ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 126】 オルムの肩書き

ナナの誕生日、酔っぱらって教会でバカ騒ぎしたことでアルファズルの怒りを買い、

おれが出入り禁止になることを心配したオルムとレオンは、王子と共にアルファズルに

会いに行き「出入り禁止にするならおれたちを!」とアルファズルに訴えたらしい。

 

2人の話を受けて大聖堂にやって来たアルファズルは、ムーンペタの住民の声を聞き

「騒音などで誰にも迷惑をかけていないのであれば、誰も特に罰する必要はない」

おれ、オルム、レオンを許してくれた。

 

 

アルファズルの許しも得て、おれたちはあらためてムーンペタの奴らに感謝を伝え

この場を解散することにした。

 

 

「おれたちこそありがとうな!」

「また来年もやりましょうね!」

 

住民たちは笑顔で帰っていく。

 

 

「さてと。おれたちも行くか」

 

住民たちがみんな帰っていくのを見届けると、オルムはレオンとミリアに向けて言い、

ミリアは荷物を手に取った。

 

 

持っていた大きなバッグから、ナナにプレゼントしたドレスを取り出したはずなのに、

ミリアの荷物は行きのときよりも増えていた。大きなバッグはパンパンに膨れており

さらに別の袋まで持っている。

 

 

どうせ「プレゼントのお礼」だの「良かったら持って帰って」だのと言って、ナナが

アレコレ渡したのだろう。

 

それはミリアだけじゃなくティアも同じで、大きなバスケットの上にわけのわからねえ

袋を山ほど積み上げていた。

 

 

ちっ! どうせティアの荷物はおれが持たされる羽目になるんだ。ホント女ってやつは

どうしていつもあんなに荷物が多いのか、めんどくせえ奴らだぜ。

 

おれは心の中で毒づいたが、ここに来るときにおれが持っていた花はナナに渡し、

スライムのぬいぐるみもリーナに返して、今のおれは手ぶらだからな。

 

帰った後、王妃を味方につけて「レディへの配慮が無い」などと言って、2人から

わめかれることを考えると、ティアの荷物ぐらいは持ってやってもいいだろう。

 

 

おれがティアの荷物を持ち、王子はミリアの荷物を半分持ってやって、おれたちは

そろって大聖堂の外に出た。

 

 

サマルトリアに帰っても元気でいるんだよ。あと、いつでも遊びにおいでね」

 

母ちゃんが少し寂しそうに声をかけてきた。

 

 

「おばさん、寂しがらなくても大丈夫よ。カインなら、どうせまたすぐに来るから」

 

ナナが笑いながら母ちゃんに言った。

 

 

「なんだよ。その言い方だと、まるでおれがヒマ人みてえじゃねえか!」

 

 

「あら? あたしはそう思って言ったんだけど、違うの?」

 

ナナはおれを見ていたずらっぽく笑う。

 

 

「こいつめっ!」

 

おれはナナをなぐるマネをした。

 

ナナはきゃあきゃあ言いながら、頭を腕で覆っておれから逃げていく。

 

 

そんなおれたち2人を、母ちゃんはニコニコしながら見守っていた。

 

 

「神聖なる教会の前で暴力とは不届き者め! さきほどの判断は撤回し、あらためて

 出入り禁止を命じるぞ」

 

追いかけ合うおれたちの背後から声がして振り返ると、アルファズルが立っていた。

 

きつい言葉とは裏腹に、アルファズルは表情を緩めて笑みを浮かべている。

 

 

「へっ、あんたは偉大な賢者様だろ。大賢者様だというのに、いったん口にしたことを

 そんな簡単に撤回しちまったら、せっかく今まで築き上げてきた威厳が無くなるぜ。

 悪いことは言わねえからよ、さっきの発言を撤回するのだけは止めとけよ!」

 

おれが笑って言い返すと、アルファズルは「やれやれ。おまえは口の減らない男だ」

わざとらしく肩を落とす演技をして、大げさにため息をついた。

 

 

「でもよ。こう見えても、おれだってあんたには感謝してるんだぜ。今回、ナナの

 誕生パーティー大成功に終わったのは、あんたのおかげだからな。ありがとよ!」

 

おれは肩を落とす演技を続けるアルファズルをポンポンと叩きながら言った。

 

 

アルファズルは、無邪気に笑顔で肩を叩いてくるおれを見て苦笑いしている。

 

「ふっ。礼には及ばん。おまえが人としての道を踏み外さなければそれで良い」

 

 

「へん! おれが踏み外すわけねえだろ?」

 

おれは腰に手を置いて胸を張った。

 

 

「ほほう。期待しているぞっ!」

 

アルファズルはそう言いながら、おれの肩甲骨のあたりをドンと突いてきた。

 

 

不意打ちだったのもあるが、アルファズルからの突きに上体が揺れ、おれはよろよろと

体勢を崩して数歩前に出た。

 

驚いた。

魔法の能力はすげえが、非力の弱っちい賢者だと思っていたのに、アルファズルは

意外にも力もあるみてえだ。

 

 

「カインよ、おまえは人を見抜く能力をもっと身につけた方が良いぞ」

 

目を見開いてアルファズルを見つめているおれに、奴は誇らしげに言ってきた。

おれは素直にうなずくしかなかった。

 

 

アルファズルは満足そうにおれを見おろすと、静かに大聖堂へと戻っていった。

 

 

 

 

「さてと、あたしも帰るよ」

 

母ちゃんがおれとナナに言ってくる。

 

 

「送っていかなくて大丈夫か?」

 

おれが聞くと、母ちゃんは首を振った。

 

 

「うふふ。今はこんなに明るいんだもの。大丈夫よ。それにトンヌラたちの様子も

 見に行きたいからね。寄り道しながらゆっくり帰るよ。じゃあ、またね」

 

母ちゃんが手を振りながら帰っていくのを、おれたちも手を振りながら見送った。

 

 

 

「船長! オルム船長!」

 

町の入口の方から大きな声が響いてきた。

ルプガナで何度か見たことのある恰幅のいい男が、こちらに向かって走ってくる。

 

 

「ゆうべ、船団長から連絡があったんすよ。樫の棒の野郎はパーティーで飲んだくれて

 今朝はへべれけだろうから、迎えに行ってやってくれって。今回はおじょうさんも

 一緒の船に乗りますからね。船着き場まで行くための馬車も手配してくれましたよ」

 

走ってきた男はニコニコしながらオルムに言うと、振り返って後ろを指差した。

男と同じ服装をした別の2人の男が、小さな馬車を引きながら近づいてくる。

 

 

「おれがへべれけだろうって言われたところは気に食わねえが、馬車はありがてえな。

 船着き場までは遠いもんな」

 

オルムは馬車を見てニヤリと笑った。

 

 

「なんだかんだで、船団長はオルム船長のことをすごく気に入ってるんっすよ」

「今回は、ミリアおじょうさんのことも『船長に任せた』って言ってましたよ」

 

馬車を引いてきた男たちも、オルムを見ながら羨ましそうに言ってきた。

 

 

「二日酔いは大したことねえが、おじょうさんの荷物が多いからよ。これを馬車で

 運んでもらえるだけでも助かるぜ。おまえたち、さっそく積み込みを手伝いな」

 

船長オルムの号令を受け、男たちはミリアから荷物を受け取り、馬車に積み出した。

 

 

王子はミリアを手伝いながら荷物を男たちに渡すと、少し怪訝そうな表情を浮かべて

静かにおれのそばに近寄ってきた。

 

「ねえねえ、カイン。ちょっと聞きたいんだけど。今回の船って『雷神丸』じゃない

 別の船なんだよね?」

 

王子はひそひそ声で尋ねてきた。

 

 

おれはルプガナでオルムの行方を聞いたとき、船団長がしていた話を思い返した。

 

「ああ。船団長が『オルムも雷神丸を他の奴に任せるぐらい寛大になったな~』って

 喜んでいたもんな。その話によれば雷神丸はもう出航済だろうし、今から乗る船は

 雷神丸じゃねえだろうよ」

 

 

おれの言葉に王子は首を傾げた。

 

「そうだよね。う~ん、オルムって『雷神丸』の船長だよね? なんで今から乗る船は

  雷神丸じゃないのに、今回もまたオルムが『船長』って言われてるんだろう?」

 

 

「ばっ...」

 

「馬鹿じゃねーか」と思わず大声で言いかけて、おれは慌てて口をつぐんだ。

 

 

どうも王子は、周りにいる奴らを過小評価しすぎているところがある。

 

以前は、ベラヌールの教会で神父たちが全員アルファズルにひれ伏すのを見て

「アルファズルってそんなに有名人だったの?」と聞いてきた奴だ。

 

それが今回は「オルムって雷神丸だけの船長じゃないの?」ときたもんだ。

 

 

 

おれが答えるより先に声が飛んできた。

 

 

「こらぁ! ぼうず。全部聞こえてるぞ! なんだ、おれは

 雷神丸以外の船では、ただのおっさんってことか?!

 おれみてえな奴は、雷神丸しか操れねえヘボ船長だと

 言いてえのかよ?!」

 

オルムが笑いながら怒鳴ってくる。

 

 

「はははっ。こんなささやき声でも聞こえるのか。さすがの地獄耳だな!」

 

おれも笑いながら大声で言い返す。

 

 

「これぐらいの音を聞きとれねえようじゃ、海の男は務まらねえよ! なぁ!」

 

オルムが馬車の男たちに声をかけると、男たちも笑いながらうなずいた。

 

 

おれと王子の会話は、もちろんレオンやミリア、ナナたちには聞こえなかったようで、

みんなきょとんとした顔をして、おれたちとオルムを交互に見ていた。

 

 

「王子の奴よぉ、今日の船は雷神丸じゃねえのに、なんでおれが船長を名乗るんだ?

 おかしいんじゃねえか? ってカインにひそひそ言ってやがったんだよ」

 

依然きょとんとしたままのレオンたちに、オルムが笑いながら事の顛末を告げると

全員がその場で一斉に笑い出した。

 

 

王子は顔を真っ赤にしている。

 

 

「はははっ、オルムよ。誉れ高きローレシア王に、雷神丸以外も操縦できる奴だって

 認めてもらうために、あんたはもっと精進して気張れよってことだろうよ!」

 

レオンが笑いながら言い、その言葉でさらに大きな笑いが起きる。

 

 

「へへっ。でもよ、おれはまだいいぜ。ぼうずにとっては『雷神丸限定』とはいえ、

 一応は船長だと認められているからな。レオン! てめえなんてよ、王子にとっちゃ

 ただの『田舎の陽気なおっさん』なんじゃねえか?」

 

オルムは自分で言いながら、耐え切れなくなったのか腹を抱えて笑い出した。

 

 

「ちぇっ。おれはこう見えても、盗っ人ラゴスから水門の鍵を取り戻して村を救った

 テパの村1番の英雄のはずなんだけどな。王子にかかれば、そんなおれもただの

 『田舎の陽気なおっさん』かよ」

 

オルムとレオンの会話に、ナナたち女どもも楽しそうにコロコロと笑い続けている。

 

しばし、笑いの時間が続いた。

 

 

「あ~、笑った笑った。レオン! おれたち、これからもっと気張っていこうぜ!」

 

オルムはレオンの肩に腕を回した。

 

 

「ああ、次に会う頃には『田舎の陽気なおっさん』から進化してることを願うぜ!」

 

レオンは王子を見て親指を立てると、2人は笑いながら馬車に向かって歩き出した。

 

 

おっさん2人の後にミリアが続く。

 

ナナ、ティア、リーナの3人は見送りのため、ミリアの後ろからついて行った。

 

 

「おい。そんなに落ち込むなよ。オルムは怒ってねえし、おまえも気にすんなって。

 さっ、気を取り直して、おれたちもあいつらを見送りに行こうぜ!」

 

おれは、恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむいたままの王子の肩に腕を回した。

 

 

王子と肩を組んで馬車に向かって歩いていると、前を歩くミリアに異変が起きた。

 

 

ミリアはビクンと身を震わせている。

 

ん? いったい、何があった?!

 

 

 

アルファズルのキャラクター付けがいまだ迷走中なんですが... (;´∀`)

カインのことは許しているし、認めているし、なんだかんだで可愛がっていることが

伝わるように再登場させました☆

 

「アルファズルは非力に見えて意外と強い」は使わせてもらっている画像の影響... (;'∀')

(なんせ「トキ」ですからね ( *´艸`))

 

あと、Twitter でアルファズルは最高神オーディンの別称だと教えてもらったので

「実はすごく強いんだぞ!」ってところをアピールしてみましたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

アルファズルと円満に話せたあとは、久しぶりに王子にボケさせました~ヾ(*´∀`*)ノ

 

オルム・レオン・ミリアの3人は船で帰るので、船員が迎えにくる流れは考えてあって

どうせならここで王子がボケて、大笑いして帰る展開にしようと決めました (≧∇≦)♪

 

ゲームブック本編でも「アルファズルって有名人なの?」と言った王子ですから

「オルムって雷神丸以外の船も操れるの?」ぐらいは言いそうですよね ( *´艸`)

良いボケが出来たと自己満足です♪

 

 

さて、大笑いしながら馬車に向かう一行ですが、ここでミリアに異変が Σ(・ω・ノ)ノ!

ミリアに何があったのでしょう?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ