ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 113】集合

ナナの誕生日の前日、パーティー用の料理を準備していないと思い出したおれは、

サンチョを連れてムーンブルクへ向かった。

 

オルムとレオンから「パーティーの料理は、ムーンペタの住民が用意する」と聞き、

それなら帰ろうとしたところで、サンチョは運悪くモルディウスに見つかった。

 

おれはとっさの機転を利かせ「緑の騎士団のために料理を振る舞いに来た」と言って

モルディウスの追及からサンチョを救い出してやったというのに、サンチョは

「そんな話は聞いてない! 事前の了承もなく、勝手なこと言うな!」と怒り出した。

 

サンチョの怒りを鎮めるため、おれはサンチョと一緒に料理を作ってやることにした。

 

 

もともと、おれは王妃の策略で、幼い頃に料理を徹底して学ばされてきたからな。

料理の手伝いなんてどうってことねえ。

 

おれとサンチョは手際よく、2人であっという間に大量の料理を作りあげた。

 

 

「時間もあることだし、せっかくなのでナナ様にもなにか作りましょうか?」

 

サンチョがにこやかに聞いてきた。手早く料理が出来て機嫌が直ったようだ。

おれはサンチョの提案に乗り、明日のパーティー用にクッキーを焼くことにした。

 

 

野外に設置された簡易的な調理場には、クッキーの型抜きなんてものはない。

おれたちは月や星などの形を、自分たちの手で適当に作り上げて並べた。

 

おれはサンチョの目を盗んで、1つだけハート型を作って隅に隠して置いた。

 

 

クッキーが焼きあがると、サンチョは「アチチッ」と言いながらもすぐに手を伸ばし

1個つまみあげ、口の中に放り込んだ。

 

「どうだ?」

 

 

「う~ん…?」

 

サンチョは難しい顔で首をひねりながら、さらに1個つまんで食べ始めた。

 

 

まさか、失敗か?

いや、そんなはずはねえ。

 

おれも1個つまんで口に入れる。

 

表面はサクサクして、中はしっとりと柔らかい。芳醇なバターの香りが鼻に抜けて

優しい甘みが口いっぱいに広がった。

 

美味いじゃないかと思ってサンチョを見ると、えへへと笑って頭をかいている。

 

 

「てめえ、おれをだましたな!」

 

おれは笑いながらサンチョの尻を叩いた。

 

 

クッキーをナナへのプレゼントに追加することにして、おれたちは出来上がった料理を

緑の騎士団とレオンのチームに振る舞った。

 

 

おれは、すごい勢いで料理にがっついているオルムとレオンに「明日は頼むぜ!」

ひと声かけてから、サンチョと一緒にルーラでサマルトリアへ戻った。

 

 

 

翌日は朝からよく晴れた。

 

プレゼントの花を取りに裏庭へ行くと、王妃とリオスがおれを待っていた。

おれが贈る花は薄桃色の布で包まれ、持ち運びしやすいように取っ手がついていた。

 

 

「布だけでも可愛いでしょ? ナナはきっと喜ぶわ。この布は可愛いだけじゃないの。

 通気性も良いからね、夜までこのままにしていても花が弱ることは無いよ」

 

王妃は上機嫌でニコニコしながら、おれに鉢を手渡してくれた。

 

 

「健闘を祈ってます」

 

王妃の隣でリオスもニヒヒと笑った。

 

 

花を受け取ったおれは、2人に見送られながら裏庭をあとにして城門へと向かった。

 

 

城門にはティアとリーナがいた。

ここからオーウェンの店まで行って、オーウェンや王子と合流する予定になっている。

 

 

ティアは、外出するときによく持って行く大きなバスケットを手にしていた。

リーナは肩から大きめのバッグをかけて、手にはスライムのぬいぐるみを抱えている。

 

 

ナナへのプレゼントはどこだ?

 

ティアのバスケットの中か?

リーナのバッグの中か?

 

どっちにしろ、プレゼントはそんなにデカいものではないみてえだな。

 

 

おれの探るような視線を感じたのか、ティアとリーナは警戒するそぶりを見せた。

 

ちっ! 部屋を覗こうとしたこと、まだ根に持ってるのかよ。未遂だっていうのに。

荷物を持ってやろうかと思ったが、下手するとまた騒ぎ出すかもしれねえな。

 

 

「リーナ。ぬいぐるみはおれが持ってやるよ。肩からバッグを下げて、ぬいぐるみも

 抱えてたんじゃ歩きにくいだろ」

 

おれは片手をリーナに差し出した。

 

 

「ありがとう、おにいちゃん!」

 

リーナは嬉しそうに笑って、おれにスライムのぬいぐるみを手渡してきた。

おれたちのやりとりを見ていたティアは、警戒を解きホッとした様子で微笑んだ。

 

へへっ。どうやら上手くいったな。

 

 

 

そのまま3人でオーウェンの店に向かって歩いていると、向こうから王子とミリアが

並んで歩いてくるのが見えた。

 

おれたちを見つけた王子は、ミリアの手を引いて嬉しそうに駆け寄ってきた。

 

 

「やあ、おはよう。みんな」

 

王子はおれたちに微笑みかけてきた。

 

 

王子は... 大した荷物は持っていない。

 

隣にいるミリアは、リーナのバッグよりも少し大きいバッグを持っていたが、今日は

このままムーンペタに泊まる予定だとすれば、妥当な荷物の量かもしれねえ。

 

なんせ女ってやつは、ちょっと出かけるだけでも、やたらと荷物が多いからな。

 

う~ん、王子とミリアの様子を見ただけでは、プレゼントがなにかはわからねえ。

 

 

こりゃ、王子からのプレゼントが改良版の『ロトの印のステッカー』というのも

冗談じゃなく本当にあるかもしれねえ!

 

おれは涼しい顔をして歩く王子を見て、思わず吹き出しそうになるのをこらえた。

 

 

オーウェンの店の前に着くと、ちょうどオーウェンが大きなキャリーケースを持って

店の狭い入口から出そうとしていた。

 

 

「すげえ荷物だな」

 

おれは笑ってオーウェンを手伝ってやった。

 

 

「ええ、どうもありがとうございます。えっと...。申し上げにくいのですが、実は

 荷物はもう1つあるんですよ…」

 

オーウェンはおれに礼を言いながら、店の奥を申し訳なさそうに指差した。

確かにもう1つ、とてつもなくバカでかいキャリーケースが店の奥に置かれている。

 

 

「どれぐらいの方がパーティーに参加するのかわからなくて、受け取れない方がいたら

 いけないと思って詰め込んでいるうちに、こんな量になってしまいまして...」

 

オーウェンは頭をかいている。

 

 

「良かったら、もう1つはぼくが持ちますよ。ぼくはほとんど荷物も無いですし」

 

王子はそう言うと、店に入って奥からキャリーケースを軽々と運び出した。

 

 

 

「今回は移動するのが大人数になるからな。なるべくおれの近くに集まれよ」

 

オーウェンの店の前でおれは呪文のために精神を集中しながら、周りに声をかけた。

失敗するとは思わないが、人の多さにいつもより少しだけ緊張が走った。

 

 

おれの呼びかけに全員が集まってくる。

ミリアはギュッと王子の腕にしがみついた。

 

 

「ミリア。近づけとは言ったけど、そこまでぴったりくっつかなくても良いんだぜ」

 

おれがからかい口調で言うと、王子とミリアは一瞬で真っ赤になった。

 

 

へへっ、こいつらをからかうのはおもしれえな。... おおっと、いけねえ。集中集中!

 

 

気持ちを落ち着けると、身体の内側から魔力がみなぎってくる気がした。今までにない

人数での移動に多少の緊張はあったが、どうやら大丈夫そうだ。

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

 

虹色の光が薄れ、ムーンペタの町が見えるとホッとした。周りを見ても異常はない。

良かった、全員無事だ。

 

 

さっそく町に入ろうとすると、見覚えのあるおっさん2人が町の入口に立っていて

町の中の様子をうかがっていた。

 

 

「おいっ、なにやってんだよ」

 

おれが声をかけると、2人のおっさん、オルムとレオンはビクッとして振り返った。

 

 

「なんだぁ~、カインかよ。おどかすなよな。寿命が縮まるじゃねえか」

 

レオンは声をかけたのがおれたちだとわかって、ホッと胸をなでおろしている。

 

  なぜかおびえた様子のレオン

 

 

「なにをビクビクしてるんだ?」

 

 

「今日のこと、ナナ姫には内緒なんだろ? このまま町に入って、もし姫様に会ったら

 なんて言い訳しようかと思ってよ。特に、これは何だって聞かれたときとかさ...」

 

オルムは困惑した顔で、手にしている白く大きな包みを持ち上げながら言った。

 

 

ほう...

どうやらあれがプレゼントらしいな。

 

レオンは?

見たところ何も持っていないようだが...

 

オルムの包みも、なんだかやたらと四角い箱みてえな形をしているな。

ん? 変だぞ。雷神丸の模型だとしたら、半月みたいな形になるはずなんだが...

 

 

「確かに。言われてみると、私たちの格好はちょっとおかしいかもしれませんね」

 

オルムの包みをまじまじと見つめるおれの横で、オーウェンがぽつりとつぶやいた。

 

 

オーウェンの言葉を受けて、おれは周りの奴らを見まわした。

 

ティアとリーナ、ミリアに関しては、見つかってもまだごまかしがきくかもしれねえ。

ちょっと荷物が多いようだが、ムーンペタに泊まりに来たといえば通用するだろう。

 

 

王子とオーウェンは、バカでかいキャリーケースを持っているのが何とも不自然だし、

おれに至っては片手には薄桃色の包み、もう一方の手にはスライムのぬいぐるみだ。

 

ぬいぐるみはリーナに返すとしても、薄桃色の包みは明らかに違和感がある。

 

 

「あんた、なに持ってんのよ?」

 

間違いなくナナに言われるだろう。

 

 

オルムとレオンに関してもそうだ。

レオンは手ぶらだが、そのせいで逆に、オルムの持つ白い包みがやたらと目立つ。

 

 

「ねえ、オルム。その白くて大きな包みはなに? なにを持っているの?」

 

うん、ナナはきっと悪気もなく、純粋な好奇心から尋ねてくるだろうな。

 

実際にそう言っているナナの声が聞こえた気がして、おれは背筋がゾクッとした。

 

 

おい! ここまで来てナナに見つかっちまうだなんて、そんなダセーこと出来ねえぞ!

 

 

おれたちはムーンペタの町に入る前に、入念に話し合うことにした。

 

 

見つかっても言い訳しやすいティアとリーナに先陣を切らせて、次は王子とミリア、

その後におれとオーウェン、オルム、レオンが続くことで話がまとまった。

 

 

ティアとリーナ、王子とミリアの2組は、仮に途中でナナにバッタリ会ったとしても

「ナナに会いに来た」と言えば、不審に思われる可能性も低いからな。

 

 

王子もミリアと一緒にナナに会いに来たと装うため、王子が持っていたオーウェン

キャリーケースは、代わりにレオンに運ばせることにした。

 

 

 

「もし、先行する誰かが途中でナナにバッタリ会ったら、その時点で、おれたちは

 4人で逃げるぞ。魔法の効果が薄れないように、なるべくおれから離れずにいろよ」

 

 

おれはまだしも、オルムやレオン、ましてやオーウェンがナナに会いに来たなんて

どう考えても不審がられるからな。

 

先陣の誰かが見つかった時点で、おれはルーラを使って町から離れることに決めた。

 

 

「とりあえず教会までたどり着ければ、あとはアルファズルがなんとかしてくれる。

 ナナに会わずに無事に教会までたどり着ければ、おれたちの勝ちだ」

 

 

「そうなると、先陣たちにガンバってもらわねえとな。特におれたち後方4人は、

 アルファズルの助けがねえと、教会には入りづらいからよ」

 

 

「教会には姫様がいるんだもんな。そりゃ、出会う確率が跳ね上がるってことだよな」

 

王子からバカでかいキャリーケースを受け取ったレオンは、ブルッと震えた。

 

 

「ティア、リーナ、この作戦の成功はおまえたちにかかっている。頼んだぜ」

 

 

「ええ、わかったわ」

「ティアちゃん、がんばろうね」

 

おれが声をかけると、ティアとリーナは緊張した面持ちでギュッと手を握り合った。

 

 

 

いよいよ、ナナの誕生日当日☆

でも、まだパーティー会場にすらたどり着けていません…(引っ張るよね~ (;´∀`))

 

みんなでムーンペタに向かう途中、やっぱりプレゼントが気になるカイン ( *´艸`)

 

ティアとリーナには覗き未遂の件で警戒されて探れないし、王子は何も持っていない?

(何も持っていないってことは、まさか本当に懐にステッカーを入れているのか?!)

 

オーウェンはなにやら大量に持って行くけど、中身についてはわからないまま... (-"-)

 

 

ムーンペタの町の入口でオルムとレオンに会ったけど、レオンはひょっとして手ぶら?

オルムが持っている白くて大きな包みも、雷神丸にしては形が変だぞ?!

 

 

プレゼントのことではモヤモヤがつのる中、ナナに見つからずに教会にたどり着く

ミッションが始まりました ( *´艸`)

 

 

入念に作戦を練った8人。

無事に教会へとたどり着けるでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ