ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 114】アルファズルの計略

いよいよナナの誕生日当日。

 

おれはティアとリーナ、王子とミリア、さらにバブルスライムハンターのオーウェン

連れてムーンペタへやって来た。

 

ムーンペタの町の入口で、おろおろしているオルムやレオンと合流したおれたちは

「途中でナナに見つかったら、不審に思われるのでは?」と2人から指摘され、

無事に教会へとたどり着けるよう、町に入る前に入念に作戦を立てることにした。

 

 

 

「ティア、リーナ。別に悪いことをするわけじゃねえ。いつもどおりでいろよな。

 おまえたちは、ナナに会いに行くようなつもりで教会に向かえばいいんだからよ」

 

おれは、ギュッと手をつなぎ緊張した様子のティアとリーナに声をかけた。

 

 

おれたちの作戦はこうだ。

 

まずは、ティアとリーナが教会に向かう。

その後、2人の様子が見えるぐらいの距離を開けて、王子とミリアが続く流れだ。

 

王子とミリアには、先行するティアとリーナの様子を逐一報告してもらうことにして

安全の確保が確認できたところで、おれたち4人が町に入ることになっている。

 

ナナに見つかったとき「なんでここに?」と不審に思われそうなおっさんたちは

町の入口から少し離れたところに隠れて、王子からの報告を待つことにした。

 

 

ティアとリーナはうなずき合うと、おれたちを振り返って「行ってくるわ」と言った。

 

王子は「気をつけて。普段どおりにすれば、大丈夫だから」と笑顔で2人に声をかけ、

おっさんたちと一緒に離れたところで隠れているおれは、大きく手を振って応えた。

 

 

ティアとリーナがつないだ手を振りながら、楽しそうな様子で町に入っていくのを

おれは遠目で見送った。

 

 

「2人は順調に教会に向かっているよ。不自然なところもないし、大丈夫そうだ」

 

入口で待機している王子が報告してくれる。

 

 

「もう2人は町の真ん中ぐらいまで行ったよ。そろそろ、ぼくたちも町に入ろうか?

 あれ? 様子が変だぞ?」

 

「どうしたのかしら?」

 

王子とミリアが不安げな声を出した。

 

 

「おい、なにがあったんだよ?」

 

レオンがバカでかいキャリーケースの陰に身を隠しながら王子に尋ねた。

 

 

「リーナを1人だけ残して、ティアちゃんだけ先に走って行っちゃったんだよ」

 

 

「なにっ?! ティアの奴、勝手な行動はするなって、あれほど言ってあったのによ!」

 

いつでも逃げ出せるように、おれはオルムたちと町の入口から離れて隠れていたが、

気になって我慢できなかった。

 

 

おれは王子とミリアの横に並んだ。

 

確かに、リーナが道の真ん中でポツンと立っていて、ティアの姿はもう見えなかった。

 

 

「くそっ! どうなってんだ?」

 

 

「リーナを呼んでみようか?」

 

 

「いや、状況がわからねえのに大きな声を出すのはまずい。しばらく様子を見ようぜ」

 

じりじりした思いで様子を見ていると、ティアが元気よく走って戻って来た。

 

 

「おーい! おにいちゃーーーん、おねえちゃーーーん。

 おじちゃんたちーーー。安心して! 大丈夫よ~!」

 

ティアが大きな声を出してくる。

 

ティアから何か聞いたリーナも、こっちに向かって大きく手を振ってきた。

 

 

「大丈夫って言っているわね。私たちだけじゃなく、おじちゃんたちも大丈夫だって」

 

ミリアが首をかしげている。

 

 

「とりあえず、あれだけ大声を出されたんじゃ、ここに隠れていても意味がねえ。

 よくわからねえが行ってみようぜ」

 

おれは隠れているオルムやレオン、オーウェンに声をかけて町の中に入った。

 

 

おれたちが町に入るのと同時に、ティアとリーナはこっちに駆け寄って来た。

 

 

「いったい何があったの?」

 

息を弾ませながら満面の笑みで走ってきた2人に王子が声をかけた。

 

 

「あのね、教会の近くに行ったら、すっごくたくさんの人がいて大騒ぎだったの」

 

リーナが興奮状態で話してくる。

 

 

「それで、リーナちゃんに待っていてもらって、あたしが様子を見に行ったのよ。

 たくさんの人が教会に出入りしてるから、1人をつかまえて聞いてみたの。そしたら

 ナナおねえちゃんの誕生パーティーの料理を準備してるって言うのよ。だからあたし

 大勢で騒いでいたら、おねえちゃんに見つかっちゃうんじゃない? って聞いたの」

 

ティアはそこまでひと息で言うと、ふぅ~と大きく息をついた。

 

 

「それで? そいつはなんて答えたんだ?」

 

 

「おねえちゃんね、アルファズルと一緒に朝から出かけているんですって! 2人で

 遠くまで行くって言って出かけたみたいよ。アルファズルは町の人に言ったのよ。

『夕方まで戻らないから、留守を頼む』って。でも、口元は少し笑ってたんですって!

 おねえちゃんのパーティーの準備が出来るように、気を利かせたってことね」

 

ティアは嬉しそうに笑った。

 

 

「へへっ、やるじゃねえか」

「それは助かりましたね」

 

オルムたちも安堵の表情を浮かべた。

 

 

「そうとわかれば、行こうぜ!」

 

おれたち8人はそれぞれの荷物を抱え、弾むような足取りで教会へと向かった。

 

 

ティアとリーナの言うとおり、教会にはムーンペタの住民たちが集まっていた。

中から美味そうな匂いが漂ってくる。

 

 

「腹減ってきたな」

 

王子から預かったキャリーケースを持ち、石段を登りながらレオンがつぶやいた。

 

大聖堂の中に置かれた料理を目にしたとき、誰かの腹が「グーッ」っと鳴った。

 

 

「あはは。たくさんあるからね。ちょっと味見する程度なら食べても構わないよ。

 姫様が戻って来たときに、みんなのお腹がグーグー鳴ってたんじゃ困るもんね」

 

1人のおばさんが愛想良く、笑いながらおれたちに食事を勧めてくれた。

 

  ドラクエシリーズによく出て来るおばさんをイメージしてね♪



確かにここまで来る緊張感もあって、急に腹が減って来た。

おれたちは遠慮なく、勧めてくれた料理を少しだけ食わせてもらうことにした。

 

 

簡単に食事を済ませると、パーティーに向けての準備に取り掛かった。

 

ティアとリーナはムーンペタの子どもたちと一緒になって、色のついた紙を使って

壁の飾りつけをするらしい。

 

おれと王子とミリアは子どもたちを手伝って、子どもの手が届かない高いところに

切り抜かれた花や星を貼ってやった。

 

オルムとレオンとオーウェンは、住民たちを手伝って運ばれてきた料理を並べている。

 

 

夕方までにパーティーの準備はすべて整い、あとはナナの帰りを待つだけになった。

 

おれたちは大聖堂の入口に集まり、クラッカーを手にナナの帰りを待った。

 

 

「おい、帰って来たぞ!」

 

教会の外へ見張りに出ていたオルムが、大聖堂の中に走り込んできて扉を閉めた。

 

 

息をひそめてしばらく待っていると、大聖堂の扉がゆっくりと開かれた。

 

 

「ナナ姫! お誕生日おめでとう~!!」

 

大聖堂にいる人々の大歓声と共に、無数のクラッカーが派手な音を立てた。

 

 

ナナは扉に手をかけたまま、目を見開いて呆然としていた。

 

「はははっ、2年連続で忘れてるなんて情けねえな。また1つ、ババアになったんだ。

 健忘症が進行してもしょうがねえよな」

 

おれは笑いながら大聖堂の外まで歩いて行き、ナナの隣に立った。

 

 

「あーーー! 今日だ、あたしの誕生日!!」

 

 

「へっ。ようやく思い出したか、お姫様。いや、おばあ様って呼んだ方がいいか?」

 

 

「ふんっ。あんたこそ、子どものくせにおねえ様に生意気な口聞くんじゃないわよ」

 

昨年と同じようなおれたちのやりとりに、大聖堂から笑いが起きた。

 

 

「あっ! もしかして、アルファズルが今日あたしと一緒に出かけたのは、このため?」

 

ナナは後ろを振り返った。

 

一連の流れを見ていたアルファズルは、静かにその場を立ち去ろうとしていた。

 

 

「ありがとな、アルファズル!」

 

おれがその背中に声をかけると、アルファズルは足を止めて半分だけ振り返り

「礼には及ばん」とひとことだけ言って、再び静かに歩き出した。

 

 

「あら? 神父さんは姫様のパーティーには参加しないのかい?」

 

大聖堂から住民の1人が顔を出して言った。

昼間、おれたちに「味見も兼ねて食事しろ」と勧めてくれた親切なおばさんだった。

 

 

「あいつはこういった集まりは苦手だからな。この場所を提供してくれただけさ」

 

 

「そうなの。じゃあ、あとで料理だけ取り分けて、持って行ってあげましょうか」

 

 

「ああ、そうしてくれると助かるぜ」

 

 

「さあ、お姫様。いつまでもそんなところに突っ立ってないで、入っておくれよ。

 あたしたち、ささやかだけど心を込めて、お祝いの料理を準備したんだからさ」

 

おばさんは愛想よく微笑んでナナの腕をつかむと、大聖堂の中へ招き入れた。

 

 

ナナが大聖堂に入ると、あらためて場内から大きな拍手が起こった。

おばさんはナナの手を引いて、ナナのために用意された席へと連れて行った。

 

 

「ねえ! この椅子、あたしとリーナちゃんとで飾りつけしたのよ。素敵でしょ?」

 

席の前で待っていたティアが、待ちきれないとばかりにナナに話しかけた。

 

 

「ええ、とってもとっても可愛いわ。ありがとう。ティアちゃん、リーナちゃん」

 

ナナは嬉しそうにニッコリと微笑むと、ティアとリーナの頭をやさしくなでた。

 

 

ナナが席に着くと、王子がシャンパンの入ったグラスを片手にみんなの前に立った。

 

「えっと... ぼくはこういった場でのあいさつは、ちょっと苦手なんだけど...」

 

王子は恥ずかしそうにしている。

 

 

「おいお~い。しっかりしろよ~、ローレシア王~!」

 

おれが笑いながらヤジを飛ばすと、聴衆からも「あははー」と笑いが起きた。

 

 

王子はおれを見て照れたように笑い、軽く咳払いして再び話し始めた。

 

「昨年のナナの17歳の誕生日のときは、ぼくたちはまだハーゴン討伐の旅の途中で、

 立ち寄ったザハンで祝いました。今年はこんな平和な世界で、たくさんの人たちと

 ナナの誕生日を祝えてとても嬉しく思います。来年も、再来年も、平和な世界で

 同じようにたくさんの人たちと、ナナの誕生日が祝えることを願って。乾杯!

 

 

「カンパ~イ!!」

 

 

乾杯の後、おれたちも、ムーンペタの住民たちも、そしてナナも、用意された料理を

ものすごい勢いでガツガツと食べ始めた。

 

教会に着いたときに少しだけ食べたとはいえ、おれたちはみんな腹が減っていたし

アルファズルと一緒に朝から出かけていたナナも、相当腹が減っていたらしい。

 

 

食べきれるか? というぐらいあったはずの料理も、瞬く間に空になっていった。

腹が満たされ、みんなが満足そうに腹をさすっているのを見ながら王子が声をあげた。

 

 

「さてと。いよいよお楽しみの『プレゼント贈呈』の時間だな」

 

王子の言葉に、ナナの瞳がひときわ輝いた。

 

 

 

満を持して、いよいよナナの誕生パーティーが始まりましたよ~ヾ(*´∀`*)ノ

 

ちょっと話が長くなりましたが、みなさまのお楽しみは「プレゼント」だと思うので

パーティー準備からプレゼント贈呈前までは、駆け足で進めることにしました ( *´艸`)

 

 

無事に教会にたどり着けるのかという不安はありましたが、なんとアルファズルが

朝からナナを町の外に連れ出すという粋な計らいを見せてくれて、カインたちは

すんなりと教会に入って、準備も楽に出来ました◎(ありがとう、アルファズル☆)

 

 

パーティー前のカインとナナの会話は、昨年の2人の会話と同じ流れにしました♪

これから何年たっても、カインは先に誕生日を迎えるナナを「ババア」扱いして

ナナはカインのことを「子ども」扱いするんだろうな~と思ったので (*´ω`*)♡

 

 

教会でカインたちと一緒になって、ナナの誕生日を祝うムーンペタの住民たち。

おばさんがわざわざ「顔出し」したのには意味がありそうですね! これから始まる

プレゼント贈呈で、おばさんはきっと活躍してくれるでしょう(← フラグ ( *´艸`))

 

 

さて、次回からはプレゼント贈呈ですが、それぞれのプレゼントについては本当に

真剣に考えたので ( *´艸`)、1人につき1投稿でプレゼントを紹介していきます!

(ナナの誕生パーティーの話は、一体いつまで続くのでしょうか... (;´∀`)?)

 

長々と続くプレゼントの紹介ですが、楽しんでいただけると嬉しいです (≧∇≦)♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ