ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 147】 おにいちゃんは心配症

先日サマルトリア緑の騎士団に叙任され、勇者の泉で身を清めるというクリフト。

旅にはティアも同行するということで、おれと王妃はクリフトから詳しく話を聞いた。

 

 

クリフトは魔法に興味を持っており、魔戦士のおれに憧れを抱いていたんだという。

 

なんだ、イイ奴じゃねえか!

 

おれが気を許して話を進めていくと、どうやらこの男はティアに惚れているらしい。

 

 

「ティアのそばにいて守りたい、だが魔法も学んで将来は立派な神官になりたい」

 

自分の想いを明かしたクリフト。

 

 

すっかりクリフトのことが気に入った王妃は、なんとか力になりたいと乗り気になり

グランログザー師匠にクリフトの弟子入りを頼んで欲しい、みんなが旅に出る前に

師匠あてに手紙を書けとおれに頼んできた。

 

 

書かないと王妃は黙っちゃいない。

 

しょうがねえからおれはさくっと一筆書いてやり、クリフトたちは勇者の泉を訪れた後

ローレシア南のほこらで師匠に会って来るということで話がまとまった。

 

 

その後、クリフトはティアの部屋を訪れ、今回の旅の行程について話したらしい。

 

ティアはおれや王子との旅と同じ場所を訪ねることに最初は不服そうにしていたが、

おれが言った「同じ場所を辿ってこそ、己の成長がわかる」という言葉を伝えると

目を輝かせて「そうよね! あのときのあたしとは違うことを証明してみせるわ」

すっかり上機嫌になったんだそうだ。

 

 

ふ~っ、やれやれだぜ。

 

 

その後、ティア・クリフト・ティメラウスで話し合い、2日後に旅立つと決まった。

 

 

勇者の泉と師匠のところに行くだけだ。

 

洞窟にうようよいる毒蛇、もしかしたらからかってくるかも知れねえバブルスライム

多少は厄介だと思うが、ティメラウスもいるんだし心配はいらねえだろう。

 

 

だが、あいつらどんな格好で行くんだ?

クリフトは稽古ではひのきのぼうを持っていたが、まさかアレで行く気か?

 

服は? 革の鎧で良いのか?

いや。クリフトは革の鎧で良いとしても、ティアも鎧を着るってわけにもいかねえ。

 

 

くそっ! 世話の焼ける奴らだ。

 

 

おれはルーラを使ってルプガナへ行き【アールヴズパル】へ向かった。前に王子たちと

訪れたときと同じく、エルフのように耳のとんがった若者が出迎えてくれる。

 

「あの人、エルフかしら?」

初めてここに来たとき、ナナがおれにひそひそと耳うちしてきたことを思い出し

心の中でニヤケながら、おれはエルフのような男からあるものを2点購入した。

 

 

そして呪文でサマルトリアに戻り【魔法を売る店】でもあるものを買い城に入った。

 

 

買ったものを手に、リオスに教えてもらった例の隠し部屋へと向かう。

 

部屋では先日と同じくティアとクリフトは稽古をし、ティメラウスが監視していた。

 

 

おれは稽古を終えた2人を呼び寄せ【アールヴズパル】で買ったものを見せた。

 

「旅にはこれを着て行けよ」

 

 

おれが買ったのは『身かわしの服』だ。

 

 

ムーンペタでナナと合流してから、ナナはずっとただの『布の服』を着ていた。

 

おれと王子だけが鎧を着ているのは悪い気がして、ナナにもなにか用意したかったが

ムーンペタ周辺でいくら探しても、ナナの防具になりそうなものはなにも無かった。

 

 

「あの服、素敵!」

 

ルプガナに着いて【アールヴズパル】で『身かわしの服』を見たナナが歓声をあげた。

 

おれと王子は顔を見合わせ、その場ですぐにナナが気に入った服を買ってやったのだ。

 

 

さっそく『身かわしの服』に着替えたナナは、満面の笑みでおれと王子のそばに来て

興奮しながら新しい服を絶賛し始めた。

 

 

「布の服より丈夫なのに、驚くほど軽いの! 身体に羽根が生えたみたいに動けるのよ」

 

ナナは嬉しそうにひらひら舞った。

 

 

そりゃ『布の服』に比べりゃ、どんなものでも良く思えるだろうと最初は思っていたが

実際に敵と戦う場になって、おれと王子はその服の効果を知ることになった。

 

本当に羽根でも生えたのかというくらい、ナナは軽やかに敵の攻撃を交わして見せた。

 

 

『身かわしの服』ってすげえんだな!

 

 

おれは『身かわしの服』のすごさを実感したことを思い出し、ティアとクリフトにも

着せてやろうと2着買ってきたのだ。

 

ナナの話を伝えながら『身かわしの服』を見せると、2人の顔がパッと明るくなった。

 

 

「まぁ! いいじゃない。 丈夫で軽くて動きやすい服だなんてあたしにピッタリね!

 服のデザインがあんまり可愛くないのが残念だけど、まぁ我慢するわ」

 

 

「服にそんな素晴らしい特殊効果があるなんて知りませんでした。それに、この服は

 姫さまとおそろいになるんですよね ... なんだかドキドキしてきますね。あ、いや。これは別に

 決して変な意味ではなく。私のようなものが姫さまと同じ服を着るだなんて恐れ多いと思っただけで...」

 

クリフトはティアにチラチラ視線を向け、顔を赤らめながら小声でつぶやいている。

 

 

「クリフト、さっきから1人でなにブツブツ言ってんの? まさか、おにいちゃんが

 わざわざ買ってきてくれたこの服が気に入らないとでも言うつもり?」

 

クリフトのつぶやきを聞き取れなかったティアがクリフトをギロリとにらむ。

 

 

「い、いえ! 滅相もございません! 非常に気に入っております。私のためにわざわざ

 買って来ていただけたなんて、感謝感激雨嵐です。ありがとうございます!」

 

クリフトは服を胸に抱きながら、慌てた様子でおれに何度も頭を下げてきた。

 

 

「ふんっ。最初からそう言えば良いのよ」

 

ティアは満足げにうなずいた。

 

 

へっ、出発前からこれだもんな。

先が思いやられるぜ。

 

おれは保護者としてついて行く羽目になったティメラウスに心から同情した。

 

 

そして、おれは【魔法を売る店】で買ったもの2つを懐から取り出した。

 

 

「えっ? キメラの翼?」

 

ティアが首をかしげながら受け取る。

 

 

「勇者の泉と師匠のところに行くだけの旅だから、大したことは起きねえと思う。

 それに旅はティメラウスも一緒だからな。なにかあっても守ってもらえるだろう。

 だけど、ティメラウスもジジイだからよ。いつくたばってもおかしくねえ歳だ」

 

おれの言葉を聞き、リオスとティメラウスが顔を見合わせ苦笑しているのが目に入る。

 

 

「まぁ、それは冗談としても。旅に出たらなにが起きるかはわからねえ。もしかしたら

 本当にティメラウスがぶっ倒れちまうこともあるかもしれねえ。そうなったとき

 おまえら2人だけだと心配だ。パニックになってとんでもねえことやらかしそうで。

 だから、キメラの翼をそれぞれに渡しておく。なにか不測の事態が起きたときは

 自分たちだけでなんとか解決しようとせず、冷静になってキメラの翼を使ってすぐに

 サマルトリアへ帰って来い。そのときはおれが助けてやるからよ」

 

おれは拳で自分の胸を軽く叩いた。

 

 

「2人でなんとかしようとして全員がぶっ倒れちまったら、助けは呼べないからな。

 ティメラウスになにかあっても、おれなら回復も蘇生も出来る。だから、その場に

 置き去りにしてでも、おまえたちはすぐに帰って来い。忘れるんじゃねえぞ!」

 

おれが強い口調で言うと、クリフトがごくりとつばを飲むのが聞こえた。

 

 

「はっはっは。いくらジジイでも簡単にはくたばりませんぞ。カイン殿下はちょっと

 大げさですけどな。でも、旅に出るのにそれなりの覚悟が必要なのは間違いない」

 

ティメラウスが笑いながらティアとクリフトのそばに近づいてきた。

 

 

「旅先では思わぬ事態が起きるもの。なにかが起きたときに焦って冷静さを失うと

 さらに大きなトラブルにつながっていく。常に落ち着いて行動するのは大事だ。

 殿下の話は正しい。オロオロしているうちに全員が倒れては元も子もないからな。

 最終的に全員が助かるためなら、くたばったジジイを置いて城に帰るというのも

 ときには大事な選択となるだろう」

 

ティメラウスはおれを見てうなずいた。

 

 

「なにも起きないようにと祈るばかりですが、先々まで考えて動くことは大切ですね。

 カイン殿下とティメラウス様の言葉は、この胸にしっかりと胸に刻みます」

 

クリフトはうなずき真剣なまなざしでおれとティメラウスを見つめると、キメラの翼を

大事そうに懐へしまい込んだ。

 

 

少し離れたところにいるリオスが、おれを見てニヤニヤ笑っている。

 

 

「なんだよ、変な顔で笑って」

 

 

「いひひ。いや〜、今回のカイン殿下はずいぶんと準備が良いな~と思いましてね」

 

リオスも笑いながら近づいてきた。

 

 

「あっしと一緒に《魔術師の島》に行ったときなんて、殿下は脱獄するための着替えの

 ローブしかくれなかったっす。ずいぶんと扱いが違うな〜と思ってね。この違いは

 いったいなんなんっすかねぇ?」

 

リオスは腕を組み、ヘラヘラしながらおれの顔を覗き込んでくる。

 

 

「けっ、脱獄させて着替えまで用意してやったんだから充分だろ? 甘えんじゃねえよ」

 

おれはリオスの顔を押しのけた。

 

 

「ところで、おまえはどうすんだ? 城に残って王妃の相手でもするつもりか?」

 

 

「うへへ。隠しておいて当日のお楽しみにするつもりだったんすけどね。実はあっしも

 一緒に旅立つことになりました」

 

リオスは頭をかきながら言った。

 

 

「えっ? そうなの?!」

 

ティアが驚いた声をあげる。

 

 

「王妃さまにおじょうちゃんを守るようにと強く頼まれましたし、このじいさんからも

 熱心に誘われましたからねぇ。まったく、人気者は引く手あまたで困りますなぁ〜」

 

リオスは得意げに笑っている。

 

 

「おい、同行する本当の目的はなんだ?」

 

おれはリオスをにらみながら言った。

 

 

「へへへっ、バレましたか。ホント恋愛以外のことになるとカイン殿下は鋭いっすね。

 あっしの目的は勇者の泉っす。今まで毒蛇がうっとおしくて近寄りませんでしたが

 ひそかにお宝が眠ってるんじゃねえかとにらんでるんっすよ。王妃さまに言ったら

 見つけた宝は独り占めして良いって言うんでね、そりゃ行かない手はないっす」

 

リオスの目がギラリと光った。

 

 

「お宝探し?! 楽しそう! リオスさん、お宝は全部あなたにあげるから、あたしも

 一緒にお宝探しの探検をしたいわ!」

 

ティアも目を輝かせている。

 

 

「はぁ? 馬鹿か、おまえは。お姫様が汚ねえ洞窟で宝探しなんかしてどうすんだよ!」

 

おれは抗議の声をあげたが、興奮状態のティアはまったく聞いていない。

 

 

「腕試しのついでに宝探しも良いわね。ねえ、あんたも賛成でしょ、クリフト?」

 

 

「わ、私は姫さまの行くところなら、地の果てまでもおともいたします!」

 

 

「じゃあ、決まりね! 出発が楽しみだわ」

 

ティアはウキウキとはしゃいでいる。

 

 

近くで小さなため息が聞こえた。

振り向いてため息をついた主を確かめると、ティメラウスだった。

 

 

 引率のティメラウス先生☆   そりゃ、ため息も出ちゃうよね... (;´∀`)

 

 

おまえの気持ちはよくわかるぜ!

 

おれは再びティメラウスに深く同情した。

 

 

 

※ 次回からは、番外編「ティアの大冒険」が始まりますよ~ ヾ(*´∀`*)ノ

 

・ ティアを演じる →→→【創作番外編 ①】 ティアの大冒険 ~旅立ち~

・ カインを演じる →→→【創作 148】 旅立ちの朝に

 

 

 

 

 

 

私が子どもの頃「りぼん」でお父さんは心配症というギャグマンガがありました。

リスペクトも込めて、今回のタイトルは『お父さんは心配症』から取りましたよ☆

 

 

心配症のおにいちゃん ( *´艸`)

妹を過剰に心配するあまり、勇者の泉に行くだけのレベル1のティア&クリフトに

なんと『身かわしの服』を用意 ヾ(*´∀`*)ノ

 

『身かわしの服』に加えて、クリフトにはカインのお下がりの『はやぶさの剣』と

『力の盾』を渡す案も一度は考えましたが、さすがにそこまでするとクリフトが

チートすぎるので止めました。

 

クリフトは「銅の剣・身かわしの服・革の盾」で行かせます!(これでも充分よね☆)

 

 

そもそも、カインの剣の師匠・ティメラウス卿がゲームで言えばもょもと Lv. 48」

みたいなものですから ( *´艸`)

 

ティメラウスが同行するっていうだけで充分すぎるほどチートなんですよね☆

 

 

そんなチートキャラもょもと(ティメラウス) Lv. 48」が同行するというのに

「ティメラウスにもし何かあったら…」と言い出したのは、カインおにいちゃんの

過剰な心配を表現したかったんですが、もう一つ別の理由もありまして… (;´∀`)

 

サマルトリアとは別の世界線にいる「ティメラウスのそっくりさん」なじいさんも

姫さまと若者と一緒に冒険の旅に出ますが、正直なところ弱いですよね... (´・ω・`)

 

あっちの世界線にいるじいさんの印象に引っ張られ「ティメラウスがくたばったら…」

こんな話が浮かんできました。

 

 

あと、ティアとおそろいの『身かわしの服』にデレデレするクリフトはキモい... (;'∀')

けど、クリフトってこんな奴ですよね!

(私は嫌いじゃないです (*´ω`*)♡)

 

次回からの冒険でも、クリフトはキモい発言を続けていきますよ~ ( *´艸`)

 

 

 

次回からはティアの大冒険

お楽しみに〜 ヾ(*´∀`*)ノ