ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 44】 ムーンブルク城

ムーンブルクの再興に向けて人々に声をかけ、おれに出来る準備はすべて整った。

 

おれは関係者に連絡をとり、1週間後にムーンブルクへ集合するようにと伝えた。

 

1週間後、デルコンダルから呼んだ奴らに城内に残るがれきの撤去をしてもらい

おれたちはオーウェンとつくった魔法の粉を沼地に撒く予定になっている。

 

おれたちが旅をしている間に出会った奴ら全員が、一堂に会するのを見たら

ナナはいったいどんな顔をするだろうか? またボロボロに泣くかもしれねえな。

 

 

ムーンブルク城のことを考えていたおれは、ふと「あること」を思い出した。

 

全身に緊張が走る。

 

まずいぞ! もし、あのままだとしたら?

ナナが「あれ」を再び目にするとしたら...?

 

思い出したら、今はどんな状況なのか気になって居ても立ってもいられなくなった。

 

おれは急いでルーラでムーンペタへ飛び、馬でムーンブルクへ向かうことにした。

 

 


ムーンペタに着くと、町の入口の雰囲気が明るく華やかなものに変わっていた。

 

以前、ムーンペタの町の入口は丸太で組んだ門があるだけの粗末なつくりだったが

丸太は丁寧に磨かれ綺麗に色を塗られ、周囲にも色鮮やかな花が植えられていた。

 

住民に話を聞くと、ナナがリーナと一緒にムーンペタの町を整備をしているらしい。

ナナは「ここは人と人が出会う町よ」と言って、率先してはりきっているそうだ。

 

よしよし、ナナもすっかりムーンペタの町になじんで元気で暮らしてるようだな。

 

 

ムーンブルク復興に向けた記念すべき初日の予定は

まず、ナナを驚かせるため事前に全員がムーンブルクに集まってから

魔法でアルファズルに知らせ、ナナを連れてきてもらう段取りになっている。

 

精一杯、驚かしてやるつもりだ。

 

 

そんなことを考えながらナナが整備した町の門扉を抜けて町の中に入ると

おれが町にやって来たのを知って、ムーンペタの住民たちが入口に集まって来た。

 

もしここで騒ぎになってナナに見つかったら、今までやってきたことが無駄になる。

 

おれは口元で人さし指を立てて、ムーンペタの住民を騒がせないようにしながら

静かに宿屋へと向かい、店主に馬を1頭貸して欲しいと伝えた。

 


おれはムーンブルク城へと馬を走らせた。

 

かつてはハーゴンの魔力を受けて、城はどんよりとした瘴気が漂っていたが

魔力が消え去った今、ムーンブルク城の周りも穏やかで心地よい風が吹いていた。

城の跡地から少し離れた木々からは、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

 

ムーンブルクは本来、気候に恵まれた肥沃な大地が広がっている場所だった。

城の跡地も降り注ぐ暖かな陽射しを受けて、かつて毒の沼地だったところからは

わずかだが木の芽が出ていた。

 

オーウェンに見てもらわねえと確証は持てないが、木の芽が出ているのだから

城の周りに広がっている毒の沼地も、あっさり無毒化できるかもしれなかった。

 


おれはキアリーを唱えて城内へ入った。

 

ナナと合流して3人で旅を始めた頃、王子とナナと一緒にここを訪れたとき

突然ナナは「お父様があたしを呼んでる」と言ってがれきを崩し始めた。

 

おれはナナに代わってがれきを取り除き、王様の白骨死体をナナに見せつけた。

 

あのときは半狂乱になったナナを鎮めるため、やむをえずやったことだったが

王子にすがりついて泣きじゃくるナナを見ているのは胸が痛んだ。

 

あのとき、3人でムーンブルク城を訪れたのは夕暮れ時だったため

おれたちは、がれきもムーンブルク王の遺骨もそのままにして城をあとにした。

その後どうなったのかが気になって、今日はここまでやってきたのだ。

 

 

毒の沼地に囲まれて、妖気が漂うこの場所にはその後は誰も来なかったみたいだ。

ムーンブルク王の白骨死体は、あのときのままの形で残されていた。

 

あのとき、頭蓋骨には髪の毛がこびりついていたが、時の経過とともに風化して

今は頭蓋骨もただの白骨となっていた。

 

おれは一礼してから遺骨に近づき、がれきやほこりを丁寧に取り除いた。

 

ナナの眼を覚まさせるためとはいえ、失礼なことをしてすいませんでした。

ハーゴン討伐後も、長らく放置したままですいませんでした。

 

心の中でムーンブルク王に詫びながら、丁寧にほこりをはらった。

すべての骨は見つからなかったが、見つかった分だけでも埋葬してやりたかった。

 

手にしていた王杓、まとっていたボロボロのマント、ひしゃげた銀製の王冠

遺品と呼べそうなものはすべて集めて遺骨と一緒にまとめた。

 

復興作業でがれきを片づける中で、もし王妃や兵士たちの遺骨が見つかれば

王様の遺骨と一緒に埋葬して、きちんと供養してやりたい。

 

ムーンブルク城から近い場所で、ナナをいつも見守ってくれる場所に...。

 

埋葬場所については、あらためてナナやアルファズルに相談することにして

ひとまずは安全な場所に安置してもらおうと決めていた。

 

 

おれは遺骨と遺品を丁寧に布で包むと、城を出て馬に乗った。

ムーンブルクの西には修道院があったことを思い出したのだ。

 

修道院に着き、僧侶に事情を話して遺骨の安置をお願いしたところ

僧侶は快く引き受けてくれた。さらに、ムーンブルク城跡で見つかった遺骨は

すべてここの修道院で丁重にお預かりすると約束してくれた。

 

 

遺骨の安置を無事に終えて、おれはムーンブルク城へと戻って来た。

王妃の遺骨も早く見つかるといい、早く両親を一緒にしてやりてえな…

感傷的な気分で歩いていたおれは、ふいに『なにか』につまづいてすっ転んだ。

 

「うぎゃっ」

 

つまづいた『なにか』が変な声をあげた。

 

おれが起き上がって『なにか』を見ると、『なにか』も同じくおれを見ていた。

まんじゅうをつぶしたような顔、小さいが鋭い眼光がおれをとらえていた。

 

「へへっ。こんなところに来るモノ好きがいるのかと思ったらあんたでしたか。

 サマルトリアのカイン殿下。ここで会うのもくされ縁ってやつですかね」

 

「おまえ、リオスか?! なんでこんなところにいるんだ?」

 

「あっしは生粋の風来坊ですが、もともとはこのムーンブルク出身なんですぜ。

 自分の生まれ故郷に帰って来てても、なんら不思議はないでしょうよ」

 

「生まれ故郷には間違いねえが... おまえ、こんなところで暮らしてるのか?」

 

「一応、壁みたいなものがあって多少の雨風はしのげますからね。

 以前はこの城も妙な瘴気が漂って、おっかなくて近寄れなかったんですけど

 あのころと比べたら、今は天国みたいに快適なんすわ。

 ところでカイン殿下、あんたこそなんでこんなところに来たんですかい?」

 

おれはリオスにこれまでの経緯を簡単に説明した。1週間後には大勢の人が集まって

復興に向けて動き出すのだと。

 

「げげっ。てことは、おれはここを追われるってことかよ。勘弁してくださいよ」

 

「もし、おまえが復興を手伝ってくれるなら、身分は保障してやるがどうだ?」

 

「ほんとですか。あっしがこれまでムーンブルクで破ってきた法律の数々を

 すべてご破算にしてくれるっていうなら、手伝ってやってもいいんですがね」

 

「おまえは前にもそうやって、サマルトリアで犯した罪を帳消しにしただろ。

 それにサマルトリアを守るために貢献してもらったからな。別にかまわねえよ。

 おまえの罪をすべてなかったことにして、今後はムーンブルクで暮らせるように

 おれからナナにかけ合ってやるよ」

 

「さすが。カイン殿下は話が早い。で、あっしは何をすればいいんですか?」

 

「おまえ、ティメラウスを覚えているか? サマルトリアハーゴン軍と戦ったとき

 おれの護衛をしていた老戦士だ。おまえには、そいつの下で働いてもらいたい」

 

「ええ、覚えていますとも。一緒にいにしえの旅の扉をくぐったじいさんですよね。

 なんだ、あのじいさんなら無茶は言わねえだろうから、それで構わないっすよ。

 あっしも約束しますから、カイン殿下もちゃんと約束守ってくださいよ」

 

「ああ、わかってる。おまえの今後の保障については、おれにまかせとけよ」

 

「へへっ、ありがてえ」

 

リオスは再びごろりと横になると、安心した顔でいびきをかいて居眠りを始めた。

 

ふっ、まさかこんな土壇場でムーンブルク復興に新たな仲間が加わるとはな。

リオスはなにかと役に立つ。今日のうちにムーンブルクへ来て正解だったな。

 

腕を組み、含み笑いするおれを、リオスは薄目を開けて見つめていた。

 

 

 

ムーンブルク城の再建について考えを巡らせていたとき

カインと同じように「このままではまずいぞ!」って思って今回の話が浮かびました。

 

ゲームブックでは、ルプガナへ向かう道中で訪れたムーンブルク城。

 

ナナのために心を鬼にして説教するカインと、王子の胸で泣くナナ (´;ω;`)

それまでギャーギャー言い合いながら、3人で楽しく旅を続けていたのに

一転して悲しい展開になって、初めて読んだときは泣きました (´;ω;`)

 

とりあえず、今回ここで王様の遺骨を安置できて良かったな~と思います。

 

 

そして! ムーンブルクの大盗賊リオス様を登場させましたよ~ヾ(*´∀`*)ノ

決して今まで忘れていたわけではないんですよ!

 

リオスってもともとはムーンブルク」の大盗賊だったんですよね。

 

ということで、ここまでリオスの登場をあえて引っ張り

故郷に帰っていた(?)ところでカインと再会させることにしました~ ( *´艸`)

 

薄目を開けてカインを見つめているリオス。

カインの性格をよく知っているリオスですから、世の中が平和になったら

カインのことだからきっと『ムーンブルク再建』に乗り出すだろうと

最初からわかっていて、城内で待ち伏せしていたんでしょうね ( *´艸`)

 

最後にリオスも登場して、ようやく役者がそろった感じですね (^_-)-☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ