ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 112】天才料理人

ナナの誕生日におれが贈る花は、王妃やリオスの協力を得て見事に完成した。

 

一方で、ずっと部屋にこもりきって2人だけで何かを準備しているティアとリーナが

非常に気になったおれは、恥を忍んで妹の部屋をこっそり覗きに行こうとしたところ

偶然、同じタイミングで部屋から出てきたティアに見つかり、ティアとリーナから

こっぴどく叱られる羽目になった。

 

 

ひとしきりおれに説教をして、ティアとリーナはようやくおれを解放してくれたが

ティアはそのまま練兵場へ行き、若い兵士を部屋の見張り番として連れて来た。

 

ちくしょうっ! あいつらめ、おれを犯罪者みてえな扱いしやがって!

 

 

ただ、あいつらが警備兵を置いてしまった今となっては、部屋を覗くのはもう無理だ。

リーナの言うとおり「プレゼントの中身は当日までのお楽しみ」ってことだ、くそっ!

 

ふんっ、あんなガキ共のプレゼントを、おれ様がいちいち気にしていても仕方ねえ。

おれは誕生パーティーの成功だけを考えて、やるべきことをやるだけだ。

 

強がりにも思えたが、おれは無理やり気持ちを切り替えた。

 

 

ナナの誕生日がいよいよ明日にせまって、おれはやり残していたことを思い出した。

 

まずい! パーティーの会場は決まったが、肝心の料理を準備してねえじゃねえか!

 

 

今年は教会での開催ということもあり、最初から派手に飲み食いする気はなかったが、

簡単な軽食ぐらいは欲しいところだ。

 

 

よしっ、となるとあいつだな。

 

おれは軍医待機所へと向かった。

サンチョは今日も暇そうで、皿にのったまんじゅうを美味そうにほおばっていた。

 

  毎日、常にもぐもぐタイムばっかりのサンチョ ( *´艸`)



「ったく! おまえは見るたびに、いっつもなんか食ってるよな」

 

おれは笑いながら待機所の戸を開けた。

 

 

「いやだな、坊ちゃん。たまたまですよ! たまたま、何かを食べているときに限って

 坊ちゃんに見られているんですよ。それより、今日はどうしたんですか? どこか

 具合でも悪いんですか?」 

 

サンチョはえへへと笑ったが、その後は医者らしく真面目な顔で尋ねてきた。

 

 

「いや、なんともねえよ。今日はおまえにちょっと、頼みたいことがあって来たんだ。

 サンチョ。今からおれと一緒に、ムーンブルクまで行ってくれねえかな?」

 

おれは明日がナナの誕生日であること、ナナの誕生パーティーのためにケーキや

料理を準備したいことを告げた。

 

 

「そのためにムーンブルクへ? ここから何か持って行くのではダメなんですか?」

 

サンチョが尋ねてきた。

 

 

サマルトリアでパーティー料理を用意したとなると、いろいろ問題も出て来るだろ?

 王子はローレシア王だぜ。1国の王が参加するパーティーローレシアを差し置いて

 サマルトリアがでしゃばるって言うのも、国家間の溝につながることだからな」

 

 

「はぁ~、なるほど。国同士のお付き合いもいろいろと大変なんですね~」

 

サンチョは腕を組み、わかったような顔でうんうんと大きくうなずいてみせた。

 

 

ムーンブルクは今、城の復興作業をする奴らのために、各地から支援物資がどんどん

 送られてきているだろ? 特に食い物なんて、食べきれねえぐらいの量が届いている。 

 それをナナのために少々拝借するといっても、誰も文句は言わねえし、国同士の

 もめごとにもならねえからな」

 

 

「ふむふむ。それはわかりました。ただ、私が持ち場を離れてムーンブルクに行って

 モルディウス卿に見つかったらどう言うんです? きっと面倒なことになりますよ」

 

 

「へへっ、大丈夫。それに関してはおれにも考えがあるんだ。万が一、モルディウスに

 見つかったときは、おまえはおれの言うことにうなずいていればいいさ。とにかく

 時間がもったいねえ、行こうぜ」

 

おれは、まだ不安そうな表情のサンチョの腕を強引につかみ、外へと連れだした。

 

 

 

「なるべく、誰にも見られないうちに、さっさと食料を調達したいですね」

 

食料保管庫に向かうおれの背後に隠れながら、サンチョはおどおどとつぶやいた。

まぁ、隠れるといってもサンチョのデカい図体が隠れるはずもなかったが。

 

 

「へっ、大丈夫だって! 誰かに見つかっても、堂々と理由を話せばいいんだからよ」

 

おれは、おれの肩につかまりびくびくするサンチョを引きずるようにして歩いた。

 

 

保管庫に着くと、おれはサンチョを促し適当な食材を選ばせた。

 

早く立ち去りたいのだろう。

サンチョは今まで見せたことのない素早さで、食材を手に取り選別を始めた。

 

 

「盗っ人め! 見つけたぞ。おとなしく観念しろ」

「悪い奴め! とっ捕まえてやる! 覚悟しろ!」

 

背後から大きな声がして、サンチョはビクンとその場に飛び上がった。

 

 

「おい、おまえら。サマルトリアの善良な料理人を驚かすんじゃねえよ!」

 

おれは笑いながら振り返った。

 

 

「善良~? サマルトリアは皇太子が皇太子だからなぁ、怪しいもんだぜ」

 

レオンはおれを見てニヒヒと笑った。

 

 

  お久しぶり(?)のレオン棚橋さん (*´ω`*)

 

 

「えっ! お、お友達ですか?」

 

サンチョは山積みになった野菜の陰から、おどおどした様子でおれに尋ねてきた。

 

 

「ああ。こいつはおれの仲間のレオンだ。隣にいるのはルプガナの船長・オルム。

 2人とも気のいい奴だから安心しな。こっちはサマルトリア緑の騎士団の軍医で、

 腕のいい料理人でもあるサンチョだ」

 

おれはそれぞれを紹介した。

 

 

「おれらが気のいい奴なのは間違いねえけどよ、勝手に保管庫に入り込んだ奴には

 統率者として事情を聞かせてもらうぜ。ここでなにしてるんだよ?」

 

レオンはおれに尋ねてきた。

 

おれは明日のナナの誕生パーティーの料理をサンチョにつくってもらおうと、ここに

食材を取りに来たことを話した。

 

 

「ああ? 明日のパーティーの料理だって? その件なら、もう解決済みだぜ」

 

オルムが横から口を挟んできた。

 

 

「解決済み? どういうことだ?」

 

おれが尋ねると、オルムとレオンは顔を見合わせて、これまでの経緯を話してくれた。

 

 

オルムとレオンは、おれたちから何の連絡もないため、当初の予定通りムーンペタ

パーティーが開かれるのかを確かめようと、数日前にアルファズルを訪ねたらしい。

 

 

「パーティームーンペタで出来ることは確信していたんだけど、念のための確認と

 ほら、おれたちは大人だからよ。礼のひとつぐらい言っておこうと思ってな」

 

 

「アルファズルには『礼には及ばん』とあっさり言われちまったけどな。そして

 おれたちが帰ろうとしたときに、ムーンペタの住民たちが教会を訪ねてきたんだ」

 

 

ムーンペタの住民が?」

 

 

「ああ。その住民たちは、もうすぐナナ姫の誕生日という話をどこかで聞きつけて、

 姫のためになにか出来ることはないかって、アルファズルに相談しに来たんだ」

 

 

「それで、アルファズルは『この教会でパーティーを開催するから、パーティー用に

 料理を用意するのはどうか? 手料理となれば、きっとナナも喜ぶであろう』ってな」

 

 

「ほぉ。ということは、パーティーの料理はムーンペタの奴らが用意するってことか」

 

 

 

「じゃあ、私の出番はありませんね。坊ちゃん! そうとわかれば、早く帰りましょう」

 

おれたちの話を聞いたサンチョは、そそくさと保管庫から出ていこうとした。

 

 

「サンチョ?! おまえ、なんでここにいるんだ?」

 

サンチョが出ていったすぐ外から、聞き覚えのある大きな声が聞こえてきた。

 

 

くそっ! めんどくさい奴に見つかったな。サンチョもつくづく運のない野郎だぜ!

 

 

おれは素早く外に出ると、サンチョとモルディウスの間に割って入った。

モルディウスはおれを見て目を丸くした。

 

「殿下まで? いったい何をしているんです? またいらぬことを考えているのでは?」

 

 

「けっ、相変わらず口が悪いな、モルディウス。おれたち2人はおまえたちのために

 ここまで来てやったのによ!」

 

おれは強く言い切った。

おれの斜め後ろに立っているサンチョが、うんうんとうなずいているのが見える。

 

 

「私たちのため? それはどういうことですか? 殿下、納得のできるご説明を!」

 

モルディウスは、おれたちを威圧するように、大きく1歩前に踏み出してきた。

 

 

へっ! モルディウスごときの脅しなんかに、このおれ様が負けるかよ!

 

 

「サンチョはいつも、緑の騎士団のことをとても案じているんだ。なぁ、サンチョ」

 

サンチョはうんうんとうなずいている。

 

 

「おまえたちは元気にしているだろうか、食事はちゃんと出来ているだろうかと

 心配のあまり、ムーンブルクへ様子を見に行きたいとおれに頼んできたんだよ」

 

サンチョはうなずいている。

 

 

「そして、おまえたちには『精のつくもの』を振る舞ってやりたいって言ってきてよ。

 ここで食材を吟味していたってわけだ。もちろん、このレオン隊長の許可を得てな。

 おまえに言わなかったのは、おまえたちを喜ばせてやりたいと思ってのことだ」

 

サンチョは驚いた顔をしておれに身を寄せると、モルディウスに気づかれないように

おれのわき腹をつねってきた。

 

 

「ちゃんとうなずけよ」と、おれは手を後ろにまわすと、サンチョの腹をつまんだ。

 

サンチョは仕方なくうなずいた。

 

 

「ほう。それはいい心がけだ。緑の騎士団の奴らも、連日の作業で疲れておる。今夜は

 奴らが元気になるものをたっぷり振る舞え、楽しみにしておるぞ。サンチョよ」

 

モルディウスは「はっはっは」と高笑いすると、上機嫌で戻っていった。

 

 

 

「坊ちゃん! なんなんですか、今の話は! そんな話、聞いていませんよ!」

 

モルディウスが去ったのを確かめると、サンチョはぷりぷりと怒り出した。

 

 

「しょうがねえだろ。あいつを納得させるにはそれらしいこと言わなきゃなんねえ。

 そもそも、こんな場所であんな奴に簡単に見つかっちまうおまえが悪いんだよ」

 

おれは詰め寄ってくるサンチョに「シッシッ」と手を振った。

 

 

「私に事前の確認もせずにあんなことを勝手に言って! 言った言葉の責任を取って

 今夜の料理は、坊ちゃんにも手伝ってもらいますからね!」

 

よっぽど腹が立ったのか、サンチョは負けずにグイグイとおれに詰め寄ってくる。

 

 

「冗談だろ? なんでおれが...」

 

 

「いいえ、冗談じゃありません! 坊ちゃんにも絶対に

 手伝ってもらいます!」

 

ちっ! おれが「うん」と言わなければ、サンチョの怒りはおさまりそうにない。

 

 

「ああ~! もう、いいよ! わかったよ。手伝えばいいんだろうが!」

 

 

 

「ひゃっほ~い! 2日連続でごちそうが食えるぜ!」

 

それまで、おれたちのやりとりを遠目で面白そうに眺めていたオルムとレオンは

むっつりした顔でにらみ合うおれとサンチョをよそに、嬉しそうな歓声をあげた。

 

 

 

 

あけましておめでとうございます♡

今年も楽しく創作物語を書いていきたいと思っておりますヾ(*´∀`*)ノ

よろしくお願いいたします m(_ _)m

 

 

さて。(新しい年になったこともあって)時はすぎて、いよいよナナの誕生日☆

 

今回の話はそんな始まりにするつもりだったんですが、「パーティーの料理は?」って

(カインのように)思い出しまして (;´∀`)

 

オマケで今回の話は出来ました ( *´艸`)

 

 

ムーンペタの住民たちが「ナナの誕生日をお祝いしたい」と料理を準備してくれる◎

 

最後はこの結末に持っていきたくて、「じゃあ、この話を誰がカインに伝える?」→

「オルムたちが伝えるなら、カインは何でムーンブルクに?」と考えていった結果、

この流れになりました☆

 

 

どんどん登場人物が多くなって、話もゴチャゴチャしたので(オチのために)最後は

モルディウス卿 を召喚 ( *´艸`)

 

久しぶりの登場でしたが、さすがの貫禄で上手くオチをつけてくれました◎

ありがとう、モルディウス (*´ω`*)

 

 

サンチョを怒らせて、カインはサンチョと一緒に料理をする羽目になっちゃいましたが

パーティーのプレゼントも用意できたし、パーティー用の料理も確保できそうだし

 

いよいよ次回は

ナナの誕生日です☆

 

(ダラダラ引っ張ってお待たせしている間に、年が明けちゃったぜ~ (;'∀'))

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ