ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 137】 安住の地

眠れない夜をすごした翌朝、ナナがおれを訪ねてサマルトリアにやって来た。

 

ナナの指示で部屋のカギを開けたリオスと、好奇心でついてきたティアが去っていき

2人きりになったところで、ナナはおれを見てまぶしそうに目を細めた。

 

 

オーウェンの言葉を思い出したおれはナナの態度に激しく動揺したが、自分の身に

何が起きたのかと不安がるナナをこのまま放っておくのも可哀想に思えた。

 

「美容液を塗ると、自分の心が本来見ている姿が目の前に映し出されるらしいぜ」

オーウェンから聞いた話の概略を伝えると、どこまで伝わったのかわからねえが

ナナも少しは落ち着いたようだった。

 

 

おれもナナも「相手の姿がまぶしくて直視できない」状態から脱し、これでようやく

いつもの調子に戻れるかと思っていたところ、何の用があって来たのか尋ねたおれに

ナナは「付き合って」と言ってきた。

 

 

「あたし、あんたにお願いがあって来たのよ。ねえ、付き合って?」

 

 

「えっ?!」

 

 

つ、付き合う?!

それって…?!

 

 

「か、勘違いしないでよねっ。つ、付き合うって言ったけど、変な意味じゃないから!

 ただ、あんたに一緒に来て欲しいところがあるって言いたかっただけよ!」

 

驚いたおれを見て、ナナは顔を真っ赤にしながら慌てて言ってきた。

 

 

「あ、あぁ~。なんだ、そういうことか。おれは構わねえぜ。で、どこに行くんだ?」

 

ホッとしたような、少しガッカリしたような気持ちで尋ねると、ナナは言いにくそうに

キュッと唇をかみしめた。

 

 

「言いたくないんなら言わなくてもいいさ。別におれはどこでも付き合ってやるよ。

 じゃあ、今から支度するからよ。ちょっとだけここで待っててくれ」

 

おれは再び髪を触りながら言った。

昨夜、眠れないままベッドでさんざん転げ回ったせいか酷い寝ぐせだ。

 

 

「ねえ。待ってる間、あたしオーウェンさんのところに行ってきてもいいかしら?

 パーティーの後ですぐに帰っちゃったから、ちゃんとお話しできてないのよ」

 

ナナは部屋の入口に立ち、おれの返事を待たず今すぐ向かう勢いで言ってきた。

 

 

オーウェンに会って、美容液の効能について詳しく聞くつもりだろうか?

会ってなにを話したいのか気にはなったが、かと言ってここで止めるのも変だ。

 

 

「ああ、わかったぜ。おれも準備が出来たらオーウェンの店に行くから、それまで

 2人で話しているといいさ」

 

おれたちは、あとでオーウェンの店で落ち合おうと約束していったん離れた。

 

 

女じゃあるまいし、おれの身支度といったってたかが知れている。

ぼさぼさの髪を適当に撫でつけて、顔を洗って着替えれば終わりだ。

 

 

だが、あまりに早く行きすぎてもナナとオーウェンの話の邪魔になる。

 

「隠していても、深く愛してる証拠だ」なんて言われてるところに鉢合わせするほど

気まずいものはねえからな。

 

 

おれは時間稼ぎのため、腕をまわしたり腰をひねったりして身体をほぐした。

それから城を出ると、大げさなぐらいゆっくり歩いてオーウェンの店へと向かった。

 

 

店に着いて中をのぞくと、オーウェンと顔を赤らめたナナが座っているのが見えた。

 

オーウェンがおれに気づき、恥ずかしそうにうつむくナナの肩を軽くたたいた。

ナナは顔をあげてオーウェンの視線をたどっておれを見ると、さらに真っ赤になった。

 

 

身体が熱くなり、心臓が暴れだす。

 

オーウェンが小声でナナに何か言うと、ナナは小さくうなずいて立ち上がった。

 

ナナはおれの前まで歩いてくると、おれをじっと見つめてはにかんだ笑みを見せた。

 

 

「これから2人でお出かけなんですってね。天気も良くてお出かけ日和ですよ。

 気をつけていってらっしゃい」

 

ナナの後ろからオーウェンもついてきて、おれたちに陽気に手を振ってきた。

 

 

「ええ、行ってきます」

 

ナナは振り返り笑顔でオーウェンに向けて手を振ると、店から出てきた。

 

 

「今からだと、帰る頃には暗くなっているかもしれないわ。それでもいい?」

 

オーウェンの店を出て歩き始めたところで、ナナが心配そうに尋ねてくる。

 

 

「おれは構わないぜ。たとえ遅くなっても、ルーラでちゃんと送ってやるからよ、

 帰るときのことなんて気にすんなよ」

 

おれがそう答えると、ナナはホッとした表情を見せた。

 

 

「そんな遠くへ行くつもりなのか? なぁ、今からどこへ向かうんだ?」

 

とりあえずサマルトリアを出るため、城下町を歩きながらおれはナナに尋ねた。

 

 

「… え、えっと....。 と、とりあえず、まずはムーンペタへ行きましょう」

 

ナナはやはり口ごもっている。

 

 

そんなに言い出しにくい場所なのか?

まぁ、いい。どんな遠くだって、どんな場所にだってついていってやるさ!

 

 

おれは城下町を抜けるとルーラを唱えた。

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

 

ムーンペタに着くと「こっちよ」と言って、ナナは町には入らずに歩き出した。

 

ムーンペタの町から歩いて南下する。

 

 

ムーンペタの南は、しばらく林道が続く。

林道の両脇にある鬱蒼と生い茂った森はマンドリルの生息地で、ハーゴンの野郎が

魔力で操っていた頃は、この林道でマンドリルに襲われる者があとをたたなかった。

 

 

今でも林道を歩くと森でマンドリルの姿を見ることはあるが、今ではあいつらの方が

人間に近づかないように静かにおとなしくその場を去って行くようになった。

 

 

この道も安心して歩けるようになったな。

 

そんなことを思いながら、おれはナナの少し後ろを歩いてついていった。

 

 

ナナはさっきから無言だ。

押し黙ったまま歩き続けている。

 

大きな橋を渡ってからしばらく林道を歩くと、あたりの景色が少し開けてきた。

 

 

昼すぎにサマルトリアを出て、林道を歩いているうちに時間が経っていたようだ。

 

開けた場所に来ると、すでに太陽はだいぶ傾き西日がおれたちを照らしてくる。

 

ここから西に向かえばムーンブルクだ。

 

 

だが、ここでナナは西には向かわず、真っ直ぐ歩いてさらに南下を続けた。

 

そのまましばらく歩き続けると、目の前に小高い丘が見えてきた。

 

 

ナナは振り返っておれを見ると「ここよ」と言って、ゆっくりと丘を登り始めた。

丘を登った先に何があるのかはわからねえが、どうやらここが目的地のようだ。

 

 

おれはナナの後に続いて丘を登った。

 

登れないほどではないが勾配は若干きつく、強い西日を受けて額に汗がにじんでくる。

服の袖で汗をぬぐいながら登りきると、丘の上は意外にも広々とした場所だった。

 

爽やかなそよ風が吹いてきて、汗ばんだ身体を心地良く冷やしていった。

 

 

頂上は平坦な土地が続いている。

 

その先で東側と南側はゴツゴツした岩場になっていくが、西側は草原が続いている。

草原の先は緩やかな傾斜になっていて、ムーンブルクへ行けるようになっていた。

 

 

おれたちが登って来た道より緩くて長い坂道を下っていくと、ムーンブルク城の

目の前にある草原に行き着く。

 

丘の上から西側を見下ろすと、草原の先で青い集団がうごめいているのが見えた。

 

人の姿形まではハッキリ見えないが、ローレシア青の騎士団だということはわかる。

兵士たちの間をせわしなく歩く男は、体格からしておそらくサイラスだろう。

 

  部下たちに的確な指示を出すローレシア青の騎士団長・サイラス

 

 

何を言っているのかはわからないが、ザワザワと人が話している様子も伝わってくる。

 

 

おれたちが登って来た北側の斜面に目をやると、鬱蒼と生い茂った森が目に入った。

 

草原が続くムーンブルクとは違って、森が視界を遮ってムーンペタの町は見えない。

だが、町の入口にある門の上部と教会の塔に設置されている十字架は見える。

 

太陽がだいぶ傾き、あたりは薄暗くなっていて明かりを灯す家も出てきたのだろう。

森の向こうはぼんやりと明るく見えた。

 

 

「先日の誕生日、あたしとアルファズルは外出していたでしょ? あのときは2人で

 一緒にここに来ていたの」

 

ムーンブルクムーンペタの様子を眺めていたおれに、ナナが声をかけてきた。

おれは振り返ってナナを見る。

 

 

「アルファズルが言ったのよ『ここが良いんじゃないか?』って」

 

 

「ん? ここが良いって…? ...... あぁ~、そういうことか」

 

アルファズルの言葉の意味をナナに尋ねようとして、その前におれは気づいた。

 

 

再び視線を周囲に移した。

ムーンブルクのはるか先に、小さくぼんやりとした影だけだが修道院が見えた。

 

あの修道院にはムーンブルク王と王妃、そしてハーゴン軍と戦い城を守って死んだ

兵士たちの遺骨が安置されている。

 

 

死者の霊を慰めるため、適切な場所に埋葬して慰霊碑を立てたい。

アルファズルはどこが良いかを探して回り、この場所を見つけたのだろう。

 

 

ムーンブルクからは少し距離は長いが、緩やかな坂を登れば容易にたどり着ける。

そしてこの丘からは、ムーンブルクに住む人々の暮らしを見下ろすことが出来る。

 

ムーンペタの町からは少し歩くだけですぐに到着できる。丘の傾斜は少々きついが

階段をつくるなど整地をすれば、子どもや老人でも楽に来ることが出来るだろう。

 

丘からは森が邪魔をして町の様子は見えないが、この近さならムーンペタで暮らす

人々の息吹は充分に感じとれる。

 

 

「いいんじゃねえか。ムーンペタからも近いし、ムーンブルクの様子もよくわかる。

 ムーンペタでずっと暮らす奴、ムーンブルクが再興したら戻る奴、どちらにとっても

 この丘は最適な場所だと思うぜ」

 

なかなかいい場所を見つけたと、ムーンペタムーンブルクをそれぞれ見下ろしながら

おれはうんうんとうなずいた。

 

 

...... 返事がない

 

怪訝に思って振り返ると、ナナはうるんだ瞳で目を真っ赤にしてうつむいていた。

 

 

ちっ! つらいときは我慢しないで素直に泣けって言ってるだろうが!

 

おれはゆっくりナナに近づいていった。

 

 

 

 

実は私、カインとナナを「イチャイチャさせたい病」を発症しちゃいまして (;´∀`)

どうしたらイチャイチャさせられるかを考えた結果、この話が出来ました☆

 

 

2人のイチャイチャに欠かせないのは「背中ぐらい貸してやる」でしょヾ(*´∀`*)ノ

 

そしてカインが「背中を貸す」状況になるには、ナナに泣いてもらわないとね (^_-)-☆

と言うことでナナを泣かせました ( *´艸`)

 

 

ナナが黙ったまま1人で涙をこらえているのに気づいたカイン。

ゆっくりとナナに近づきますよ♡

 

いや~、次回が楽しみですね (≧∇≦)♡

(1人で大盛りあがり中 ( *´艸`))

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ