ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 92】和解

早朝、部屋を訪ねてきたナナに「ティアちゃんが急に熱を出した」と伝えられたおれは

途中の廊下で合流した王子と共に、3人でティアの部屋に向かった。

 

ティメラウスが診察のため部屋に招いたサマルトリア緑の騎士団の軍医・サンチョから

「お嬢ちゃんの発熱は何も心配いらないよ」と太鼓判をもらい、おれと王子、ナナは

それぞれの部屋に戻って、ラダトームへ向けて出発するための準備を再開した。

 

準備を整えて、再び3人でティアの部屋を訪ねると、サンチョに薬を処方してもらった

ティアはすやすや寝息を立てて眠っていた。

 

 

「ティメラウス卿に聞きました。お嬢ちゃんは女王様になろうと張り切ってたそうで。

 ガンバれば自分も女王様になれるかも! という興奮状態のままで根を詰めすぎて、

 疲れていたようですね。ぐっすり眠ればすぐに元気になります。坊ちゃん、大丈夫!

 私が元気にしてみせますよ」

 

サンチョは上体を大きくそらせ、自身の肉厚の胸をこぶしでドンと叩いた。

 

 

「私も姫様に発破をかけすぎたようですな。目が覚めて、姫様が元気になったら

 姫様のペースで学べるように、リオスと相談して計画を立てて教育しますよ」

 

ティメラウスはおれに力強く言った。

 

 

「2人とも、ありがとな。ティアのことは、おまえたちにまかせた。よろしく頼むぜ」

 

おれの言葉に、サンチョとティメラウスは「おまかせください」と笑ってうなずいた。

 

 

ティアのことはサンチョとティメラウスにまかせ、おれたちは2人に見送られながら

ルーラでラダトームへ向かった。

 

 

魔法による虹色の光が薄れると、おれは2人より早く軽快に歩き出した。

おれの軽やかな歩調に合わせて、腰につけた王子から預かった袋が揺れている。

 

 

「ねえ、カイン。あんた、王子から預かったステッカーをどうするつもりなのよ?」

 

おれの後について歩きながら、その袋を指差してナナが尋ねてきた。

 

 

おれは振り返り、ナナにウインクした。

 

「まあまあ、そんなに焦るなって。おまえたちにも、すぐにわかるからよ!」

 

おれは鼻歌まじりに城門へと歩みを進めた。

王子とナナは顔を見合わせ、不思議そうな顔をしながらおれについてくる。

 

 

城門の前には警備兵が立っていた。

警備兵の1人は、おれが近づいてくるのが見えるとハッとなって、少し慌てた様子で

隣に立つもう1人の門番に声をかけた。

 

2人の門番は、顔を見合わせうなずき合い、おれたちを見てシャンと背筋を伸ばした。

 

 

距離が近づき、おれの顔をはっきり認識すると、2人の門番は深々と頭を下げた。

 

 

こいつらは、以前おれたちがラダトームを訪ねて入城を求めたとき、おれたちを

「うすぎたねえガキ」「ロトの子孫を名乗るガキ」と罵って追い払った奴らだ。

 

あのときは、この門番たちをギャフンと言わせるため、宿屋で身を清めて正装し

皇太子の姿で再び開門を求めてやったのだ。

 

 

へっ! さすがに痛い目に遭ったからか、おれたちの顔を覚えていたようだな。

 

 

「あなたはサマルトリアの皇太子様… えっと、確か... カイン殿下ですよね? そして

 お連れ様は、ムーンブルクのナナ姫様と、ローレシアの皇太子様、あっ、いや!

 今はローレシアの王様ですね」

 

門番の1人はそう言うと、おれの後から歩いてきた王子とナナにも深々と一礼した。

 

 

「へえ? あのときでよっぽど懲りたのか? おれたちのこと調べたみてえだな」

 

おれが笑いながら声をかけると、ガチガチに緊張していた門番はホッとした様子で

身体の力を抜き、警戒を解いた。

 

 

「はい。あの... あんなことがあって...。おれたちも反省したんっすよ、なぁ!」

 

「ロトの子孫である皇太子様とお姫様に酷い暴言を吐いた挙句、追い返しただなんて...

 世間に知られたら職を失うか、下手したら町も追われてしまうから…。みなさんが

 おれたちの態度を問題視せずに受け流してくれたこと、感謝しないとって思って」

 

 

「あれ以来、おれたちなりに反省して。城を訪ねてきた奴に対しては、話も聞かずに

 ぞんざいに追い返すことは止めました。いったんおれたち2人で話を聞いてみて

 本当に入城させてもいい奴かどうか、きちんと確認するようになったんっすよ」

 

「あんな思いは2度としたくないっす」

 

門番の2人は顔を見合わせ、頭をかいた。

 

 

おれは振り返り、王子とナナの顔を見た。

 

どうやら2人とも『ロトの印のステッカー』の使い道を理解したようだ。王子とナナは

笑顔でおれを見つめていた。

 

 

「へっ。ちゃんと反省したようだからよ、おまえたちにこれをやるよ」

 

おれは腰に付けた袋からステッカーを取り出し、2人の門番に手渡した。

 

 

「えっ? なんですか、これ?」

 

門番はおれが差し出したステッカーを受け取ると、不思議そうな表情を浮かべた。

 

 

「ははっ。これはまだ王様にも渡してねえからな。ラダトームでは馴染みがねえか。

 この『ロトの印のステッカー』は、おれたちと『仲間』であるという証なんだ」

 

 

「『仲間』である証? これが?」

 

門番は驚きで目を丸くしながら、ステッカーの裏表を入念に確認した。

 

 

「『ロトの印』のもとに心を1つにして世界平和に努めようってカインの発案でね。

 ぼくたちの想いに賛同してくれる人たちに、このステッカーを配っているんだよ。

 あとで王様にもお会いして、ステッカーをお渡ししようと思っているんだ」

 

 

「えっ! 王様より先におれたちに!?」

 

門番は「そんな、恐れ多い」と言いながら、お互いの顔をオロオロと見比べていた。

 

 

「なんだよ、2人とも。おれたちと『仲間』になる気はねえっていうのか?」

 

おれがからかい口調で言うと、2人の門番は手にしていた槍をブンブンと振った。

 

 

「いえっ! 決してそうではなく!... ただ、おれたちは以前、みなさんのことを...

 あんな酷い扱いしたのに… 本当におれたちのこと、許してくれるんっすか?」

 

 

おれは再び王子とナナを見た。

2人はおれを見てしっかりとうなずいた。

 

 

「あぁ、いいさ。もう許してやるよ。今日、おまえたちがおれに対して、以前のように

 ろくに話も聞かず『なんだ、このくそガキは?』みてえな態度を取るようだったら、

 絶対に許さねえところだったんだけどな! おまえたちはちゃんと反省したようだし、

 くだらねえ過去はお互い水に流して、おれたちはこれからこの『ロトの印』のもと

 一緒に世界平和を守っていこうぜ」

 

 

おれが『ロトの印のステッカー』を掲げると、2人の門番は目に涙を浮かべながら

「ありがとうございます!」と言い、おれに合わせてステッカーを掲げた。

 

 

 

「あ、そうだ。おれたち、みなさんにお礼を言いたいことがもう1つあるんっすよ」

 

緊張状態から解放された様子の門番は、ニヤニヤしながらおれに声を掛けてきた。

 

 

「おれたちにお礼?」

 

 

「ええ。たしか、あのときも言ったと思うけど、いまだに『ロトの子孫』を名乗る

 不届きな輩が来るんっすよ。特にロト祭が近づくと、どこからともなくワラワラと

 湧いて出て来る始末でして…」

 

門番は肩をすくめて苦笑いした。

 

 

「でも、そんな輩が来たら、今はこう言ってやるんっすよ!『おいっ! そんな言葉で

 おれたちを騙せるなんて思うんじゃねえぞ! なんせ、おれたちは本物のロトの子孫に

 会ったことあるんだからな!』って」

 

門番は足を1歩前に踏み出し、槍を突き出して威嚇するマネをして見せた。

 

 

「こうするとね、そんな輩たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていきますよ!」

 

門番は得意気な顔で嬉しそうに笑った。

 

 

「なぁ、今度からは『へんっ! おれたちはロトの子孫の仲間だぜ!』って付け加えて、

 奴らをさらに脅してやろうぜ!」

 

門番は2人ではしゃいだ声をあげた。

 

 

「おいっ! あんまり調子に乗っていきがってると、また痛い目に遭うぞ!」

 

おれはイイ気になって笑う門番のおでこを指でピンッ、ピンッと弾いてやった。

 

 

それからおれは、王子から預かった袋の中から『ロトの印のステッカー』の束を出すと

すっかり肩の力が抜けて晴れやかな表情で笑っている門番に手渡した。

 

 

「今後、城に仕えている臣下たちや、城を訪ねてくる奴らで、おれたちと同じ志を持ち

 世界平和に努める奴がいたら、おまえたちからこのステッカーを渡してやってくれ。

 おまえたち、今回の経験を通して、人を見る目は充分に養われただろ?」

 

 

「ええっ! そんな大役をおれたちに!? こんなにおれたちを信頼してもらえるなんて...

 なんてありがてえ話だ。おれたち、精いっぱいガンバります!おまかせください」

 

門番はおれからステッカーを受け取ると、嬉しそうにおれたちに向けて一礼した。

 

 

「さてと。じゃあ、おれたちはラダトーム王に会いに行くとするか。案内を頼むぜ」

 

おれの言葉に大きくうなずくと、門番は笑顔で門の両脇に控えた。

 

 

サマルトリア皇太子殿下御一行がお着きになりました」

 

前回、おれたちがラダトームを訪ねたときよりも晴れ晴れとした声が城内に響いた。

 

 

 

サマルトリアで長々と遊んで)さんざん引っ張りましたが、カインが計画していた

『ロトの印のステッカー』の使い道は、和解のしるしでした~ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

ゲームブックで「うすぎたないガキが!」とラダトーム入城を拒絶されるシーンは

その後の大逆転が面白いですよね (^_-)-☆

 

「カイン、実はあなたって、いいとこあるのね」→ カインは完全にひっくり返った。

この流れも大好きだし、いざ入城のときの威風堂々としたカインも大好き (≧∇≦)♡

 

 

今回は「ギャフンと言わせてやった門番は、その後ちゃんと改心していましたよ☆」

そんな話を書きたかったんです (*´ω`*)

 

王子やナナより先に、軽やかに弾むように城門へ向かったカインは、きっと門番2人が

反省していると察していたんでしょう。

 

カインは他の誰よりも、人の本質を見抜く目がありますからね (^_-)-☆

 

 

さて。今回は無事に門番とも和解できたので、次回はラダトーム王に謁見してサクッと

ステッカーを渡しましょうかね♪(次回はあっさり終わる予定ですよ~ (;´∀`))

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ