ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 53】カインに出来ること

王子の異名を払しょくするために考えたおれの策は、ナナの協力あってのものだったが

ナナにはムーンブルクのことを明かせないことを思い出し、思わぬ形で頓挫した。

 

おれは救いを求めて、アルファズルに会おうとムーンペタの町までやって来た。

 

 

「カイ~ン!」

「おにいちゃ~ん!」

 

教会の前の花壇にナナとリーナがいた。おれの姿を見つけて、笑顔で声をかけてくる。

 

思わず腕が上がり、おれは知らないうちに手を振っていた。

 

リーナが笑顔で駆け寄ってくる。

 

「リーナ! 大きくなったな!」

 

おれはリーナを抱き上げて肩車してやった。リーナは「うふふ」と笑っている。

そんなおれたちの様子を、少し離れたところからナナも笑顔で見つめていた。

 

ナナにもなにか言った方が良いと思ったが、作戦についてなにも伝えられないとなると

かける言葉が見つからなかった。

 

 

こちらに近づいてきたナナは、おれのちょっとした表情の変化に気づいたようだ。

怪訝な顔をして尋ねてくる。

 

「カイン、どうしたの?

 なにか困ったことでもあったの?」

 

おれは正直にうなずいた。

 

「ちょっとな…。困ったことが起きてよ、アルファズルに相談しに来たんだ」

 

ナナが心配そうな顔で見つめてくる。

 

「ナナ、悪いんだけどさ、アルファズルと2人だけで話をさせてもらえねえか?」

 

ナナの真っ直ぐな視線がつらくて、おれはナナから目をそらしながら言った。

 

「… ええ、わかったわ」

 

ナナは小さくうなずくと、おれの肩に乗っているリーナに笑顔を見せた。

 

「リーナちゃん、おにいちゃんはおじちゃんと大事なお仕事があるんだって!

  あたしたちはお仕事の邪魔にならないように、ここでお花の手入れを続けましょう」

 

「はーい」

おれが身を屈めると、リーナは素直におれの肩から降りて、ナナの隣へ走って行く。

 

おれはリーナの頭をなでてやると、そのまま教会の入り口に向けて歩き出した。

 

「お仕事ガンバってね! おにいちゃん」

 

リーナの声に振り返って笑顔で手を振ると、おれは教会の中へと入った。

 

 

 

おれを出迎えたアルファズルは、黙っておれをいつもの小部屋へと案内した。

 

おれは、自分が考えた計画を話し、デルコンダル王と王子の説得には成功したが

ムーンブルクのことを明かせないため、ナナに話が出来ずに困っていることを伝えた。

 

腕を組んで軽く目を閉じ、おれの話を黙って聞いていたアルファズルが目を開けた。

 

「ナナにムーンブルクのことを打ち明ける件に関しては、わしも同じく反対だ。

 ムーンブルクのことでは、あまりにも多くの人たちがすでに動いているからな。

 おまえたちの仲間であれば、ナナに明かした事情を話せば理解してくれるだろうが、

 おまえたちのことをよく知らない連中にとっては『王子のせいで台無しになった』

 そんな印象を与えてしまうからな。今の状況で、王子が不利になるようなことは

 あまり起こさない方が良いだろう」

 

「ああ、確かにあんたの言う通りだよ。じゃあ、いったいどうすりゃいいんだよ?」

 

 

アルファズルは鋭い目でおれを見て言った。

 

「ところで、カインよ。おまえは持っているのか?

 そのステッカーとやらを」

 

「ああ? ステッカー? 持ってねえよ、そんなもん」

 

 

おれの答えに、アルファズルは片方の唇の端をつり上げてフッと笑った。

 

「そのステッカーが大事だと、それほど強く言いながら

 実際、おまえは持っていないとはな。これぞまさに

『策士、策に溺れる』というやつであろう」

 

「なんだとっ!?」

 

思わず立ち上がったおれを、アルファズルは右手を掲げて制した。

 

 

「まぁ、落ち着け。カイン。わしはおまえを怒らせるために言ったわけではない。

 おまえが策にこだわるあまり、1番大事なことを忘れているような気がしてな」

 

「1番大事なこと?」

 

おれは椅子に座り直した。

 

「おまえに質問がある。以前『ムーンブルク城が落城する』という、大きな苦難に

 おまえたちが打ち勝ち、ハーゴンを討伐できたのはどうしてだと思う?」

 

唐突な質問に言葉を失った。

「なぜ、ハーゴンを討伐できたか」だと?

 

f:id:john0910:20171230051912j:plain 3人で討伐したハーゴン



答えに窮しているのを見ると、アルファズルはおれをしっかり見据えて話を続けた。

 

 

「素晴らしい『策』があったから、ではないだろう? 

 ロト3国の結束がすべてに打ち勝つほど強かったこと。

 そしてなによりも、おまえたちロトの子孫3人の心が

 固い友情で結ばれていたからではないか?」

 

 

なにか素晴らしい策があったからではなく、ロト3国の結束の強さと、おれたち3人の

絆の深さがあったから、ハーゴンを倒せた…

そうか、そういうことか!

 

おれが忘れかけている1番大事なこととは、これのことだったのか!

 

 

「気づいたようだな、カインよ。大きな苦難の前には、

 別に良策など必要ないのだ。苦難を乗り越えるために

 大事なのは、仲間を信じる気持ち、大切に思う気持ち

 お互いに助け合い、支え合う気持ちだけなんだよ」

 

おれは静かにうなずいた。

 

 

「確かに、ナナにはおまえの『策』は話せない。だから、不安になるのもわかる。

 だが、ナナにおまえの『想い』を話すことは出来る。

 今は、ローレシア国難だ。対策を考えたくなるのもわかるが、1番大事なのは

 おまえたち3人が、心を1つにして立ち向かうことだ。

 ナナにその『想い』を伝えることは、今のおまえにだって出来るはずだ

 そして、今はただ、おまえの真剣な想いだけ伝えれば充分だよ、カイン。

 おまえの真剣な想いを理解したナナはきっと、おまえの

 望むように動いてくれる。大切な仲間の心をもっと

 信じてやるんだ、カイン

 

 

アルファズルの言葉が心にしみる。

確かに、おれは人を思い通りに動かすことにこだわりすぎていたようだ。

 

真剣な『想い』さえ伝えれば、相手はきっとこちらの想いに応えてくれる。

もっと仲間を信じろってことか。

 

「アルファズル、ありがとよ! おかげで目が覚めたぜ」

 

 

 

ムーンブルクの再建についてナナに明かせない以上、現段階ではナナに

「ああして欲しい、こうして欲しい」と具体的に指示を出すことは出来ない。

 

けれど、「共に乗り越えよう!」「3人で心を1つにして立ち向かおう!」

この気持ちは伝えることが出来る。

 

そして、気持ちさえ1つに結ばれていれば、どんな苦難だって乗り越えられる!

カインたち3人は、心を1つにすることでハーゴンの討伐さえも出来たのだから。

 

アルファズルの熱い言葉で、策に溺れていたカインも目が覚めましたね (*´ω`*)

私自身も、このアルファズルの言葉は、書きながらかなりグッときました!

(お得意の自画自賛がここで久しぶりに出ましたよ~ ( *´艸`))

 

「アルファズルに相談しに行く」という話の流れがあったので、この言葉は

アルファズルからの熱いメッセージになりましたが、話している内容だけ見たら

カイン父(サマルトリア王)の言葉としても良かったかな~と感じました。

 

サマルトリア攻防戦の前に、カイン父がカインに語った言葉と似ている気がして。

「血筋より、努力と人の和が大事」というカイン父の言葉は心に響きましたよね☆

 

アルファズルに相談するという流れではなく、「息子の窮地に父が助言する」

そんな展開になったら、また面白かったかもしれないな~♪ と思いました。

 

ただ、「策士、策に溺れる」は、アルファズルが言うから光る言葉ですよね ( *´艸`)

なんせ、アルファズルは以前「敵を知りおのれを知らば百戦危うからず」と言って

カインをキレさせましたから ( *´艸`)

 

そう言った意味では、アルファズルの言葉で結果的に良かったのかなと思います。

「策士、策に溺れる」が浮かんだときは、会心のいちげき! と思いましたよ (≧∇≦)

 

さて、細かい策を巡らすよりも、互いを想う心が大事だと思い出したカイン。

次回、ナナと真剣に話しますよ (*´ω`*)

 

ちなみに余談ですが、冒頭でナナに声をかけられたカインが思わず手を振ったのは

サマルトリア攻防戦の後、海底洞窟前でナナたちに合流したシーンの再現です (*´ω`*)

ナナに「カイ~ン!」と呼ばれると、いつでも無意識に手を振っちゃうカイン ( *´艸`)

3人の再会シーンを思い出しながら、楽しんでもらえると嬉しいです (≧∇≦)♪

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ