ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 72】形勢逆転

ムーンブルク城再建の2日目の朝。

おれたちは、ムーンブルク城近くの草原でおれたちを待っていたミリアに出会った。

 

ミリアは王子ではなく、ナナに「私にもお手伝いをさせて欲しい」と頼んできた。

突然のことにナナはおどろきとまどっていたが、ミリアの申し出を快く受け入れて

ミリアにティアやリーナを紹介した。

 

 

「王子さま、おはようございます!」

 

男の声に振り返ると、昨日王子と一緒に飲んでいた男たちが嬉しそうに走ってくる。

 

「今日は王子さまにも、おれたちと一緒に作業していただけるんですよね!」

「王子さまと一緒に作業が出来るなんて、身にあまる光栄ですよ!」

 

王子の前にやって来た男たちは、口々に笑顔で王子に話しかけている。

 

「おはようございます! みなさん、ぼくに対して丁寧な言葉遣いはいらないですよ。

 ぼくたちは『仲間』なんですから、もっと気軽に話しかけてくださいよ」

 

「いやいや。そう言う王子さまこそ、おれたちに丁寧な言葉使ってるじゃないですか」

 

王子は男たちと顔を見合わせて笑った。

そして今後は『仲間』らしく、くだけた会話を楽しもうとあらためて誓いあっている。

 

やっぱりいい『仲間』たちだぜ。

王子たちの会話に、おれも笑みがこぼれた。

 

 

ナナや王子たちがそれぞれ会話を交わしているうちに、人がどんどん集まって来た。

王子と青の騎士団3人、さらにミリアも加わって、2日目の作業も和やかに始まった。

 

 

焼却が決まったデカいがれきを、男たち3人と一緒に竜王のおっさんのもとへ運び終え

ひと息ついていたおれは、不意に肩をトントンと叩かれて振り返った。

 

レオンがバツの悪そうな顔で立っている。

 

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おれがキッとにらみつけると、レオンはますます恐縮した様子を見せた。

 

レオンはおれを促して、城の裏手にある人目につかない場所へと案内した。

そこにはレオンと同じようにバツの悪そうな顔をしたオルムが待っていた。

 

 

「昨日なにがあったか教えてくれねえか?」

レオンがすまなそうに言ってくる。

 

「あぁ? 覚えてねえのかよ」

 

おれが怒りを含ませた声で言うと、2人は申し訳なさそうに頭をかいた。

 

 

「実はな、おれたち2人とも昨日のことをまったく覚えてないんだ。今朝になって

 気がついたときには2人して船室にいてな… それでよ… あの… 今朝… おれたち…

 

オルムの声はどんどん小さくなっていく。

 

「ああ? なんだって? もっとデカい声で言えよ。聞こえねえだろうが!」

 

おれがイライラして声を荒らげると、オルムは隣にいるレオンをひじでつついた。

 

レオンはしょうがねえという顔でおれに近づいてくると、小さく耳打ちした。

 

「誰にも言うなよ。実は今朝起きたら、おれたち同じベッドで抱き合って寝てたんだよ」

 

一瞬にして全身に鳥肌が立った。おれは目を見開いたままバッとレオンから離れた。

 

 

「も、もちろん、2人とも服は着てたぜ!」

 

レオンが慌てた様子で言ってくる。

 

「うるせえ! そんなのあたりめえだろうが! 気持ち悪りい想像させるんじゃねえよ」

 

思わずしてしまった自分の想像に胸がムカムカして、おれはペッと唾を吐いた。

おれが汚いものを見るような目で見ると、2人は肩を落としてうなだれた。

 

 

「なんで2人で同じベッドに寝てたのか、なにも思い出せないまま船を出たところで

 ガルダーに偶然バッタリ会ってな」

 

しばらく重苦しい沈黙が続いたが、やがてオルムが独り言のように話し始めた。

 

ガルダーはおれを見てニヤニヤ笑ってよ、少しだけ昨日のことを教えてくれたんだ」

 

 

ガルダーの話によると、「もう船に行って寝るぞ」と声をかけられたオルムとレオンは

「やってやったぜ!」「おれたちすげえぞ」などとお互いの健闘を讃え合いながら、

上機嫌でガルダーの後をついて来たらしい。

 

船に入ってそれぞれの船室に案内しようとしたが、オルムとレオンは肩を組んだまま

陽気に歌いつつ同じ船室に入っていき、そのままベッドに倒れ込んだのだという。

 

ガルダーが「隣の部屋を開けとくから、あとで1人移動しろよ!」と声をかけると

オルムとレオンは「おお、わかった。ありがとよ!」と声をそろえて答えたそうだ。

 

 

話の後「結局、どっちが移動したんだ?」ガルダーに聞かれたオルムはとっさに

「おれが動くわけねえだろ? レオンの野郎を追い出してやったぜ」と言ったらしい。

 

 

ガルダーはそれで納得したみたいだから良いんだけどよ、船に入る前におれたちが

『やってやったぜ』と言っていたのが、なんのことなのかサッパリわからなくてな。

 ガルダーに船に行く前のことを聞いたらよ、ぼうずと一緒にいたって言ったんだ。

 それでな、ぼうずに昨日なにがあったか聞こうと思って呼び出したってわけだ」

 

まったく! こいつら、あんなことをしておいてまったく覚えてねえとはな!

 

てめえらのせいで大変な目に遭ったんだぞと言ってやりたいのをグッとこらえた。

こいつらが昨日のことをまったく覚えていないのは、おれにとっては逆に好都合だ。

 

今朝はナナとも普通に話せるようになったからな。ここで昨夜のことを蒸し返されて

また気まずくなるのはごめんだぜ。

 

 

真実をこの2人には伏せるとして、それなら代わりになんと答えようかと考えていると

さっきからずっと黙ったまま腕組みをして考え込んでいたレオンがハッと顔をあげた。

 

「もしかして、腕相撲か?

 

レオンの言葉にオルムの顔もパッと輝いた。

 

 

「そうか、それがあったか! ぼうず、昨日は腕相撲でおれたちに負けたんだろ?

 なんせおれの腕相撲の実力はピカイチだからな。ぼうずなんかにゃ負けねえぜ」

 

「おれだって、おまえには負けねえな。王子が相手になると厳しいかもしれねえが

 さずがに魔法使いのぼうずに負けるほど、おれはひ弱じゃないからな」

 

さっきまでの神妙な顔はどこへ行ったのか、オルムとレオンはニヤニヤ笑ってる。

 

 

「てめえら、勝手に決めて納得してんじゃねえよ! それにおれは『魔法使い』じゃねえ

『魔戦士』なんだ! ヤワな魔法使いなんかと一緒にするんじゃねえよ!」

 

勝手に話を進めるオルムとレオンに反論したが、こいつらはまったく聞いちゃいない。

 

 

「まあまあ。ハーゴンを倒した偉大な勇者様がおれたちに腕相撲で負けたってなったら

 ぼうずの面目丸つぶれだからな。おれたちも黙っておいてやるよ!」

 

レオンがニヤニヤ笑っている。

 

「確かにな。王子は『破壊神を破壊した男』なんてすげえ異名を持っているのによ、

 一緒にいたぼうずが腕相撲に弱いとか、カッコ悪いよな。おれも黙っててやるよ」

 

オルムまでニヤニヤしている。

 

 

くそっ! 勝手に腕相撲に負けたことにされるのは癪に障るが、ここは仕方ねえ。

昨日のことを根掘り葉掘り聞かれることを考えたら、ここは折れるしかなさそうだ。

 

だが、おれが仕方なく折れてやろうと決めてやったにもかかわらず、オルムとレオンは

おれが黙ってるのをいいことにすっかり調子を取り戻し、余計なことまで話し始めた。

 

 

「しょうがねえよな。ぼうずはちょっと船に乗っただけでゲーゲーやる弱虫だからな」

 

「へへっ。オルム、あんまり言うなよ。偉大な勇者様だって世間では思われてるのに

 実はひ弱な虚弱体質だってバレたら、カインもかわいそうじゃねえかよ。ひひひ」

 

2人はおれをからかって笑っている。

 

 

くそっ、負けてられるか!

 

「おいっ! てめえら。おれを小バカにして笑うのは構わねえけどよ、それよりも

 すっげえ大事なことを忘れてるんじゃねえか? おれは知ってるんだぜ。

 てめえらが同じベットで抱き合って寝たことをよ!」

 

 

おれの言葉に、それまで高笑いしていたオルムとレオンは一気に青ざめた。

 

「カ、カイン! ちょ、ちょっと待ってくれよ」

「お、おい! ほんの冗談だぜ。勘弁してくれよ」

 

オルムとレオンは慌てて許しを請うてきた。

 

 

へっ、一気に形勢逆転だな。

 

「てめえらがそんな態度ならよ、今からガルダーに言ってやってもいいんだぜ。

 レオンが部屋を移動したってのは真っ赤な嘘で、こいつらは1つのベッドで

 朝までずっと抱き合ってたってな!」

 

 

「それだけはやめてくれ~」

「頼むよ、カイン。おれたちが悪かった。許してくれ~」

 

オルムとレオンは泣きそうな顔でひれ伏して、ペコペコと頭を下げている。

 

 

「へっ。しょうがねえから今回だけは許してやるよ。でもよ、これに懲りて今後は

 余計なことを言うんじゃねえぞ。もし、余計なことをしたら、てめえらの

 秘密の夜のことはすぐにでもバラしてやるからな!」

 

 

「ははーっ。かしこまりました。カイン様!」

「ははーっ。かしこまりました。カイン様!」

 

オルムとレオンは深々と頭を下げた。

 

 

オルムとレオンにガツンと制裁を加えて、おれは満足して城へと戻った。

 

一瞬、おれたちが姿を消したことに気づいたナナがまた不安になるかと心配したが

ナナはおれたちに気づいた様子もなく、ミリアとにこやかに談笑していた。

 

ルプガナにはいったいどんな花が咲くの?」などと、くだらねえ質問をしている。

 

 

花なんてどれも同じだろ? と思ったが、ナナの言葉にふと「あること」を思い出した。

 

そうだ。

3日経ったら、青と緑の騎士団が引き継ぎ、おれたちには休暇が与えられるはずだ。

休暇が与えられたら、あの町へ行こう。

 

おれは変わりなく作業を続けながらも、新しい計画に思いを巡らせていた。

 

 

 

迷惑な酔っぱらいたちに、お仕置きしてやりましたよ~ヾ(*´∀`*)ノ

 

よくドラマなどでは、泥酔して朝起きたらホテルで男と一緒に寝てた Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

そんなシーンが描かれているので、おっさん2人に当てはめてみました ( *´艸`)

 

私自身は記憶をなくすほど飲まないので(ほとんど飲めない)経験はありませんが

朝起きて意中でない人と一緒に寝ていたら、そりゃショックなんでしょうね ( *´艸`)

 

昨日のことを知りたいがために、ついついカインに打ち明けちゃって、結果として

弱みを握られちゃったオルムとレオン。

 

うろたえ、カインにひれ伏して許しを請う可愛いおじさん2人を書けて、私としては

大満足です(恒例の自画自賛 (;´∀`))

 

 

さて、最後にナナの言葉を聞いて「新しい考え」を思いついたカイン☆

 

本来は、初日の夜の後はこの「新しい考え」をもとに話を進めていく予定でしたが

この展開に行くまで3話ほど追加で話を書く羽目になりました… (;´∀`)

 

カインの「考え」とは?

「あの町」とはどこ?

 

みなさまは、いろいろ想像しながら次回をお待ちくださいませ (^_-)-☆

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ