ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 85】号泣

「ルビス様の力が宿った5つの紋章は、ロト3国で分配して持つのが良い」

大司教からそう助言されたおれたちは、紋章を手に入れたときのことを思い出しながら

それぞれの分配を決めていた。

 

旅の思い出を語り合っていると、おれたちの前に座っていた大司教が声も出さずに

ハラハラと涙を流しているではないか!

 

 

「あ、あの。だ、大司教様... いったい...」

王子が激しく動揺しながら尋ねると、大司教はハッとなって流れ落ちた涙をぬぐった。

 

 

「あぁ、恥ずかしい姿を見せて申し訳ない。話を聞いていたら、殿下、いえ国王が

 初めて旅に出る前に、ここを訪ねてきたときのことを思い出してしまってね」

 

「王子が初めて旅に出るとき?」

 

ムーンブルク落城の知らせを受け、兵士に取り憑いていたシルバーデビルによって

 父上が負傷され、1人でここを訪ねて来た国王は『ぼくはどうすればいい?』と

 とても心細そうで不安げな様子だった」

 

「へえ~、その話は興味深いな」

 

王子が旅に出る前の話はおれも初めて聞く。

おれが王子から聞いたのは、親父や軍隊の目を盗んで、見つからないようにこっそり

城を抜け出して来たってことだけだからな。

 

 

「私はナナ様を救出しこの危機を救うのは、ロト直系の血を受け継ぐ殿下しかいないと

 たきつけて城から送り出したんだが、内心では本当に大丈夫だろうかと心配でね…。

 国王が夜更けに城から出て行くのを、ここからこっそり見ていたんですよ」

 

「え!? 見てたの?」

 

 

「そこで私が見たのは、城から出てすぐに、ぽよんぽよんと跳ねてきたスライムに

『ばかぴょん』と言われたうえ、スライムに気をとられている間に不意を突かれて

 大なめくじが背中に張り付いたとオロオロして慌てふためく国王の姿でした」

 

大司教は静かな口調で大真面目に話しているが、おれとナナは思わず吹き出した。

 

 

「今の王子からは想像つかないわね」

 

「どんな強敵が襲ってきても自分から向かって行って、力まかせになぎ倒すおまえにも

 そんなときがあったんだな」

 

おれとナナは、背中に張り付いた大なめくじに「ひえええ~」と悲鳴をあげながら

悪戦苦闘する王子を想像して、しばらく笑いが止まらなかった。

 

 

「イヤだな、大司教様にそんな情けない姿を見られていたなんて」

 

おれたちに笑われて、王子は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。

 

 

「私が見た国王の姿はそれが最後ですからね。どれだけ心配だったかわかるでしょう。

 その日からは、ただただ無事の帰還を祈り続ける毎日でしたよ」

 

おれたちが笑い続けるのにつられて、大司教もフフッと苦笑いした。

 

 

「1年後、ハーゴンを討ち倒したといって3人でローレシアに凱旋する姿を見たとき

 見違えるほどたくましくなっていたんでね、国王は確かに偉業を成し遂げたのだと

 頭では理解できました。でも、私には旅に出てすぐのあの情けない弱々しい姿が

 目に焼きついているから。頭では理解できても、イマイチ実感が持てなかった。

 今、こうしてみなさんの話を聞いているうちに、王様は本当にとても強くなり

 強敵とも勇敢に戦ってきたのだと知ったら、不覚にも目頭が熱くなってしまい...」

 

話しながら大司教の瞳が再び潤み始めた。

 

 

「本当にこんなに立派になって...」

 

大司教は潤んだ瞳で王子を見つめると、手で口を押さえて再び泣き出してしまった。

 

 

王子は戸惑った表情を見せながらも、立ちあがって席をまわり大司教のそばに行くと、

顔を伏せて泣きじゃくる大司教の背中をゆっくりとなでてやった。

 

大司教は、この1年で筋肉がついてすっかり太くなった王子の腕をギュッとつかむと

子どものように声をあげて泣き始めた。

 

 

おれは隣にいるナナの肩をちょんちょんと突き、大聖堂の入口をあごでしゃくった。

ナナは無言でうなずき静かに立ち上がった。

 

おれたちは音を立てないように気をつけながら、そっと大聖堂をあとにした。

 

 

大聖堂を出ると、おれは大きく息をついた。

 

「ふぅ~。まさか、大司教があんな風に泣くなんてな。まったく驚いたぜ」

 

おれの言葉にナナも大きくうなずいた。

 

大司教様はずっと1番そばで王子を見守ってきたんだもの。自分の実の息子のように

 感じていたのかもしれないわね。王子の成長がよっぽど嬉しかったんでしょうよ。

 それにしても、急に泣き出すなんてね。本当にびっくりしたわ」

 

 

「普段、泣かないような奴が泣くと大きな意味を持つよな。おれたちはあの大司教

 ガキみてえに泣きじゃくるほどのとんでもねえ偉業を成し遂げたってことだよな!

 

おれが力強くそう言い切ると、隣で聞いていたナナがぷっと吹き出した。

 

 

なんだよ、とギロリとナナをにらみつけると、ナナは笑いながら謝ってきた。

 

「ごめんごめん。にらまないでよ。あんたのいつになく真剣な口調を聞いていたら

 つい思い出しちゃったのよ。サマルトリアのカイン殿下は、邪悪な魔神シドーを

 封印したのでございます』ってね」

 

ナナはおれを見て楽しそうに笑った。

 

おれたちが破壊神シドーを滅ぼして邪神殿から出たとき、おれは「おれたちがして来た

冒険は、すべての人々が忘れないように、代々伝えられなきゃならねえんだ。決して

忘れちゃならねえんだ」と真剣に訴えた。

 

そんなおれをナナはからかって笑ったのだ。

 

 

「おまえな、いっつもそうやって笑うけど、おれだってたまにはマジになるんだぞ!」

 

おれはナナをなぐるマネをした。

 

「だからごめんって言ったじゃないの」

ナナは楽しそうにおれから逃げ回っている。

 

 

おれたちがしばらくそうやって笑いながら追いかけっこをしていると、大聖堂から

大司教と王子が姿をあらわした。

 

 

「何度も見苦しい姿をさらして本当に申し訳ない。お2人とも、さあどうぞ中へ」

ペコリと頭を下げた大司教に促されて、おれとナナは再び大聖堂へと入っていった。

 

 

おれたちは再び先ほどの席に座った。

 

「先ほどの話だが、紋章についてはみなさんで決めた分配方法でいいでしょう。

 ただ、これはみなさんだけの問題ではないから、分配して保管することに関しては

 サマルトリア王とラダトーム王に了承をもらっておいた方がいいと思いますぞ」

 

泣くだけ泣いてスッキリしたのか、大司教はテキパキした口調で話し出した。

 

 

「それなら今日は2人ともローレシアに泊まってもらって、明日3人でサマルトリア

 行くというのはどうだろう?」

 

別に断る理由はないな。

おれもナナも王子の意見に賛成した。

 

 

「ところで、ここに来る前に3人で話したようだが『あの話』はもうしたのか?」

 

大司教が王子の方を見て尋ねると、王子は「あ... いや… それは...」と口ごもりながら

顔を赤らめてもじもじした。

 

こんな王子の姿を見るのは初めてだ。

何事だ? とおれとナナは顔を見合わせた。

 

 

 

 

前回からずっと悩ましかったのが、『大司教様の語り口調』でした (;´∀`)

 

最初は、サイラスのような丁寧な言葉遣いで書いていたんですが、ゲームブック

王子が最初に大聖堂を訪ねたシーンを読み返してみると、王子と話す大司教様の口調は

「頼れる兄貴」みたいなしゃべり方だったので、あわてて書き直しましたよ ( *´艸`)

 

 

いざ書き直してみると、疑問点がいっぱい出て来ました (;´∀`)

 

大司教は、王子に対しては気心が知れているから兄貴みたいな話し方でもOKだけど、

(初対面の?)カインとナナに対しても同じ話し方でいいのだろうか (◎_◎;)?

 

アルファズルは3人と交流があるから、年長者として上から話す感じでも良いけど

大司教はそこまで交流もないのに、いきなり偉そうにしゃべるのもな~ (゜-゜)

 

 

大司教様もローレシアの大賢者ということで、アルファズルと立場は同じ...。

 

アルファズルのような年長者の感じも出しつつ、アルファズルほどの関わりはないから

そこまで偉そうじゃなく、大賢者としての礼儀もわかっている感じで... (◎_◎;)??

 

うん、大司教様のセリフをどうするかについては本っ当に大変でしたわ~ (;´∀`)

苦労した分、みなさまに違和感なく読んでもらえたなら、とても嬉しいです (≧∇≦)♪

 

 

当時、ゲームブックをプレイしながらも「こんなので大丈夫なのか?」と心配になった

記念すべき王子の初戦 ( *´艸`)

 

スライムに「ばかぴょん」と言われ、ミンチにしてやる~! と息巻いていたら背中に

大なめくじがひ、ひ、ひっついた~、ひええ~(・´з`・) ... ってね ( *´艸`)

 

あれを目撃したら「この子、本当に大丈夫だろうか?」と心配になりますよね ( *´艸`)

 

 

そんな王子が、ドラゴンの首を一太刀で斬り落とすほど勇敢で強くなったと聞かされて

大司教様が王子の成長に感極まってしまったというシーンを書いてみました (*´ω`*)

 

子どものように泣きじゃくる大司教様と、大司教様の背中を優しくなでてあげる王子。

立場が逆転するほど王子が成長した姿を書けて、個人的には満足しています (*´ω`*)

 

 

でも、王子と大司教様の話だけだと(私的には)不完全燃焼なので、カインとナナが

仲良く笑いあっていちゃいちゃする場面も取り入れてみましたよ ( *´艸`)

 

2人が笑いあいながら追いかけっこするシーンはとても好きなんですよね~ (≧∇≦)♡

 

 

さて、大司教に話を振られると、急に顔を赤らめてもじもじする王子。

こんな王子の姿は初めてですよね!

 

大司教が言っている、王子を赤面させた『あの話』とは何なんでしょうか!?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ