ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 125】 男の友情

ナナの誕生日の翌朝、おれたちはムーンペタの町人たちと一緒に、大聖堂の片づけと

掃除をおこなった。

 

みんなの協力であっという間に綺麗になり、王子が全員を代表してアルファズルに

挨拶しに行くと宣言したところ、なぜかオルムとレオンも一緒に行くと言い出した。

 

「それならおれも行くぜ」というおれの申し出を、オルムとレオンは即座に却下した。

 

 

怪訝に思いながらも反論せず、王子たちが戻ってくるのを待っていると、王子たちと

一緒にアルファズルも大聖堂へやって来た。

 

大聖堂に入ってきたアルファズルは、なぜか険しい目でおれをじっと見据えている。

 

 



 

アルファズルが何を言うのかと身構えていると、奴はフッとおれから目をそらし

 

「昨夜のパーティーは楽しかったか?」

 

視線をナナに移して尋ねた。

 

 

「えっ?! え、ええ。それはもう本当に楽しかった。夢のような最高の誕生日でした」

 

ナナは突然の問いかけに驚いた顔を見せたが、周りを見渡し満面の笑みで答えた。

 

 

アルファズルはナナの答えに小さくうなずくと、今度は住民たちに視線を向けた。

 

さっきまであんなにおれを見据えていたというのに、アルファズルの野郎。今はあえて

おれを見ないように、徹底して視線を外しているように感じた。

 

「そなたたちはどうだ? 昨夜のパーティーについて、なにか言いたいことはあるか?」

 

 

ムーンペタの住民たちは、突然アルファズルに尋ねられたことで、しばらくの間は

戸惑いながら顔を見合わせていたが、やがて少しずつ口を開き始めた。

 

 

「おれたちも楽しかったぜ」

「姫様の喜ぶ顔が見れて嬉しかったわ」

「和やかな良いパーティーだったよな」

 

住民たちはお互いに言い合い、うんうんと笑顔でうなずき合っている。

 

 

「来年も再来年も、姫様の誕生日はずっとこの場所で祝いたい。そう思えるぐらい

 昨日は最高の日だったわよ」

 

母ちゃんがみんなを代表するように大きな声を出し、住民たちも「そうだ、そうだ!」

「来年もまた、ここでみんな一緒にパーティーしようぜ!」と口々に同調した。

 

 

アルファズルは、ムーンペタの住民たちの顔をぐるりと見回し、住民たちの言葉に

感激して瞳を潤ませているナナを見つめると、ようやく再びおれに視線を向けた。

 

 

「カインよ。人は多くの存在に支えられて生きているということを忘れてはならぬぞ。

 周囲の人々への感謝を忘れたら、人は離れていき、やがては孤立してしまうだろう。

 おまえは常にたくさんの人に愛され、守られていることを決して忘れてはならぬ。

 わかったか?」

 

何を言われるかと思っていたら、いきなり説教のようなものが始まって面食らった。

 

 

「ああ? なんだよ、いきなり」

 

おれが困惑の声をあげると、アルファズルはおれを見て片方の眉を吊り上げた。

 

 

「『人への感謝を忘れてはならぬ』という当たり前のことを話したつもりだったが、

 おまえには難しい話だったか?」

 

アルファズルは嫌みたっぷりに言ってきた。

 

 

「はぁ? 馬鹿にすんじゃねーぞ! てめえの話は理解してるよ。おれだっていつも

 周りの奴らには感謝してるさ! おれが聞きたいのはそんなことじゃねえ。なんで

 てめえが急にそんな話を始めたのかを教えろって言ってんだよ!」

 

おれはアルファズルの胸ぐらをつかみたくなるのを必死にこらえながら叫んだ。

 

 

だが、アルファズルはおれの怒りなどまったく意に介さず、表情一つ変えなかった。

 

 

「おまえが『人々への感謝の心を忘れない』のなら、それで良い」

 

アルファズルはそれだけ言うと、くるりと背を向けて歩き出した。

 

 

「おいっ! 待てよ。わけのわかんねえこと言って、勝手に去っていくんじゃねえ!

 今の発言の意図を説明しやがれ!」

 

おれはアルファズルの肩をつかもうとしたが、母ちゃんに腕を持たれて止められた。

 

 

アルファズルはそのままゆっくり歩いて行くと、大聖堂の入口で立っている王子の肩を

ポンポンと軽くたたいた。

 

 

王子がアルファズルに一礼する。

 

 

アルファズルは、王子の後ろで小さくなってかしこまっているオルムとレオンを見て

微かにうなずくと、そのまま2人の横を通り過ぎて無言で歩いていく。

 

 

「なぁ! 賢者さんよ、おれたちもおとがめなしなのか?」

「みんなを許してくれるのか?」

 

オルムとレオンがアルファズルの背中に声をかけると、アルファズルは小さく手をあげ

ゆっくりと去っていった。

 

 

 

「ひゃっほ~い!」

 

アルファズルが去ると、オルムとレオンは嬉しそうにお互いの手をパンと叩き合った。

 

 

なんなんだよ、いったい。どいつもこいつも、サッパリわけがわからねえ。

 

 

「おい、どういうことだ? なにがあったか、おれにもわかるように説明しろよ!」

 

はしゃいでいるオルムとレオンに声をかけると、2人とも笑顔で走り寄ってきた。

 

 

「おれたち、さっき掃除してる最中に王子から聞いたんだよ。このままだとおまえが

 アルファズルに怒られて、出入り禁止になるかもしれねえってな」

 

おれは王子の顔を見た。

王子は気まずそうに頭をかいている。

 

 

「大聖堂でパーティーをしたいってぼくたちでアルファズルにお願いしに行ったとき、

 アルファズルが言ってただろう『騒音などで近隣に迷惑をかけたり、神聖な教会を

 汚すおこないをすれば、即刻退去を命じ、今後一切の出入りを禁じる』って」

 

王子の言葉で思い出した。

そういえば、言われていたな。

 

 

「昨夜は、夜遅くにきみたちが大声で叫びながら追いかけっこしてたからさ、あれを

 アルファズルに聞かれていたら、怒られるんじゃないかって心配になったんだ」

 

 

「王子から話を聞いたら、あの賢者はその言葉をカインに言ってたって言うからよ、

 おまえが出入り禁止になっちまうんじゃねえかって、おれたちも心配になってな」

 

 

「もともとはおれの冗談でおまえを怒らせたことが原因だからな。責任はおれにある。

 それに、おまえが帰ってくる前からおれとオルムは腕相撲勝負で大騒ぎしてたからよ

 騒音で近隣に迷惑をかけたのはおれたちだって、賢者さんに言いに行ったんだよ」

 

 

「出入り禁止にするなら、ぼうずじゃなくおれたちにしてくれ! ってな」

 

 

それで、オルムとレオンは頑なに「おまえは来るな!」とおれに言ってきたのか。

 

 

おれは、オルムとレオンが王子に同行してアルファズルに会いに行くと言った理由も、

アルファズルがおれに伝えてきた言葉の意味も一瞬で理解した。

 

 

「自分を支え、守ってくれる存在がいることを忘れず、いつも感謝の気持ちを持て!」

さっきは何を言われているのかわからなかった、アルファズルからの言葉。

 

おれが誰に支えられ、守られているか。

今となってはよくわかる。

 

 

 

そして、おれをかばい、自分たちが全責任を負うことを決めたオルムとレオンは、

王子と共にアルファズルがいる控室へ行き、これまでの事情を話した。

 

オルムとレオンの訴えを静かに聞いていたアルファズルは、2人が話を終えると

「では、確かめに行こう」と言って立ち上がり、大聖堂に来たんだという。

 

 

「あいつ、なにを確かめたんだ?」

「さぁ? なんだろう? なんで、おれたちもカインも無罪放免になったんだ?」

 

オルムとレオンが不思議そうに首を傾げた。

 

 

ははっ。こいつら、罪の意識で頭がいっぱいで、そんな簡単なこともわからねえのか。

 

おれが説明しようとすると、その前に王子が口を開いた。

 

 

「本当に『迷惑をかけた』かを、確かめに来たんだと思いますよ」

 

2人は王子の言葉に、最初は「ん?」という表情を見せていたが、時間が経つにつれ

ようやく理解したようだ。

 

 

ムーンペタのみんなに『パーティーはどうだった?』と聞いたあれか!」

「なにか意見はあるかって聞いて、苦情が無いのを確かめたってことか!」

 

 

「そうです。まずは、ナナが誕生パーティーを心から喜び、楽しんだことを確認して

 ムーンペタのみなさんもパーティーを楽しんだことを確認した。来年もまたここで

 パーティーをしたいと思えるほどの楽しさで、充分に満足していることを知った。

 つまり『誰にも迷惑をかけていない』ということが判明したので

 『誰も出入り禁止にする必要が無い』ということですよ!」

 

王子は誇らしげに話した。

 

 

オルムとレオン、ナナたち女ども、さらにはムーンペタの連中までもが、微笑みながら

王子の言葉に聞き入っている。

 

 

 

くそっ! 王子の野郎め。1番良いところを持っていきやがって!

 

悔しい気持ちもあるが、まあいい。

 

 

 

簡単に人の言葉を鵜吞みにして、自分はなにをすべきかと真剣に悩む善良な坊ちゃんと

いい大人のくせに単純で、最高に馬鹿で熱いおっさんたちが、おれのために

動いてくれたんだからな!

 

 

「へへへっ。おれたち、無罪放免になったんだからよ!

 来年もここで、思いっきりバカ騒ぎしようぜ!」

 

おれは両腕を大きく広げながら、王子とオルムとレオンに飛びついていった。

 

 

 

 

男の友情としては「王子&カイン」の友情がもちろん1番に思いつくところだけど

「カイン&おっさんたち」の友情も素敵だよねと思って書いたのが今回の話 (*´ω`*)

 

 

「神聖な教会でバカ騒ぎするな!」と事前にアルファズルから言われていたのに、

酔ってギャーギャー大騒ぎしちゃった男3人(オルム・レオン・カイン) (;´∀`)

 

「このままではカインが出入り禁止になっちゃうかも?!」という王子の言葉を聞いて

単純で熱いおっさん2人が、カインを守るために立ち上がりましたよヾ(*´∀`*)ノ

 

 

「あいつは悪くない!」「全責任はおれにある!」ドラマでもよくある言葉だけど

(特に昭和・平成の不良を扱う学園ドラマではよくあったよね~ ( *´艸`))

昭和世代の私は、この手の「熱い男の友情」が大好きなんですよ (≧∇≦)♡

 

 

 

おっさん2人が少年をかばい罪を背負い、2人の漢気を理解したもう1人のおっさんが

すべての罪を飲み込み許してあげる◎

 

おっさんたちの熱い友情を書けて、個人的には大満足です ( *´艸`)

 

 

さて、おっさん(アルファズル)の許しも得たので、大聖堂を出ましょうか (*´ω`*)

ムーンペタに長く居すぎなので、カインもそろそろサマルトリアに帰りましょう♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ