ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 80】ローレシアは今!

ナナからの相談事は「この先、呪文と紋章をどう管理していくか?」だった。

 

平和になった今、おれたちが旅の中で覚えた呪文と、おれたちが世界中で集めた紋章が

今後、邪な奴らに悪用されることのないよう、どんな形で残していくかよく話し合えと

アルファズルに言われたのだという。

 

 

紋章に関しては、ルビス様の力が込められたものだからじっくり検討する必要があるが

呪文についてはローレシアが最適な保管場所だとおれは確信していた。

 

なぜローレシア? と首をかしげるナナを連れ、おれたちはローレシアへと向かった。

 

 

 

ルーラでローレシアに着き、まず目についたのは元気よく走り回る子どもたちだった。

 

 

王子が『破壊神を破壊した男』と人々に忌み嫌われて恐れられていた頃、ローレシア

子どもの姿を見ることはなかった。

 

町中はひっそりと静まりかえっていて人影もまばらだったし、外に人がいるといっても

険しい顔をした数人の大人が眉をひそめてひそひそ話しているか、沈痛な表情の兵士が

城下町を巡回している程度で、あの頃は町全体が重苦しい空気に包まれていた。

 

 

それが今は一変していた。

 

王子の人柄が世間にも広く知られて、一度はローレシアを離れた人たちも戻ったのか

辺境の地だが住みやすいローレシアへ新たに移住する人も増えたのかもしれない。

 

人口が流出して寒々しかったこの場所は、明らかに生まれ変わっていた。

 

 

子どもたちが元気に走り回り、外に出ている大人たちもにこやかに談笑している。

 

城下町にある店は相変わらず小さいままだが、小さな店にはたくさんの人が集まり

賑やかに活気づいている。特に『ロトの印のステッカー』を売る売店は大盛況で、

ひっきりなしに人が出入りしていた。

 

 

はしゃぎながら走る子どもたちは、おれとナナを見つけるとなにかを振ってきた。

 

「なんだ?」と思って見ると、振っているのは『ロトの印のステッカー』だった。

 

おれとナナは顔を見合わせた。

 

 

子どもたちの意図することはよくわからないが、おそらくなにかの合図なのだろう。

 

おれとナナが懐から『ロトの印のステッカー』を取り出して見せると、子どもたちは

顔を輝かせて走ってきた。

 

「おにいちゃんたちも、王様の仲間ね!」

 

息を切らせて走ってきた女の子がおれとナナを見上げてにっこり笑う。

 

 

「ええ、そうよ。あたしたちも王様の仲間なの。あなたたちも王様の仲間なのね」

 

ナナはしゃがんで子どもたちと目線を合わせると、女の子の頭を優しくなでた。

 

 

「お父さんとお母さんが『これを持っていれば王様の仲間になれる』ってくれたんだ」

ローレシアに住む人はみんな王様の仲間だから全員がこれを持っているの」

「これを持っていれば、あたしたち王様に会うことも出来るのよ」

「王様は忙しくないときは、城に案内してぼくたち『仲間』と遊んでくれるんだよ!」

 

子どもたちは大きな声で嬉しそうにナナに向かって口々に話しかけてきた。

 

ナナは振り返り、おれを見て微笑んだ。

 

 

忌まわしい噂が流れて廃墟になりかけていたローレシアが息を吹き返したな。

子どもたちも『仲間』にして、これからますます活気づくことだろう。

 

 

「おねえちゃんたち。王様に会いたいのなら、ぼくたちが連れて行ってあげるよ」

「一緒に行きましょう!」

 

おれとナナは子どもたちに腕をつかまれ、引っ張られる格好で城門に連れて来られた。

 

 

おれたちの先に走って行った少年が門番に『ロトの印のステッカー』を見せている。

 

門番は鎧の隙間から同じようにステッカーを取り出して笑顔で応じていたが、少年の

後ろからおれとナナが歩いてくるのを見ると、目を見開いて慌てて姿勢を正した。

 

 

「門番さん、このおにいちゃんたちも王様の仲間なの。王様に会いたいんだって」

 

おれの手を引く女の子が『ロトの印のステッカー』を見せながら門番に話しかけた。

 

 

門番はおれの顔を見た。

おれは「余計なことは言うな」と門番に目配せして、ステッカーを見せた。

 

「ほら。おにいちゃんたちも『仲間』でしょ? あたしたちと一緒にお城の中に入れて

 王様に会わせてあげて欲しいの」

 

 

門番は目をぱちくりさせておれと少女を交互に見ながら「お、おともだちのみなさんを

城内へとご案内いたしまーす」と上ずった声で中に向けて叫んだ。

 

門番のこの言葉は、子どもたちが城に遊びに来たときの合い言葉なのだろう。

若い兵士がニコニコしながら出迎えに来た。

 

 

笑顔で出迎えに来た兵士は、子どもたちと手をつないで立っているおれとナナを見ると

ぎょっとした顔で硬直した。

 

おれが少女とつないだ反対の手で人差し指を立ててサッと唇に押し当てると、兵士は

おどおどしながら小さくうなずいた。

 

 

「おにいちゃんたちは王様の仲間なんだよ。王様に会いたいって言うから、ここまで

 ぼくたちが連れてきてあげたんだ」

 

「この2人は悪い人じゃないよ。ちゃんとステッカーも確認したからね!」

 

2人の男の子がえへんと胸を張った。

 

 

「そ、そうか。わ、悪い人じゃないんだね。じゃあ、安心して王様にご案内できるよ」

 

若い兵士は額に汗を流しながらも必死に平静を装うと、城の奥に向かって叫んだ。

 

「お、おともだちのみなさんを謁見の間へとご案内いたしまーす」

 

 

「さあ、いきましょ」

 

少女がおれの手を引いて弾むような足取りで歩いていく。

 

子どもたちを見守りに王宮内から出てきた兵士たちがおれとナナを見て驚いている。

1人の兵士はあんぐりと口を開け、すぐに手で口を押えた。

 

 

ローレシアではなかったが、以前にもこんな風に城内を歩いたことがあるな。

 

振り返ると、ナナが必死に笑いをこらえているのが見えた。

 

 

 

本来はすぐに王子に会って「巻物を保管するならローレシア!」とカインが言った

理由を書くつもりでした(ここからは恒例の(?)言い訳タイムですよ (;´∀`))

 

 

でも、『破壊神を破壊した男』の噂が広まって、ローレシアの人口が減少してから

カインたちが初めて訪れる機会になったので、今のローレシアはどうなったのかを

サラッと書いてから王子に会わせようとしたら、なぜかこんなことに... ( *´艸`)

 

王子に会う前で話が終わるという...

もうこの創作物語も80話になるというのに、ホント話が進まないですよね (;´∀`)

 

書いている途中で「これは王子に会う前までで終わっちゃうな」と察して、そこからは

完全に開き直りました ( *´艸`)

 

 

ゲームブックでは、ラダトームに到着した3人が城内に入ろうとした際に、門番から

「ロトの子孫を語るうすぎたないガキ」と罵られたことにカインがブチ切れて ( *´艸`)

『王位継承者の正装をしてラダトーム城に入城する』というシーンがありました☆

 

うすぎたないガキだと思っていたら王子様だったということで、オタオタする家臣と

堂々とした佇まいのカインが面白くて、ナナが笑いをこらえていましたよね (*´ω`*)

 

 

今回のローレシア入城は、ラダトームとは逆のパターンにしてみましたヾ(*´∀`*)ノ

 

ローレシア城に控えている家臣たちは全員、カインとナナを『サマルトリアの王子』と

ムーンブルクの王女』だと知っているけど、今回、謁見の間へと案内する際の待遇は

「城に遊びに来た子どもたち(の仲間)」という… (ノ´∀`*) 

 

本当は最大級の敬意でお迎えするはずのカインとナナを「王様のおともだち」として

城内に迎えることになってオロオロする家臣たちと、再び笑いをこらえるナナ ( *´艸`)

 

今は人口も増え、城内にも活気が戻った☆

そんなローレシアのほのぼのとした雰囲気を感じてもらえたら嬉しいです (*´ω`*)

 

 

さて、「王様のおともだち」として謁見の間に案内されるカインとナナ。

子どもたちの誘導のおかげで(?)、次回はいよいよ王様に会えますよ~ ( *´艸`)♪

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ