ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 58】2人で一緒に

ムーンブルクの再建に向けてがれきの撤去を手伝っていると、神妙な顔つきをした

ティメラウスに肩を叩かれ、おれはなにもわからないまま玉座へと案内された。

 

そこにあったものに目を向けたとき、自然と「あぁ...」という声が口からもれた。

 

 

ティメラウスとリオスに促されて、おれが目にしたのは白骨死体だった。

 

白骨死体の頭蓋骨のすぐ近くには、純銀製のティアラが転がっていた。

首には綺麗なネックレスがつけられている。

 

炎で焼きつくされたのか、それとも魔物にでも食われたのか、遺体の右腕は消失し、

左腕しか残されていなかったが、左手の指にはムーンブルクを示す赤色の宝石がついた

指輪がはめられていた。

 

ようやく見つけた。ムーンブルク王妃だ。

 

 

おれは遺骨の前にひざをつき、手を合わせて目を閉じると静かに祈りを捧げた。

そうしながらふと思い出したことがあり、おれは目を開けてあたりを見まわした。

 

 

やっぱりそうだ。間違いない。

 

1週間ほど前、おれはムーンブルク王の遺骨を西の修道院に安置してもらうため

城を訪れ、この場所へとやって来た。そのとき、ムーンブルク王の遺骨はちょうど

今、おれがひざをついているあたりにあったことを思い出したのだ。

 

 

ムーンブルク城がハーゴン軍に襲われたとき、国王と王妃はここで一緒にいたのだ。

おそらく、ムーンブルク王が背後に王妃をかばいながら、敵と対峙したのだろう。

そしてこうして発見されるまで、国王と王妃はずっと寄り添いながらここにいたのだ。

 

最期までここで一緒に戦い続け、死後もずっと寄り添い続けていた王と王妃を想うと

思わず胸が熱くなった。

 

おれは空を仰いでまばたきを続けた。

 

空は相変わらず、雲1つない青空だ。

 

 

「ナナ様にお知らせしようかと思ったんですが、ショックが大きいかもしれないと思い

 先に殿下にお伝えしました」

 

ティメラウスが静かにつぶやいた。

 

「ああ、それでいい。ティメラウス、ありがとな。ナナにはおれから話すよ」

 

おれはナナの姿を探した。

 

 

ナナはバブルスライムハンターのオーウェンの指導のもと、ティアやリーナと一緒に

無毒化の粉を撒いた沼地に、良質な土を混ぜる作業を続けていた。

 

竜王のひまごが炎を吐いて残材を燃やすたびに歓声をあげるティアやリーナを見て

一緒に微笑んだり、作業しながら声をかけてくる男たちに笑顔で応対している。

 

明るく笑っているナナの姿を見て、胸がちりちりと痛んだが、大きく息を吐き出すと

おれは意を決して立ち上がった。

 

「今からナナを連れてくるからよ、2人とも、ここをよろしく頼むな」

 

おれはティメラウスとリオスに声をかけて、ナナのもとへと向かった。

 

 

「ナナ。今、ちょっといいか? 話したいことがあるんだ」

声をかけて手招きしたおれに、ナナは輝くような笑顔を見せてやって来た。

 

ナナの笑顔に胸が痛む。おれはみんなから少し離れたところへナナを連れ出すと、

目を伏せたまま静かに話し始めた。

 

1週間ほど前に1人で城を訪れて、ムーンブルク王の遺骨を西の修道院に運んだこと

今日も、兵士たちの遺骨が見つかるたびに修道院へと運んでいることを告げると

ナナはハッとした顔でおれを見た。

 

「そうだったのね… あたし、全然気づかなかったわ。ごめんなさい...」

 

ナナは神妙な顔でうつむいた。

 

「謝ることねえよ。おまえはこれまで充分つらい想いをしてきたんだからよ、むしろ

 さっきみたいに無邪気に明るく笑っていてくれた方が、みんなも嬉しいと思うぜ。

 ただ... な...。ちょっと… 今からおれと一緒に来てくれるか?」

 

おれはナナを促して無言で城へと戻った。ナナも無言のままおれの後について来る。

 

 

ティメラウスとリオスが、さっきと同じ立ち位置でおれたちを待っていた。

 

ナナの姿を見たティメラウスが、胸に手を当ててナナに一礼する。

その横でリオスもペコリと頭を下げた。

 

不安げな表情で2人に会釈を返したナナは、2人の先にあるものに目を向けた。

 

 

「お母様っ!」

 

しばらく目の前の遺骨を凝視した後、ナナはすがりつくように遺骨の前にひれ伏し

そのままの姿勢で泣き始めた。

 

おれたちはただその場で立ち尽くし、ナナの姿を見ていることしか出来なかった。

 

ワイワイと騒ぎながら作業をしていた男たちも手を止めて、こちらを見ている。

さきほどまでの和やかな雰囲気が一転して、あたりはシンと静まり返った。

 

 

しばらくそのままにしていたが、ナナが少し落ち着いてきたのを見計らって

おれはナナの隣にしゃがみ込むと、ナナの背中にそっと手を添えた。

 

真っ赤な目がおれを見る。

おれはナナの背中をゆっくりとさすりながら、静かに話しかけた。

 

「ナナ。以前、おれたちがここに来て、ムーンブルク王の遺骨を見つけたときのこと

 おまえは覚えてるか?」

 

「ええ。あたしが『お父様がここにいる』って半狂乱になっちゃって、あなたが

 がれきをひっくり返して見せてくれたわよね。今でもよく覚えているわ」

 

「そのとき、ムーンブルク王の遺骨がどこにあったのかも覚えてるか?」

 

ナナはあたりを見まわし、ハッとした顔で自分の足元を見つめた。

 

「ここよ、ここにあったんだわ!」

 

「そう。ムーンブルク王の遺骨はここにあった。それがなにを意味するかわかるか?

 おまえの親父さんとおふくろさんは、最期までずっと寄り添っていたってことだよ」

 

おれの言葉に、ナナの瞳から大粒の涙があふれだした。

 

 

「2人はずっと一緒にいたんだよ。お互いを守り合って、ここで戦い抜いたんだ。

 おれは王妃の遺骨も修道院に運んで、2人で一緒に眠らせてやりてえと思っている。

 もし、おまえがつらいなら、おれたちでなんとかするからよ。これは…」

 

「あたしが運ぶわ」

 

おれの言葉をさえぎって、ナナは強くキッパリと言い切った。

 

ナナからの強い決意の言葉に、おれも力強くうなずいた。

 

 

 

ティメラウスたちが玉座の近くで見つけたのは王妃の遺骨でした (´;ω;`)

 

「必ず見つけ出して、ムーンブルク王の遺骨と一緒に安置してあげたい」

カインの願いは叶ったわけですが、ナナに発見を告げるのはつらいですよね。

 

 

カインが、ムーンブルク王の遺骨を西の修道院へと運ぶ話を書いたときに

「城の再建がまだとはいえ、ナナが気づかないのはどうなんだろう?」と

感じたんですが、今回カインの言葉を書いて自分で納得しました (;´∀`)

 

 

ナナは今まで充分すぎるほど苦しんできたんだから、つらい過去のことはなるべく忘れ

元気に明るく笑っていて欲しい。

 

これはカインだけじゃなく、ナナの仲間たちも、そして天国にいる王と王妃も

みんなが望んでいることなんじゃないかなと思えたんです (*´ω`*)

 

ナナが王や王妃の遺骨のことを忘れても、充実した楽しい毎日をすごしているのなら

王様や王妃様はきっと喜んでくれるだろう、今回の話はそんな気持ちで書けました☆

 

 

見つかったムーンブルク王妃の遺骨は、ナナの手で修道院へ運ぶことになりました。

 

(当初は修道院に行くまでを1話にする予定でしたが、ここまで長くなりすぎたので

 2話に分けることにしました)

 

さて、ひれ伏して泣きじゃくっていたナナは、修道院まで行けるのでしょうか?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ