デルコンダル王の承諾を得て、おれはルーラで再びローレシア城へ戻って来た。
思い通りに事が進んだこともあって、すごく気分が良かった。
鼻歌まじりに城門へ向けて軽い足取りで歩いていくと
城門前にナナが腕組みをして立ち、あたりを見回しているのが見えた。
「ちょっと、あんた! こんな時間までどこ行ってたのよ!」
歩いてくるおれの姿を見つけたとたん、ナナはものすごい形相で
おれの元へとずんずん近づいてくる。こええ~。あいかわらずおっかない女だな。
「気づいたらいなくなってるし、ちょっと散歩って出かけたままで
どこに行ったのか誰も知らないって言うじゃない。近くにいるのかと思って
外に出てみても、どこにも姿は見えないし。どうせ、あんたのことだから
ルプガナのぱふぱふの店にでも行ってたんでしょ! いやらしいんだから!
まったく、もう! なによ、男なんて! デレデレしちゃってバカみたい!!」
おれが城を出たときは、ティアやリーナと楽しげにはしゃいでいたのに
今のナナはすこぶる機嫌が悪い。
おれの前に立つと腕組みをしたままおれを睨みつけ、早口でまくし立てる。
いったい、なにがあったんだ?
「まあまあ、落ち着けって。急に消えて悪かったよ。ところで、宴は終わったのか?
ティアやリーナはどうしたんだよ?」
「ティアちゃんもリーナちゃんも疲れて眠っちゃったわ。
オルム船長やお酒好きの人たちは、まだ何人か残って騒いでいるけど
料理もお酒もほとんど残ってないし、ほぼ散会ってところね」
「王子は?」
「飲み過ぎてつぶれちゃったわ。今は自室で休んでる」
「へえ、あいつがつぶれるなんてめずらしいな。まあ、泣きっぱなしのところに
お祝いだからって寄ってたかって飲まされたんだからしょうがねえか。
おい、あいつのことほっといて大丈夫なのかよ?」
おれの言葉にナナの顔色が変わった。
ナナはキッとおれをにらむと、吐き捨てるように言った。
「ふん! ほっときゃいいのよ、あんな2人なんか!」
はは~ん、そういうことか。
この一言でなんでさっきからずっとナナの機嫌が悪いのかようやくわかった。
酔いつぶれた王子をミリアが介抱しているのだ。
自室への入室を認められたってことは、あいつの親父もおふくろも
ミリアを公認してるってことか。
「なあ、ずっと聞きたかったんだけど、おまえってさミリアのこと嫌いなのか?」
「えっ。な、なによ急に。なんでそんなこと聞くのよ」
「そりゃあ、ムーンブルクの王女様と未来のローレシア王妃様がいがみ合ってたら
心配するさ。おまえもわかってんだろ? 王子とミリアはすっかり公認の仲だ。
きっとこのまま結婚するぜ」
「そうね。それはわかってるわ。あんたは誤解してるかもしれないけど
あたしはミリアを嫌ってるわけじゃないのよ。ただ、あの子があまりにも
『王子さま、王子さま』って言うからイライラするだけよ。
以前にも、カインが船酔いで苦しんでるっていうのに、王子と2人で
のんきに甲板でおしゃべりしてたことがあったでしょ。
さっきだってそう。カインがいなくなったっていうのに、あの子ったら
酔っぱらった王子の心配しかしてないんだもの。ローレシア城にいるんだから
王子なんてほっといても、家臣か誰かが介抱してくれるわよ。
それなのにカインのことはそっちのけで『王子さま、王子さま』ってさ!」
おれはずっと、ナナはミリアが王子にベタベタするから怒ってるんだと思ってた。
王子を取られるような気がして、やきもちを焼いているもんだと思ってた。
……でも、ちがう...のか......?
おれが船酔いしてるのに、ミリアが知らんぷりしたからイライラしただと?
今日もいなくなったおれより王子の心配ばかりするから怒ってるだって?
ナナは、酔いつぶれたあいつよりいなくなったおれを心配してくれたのか...?
散歩に行ったと聞いてからは、ずっと1人でおれの帰りを待っててくれたのか...?
胸の奥が熱くなる。まずい、ナナに悟られないようにしなければ。
「でもよ、おれはあれぐらい一途な方がいいと思うぜ。あんだけ一途に愛されたら
王子だって幸せだろうよ。ミリアはすごいぜ。一緒に旅してたときも
こ~んなにイイ男が近くにいるってのに、まったく見向きもしないんだからな」
おれはあごに手を当て、キリッとした表情でナナを見てやった。
ナナはぷっと吹き出した。
「もうっ、カインったら。そうやってすぐにふざけるんだから」
よし。どうやら機嫌は直ったようだな。
「陽が落ちて寒くなってきたな。そろそろ入ろうぜ」
「はいはい、そうね。と~ってもイイ男のカイン様」
おれたちは肩をたたき合い、大笑いしながら城内へと進んだ。
今日はこのままローレシア城に泊まらせてもらい、明日は3人で
サマルトリアへ向かう予定になっている。
ローレシアへ無事に戻ってきて、記念すべき(?)カインの初会話は
「カイン ♡ ナナ」でした~ (*´ω`*)
いや~、作者の願望・妄想たっぷりの会話でしたね~ (;´∀`)
ゲームブック(特にルプガナ~ラダトームあたり)を素直に読むと
『ナナは「王子&ミリア」にやきもちを焼いて怒ってる (`´)』となります。
でも、私はやっぱり「カイン ♡ ナナ」を猛プッシュしたいので (;´∀`)
「王子だけじゃなく(あたしの)カインのことも少しは気遣いなさいよね!」って
カインをスルーしてることにイライラしている設定にしてみましたヾ(*´∀`*)ノ
ナナの言葉に「おや?」と何となく勘付いていながらも「いや、まさかな」と
ふざけて茶化すことで自分の気持ちがバレないように必死なカイン ( *´艸`)
古い少女マンガのような展開に個人的には満足しています。
ベタな展開ですが、みなさまも楽しんでもらえたなら嬉しいです (*´ω`*)
では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ