ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 145】 感動の(?)再会

おれはナナと3日間ムーンペタで一緒にすごし、サマルトリアへと帰ってきた。

 

城に帰って来てまず不審に思ったのは、ティアの姿がどこにも見えないことだった。

 

ティアだけじゃねえ。

ティメラウスもリオスも、さらに王妃までもが城内から忽然と姿を消していた。

 

 

王妃や姫がいないというのに、女中たちはなにも変わらずいつもと同じ仕事を続け

サマルトリア緑の騎士団もモルディウスが見守る中、普段どおりの訓練をしていた。

 

 

重大な事態が起きたようには見えねえ。

じゃあ、あいつらはどこへ行った?

 

 

おれは城ん中を片っ端から探し回り、厨房の前でようやくリオスを見つけた。

 

そしてリオスの案内のもと、おれが存在すら知らなかった隠し扉と細い通路を抜けて

親父が以前『ロトの盾』を厳重に保管していたという小部屋にたどり着いた。

 

 

王妃はテーブルで優雅に茶を飲みながら、部屋の中央をぼんやりと見ている。

 

王妃の少し前にティメラウスが立っていて、真剣な顔で部屋の中央を見つめている。

 

 熱心になにかを見つめているティメラウス

 

 

部屋の中央にはティアがいて、若い男と真正面から対峙していた。

 

 

ティアは拳や蹴りを繰り出している。

若い男は両手にひのきのぼうと革の盾を持ち、ティアからの攻撃を防いでいる。

 

ん? 実戦形式の稽古をしているのか?

 

 

 

「あら、帰ってきたのね」

 

おれに気づいた王妃が声をかけてくる。

 

 

王妃はリオスから木の実が入った袋を受け取ると、封を開け皿の上にザッと広げた。

 

リオスはごく自然な様子で王妃の横に座り、皿に盛られた木の実をつまんでいる。

王妃は自分用のおかわりとリオス用の茶を淹れ直し、皿の木の実に手を伸ばした。

 

 

へっ。しばらく放っておいたうちに、王妃とリオスはずいぶんと打ち解けたようだな。

 

 

「あんたも飲む?」

 

王妃が声をかけてきたので、おれもテーブルをぐるっと回って王妃の隣に座った。

 

 

王妃から茶を受け取り、皿にある木の実をまとめてつかんで口に放り入れる。

 

木の実をボリボリと噛みながら、おれは再び部屋の中央にいる2人に目を向けた。

 

 

防御を学んでいるのか、ティアに遠慮して手が出せないのか、若い男は防戦一方だ。

 

だが、動きは悪くない。

革の盾でティアの蹴りを防いだ後、一瞬だけひのきのぼうをティアに向ける点でも

適切な武器を持たせれば、防御の後すぐに攻撃に転じることも容易に出来そうだ。

 

 

「殿下、おかえりでしたか」

 

おれを見たティメラウスが、ティアたちの動きを注視しながらも笑顔で近づいてきた。

 

 

「出かける前にお会い出来て良かった。お帰りが数日遅かったら入れ違いでしたよ」

 

ティメラウスが嬉しそうに言う。

 

 

「あん? どっか行くのか?」

 

おれが問いかけると、ティメラウスはティアと若い男にチラッと目を向けて言った。

 

 

「ええ。勇者の泉に行ってきます」

 

 

「なに? 勇者の泉だと?」

 

ティメラウスの言葉におれは大声をあげた。

 

 

おれの大声を聞いて、若い男の視線がパッとこちらに向いたのが目に入った。

 

 

「む、いかんっ!」

「あぶねえぞ!」

 

おれとティメラウスは男を見て同時に叫んだが、おれたちの声は一歩遅かった。

 

 

ティアから目をそらした一瞬の隙に、ティアの蹴りが男のみぞおちを直撃した。

 

 

「うぐっ…」

 

若い男はうめいて膝をついた。

 

 

「キャア! クリフト、大丈夫?」

 

蹴ったティアが驚いて男に駆け寄り、しゃがみこんで心配そうに顔を覗きこむ。

 

 

「まぁ、大変!」

 

王妃も立ち上がって2人のそばに向かうと、しゃがんで男の背中をさすった。

 

 

ちっ!

おれは舌打ちして男の背中をさする王妃を引き剥がし、代わりに腰を下ろした。

 

 

「あんたが撫でてたってどうにもならねえだろ。ここはおれにまかせろ」

 

おれはうずくまっている男の背中に軽く手を添えると、ベホイミの呪文を唱えた。

 

 

痛みに震えていた背中の筋肉がフッと緩むのを、男の背中に添えた手で感じとった。

 

 

若い男は身体の力を抜き「ふーっ」と大きく息を吐くと、顔をあげておれを見た。

 

 

「ありがとうございます、カイン殿下」

 

礼を言う男の頬をおれは軽く叩いた。

ぺチンッといい音が鳴る。

 

 

「えっ! ちょっとあんた…」

「おにいちゃん、なにするの?!」

 

王妃とティアが驚いて声をあげる。

 

 

おれは、頬に手をあて驚いた顔でおれを見ている男をギロリとにらみつけた。

 

「ただの稽古だとしても、戦ってるときには絶対に相手から目をそらすんじゃねえ!

 今は相手がティアだから良かったけど、もしこれが実戦で相手が本物の敵だったら

 てめえは今ごろ死んでるんだぞ!」

 

 

おれが男を怒鳴りつけると、全員が口をつぐみその場はシーンと静まりかえった。

 

 

「…... はい。カイン殿下のおっしゃるとおりです。申し訳ありません…」

 

男は神妙な表情で小さくつぶやくと、おれに向かってペコリと頭を下げた。

 

 

「まぁ、今のことはいい経験になったろ。戦闘のときは一瞬の気の緩みも許されない。

 それだけわかったならいいさ」

 

おれは立ち上がり男に手を差し出した。

 

 

男はうなずき「ありがとうございます」と小さく言っておれの手を握り立ち上がった。

 

 

あらためて正面から男の顔を見る。

 

ん? こいつ、どこかで見たような…

 

 

「なぁ、どっかで会ったか?」

 

おれが尋ねると、男の代わりにティアがふふんと鼻を鳴らして笑った。

 

 

「ふふっ、会ったことあるかしら? あたしとリーナちゃんが、ナナおねえちゃんの

 誕生日プレゼントを用意してるとき、あたしの部屋を覗く不届き者がいたのよ。

 それで練兵場に『誰か部屋を見張って』とお願いしに行って、あたしと一緒に

 来てくれたのが、このクリフトなのよ」

 

ティアはおれを見てふんっと胸を張った。

 

 

「あらぁ~、それでどうしてカインがクリフトに会ったことあるのかしらねぇ?」

 

王妃が白々しく言ってくる。

 

ティメラウスとリオスは、2人そろっておれを見ながらニヤニヤ笑っている。

 

 

「えっ… あ、あのとき、私は姫様に『部屋を覗く奴がいるから助けて』と言われて

 そんな変態の覗き魔から姫様を守らねばと急いで駆けつけたんですが…」

 

事態がつかめていないクリフトがきょろきょろとおれたちを見ながらつぶやいた。

 

 

「あら、ヤダ。あんた、変態の覗き魔ですって!」

 

王妃は大笑いしながらおれの肩を叩いた。

 

ティメラウスとリオスも笑っている。

 

 

「… あ、あのときの変態ってもしや…」

 

クリフトが青ざめた顔でおれを見る。

 

その先を言うつもりか? とおれがにらみつけると、クリフトは慌てて目をそらした。

 

 

「ぶはははっ」

 

タジタジになったクリフトの顔を見て、ティメラウスが豪快に笑い出す。

 

 

おれはティメラウスをにらみつけたが、そこでふとさっきの話を思い出した。

 

 

「そうだ、思い出した! ティメラウス、おまえ勇者の泉に行くってどういうことだ?」

 

ティメラウスに尋ねると、ティメラウスは笑いながらティアとクリフトに目を向けた。

 

 

「クリフトが16歳になって騎士に叙任されたの。叙任されたから勇者の泉へ行って

 身を清めてくるんですって! これはあたしの腕試しの大チャンスだと思わない?

 それでクリフト1人じゃ心配だから、あたしが護衛でついていくって言ったの。

 ティメラウスは... まぁ、あたしの荷物持ちって感じでついてくることになったのよ」

 

ティアが得意気に言ってくる。

 

 

「はぁ? おまえが護衛だと? 足手まといの間違いじゃねえのか?」

 

おれが鼻で笑いながら言うと、ティアは頬をふくらませぷぅっとむくれた。

 

 

「なるほどな。それでティメラウスも同行する羽目になったってわけか。おまえが

 本当の護衛ってことだな。ご愁傷様」

 

おれはティメラウスの肩をポンポン叩いた。

 

 

「なに言ってんのよ、おにいちゃん。本当はティメラウスなんて来なくてもいいのよ。

 あたしたち2人でも充分なのに...」

 

ティメラウスの同行にティアは不服そうだ。

 

 

「ばーか。おまえこそなに言ってんだ。王子と一緒に勇者の泉に行ってわかっただろ?

 あそこには毒蛇がうじゃうじゃいて男でも危険なんだ。あのときの王子みてえに

 クリフトが蛇の猛毒で倒れたら、てめえはどうすんだ? あんときだっておれが王子を

 バプテスマのじいさんのところへ運んだから良かったものの、てめえ1人だったら

 王子は野垂れ死んでたんだぞ」

 

おれがティアの頭を小突いて言うと、ティアは気まずそうに口を閉じて押し黙った。

 

 

「ティメラウスがいれば安心だぜ。クリフト1人ぐらいなら軽々と運べるだろうし

 けったくそ悪い蛇どもの退治も、ティメラウスにとっては朝めし前だからな!」

 

おれはティメラウスにウインクした。

 

ティメラウスは微笑むと「おまかせください」と胸に手を当て軽く一礼する。

 

 

「ねえ、ティア。あんた汗かいてるでしょ? 部屋に戻って水浴びしてきたら? 

 あんたはサマルトリアのお姫様なんだから、汗まみれじゃカッコがつかないわよ」

 

王妃がティアに声をかけると、ティアはハッとなって自分の身体を眺めまわした。

 

 

「そうよね。お姫様はいつも優雅に美しくいなくちゃダメよね。みなさま、あたくし

 そろそろ失礼しますわ、ごきげんよう

 

ティアは急に気取った態度になっておれたちに一礼すると、部屋を出ていった。

 

 

「ふふっ。邪魔者は追っ払ってあげたわよ」

 

王妃がおれの肩を叩いてくる。

 

 

「邪魔者?」

 

おれは首をかしげた。

 

 

「ティアがいるとうるさくて出来ない話もいっぱいあるわ。あんただって、いろいろ

 聞きたいでしょ? この子に」

 

王妃はあごでクリフトを指した。

 

 

「はははっ。確かにそうだな」

 

おれはクリフトを見てニヤッと笑った。

 

 

おれと王妃に見据えられ、クリフトはおびえたような表情で立ちすくんでいた。

 

 

 

 

クリフトは、カインがティアの部屋を覗いた(未遂)とき、ティアが見張り役として

サマルトリア緑の騎士団の練兵場から連れて来た青年でした~ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

カインとクリフト、感動の再会 ( *´艸`)

 

クリフトにとっては「姫様の部屋を覗く変態め! 許さん」と張り切ってきたわけですが

まさか覗き魔の正体が、ティアのおにいちゃん&サマルトリアの皇太子さまだなんて...

 

青ざめながらカインを見て、やべえと慌てて目をそらすクリフトが可愛いです (*´ω`*)

 

 

覗き(未遂)事件を今さら蒸し返されて立場のないカインですが、クリフトが蹴られて

うずくまったときに真っ先にベホイミで助けてあげるところは素敵ですよね (*´ω`*)♡

 

あと、クリフトの頬を叩いて「戦闘中は絶対に気を抜くな!」と説教するところと

遠足気分で浮かれるティアに「なめてたら蛇の毒で死ぬぞ!」と説教するところは

仲間思いで『厳しくも優しいおにいちゃん』って感じでお気に入りです (≧∇≦)♡

 

 

さて。ティアが部屋の見張り役として呼んだ男ということはわかりましたが、まだまだ

謎が多い青年・クリフト☆

 

 

邪魔者ティアを追い払い ( *´艸`)

未来のお義母様と、未来のお義兄さまとの(地獄の ( *´艸`))面談が始まりますよ♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ