ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 138】 抱きしめたい

ナナから「一緒に来て欲しい場所がある」と誘われたおれは、ナナに付き合って

ムーンペタの南にある丘を登った。

 

 

ムーンペタから南下して林道を抜けたすぐにある小高い丘。丘に登って西側を見ると

ムーンブルクの様子も見えた。

 

両方の町のほぼ中心にあるこの丘の頂上にある平坦な土地は、ムーンブルクで戦死した

戦没者たちの慰霊地にピッタリだ。

 

 

おれは「ここが良いんじゃないか」と言っていたというアルファズルの言葉に同意して

うなずいたが、背後で聞いているはずのナナの反応がなかった。

 

 

不審に思って振り返ると、ナナは瞳に涙をいっぱいためてうつむいているではないか!

 

 

 

「おいっ」

 

おれは人差し指でナナの額を軽く突いた。

 

 

「つらいときは我慢しないで素直に泣けって何度も言ってるだろ?」

 

ナナの顔をのぞき込むようにして言うと、ナナは黙ったまま小さくうなずいた。

 

 

うつむいて涙をこらえるナナを見ていると、このまま抱きしめたい衝動にかられた。

今ここでおれが抱きしめたら、ナナはどんな反応をするだろうか?

 

へっ、どうせ「なにすんのよ、エッチなんだから」とまた引っ叩かれるんだろうな。

 

「エッチなあんたなんかと一緒にはいられないわ!」と怒って、このまま丘を下りて

ムーンペタに帰っちまうかもしれねえぞ。

 

 

そうだ。下手なことはするべきじゃねえ。

ナナを怒らせることはやめておこう。

 

 

「背中、貸してやろうか?」

 

おれは抱きしめる代わりにナナに尋ねた。

 

 

ナナは再び小さくうなずく。

 

 

おれはナナに背を向けた。

 

ムーンブルクの様子が視界に入る。

あたりはかなり薄暗くなり、ムーンブルクでは数か所でたいまつが灯されていた。

 

 

今日の作業はもう終わりなのだろう。

たいまつのそばに集まり、ゆったりくつろいでいる青の騎士団の兵士たちが見えた。

 

兵士たちの様子をぼんやり眺めていると、ナナがおれの胸元に腕をまわしてきた。

 

 

ナナに背中を貸すのは2回目だ。

 

前回は、夜中にいなくなったナナを捜して海岸で泣いているのを見つけたときだった。

 

あのときは2人とも砂浜に座っていたこともあってか、ナナはおれのわき腹あたりに

遠慮がちに腕をまわし、おれの背中に軽く額を押しつけるようにして泣いた。

 

 

わき腹のあたりにまわされたナナの腕

背中に軽くあてられたナナの額

 

あのときは、この2箇所でナナのぬくもりを感じていたことを思い出す。

 

 

だが、今のナナはおれの胸元に腕をまわすとキュッと締めつけてきた。

背中の感覚はハッキリしないが、おそらくナナは頬をおれの背中につけている。

それだけじゃねえ。腕の締めつけ力に比例して、背中全体にナナの感触が広がる。

 

 

遠慮がちにそっとくっついて寄り添ってきた前回とは大きく異なり、今は完全に

後ろから抱きつかれている状態だ!

 

 

心臓が激しく高鳴る。

この音もすべてナナに聞かれているだろうと思うと、ますます鼓動が激しくなった。

 

 

背中にひんやりとした感覚がある。

 

おれの背中に頬をつけて泣くナナの涙が濡らしたせいだとわかったが、その涙もすぐに

乾かしてしまうほど、激しい動悸でおれの身体は熱くなっていた。

 

 

くそっ! こんなことになるなら、さっき抱きしめちまえば良かったぜ!

 

 

腕を後ろにまわして抱きしめ返せない、自分の身体の構造が恨めしかった。

 

何とかこのまま抱きしめられないかと腕を後ろにまわそうとしたが、ナナがモゾモゾと

反応したのでおれは慌てて動きを止めた。

 

 

抱きしめ返せないことより、ここで下手に動いてナナが離れてしまう方が嫌だからな!

 

身動きがとれないもどかしさを感じながらも、おれはそのままじっとしていた。

 

 

おれはナナを抱きしめるのを諦め、再びムーンブルクへと目を向けた。

 

 

待てよ? ここからムーンブルクが見えるように、ムーンブルクからもこっちの様子が

見えるんじゃねえか?

 

不安が頭をよぎったが、これだけ暗いとおそらく向こうからは何も見えないだろうし、

たとえ何かいるとわかったとしても、それがおれたちだとは気づかれないだろう。

 

きっと大丈夫だ。おれは安心して、再び青の騎士団の兵士たちをぼんやり眺めていた。

 

 

この体勢になってから、いったいどれぐらい時間が経ったのだろう?

太陽はすっかり沈み、おれたちがいる丘の上にも夜のとばりが下りていた。

 

 

ナナは、まだ泣いているのか?

 

少し前まで背中に感じていた冷たく湿った感覚は薄れていたが、だからと言って

ナナがもう泣いていないとは言い切れない。何も感じないのはそれだけおれの身体が

熱く火照っているからかもしれない。

 

 

ナナはおれから離れる気配がない。

それどころか、さっきよりも頬は強く押しつけられ、胸元にまわされた腕の締めつけも

きつくなったような気がして、おれは頭がくらくらしてきた。

 

 

泣くとしても、長すぎないか?

実はもう泣き止んでいて、ただ抱きついていたいだけとか?! ...... いや、まさかな。

 

再び動悸が激しくなってくる。

 

 

 

動悸を鎮めるため、何とか意識をナナからそらそうと視線を少し上に向けると、

大きく輝く星が2つ並んで瞬いていた。

 

この2つの大きな星を取り囲むように、小さな星が周囲でいくつも瞬いている。

 

 

星を眺めながら、あることを思い出した。

 

ガキの頃、おふくろはおれを産んですぐに亡くなったと知っておれは眠れなくなった。

 

おれがベッドで泣いているのを見た王妃は、おれを抱き上げてバルコニーに出た。

そして、王妃はひときわ大きく輝く星を指差して言ったのだ。

 

 

「見てごらん、カイン。あの綺麗なお星さまはあんたのお母様だよ。あんたのお母様は

 美しいお星さまになって、いつもこうやってあんたを見守っているんだよ」

 

王妃が指差した星は、キラキラ輝きながら優しい光を放っていた。

 

 

輝く大きな星の光を眺めているうちに、いつしかおれの涙は止まっていた。

 

キラキラ瞬く星の輝きと、おれを抱き上げている王妃の腕のぬくもりに安心して

おれは王妃の腕の中で眠ったのだ。

 

 

「死んだ人間は星になって、生きてる奴らを空の上から見守っている」

 

幼くして身近な人間の死に直面した子どもに向けて言うなぐさめの言葉。

所詮は子ども騙しだ。

 

 

成長するにつれ、おれはおとぎ話のような言い回しに否定的な思いを抱いていたが

今、空を見上げて「王妃のあの言葉は本当かもしれない」と思い直していた。

 

 

空に浮かぶ2つの大きな星。

大きな星を囲むように瞬く無数の星。

 

ムーンブルク王と王妃。

そして、ムーンブルクで亡くなった多くの人々がナナを見守っているように見えた。

 

キラキラと輝くたくさんの星たちの優しい光がナナを照らしている。

 

 

思いがけず、鼻の奥がツンとする。

 

ちょうどそこに風が吹いてきた。

先ほど丘に登って来たときとは違い、太陽が沈んだ後の風は冷たく感じられた。

 

ナナの身体からは甘い香水の香りが漂ってきて、おれの鼻腔をくすぐっている。

 

 

どれが原因になったのかわからねえが、鼻の奥が急にムズムズしだした。

 

 

これはマズい。せっかくのいいムードを台無しにしてしまうぞ!

やべえ、こらえろ!

 

なんとか耐えようとしたが無理だった。

 

 

「へっくしょん!」

 

おれは大きなくしゃみをした。

 

 

ナナが驚いた様子でおれから離れた。

 

 

くそっ! いいところだったのに!

 

 

「やだ。ちょっとあんた、また風邪ひいたんじゃないの?」

 

ナナが心配そうに聞いてくる。

 

 

「けっ、風邪なんて引いてねえよ。それに『また』ってなんだよ。風邪引いたのは

 1回だけじゃねえか。人を弱っちい奴みたいに言うなよな!」

 

これぐらいで風邪を引くような弱い奴だと思われたことにおれは毒づいた。

 

 

「ふん、大丈夫だって言いながら、次の日に高熱出して寝込んだのは誰よ。あのとき

 誰が看病してあげたと思ってんのよ。あぁ、そうね。あんたは弱っちい奴じゃなくて

 繊細に出来てるんだったわね、ふふ」

 

ナナはからかうように笑った。

 

 

「てめえ、おれを馬鹿にしやがって!」

 

おれがナナをなぐるマネをすると、ナナはきゃあきゃあ言いながら駆け出した。

 

 

「ねえ! とっても繊細なカイン殿下、そろそろ帰りましょうよ。ここに長居してまた

 明日の朝になって繊細なカイン様が高熱出しちゃったら困るもの、きゃはは」

 

ナナは楽しそうに笑いながら、軽やかに坂道を駆け下りていく。

 

 

「おい、気をつけろよ! 暗いのにそんなに走ったりしたら危ねえぞ!」

 

暗い中を走ってナナが転ぶんじゃねえかと心配になって声をかけた。

 

 

「うふふ、大丈夫よ。全然暗くなんかないわ。だってほら、見てよ!」

 

ナナは嬉しそうに空を見上げた。

 

 

「こんなにた~くさんのお星さまがあるんだもの。暗くなんてないし、大丈夫!」

 

見上げるナナの瞳に星が写り、ナナの笑顔はひときわ輝いて見えた。

 

 

楽しそうなナナの声に呼応するように、空に浮かぶ星々もキラリと輝きを増した。

 

 

「よし、じゃあ帰るぞ!」

 

おれも笑ってナナを追いかけた。

 

 

 

 

ナナはオーウェンの店を訪れて、きっとオーウェンから「自分に素直になりなさい」

言われたんでしょうね (*´ω`*)

 

だから、素直な気持ちでカインにぎゅっとバックハグしてきましたよ~(≧∇≦)♡

 

 

対するカインは、やっぱりまだ自信がないみたい...(あぁ、もどかしい~ ( *´艸`))

「抱きしめたい、でも...」と肝心なところでためらって、背中を貸したは良いけれど

ナナにバックハグされたら「くそ~、抱きしめとけば良かった~!」と後悔 ( *´艸`)

 

腕を後ろにまわして抱きしめようとするけど、それでナナがモゾモゾしたら怖くなって

慌てて動きを止めてじっとするとか、いじらしくて可愛いですよね~ (*´ω`*)♡

 

 

ムーンブルク王と王妃、そしてたくさんのムーンブルクの兵士たちを思わせる

満天の星に囲まれたカインとナナ♡

 

2人でキャッキャしながら、イイ雰囲気でムーンペタに帰りますよ〜ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

実は、この先は完全にノープラン

どう話を続けようか… (;'∀')

 

 

 

とりあえず、次回もお楽しみに〜♪