきり蹴飛ばした。

 

皮の硬さに足がジーンとしびれたけど、蹴られたアリは転がって動かなくなった。

 

 

もう1体のアリは、あたしたちが戦っていても知らん顔で、あたしの砂糖菓子を

ムシャムシャ食べ続けている。

 

せっかく早起きしてガンバってつくったのに、お菓子はもうボロボロに崩れていた。

 

 

「あたしがせっかくつくったお菓子をボロボロにして、許さないわよ!」

 

あたしはアリを思いっきり踏みつけた。

 

硬い表皮にガチっと跳ね返されたけど、アリの動きは少し鈍った気がするわ。

 

 

「アリの分際で姫さまのお菓子を! この野郎め、私が食べたかったのに――!」

 

あたしの蹴りを受けて動きの弱まったアリに、クリフトは銅の剣を振り下ろした。

 

アリは完全に動かなくなった。

 

 

 

パンパンと手を叩く音がする。

振り向くと、ティメラウスとリオスさんがあたしたちを見て手を叩いていた。

 

「2人とも初めての戦闘にしては、なかなかキレのあるいい動きでしたぞ」

 

 

「姫さまのあの踏みつけが効いたな」

 

リオスさんはあたしに親指を立ててくる。

 

 

あたしとクリフトは顔を見合わせた。

 

 

「好戦的だったあの1体目のアリを倒せたのは、姫さまのおかげです」

 

クリフトは満足そうに微笑んだ。

 

 

「あっ! そうだわ、クリフト。アリに嚙まれた腕は大丈夫?」

 

あたしはクリフトが1体目のアリに腕を噛まれたことを思い出して聞いた。

 

 

「これぐらい全然平気です。カイン殿下がくださったこの服は素晴らしいですね!」

 

クリフトは元気よく腕を振ってみせた。

 

 

あんなに硬いあごで噛みつかれたのに、身かわしの服ってやっぱり丈夫なのね。

クリフトの腕には血の跡がにじんでいたけど、大したケガじゃなさそうだわ。

 

 

「お菓子がかじられちゃったのは残念だけど、まだサンドイッチは残っているわ。

 気を取り直して食事にしましょう」

 

 

「はいっ!」

 

 

アリとの戦いを終えたあたしたちは、再び樫の木の下に腰を下ろした。

 

 

 

今の平和な世の中でティアたちが戦う敵は何にしようかと考えた結果、最初の敵は

ティアが手づくりしたお菓子にたかるアイアンアントになりました~。

 

ハーゴンの呪縛が消失した今、虫がたかるとか、食べ物を盗まれるとかない限り

戦いにはなりませんもんね (;´∀`)

 

 

リリザの町周辺にいるアイアンアント

サマルトリアで出現するか?」と言うツッコミは聞かなかったことにします ( *´艸`)

 

 

せっかくつくったお菓子をボロボロにされたことに、怒りの蹴りを繰り出すティア。

自分が食べたかったお菓子を食べたアリに嫉妬丸出しで剣を振り下ろしたクリフト。

 

リオスは先制したティアを褒めましたが、クリフトの怒りもきっと相当なもの ( *´艸`)

実際に数値にしたら、どちらの攻撃が大ダメージだったんでしょうね?

 

 

初戦闘に(ティアは何とノーダメージで)見事勝利したクリフト&ティア。

次はどんな敵が現れるのでしょうか?

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ