ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 103】 王子の想い

ナナの前でローレシアに帰ったふりをして、ムーンブルクにやって来たおれと王子は

オルムとレオンに会い、今年も一緒にナナの誕生日を祝おうと伝えた。

 

オルムとレオンは喜んで合意して、パーティーはどこで開くのかと尋ねてきた。

 

王子が「アルファズルを説得して、ムーンペタの教会で開けるようにする」と答えると

オルムとレオンは「期待してるぜ!」とキラキラした目で王子の手を握った。

 

 

「おいっ、おれと王子でずいぶんと態度が違うじゃねえか、お2人さんよ!」

 

完全に無視されたおれは、手刀でオルムとレオンの腕をビシビシと叩いてやった。

 

2人は王子から手を離し、おれに叩かれた腕をさすって「へへへっ」と笑った。

 

 

「ナナの誕生日を、ぼくたちみんなでムーンペタで祝いたい。ぼくなりにガンバって

 アルファズルに気持ちを伝えてみますが、それでもアルファズルが了承しなければ

 オルム、申し訳ないけどパーティールプガナになることを許して欲しい」

 

王子はオルムにぺこりと頭を下げた。

 

 

「ああ、わかってる。場所がどこになろうと、ぼうずは責任を感じる必要はねえよ。

 おまえは自分の伝えたい気持ちってやつを、あの賢者に話すだけでいいんだぜ」

 

オルムは父親のような口調で王子に言うと、王子の背中をポンポンと叩いた。

 

 

おれと王子は、今のところはムーンペタの教会で誕生パーティーをする予定だが

変更があればすぐに連絡するとオルムとレオンに伝え、ムーンブルクをあとにした。

 

 

おれたちは再びムーンペタに戻った。

 

昨夜の王子との話し合いの中で、最も長く時間をかけて話し合ったのはここだ。

「アルファズルに会いに行く途中で、もしもナナに遭遇したらどうするか?」

 

王子は「ウーン」とうなり、腕を組んだまま長く考え込んでいた。

 

おれも同じ体勢で考え込んだ。

 

ここで下手な言い訳なんかしてナナに怪しまれると、これまでのすべての計画が

台無しになる可能性があるからな。

 

 

しばらく考えていると、ふと思い出した。

 

「これだっ!」

 

おれが声をあげて指をパチンと鳴らすと、王子はビックリして飛び上がった。

 

 

「ああ~、ビックリした~。なんだい? 何かいい案を思いついたのかい?」

 

「へへっ。悪りい、悪りい。思い出したんだよ。なぁ、おまえも思い返してみろよ。

 そもそも、おれたちがサマルトリアラダトームをまわってきた理由はなんだ?」

 

 

王子はキョトンとした顔で答えた。

 

「うん? きみのお父上とラダトーム王に会って、紋章の保管方法を伝えるためだろ?

 それが何だと言うんだい?」

 

「ははっ。おまえ、肝心なことをすっかり忘れてるな。かつて、紋章を保管していた

 ムーンブルク城があんなことになっちまったから、適切な保管先が見つかるまで、

 紋章はアルファズルにムーンペタの教会で厳重に保管してもらっているだろう?」

 

 

「ああ、そうか! ぼくたち3人で話し合って、今後の保管方法を決めたってことを

 今、管理してくれているアルファズルにも伝えておく必要があるってことか!」

 

王子は納得した様子で、右手でこぶしをつくるとポンッと自分の左手を打った。

 

 

「へへっ、そのとおり! アルファズルにも話しておかなきゃいけねえと思い出して

 途中で引き返して来たと言えば、ナナも怪しむことはないだろ」

 

「でも、ナナが『あたしも一緒に行くわ』って言い出したらどうするんだい?」

 

「へんっ。アルファズルに会いさえすれば大丈夫さ。あいつなら、おれとおまえが

 別に話したいことがあると察して、上手く対処してくれるはずだぜ」

 

「えっ、アルファズルってそんなことも出来るの? へぇ~、すごい人なんだね!」

 

王子の言葉におれは内心苦笑した。

 

アルファズルはありとあらゆる呪文を扱えるまさに大賢者で、あの性格さえなければ

おれの憧れになる存在だが、王子の中で奴はずっと過小評価されているらしいな。

 

「まぁ、これでうっかりナナと遭遇したとしても、なんとかなるだろう」

 

おれたちは最悪の事態に備えての対処法が見つかり、ニッコリと微笑みあった。

 

 

途中でバッタリ遭遇することを恐れて、昨夜は王子と話す言葉まで入念に考えたが

おそらくナナは、一晩中ミリアとしゃべり続けて今は疲れて寝ているのだろう。

 

おれたちはナナに会うこともなく、すんなりと教会の奥の部屋へとやって来た。

 

奥にある小部屋では、アルファズルとリーナが向かい合って本を読んでいた。

 

 

「おにいちゃん!」

 

顔をあげておれたちを見たリーナは、嬉しそうにおれたちのところへ駆け寄って来た。

王子は後ろを振り返り、「シーッ」っと人差し指を立ててリーナを抱き上げた。

 

 

おれたちの様子を静かに見つめていたアルファズルは、弟子を近くに呼び寄せると

「大事な修行があると言って誰も通すな。ナナ姫にも同じように伝えよ」と命じた。

 

 

そして、アルファズルはおれたちを近くに招くと、座るように勧めながら言った。

 

「ナナに聞かれたくない話があるのだろう。人払いをしたから、安心して話すと良い」

 

 

王子が驚いた顔でおれを見てきた。

「だから言っただろ?」とばかりに、おれは王子にウインクしてやった。

 

 

説得は王子にまかせることにして、まずはおれがここに来た目的を話すことにした。

 

「もうすぐ、ナナの誕生日なんだ。昨年は、ちょうどザハンに立ち寄った時期で、

 タシスン船長の妻に協力してもらって、おれたち2人とオルム船長、レオンとで

 ナナに内緒でパーティーをしたんだよ。それで、また今年も一緒に祝ってやりたいと

 おれたちの間で話が出てて、今年はムーンペタで祝いたいと思っているんだ」

 

 

おれの言葉に、アルファズルは片方の唇の端を吊り上げて皮肉たっぷりに笑った。

 

「ナナの誕生日を言い訳にして、飲んだり食ったりしてみんなで騒ぎたいという話か。

 フッ、くだらないな。誕生日というのは、自分が生を受けたことに感謝する日であり

 自分の命をつないでくれた両親や先祖へ感謝の祈りを捧げる日だ。それがいつしか

 お祝いという名のもとに、ただ浮かれて騒ぐ日になったのは、嘆かわしいことだな」

 

予想通りの反応が返ってきて、おれと王子は顔を見合わせて肩をすくめた。

 

 

王子はおれを見て小さくうなずくと、ふーっと大きく息を吐いて話し始めた。

 

 

「アルファズル、ぼくの話を聞いて欲しいムーンブルク城がハーゴンに落とされ

 ぼくとカインはナナの情報を求めて、ここムーンペタにやって来ました。町に着いて

 ここで聞いた話は、どれもこれも絶望的な話ばっかりで。カインには口が裂けても

 言えなかったけど、ぼくは内心では『ナナはもう生きていないんじゃないか』って

 絶望感を持っていました」

 

静かに淡々と話し始めた王子を、アルファズルは黙ったままじっと見つめていた。

 

 

ムーンブルク城に行って、ナナは魔法で犬にされているけど生きていると知って

 ようやく希望が見えた。ぼくたちは2手に分かれて、カインはムーンペタに戻り

 犬になっているナナを見つけ出し、ぼくは魔法を解く『ラーの鏡』を探しました」

 

王子はここで再び、ふーっと大きくひと息つくと、ゴクリとつばを飲みこんだ。

 

 

「ようやく『ラーの鏡』を見つけて、ムーンペタの町に戻ったぼくが目にしたのは...

 小犬を抱えて、マンドリルの大群から必死で逃げるカインの姿でした...」

 

初めて聞く話なのだろう。リーナは驚いた顔で、おれと王子の顔を交互に見ていた。

 

 

「もう逃げきれないと悟ったカインは、最後に小犬をぼくに託して、ぼくの目の前で

 マンドリルに踏みつけられて死んでしまった。ぼくはカインの死を無駄にしないため

 小犬のナナを守りきろうと思いながらも、反面では絶望していました...」

 

心なしか、王子の目が潤んでいるように見えた。王子は首をブンブンと振った。

 

 マンドリル 7体」には絶望しかないですよね (´;ω;`)

 

 

「やっと会えると思ったのに。ナナを人間に戻してあげることも出来ずに、ぼくたちは

 3人ともここで絶命してしまうんだ。ぼくがそう覚悟したとき、助けてくれたのが

 アルファズル、あなたでした」

 

王子は真っ直ぐアルファズルを見つめた。

 

 

「あなたがぼくとカインを蘇生させ、マンドリルを正気に戻して森に帰してくれたから

 ぼくたちは助かりました。襲われたのがここ『ムーンペタ』だったから、ぼくたちは

 こうして生きてナナに再会できました。ナナを無事に人間の姿に戻すことが出来て、

 3人でハーゴンを倒そうと誓い合えたのも、ここムーンペタです。

 ぼくたち3人をつなげてくれた大事な場所・ムーンペタで、ナナが生きていること

 無事に18歳の誕生日を迎えられたことを、仲間たちみんなで喜び合いたい。

 ぼくの願いはそれだけなんです」

 

アルファズルも、王子と同じような真剣なまなざしで王子の瞳を見つめていた。

 

 

 

王子の長ゼリフ回 (;´∀`)

合間に周りの様子も入れてみましたが、長い1人語りになっちゃいました (;´∀`)

 

ただ、(長ゼリフなだけあって ( *´艸`)) 王子の純粋で真っ直ぐな想いは、しっかりと

アルファズルの心に届いたでしょう☆

 

 

ゲームをプレイしている私たちからすれば、最初から3人旅になることはわかっていて

「いや~、さがしましたよ」のサマル王子のように、どこかにいるムーン王女を

見つけて仲間にすればいいだけ。

 

話しかけると「くーん、くーん」と鳴いて、仲間のように後ろをついて歩くワンコが

「おそらくムーン王女だろうな~」なんて思いながら、ゲームを進めていきますが

 

現実で、王子と同じ体験をしたら?

 

 

以前、ナナが涙ながらに語りましたが

【創作 54】3人の絆 - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

今回は、王子の口から語られる『ムーンペタでのマンドリル戦』 (´;ω;`)

 

 

「ナナはもう生きていないかも...」という絶望から、希望へと大きくシフトしながら、

念願の再会までようやく「あと1歩」というところで絶体絶命の状況に追い込まれて...

 

左手にはカインから命懸けで託された小犬のナナを抱えながら、カインが死ぬのを

目の当たりにしている王子こそが、誰よりも1番「3人で生きて再会できた奇跡☆」

熱く語れるだろうと、今回は王子を語り手にしてみました (*´ω`*)

 

 

3人にとって奇跡の地『ムーンペタ』でナナが元気に生きていることを祝いたいだけ。

 

これで心が動かない人はいないでしょうが、果たしてアルファズルの答えは?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ