ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 91】知恵熱

翌朝。早起きしたおれは、自室でラダトームに向かう準備をしていた。

 

昨日、王子から預かった袋を忘れないように身に着けていると「コン、コン」

ドアをノックする音が聞こえた。

 

 

こんな朝っぱらから誰だよ? と思いながらドアを開けると、ナナが立っていた。

 

「ん? ナナか? こんな朝っぱらからどうした? なにかあったのか?」

 

「おはよう、カイン。さっき、あたしティアちゃんに会いに行ったの。ティアちゃん

 昨日はラダトームには行かずに、サマルトリアにいる』って言っていたでしょ?

 本当にそのつもりなら、出かける前に会ってあいさつしておこうって思ったの。

 そしたら、ティアちゃんったら。今朝から急に熱が出たみたいのよ」

 

「ティアが熱出した?」

 

「そうなの。たいした熱じゃないし、今は起き上がることも出来ているんだけどね。

 熱があるのにこのまま放っておくのも可哀想だし、誰かに話した方がいいと思って

 あんたに話そうと思ったのよ。それで、部屋を出てここに向かっている途中で、

 あたしたちを見送りに来たティメラウスに会ったの。そこで、ティメラウスには

 ティアちゃんのことも話はしたんだけど、一応あんたにも伝えておこうと思って」

 

「そうか。ありがとよ。まぁ、ティアも起き上がれる程度の熱なら、ティメラウスに

 まかせておけば心配ねえけどな。とりあえず、出発前に様子を見に行くか」

 

おれはナナと一緒に自室を出た。

 

 

ティアの部屋へ向かう途中で、こちらに向かって歩いてくる王子に会った。

 

「2人とも、おはよう。もしかして、もう出かけるのかい? いつ出発する予定なのか

 カインに聞こうと思って、きみの部屋に行くところだったんだけど」

 

「いや。まだ出るつもりはねえんだけどよ、ティアが熱出したみたいでな。出発前に

 様子を見に行こうと思ってよ」

 

おれは王子に事情を話し、王子も連れて3人でティアの部屋へ行くことにした。

 

 

 

「はっはっはっは!」

 

ティアの部屋に近づくと、中から豪快に笑うティメラウスの声が聞こえてきた。

 

 

笑い声に合わせてティアの声もする。

 

「なによ、そんな言い方ってある? 失礼しちゃうわ!」

 

ティアは熱を出した奴の声とは思えないほど元気な声で、誰かに怒っていた。

 

 

おれたちは思わず顔を見合わせた。

 

 

ティアの部屋のドアは開け放たれており、室内の明るい光が廊下にまで漏れていた。

 

部屋の中を覗くと、ティアとティメラウスの他にもう1人、恰幅のいい男がいた。

男は『サンチョ』という名前で、サマルトリア緑の騎士団で軍医をしている奴だ。

 

 ドラクエシリーズの新しいキャラを登場させてみた ( *´艸`)

 

サンチョは緑の騎士団に常駐していて、普段は演習中にケガをした奴の治療をしたり、

体調不良を訴える奴に最適な薬を処方したりしていた。治療以外では料理も得意で

遠征の際は、騎士のために滋養強壮に効く手料理をふるまうこともあるようだ。

 

 

おそらくティアが熱を出したと聞いて、ティメラウスがサンチョを呼んだのだろう。

 

サマルトリアには、親父やおれたち皇族の健康管理を任された『医師団』も存在したが

おれたちは子どもの頃から、ちょっとしたケガや不調のときは、医師を呼ぶのではなく

サンチョを頼りにしていた。

 

 

サンチョは人懐っこく、面倒見も良くて頼りになるのだが、なんせ生まれたときから

おれたちを知っているから、おれやティアをいつまでもガキ扱いしてくる面もある。

 

おそらく今回もサンチョがまた何か余計なことを言って、ティアを怒らせたのだろう。

 

 

「なんだよ、熱があるって聞いてきたのに、ずいぶん元気そうじゃねえか」

 

おれたちが部屋に入ると、「おにいちゃん!」と言ってティアが駆け寄ってきた。

 

 

「ウソじゃないわ、あたし本当に熱があるのよ。ほら、触ってみてよ」

 

ティアがおでこを突き出してきたので触ると、高熱とはいえないが確かに熱があった。

 

 

「で、どうなんだ? ティアの状態は。熱が出た程度で、たいしたことねえんだろ?」

 

おれがティアのおでこに手を当てながら尋ねると、サンチョはにっこり微笑んで

「まったく問題ありませんよ」と言った。

 

 

さっき豪快に笑っていたティメラウスは、おれたち3人が部屋に入ってきたことで

声を出して笑うのは止めていたが、終始ニコニコとした笑みを浮かべ続けていた。

 

2人がこの様子なら、ティアの発熱は本当に心配するものではないのだろう。

 

 

「さっきは廊下にまでおまえの怒り声が聞こえてたぜ。なにを怒ってたんだよ?」

 

おれの言葉にティアは顔色を変え、憤慨した様子でサンチョをにらみつけた。

 

 

ティアのにらみなんて一向に気にする様子もなく、サンチョはデレデレ笑っていた。

 

さきほどのやり取りを思い出したのか、ティメラウスが「ぷぷっ」吹き出した。

 

 

吹き出したティメラウスに、ティアはギロリと鋭い視線を向けた。ティメラウスは

笑いを抑え、いったん真面目な表情を浮かべたが、どうやら笑いを堪えきれない様子で

口元は緩んだままだった。

 

 

ぷんぷんになって怒るティアと対照的に、デレデレと笑い続けているサンチョと、

笑いを堪えきれないティメラウス。

 

よっぽどおもしれえことがあったようだ。

 

 

「ティメラウス卿にお嬢ちゃんが熱を出したから診てくれと言われてね、私は大慌てで

 ここまで走って来たんですよ」

 

サンチョは大きな図体を揺らし、ふうふうと息を切らせて走る演技をしながら

これまでの経緯を話し出した。

 

 

「心配して走ってきたけど、診たところお嬢ちゃんの健康に問題はなかったんでね。

 まずは、ひと安心ですよ。ただ、大丈夫とはいえ、今朝いきなり熱が出たなんて

 気になるからね、お嬢ちゃんに『この数日で何か変わったことをしなかったか?』と

 尋ねたんですよ」

 

 

おれと王子とナナは、サンチョの言葉に真剣に耳を傾けていたが、ティメラウスだけは

ずっとニヤニヤした表情のままで、ときおり顔を伏せて笑いをこらえている。

 

ティアはほっぺたを膨らませたまま、そんなティメラウスをにらみつけていた。

 

 

「お嬢ちゃんは最初は『何も思いつかない』と言っていたんですがね、私がしつこく

 どんなささいなことでもいいから、何かいつもと違うことをしなかったかと聞いたら

 答えてくれました。『そう言えば、昨日はいつもより熱心にお勉強したわ』ってね。

 それを聞いて、目の前がパアッと一気に晴れましたよ。 これだ!ってね」

 

サンチョはパチンと指を鳴らした。

 

 

ティメラウスはうつむき、肩を震わせながら必死に笑いをこらえている。

 

 

「ん? 勉強をしたから熱が出たってこと?」

 

王子がサンチョに尋ねると、サンチョは鼻の穴をふくらませて大きくうなずいた。

 

 

「はい、間違いありません! お嬢ちゃんの言葉に、確信を得た私は言ったんですよ。

 お嬢ちゃん、今朝お熱が出たのは 普段、お嬢ちゃんがま~ったく

 使っていない脳みそを、昨日は急にた〜くさん使ったから

 脳みそがビックリしちゃったんですよ!って」

 

 

我慢の限界だったのか、「ぶぶぶ~っ」とティメラウスが盛大に吹き出した。

 

サンチョの話に加え、ティメラウスが盛大に吹き出したのにつられて、おれや王子

ナナも思わず吹き出した。

 

 

ティアはおれたちを見てまた怒り出した。

 

「サンチョの言い草だと、あたしがいつも頭を使っていないみたいじゃない! もうっ!

 失礼しちゃうわ! 昨日は確かに頑張りすぎたかもしれないけど、あたしは普段から

 お勉強だって真面目にしてるのよ! それなのに、頭を使ったから熱が出ただなんて!

 あたしが何も考えていない馬鹿だって言われてるみたいじゃない!」

 

 

ティメラウスの気持ちがよくわかった。

 

確かに、ティアが真剣に怒れば怒るほど、ますます笑いがこみあげてくるな。

 

 

おれは笑いをこらえながら言った。

 

「ティア。あんまり怒ると熱が上がるぜ。とりあえず、たいしたことなかったんだから

 良かったじゃねえか」

 

 

少しなだめてやろうと思ったが、ティアの怒りはまったくおさまりそうになく

おれの発言に、ますます大きな声を出した。

 

「良くないわよ! こんなの変よ。サンチョの診察なんて全然当たってないじゃない!」

 

 

ちっ! このままティアにギャアギャア騒がれてもめんどくせえからな。しょうがねえ、

おれ様がひと肌脱いでやるか。

 

「そうか? でもおまえ、前に夜中に腹が痛くなってサンチョを呼んで診てもらったら

 ケロリと治ったことあったじゃねえか。そのとき、おまえ自身が言っていたんだぜ。

『サンチョは名医だ。サンチョの診察に間違いはない!』ってな。ってことはよ…」

 

 

おれは言葉を区切り、ひと息ついて吹き出しそうになるのをこらえた。

 

 

「ってことは、今回のサンチョの診察も間違ってないんじゃねえか? おまえが

 普段は脳みそを全然使っていない っていうのもよ...」

 

笑いをこらえながら静かに言ったつもりが、声には笑いの要素が含まれてしまった。

 

おれの言葉に全員が一気に笑い出した。

 

 

「もうっ、みんなひどいわ。いつもそうやって、ティアを

 馬鹿にするんだから!」

 

ティアは地団駄を踏み、こぶしをつくって全員をポカポカ叩いて回った。

 

 

サンチョはティアのこぶしを手で受け止めると、「は~い、そこまで~!」と言った。

 

「お嬢ちゃん、お熱があるのに暴れちゃダメですよ。おとなしくおねんねしましょう!

 それにみなさんも、お嬢ちゃんはお熱があるんですからね。騒いだりしないで静かに

 休ませてあげなきゃダメですよ!」

 

 

さっきまでデレデレ笑っていたくせに、サンチョは急に真面目くさった顔になって

みんなが突然の変化にポカンとしている中、医者っぽくテキパキと振舞い始めた。

 

 

「おいっ! サンチョ! てめえ、いきなり善人ぶるんじゃねえよ。いったい誰のせいで

 こうなったと思ってんだ!」

 

おれは笑いながらサンチョの尻を叩いた。

 

 

おれに尻を叩かれたサンチョは、こっちを向くとテヘッと舌を出して笑った。

 

 

 

 

「いつになったらラダトームに行くんだ!」とツッコミが聞こえそうですが... (;´∀`)

 

今回は「翌朝になってティアが熱を出しちゃったけど、ただの『知恵熱』だから

おれたちは気にせず、ラダトームへGO!」という話にする予定だったんです (;'∀')

 

 

でも、「ただの知恵熱だね ( `▽´)ノ!」とちょっと笑いながら言う医者役として

『サンチョ』を登場させたら、なんだかどんどん楽しくなっちゃってヾ(*´∀`*)ノ

結局、出発前で話が終わっちゃった...(いつもの悪いクセがまた出ましたね ( *´艸`))

 

 

書いている私はとても楽しかったです♪

個人的には、自分がサンチョを連れて来たこともあって、真面目に対応しようと必死に

ガンバるんだけど、ちょくちょく吹き出すティメラウスがツボでした ( *´艸`)

 

 

今回は(今回も (;´∀`)?)遊んじゃいましたが、次回はいよいよラダトームへ☆

 

さて、カインは『ロトの印のステッカー』をどう使うつもりなんでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ