ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 90】小競り合い

ティアが実は「女王になりたい」という野望を持っていると聞かされたおれたち。

 

王子やナナがティアを激励する中、おれは「誰にも明かしていない野望」について

1人で思いを巡らせていた。

 

今までは絶望的だと思っていたが、もし本当にティアが王位を継ぐのなら、ずっと

心に秘めていた野望を果たせる可能性も出てくるなと、おれは内心ほくそ笑んでいた。

 

 

いつから見られていたのかまったく気づかなかったが、心の中で歓喜しながら無意識に

ナナを見ていたおれをリオスは鋭い眼光で見つめていて、おれと目が合うとすべてを

察したかのようにニンマリと笑った。

 

 

リオスの鋭い視線と意味ありげな笑顔に思わずたじろぎそうになったが、おれはすぐに

気を取り直して平静を装った。

 

そして、「こんなところで立ち話もなんだからよ」と全員を応接間へと導いた。

 

 

全員を応接間に案内し、近くにいた女中に人数分の茶を用意するよう告げたおれは

何も考えてない風を装うため、椅子にどっしりと座り、くつろいだ様子を演じた。

 

 

リオスはおとなしくおれたちの後についてくると、応接間に置かれている調度品や

骨董品の数々を手に取りながら、ギラギラした目で興味深そうに眺め出した。

 

ふぅ~。あの鋭い眼光で、おれの野望を見抜かれたんじゃねえかとヒヤヒヤしたが、

どうやらおれへの関心は薄れたようだな。

 

 

ティアは「ちょっと待ってて」と言って部屋を飛び出していくと、自室からなにやら

分厚い本を持ってきて、熱心に読み始めた。

 

 

「この熱意がずっと続けばいいんだけどな」

 

ティアを見ながらおれがつぶやくと、ティメラウスも苦笑しながらうなずき返した。

 

 

盆を持った女中が応接間に入って来て、慣れた手つきで茶と茶菓子を配り始めた。

 

リオスは、もはやおれの方には見向きもせず、出された茶菓子に早速かぶりついた。

 

 

「ところで、みなさまはどうしておそろいでサマルトリアへ? わが君に御用ですか?」

 

全員が運ばれてきた茶に口をつけ始めたところで、ティメラウスが尋ねてきた。

 

 

おれは、紋章を今後はロト3国で分配すると決めたこと、その決定を今日は3人で

親父に報告しに来たこと、明日はラダトームに行く予定であることを伝えた。

 

 

これまでのティアならラダトームに行くの? あたしも行きたい!」と騒ぐところだが

今は別人のようにおとなしく、難しい顔で熱心に本を読み続けていた。

 

 

「ティア、おまえは行かなくていいのか?」

 

静かすぎるティアを不気味に思いながら尋ねると、ティアは本を見たままの状態で

首をぶんぶんと横に振った。

 

 

「あたしはいいわ。おにいちゃんよりずっと立派になるためには、まだまだお勉強を

 がんばらなきゃいけないもの」

 

へっ、こいつ本当にティアかよ?

 

別人のようなティアに驚きながらも、おれはホッと胸をなでおろしていた。

 

 

先ほど廊下でティアを見かけたときから、おれはずっと考えていた。

 

もし、ティアが「あたしもラダトームに行きたい」と言い出したら、どうする?

 

 

『王子とミリアの結婚』が、今のところおれたちしか知らない機密事項である以上

ティアを一緒に連れていった場合は、ルプガナには行けなくなるだろう。

 

 

ティアに絶対に秘密だぞと言って、王子たちの結婚話を打ち明けるという手もあるが

おしゃべりなこいつに重大な秘密を打ち明けて、その結果とんでもないことになっても

責任は負えねえからな。

 

やはり、余計なことは言わない方がいい。

 

 

 

だが、ルプガナ行きを断念すると、「ミリアに直接おめでとうを言いたい」という

ナナの願いも叶えてやれなくなるし、おれとしても、ルプガナに行けないのは困る。

 

 

となると、ルプガナまで行くためには、ティアを置いていかなければならない。

 

そうなると、どんな策が必要だ?

またティメラウスに協力してもらうか?

 

 

さっきからずっと「効果的な策はないか?」と頭の中で思考を巡らせていたが、まさか

ティアが自ら「あたし行かない」と言ってくれるとはな! 女王の話が功を奏したぜ。

 

 

明日起きたら「やっぱりあたしも行く」と言い出すんじゃねえかという不安もあるが

とりあえず、このままティアをサマルトリアに置いていけるなら大助かりだ。

 

 

おれは本から視線を離さないティアのことは放っておいて、王子に目を向けた。

 

 

「王子。おまえ、親父には1人で会いに来ていたみたいだけどよ、ラダトーム王にも

 同じように会いに行ったのか?」

 

 

「ううん。実はまだ会ってないんだ。だから、この機会にラダトーム王にステッカーも

 渡せたらいいなと思ってるよ。本当は、もっと早く会いに行きたかったんだけどね

 サマルトリアと違って、ラダトームはちょっとローレシアからは遠いからさ...」

 

 

ローレシアには『キメラの翼』すら置いていない、シケた道具屋しかねえもんな。

 そりゃあ、ラダトームは遠いよな~」

 

おれに黙って親父と会った腹いせに、ここぞとばかり嫌みたっぷりに言ってやった。

 

おれの予想通り、王子はムッとした。

 

 

「ふふっ、偉そうにしちゃって。あんたは『キメラの翼』程度で威張っているけど、

 サマルトリアだって武器屋には『鎖鎌』や『鎖かたびら』しか置いてないじゃない」

 

ナナが小馬鹿にしたように言ってきた。

 

 

「なにっ! おまえ、王子の肩持つのか?」

 

「あら、あたしは事実を言ったまでよ」

 

 

「ちょっと製鉄技術が進んでいるからっていい気になるなよな。ムーンブルクなんて

 暑すぎて農作物もまともに育たねえじゃねえか。まぁ、城からちょっと西に行ったら

 すぐに草木も生えねえ砂漠地帯だもんな。気候が悪くて当たり前ってところか」

 

 

「なんですってえ!」

 

「へっ、おれは事実を言っただけだぜ」

 

 

「まあまあ、2人とも止めなよ。そんなつまらないことで喧嘩しないでくれよ」

 

 

「うるせえ、おまえは黙ってろ。ローレシアなんて、道具もまともに揃ってねえ上に

 ジメジメして農作物も育たねえような、本当にどうしようもねえ土地なんだからよ」

 

 

「なんだって?!」

 

 

「へっ。実際にそうじゃねえか。城の位置関係だけを見れば、本来なら気候的には

 ローレシアサマルトリアと近いはずなんだぜ。でも、実際は全然違うだろ?

 おまえのところは、湿度が高すぎるんだよな。だから、ローレシア城の周りには

 スライムとかおおなめくじみてえな、ぬとぬとした気持ち悪い奴らが、次から次へと

 うじゃうじゃ湧いて出るんだぜ!」

 

 

 「ぬとぬとした気持ち悪い奴」代表・おおなめくじ ( *´艸`)

 

 

「ふんっ! きみはそうやってローレシアを貶めたいみたいだけど、サマルトリアだって

 城の周りにいるのは、所詮ねずみやコウモリじゃないか。ねずみやコウモリなんて、

 我がローレシアを馬鹿に出来るほどのスゴイ奴らだとは、到底思えないけどねっ!」

 

ローレシアを馬鹿にされてよほど悔しいのか、王子はめずらしく声を荒らげた。

 

 

「あぁ? なんだとっ! 王子。てめえこそ、サマルトリアを馬鹿にしようって魂胆か?

 ねずみやコウモリを理由に、サマルトリアを馬鹿にしようとしたってムダだぜ。

 なんせ、なめくじとねずみじゃ『生き物の質』が大違いだからな!」

 

 

  カインいわく、おおなめくじより『質が高い』 やまねずみ ( *´艸`)

 

 

 

「へえ、そうかい? いかにもきみが考えそうな変な理屈だよな。ぼくは、なめくじと

 ねずみの『生き物の質』はどちらが上か なんて、そんなこと今まで

 1度も考えたことないからね! 城の近くで見かけるのが『なめくじ』じゃなく

 『ねずみ』だからって、自分たちはローレシアより上だなんて意味不明な主張をする

 サマルトリアのおかしな発想 は、ぼくには

 まったく理解できないな!」

 

 

「お、おかしな発想だとっ!? 王子! てめえ、よくも

 言ってくれたな!」

 

 

 

 

「うるさいわねっ!!」

 

おれが王子につかみかかろうとしたところに、ティアの怒声が飛んできた。

 

 

ティアはバンッと大きな音を立てて本を閉じると、おれたちをにらみつけてきた。

 

「あなたたち、あたしが今、お勉強中だってこと知ってるわよね? サマルトリア

 未来のために、あたしはこんなに熱心にがんばってるっていうのに。すぐ横で

 ねずみがどうだの、なめくじがどうだのって、くっだらないことでいつまでも

 グチグチグチグチ言い合って! あたしのお勉強の邪魔しないでちょうだい!」

 

 

いつもはおれが「騒ぐな」だの「もっとおとなしくしろ」だのとさんざん言っている

ティアにまったくのド正論で叱られ、さすがにおれたちも言葉を失くして押し黙った。

 

 

途中からはおれと王子の言い争いになって、ナナはこの話には参加していなかったが

自分がこの言い争いのきっかけをつくったこともあって、おれたちと同じように

気まずそうな顔で黙っていた。

 

 

「『生き物の質』ってなによ。2人とも馬鹿なんじゃないの? くっだらないことで

 子どもみたいにムキになって言い争って。しかも、話の内容が『なめくじ』とか

 『ねずみ』とか、なに情けないこと言ってんの? そんなことで勝った負けたなんて

 もし、人様に聞かれたらどう思われるか考えて言ってるわけ? ホントにもうっ!

 恥ずかしいこと言わないでちょうだい! それにあたし、ねずみが大っ嫌いなの!

 今後、あたしの前でねずみの話はしないで! 2人とも、わかった?」

 

 

ティアに怖い顔でにらまれながら一気にまくし立てられて、王子は小さくなりながら

か細い声で「... はい」と返事した。

 

仕方なくおれもうなずいた。

 

 

 

「えっと... ところで、ぼくたちは何の話をしていたんだっけ?」

 

しばらく沈黙が続いたが、この場の空気を変えようと王子がおれに声をかけてきた。

 

 

「ああ、そうだ。おまえ、ラダトーム王にはまだ会ってねえんだよな。ということは

 『ロトの印のステッカー』をラダトームに持って行くつもりなんだろ? ステッカーは

 多めに持って行くのか?」

 

 

「うん。前にムーンブルクで、みんなにステッカーを求められたのに、ぼくの手持ちが

 少なくて渡せなかったことがあっただろう。あれを教訓にして、誰に求められても

 すぐに渡せるように、今は普段から多めに持ち歩くようにしているんだよ」

 

王子は腰に付けた袋をポンッと叩いた。

 

 

「多めに持っているんだったらよ、その袋、少しだけおれに預けてくれねえか?」

 

 

「え? ... ああ、うん。別に構わないけど」

 

王子は不思議そうな顔をしながら、腰の袋をおれに手渡してきた。

 

 

「へへっ。実際にこのステッカーを使うことになるのかならねえのかは、ラダトーム

 行ってみねえとわかんねえんだけどな」

 

 

「えっ? どういうことよ?」

 

王子とナナが怪訝な顔でおれを見てくる。 

 

 

「はははっ。それはラダトームに着いてからのお楽しみってところだな」

 

おれは得意満面で鼻の下をこすった。

 

 

 

今回の話はラダトームに行くまでのつなぎ。

 

書いておきたかったのは以下の2点でした。

 

・ ティアはラダトームには行かない

・『おうじはカインにロトのしるしのステッカーをてわたした』

 (ラダトームでの話につなげるため)

 

最初はそれだけを書くつもりが、いざ書き始めたらなぜかこんなことに... (;´∀`)

 

 

パパと会っていたことを内緒にされた仕返しに、まずカインがローレシアを馬鹿にして

チクリとやったところで、ナナからサマルトリアを馬鹿にされ返り討ちに遭う ( *´艸`)

 

そこまで考え「ここからどうする?」となったときに思い出したことがあったんです。

 

 

以前、大司教が王子の成長を感じて感極まって泣いてしまった話を書いたとき

 

【創作 85】号泣 - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

王子の記念すべき初戦「スライム&おおなめくじ戦」を目撃した大司教の話のところで

「おおなめくじの画像でも入れようかな~?」と思った私は『大なめくじ』を検索☆

 

すると、検索結果で出てきたのは『リアル大なめくじ』の写真… ( ´;゚;∀;゚;)

 

当然「ウギャー」となって ( *´艸`)

「こんなのがウヨウヨいるローレシアってキモくてヤバッ (◎_◎;)」と思ったんです。

 

 

で、まずはカインに、そんな私の気持ちを代弁してもらうことにしました ( *´艸`)

 

その後、ローレシアをディスられたら温厚な王子も黙っちゃいないだろうと思って

反論を考えていたら、なぜか『なめくじ VS. ねずみ』の話に… (;´∀`)

 

 

王子とカインの言い争いを書きながら、私も「馬鹿じゃないの?」と思っていたので

ティアの叱責は、私の心の声ですね ( *´艸`)

 

 

さて。くだらない小競り合いが、今回のメインのようになってしまいましたが (;´∀`)

実際は『おうじはカインにロトのしるしのステッカーをてわたした』が大事なんです☆

 

カインは王子から『ロトの印のステッカー』を受け取って、ラダトームでいったい

何に使うつもりなんでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ