ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 119】 願掛け

ティアとリーナがナナにプレゼントしたのは、ナナ・ティア・リーナの3人が

幸せそうに笑っている「似顔絵」だった。

 

ナナに喜んで欲しい一心で、ティアとリーナが2人だけで一生懸命に描いた似顔絵は、

見る人の心を和ませて、大聖堂内は穏やかなあたたかい空気に包まれていた。

 

 

ティアに何を聞かれているのか確認もせず、適当に「いいぜ」と返事したせいで、

最高のプレゼントを先に渡されちまったおれは、ティアがミリアをからかい、

恥ずかしがるミリアと王子を見て、ナナたちがキャアキャアはしゃぐのを横目に

「ここから逃げ出すには、ルーラか? いや、ルーラの前に、まずはこの大聖堂から

出るためにリレミトが先か?」などと、くだらねえことをぼんやり考えていた。

 

 

出来ることなら今すぐにでも逃げ出してえところだが、そんなわけにもいかない。

 

王妃とリオスはおれのためにプレゼントの花を仕上げてくれたし、昨夜はサンチョが

一緒にクッキーを焼いてくれたんだ。

 

 

こいつらの恩に報いるためにも、おれはこのまま逃げ出さずに立ち向かうぜ!

 

おれは近くにあるワイングラスを手に取り、グイッと一気に飲み干して立ち上がった。

 

 

「おれからのプレゼントは2つある。まずは、これだ」

 

おれは懐から小袋を取り出した。

 

 

昨夜、ムーンブルクから持ち帰った焼きたてのクッキーは、サンチョが小さな袋に入れ

さらに袋の外側を若草色の和紙で包み、袋の口を赤いリボンで結んでくれたのだ。

 

 

「可愛らしいプレゼントだね。それに甘くていい匂いもするわよ」

 

おばさんはナナが座る椅子の隣に立ち、袋の匂いをクンクンと嗅いで微笑んだ。

 

 

 親切で面倒見の良いおばさん

 

 

ナナもおばさんに合わせてクンクンと匂いを嗅ぎながら、赤いリボンをほどいた。

 

 

「まぁ、美味しそうなクッキーよ!」

 

ナナの言葉にティアとリーナは目を輝かせ、身を乗り出して袋の中をのぞき込んだ。

 

 

「せっかくだから、みんなで食べましょうよ! いいかしら? カイン?」

 

 

「ああ。そうなるだろうと思って、たくさん焼いてきたからな。別に構わねえぜ」

 

 

「あらまぁ! このクッキーは買ってきたものじゃなくて、あんたが焼いたのかい?

 すごいねえ、あんた。皇太子さまだっていうのに、そんなことも出来るんだね」

 

おれの言葉におばさんは驚きの声をあげた。

 

 

「おばさん、カインの料理の腕はすごいんだぜ。ゆうべも、ムーンブルクにいた

 おれたちに美味い料理を大量に作って振る舞ってくれたんだからな!」

 

オルムはおばさんに向けて自慢げに言うと、おれの肩に腕を回してきた。

 

 

「あれだけの料理を作りながら、その一方でクッキーも焼いていたってことだろ。

 器用だよな、おまえって奴は!」

 

レオンは笑いながらおれの隣に立ち、おれの髪をぐしゃぐしゃと搔きまわしてくる。

 

 

「カインの料理は本当に美味しいのよ。おばさんも、良かったら食べてみて」

 

ナナが小袋の口を開けて、おばさんにクッキーを取るように促した。

 

 

「あら、いいの? ふふ。じゃあ、遠慮なく」

 

おばさんはニコニコしながら小袋の中に手を入れて、クッキーを1枚つまみ上げた。

 

出てきたのは星型のクッキーだ。

 

 

「さあ。あなたたちも、どうぞ」

 

ナナはオルムとレオンにクッキーを勧めた。

 

 

「へへっ、サンキュー!」

 

オルムとレオンも袋に手を突っ込む。

 

オルムは月型、レオンは涙滴型...

 

 

「おねえちゃん! あたしたちも食べたい!」

 

ティアがずるいとばかりに地団駄を踏んだ。

 

 

「うふふ、わかってるわよ。はい、どうぞ」

 

ナナが笑いながらティアとリーナに向けて袋を差し出し、2人は勢いよく手を入れた。

 

ティアは花型、リーナはおばさんと同じ星型

 

 

おれは涼しい顔を装いつつ、みんながどのクッキーを取るか、目を光らせていた。

 

 

昨夜、サンチョと焼いたクッキーに、おれはひそかな『願掛け』をしていた。

 

女が好んでやるようなくだらねえ願掛け。ただのお遊びだ。深い意味はない。

 

そう思いながらも、いざみんながクッキーを手に取りだすと、やはり気になった。

 

 

1枚だけ忍ばせた、ハート型のクッキー。

そのクッキーをナナが手にしたら...

 

 

「美味し~い! やるじゃない、おにいちゃん! ねえ。あたし、もっと食べたいわ」

 

口をもぐもぐさせながらティアが言った。

 

 

「うふふ。ちょっと待ってね」

 

ナナはティアの頭を軽くなでると、王子とミリアに小袋を差し出した。

 

 

「ありがとう」

「いただきます」

 

王子は三角、ミリアは涙滴型...

 

 

 

オーウェンさん、甘いものはお好き? 良かったら、あなたも食べてみて」

 

 

「よ、よろしいんですか? では失礼して」

 

オーウェンは月型...

 

 


「2人とも、お待たせ。はい、どうぞ」

 

王子とミリア、オーウェンにクッキーを渡すと、ナナはくるっと身体の向きを変えて

再びティアとリーナの方を向いた。

 

ティアは涙滴型、リーナは月型...

 

 

 

「いやぁ、うめえな~。姫様、悪いんだけど、もう1個だけ食ってもいいか?」

 

レオンの問いかけに、ナナは笑いながらうなずき、袋を差し出した。

 

レオンは三角...

 

 

「へへっ。ついでにおれも...」

 

横からオルムも手を入れた。


オルムは花型...

 

 

 

そろそろ残りが少なくなってきて、ハート型を引く確率も上がってくる。

 

ティアやリーナが引き上げるならまだしも、オルムやレオンみたいなおっさんが

ハート型を引くんじゃねえかと、おれはさっきから内心ハラハラしていた。

 

 

みんなに配るのはいい加減やめてほしいところだが、おれが口出すことでもねえ。

おれはやきもきしつつ状況を見守っていた。

 


「ほらほら、あんたたち。美味しいのはわかるけど、そんなにいっぱい食べちゃったら

 姫様の食べる分が無くなっちゃうわよ」

 

おばさんが笑いながらみんなを制した。

 


「姫様もおあがり。すごく美味しいよ」

 

おばさんはナナに食うように勧めてくれる。

 

 


「ごちそうを食べすぎて、このままだと太っちゃいそうだけど、このクッキーは

 カインが作ってくれたものだもんね。じゃあ、あたしも1枚だけ」

 

ナナは笑顔でおばさんにうなずくと、袋の中に手を入れた。

 

 

たかがクッキーだ。所詮はただのお遊び。

こんなことでマジになる方がおかしいぜ!

 

おれは自分に言い聞かせたが、それに反しておれの心臓はどくどくと高鳴った。

 


ナナはにこにこしながら、袋の中からクッキーを1枚取り出した。

 


それは...

「ハート型」

 

 

思わず心臓がビクンと跳ね上がる。

 

 

いや、落ち着け!

残りの枚数は少なかったんだ。


ナナじゃなくても、次に手を入れた奴がハート型を取る確率はかなり高かったと思う。

 

 

そうだ、ただの偶然だ!

こんなことで浮かれるんじゃねえ!!

 

おれは気持ちを落ち着かせようと試みた。

だが、ナナの手にハート型のクッキーがあることに、おれは喜びを隠せなかった。

 

 

自分でも鼻の下が伸びているのがわかる。

きっと、今のおれはみっともないぐらい、締まりのない顔をしているだろう。

 

 

なんとかして緊張感のある表情を取り戻し、平静を装おうとするが難しかった。

 

ハート型のクッキーを美味そうに食うナナを見ていると、抑えようと努力しても

顔がにやけてきてしまう。

 

 

おれはナナから目をそらし、花を包んだ薄桃色の包みを取りに行くことでごまかした。

 

 

プレゼントが2つあることは事前に言ってあったし、1つめのクッキーを渡したあとで

2つめを取りに行くのは当然のことだ。


おれの動きは自然だっただろう。

 

 

花を取りに行きながら、大聖堂にいる連中に目を走らせてみたが、ほとんどの奴は

クッキーを食っているナナたちを微笑ましく見ていたし、ナナを見ていない奴らは

 

脇のテーブルに置かれているプレゼントの模型や似顔絵をまじまじと眺めていたり

オーウェンの美容液をお互いに塗りあって、ワイワイ話したりしていた。

 

 

おれのことなんて、誰も見ていねえ!

 

おれのデレデレした情けねえ顔を誰かに見られたんじゃねえかとさっきは焦ったが、

周りにいる誰もおれを見ていないことを確認して、おれは心から安堵した。

 

おれのにやけ顔は見られてねえし、おれの行動を不自然に感じた奴もいないだろう。

 

 

すっかり安心したおれは、薄桃色の包みを手に取り、ナナのところへ戻った。

 


おれはパーティーの最初からずっと、おれのことを見ている存在がいたことに

このときはまだ気づいていなかった...

 

 

 

王子がプレゼントしたドレスを見て真っ青になっちゃったあたりから、カインのことが

だんだん可哀想になりました ( *´艸`)

 

カインがズッコケたり、想定外の状況に「ウゲッ!」となるのは好きなんだけど、

カインが可哀想な目に遭うのは耐えられない...(なんだかんだで私はカインびいき♡)

 

 

ティアとリーナが描いた似顔絵で会場のみんながほっこりするだなんて、物語としては

「めでたし、めでたし♪」で終わっちゃうような最悪の展開ですよ… (´;ω;`)

 

最悪の状況下で、気持ちを奮い起こして立ち上がったカインにエールを贈る気持ちで

「ハート型のクッキーをナナが食べる♡」をカインにプレゼントしましたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

「ハート型のクッキーをナナに♡」は私だけじゃなく、きっとみんなの願い ( *´艸`)

ということで、ちょっと強引な展開ですが、ナナにハート型を取らせましたよ~♪

 

 

女がやるようなくだらねえ願掛け、ただのお遊び、気にするほどのことじゃない!

 

自分に何度も言い聞かせながら、他のメンバーが取るクッキーにハラハラするカイン

ナナがハート型のクッキーを取り、抑えようとしてもニヤニヤが止まらないカイン♡

 

今回は可愛いカインをたくさん書けて、私としては大満足ですヾ(*´∀`*)ノ

 

 

ハート型のクッキーで(私もカインも)かなり満足しちゃっているんですが ( *´艸`)

まだ本命のプレゼントが残っています☆

 

さて。本命のプレゼントである花に対し、ナナはどんな反応を見せるのでしょうか?

そして、プレゼント勝負の決着は?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ