ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 59】静かに眠れる場所へ

ムーンブルク城でがれきを撤去していたところ、王妃の遺骨が見つかった。

ナナに知らせるのはひどく心苦しかったが、意を決して遺骨の発見を告げたところ

ナナは大粒の涙を流しながらも「あたしが修道院まで運ぶ」と力強く言い切った。

 

いつの間にか、おれたちのすぐ後ろにはアルファズルが立っていた。

 

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アルファズルは十字を切り、目を閉じて祈りを捧げると、懐から白い絹の布を取り出し

ナナにそっと差し出した。

 

「これに包んで持っていくと良い」

 

ナナは小さくうなずいてアルファズルから布を受け取ると、王妃の遺骨を包み始めた。

ムーンブルク城にいる全員が、そんなナナの様子を静かに見守っていた。

 

遺骨を包み終えると、ナナは白い布を大事そうに胸に抱いて立ち上がった。

 

「おれも一緒に行くよ」

隣で立ち上がりながらおれがそう告げると、ナナは無言のままこくんとうなずいた。

 

 

ここまでナナたちが乗って来た馬に近づき、ナナに手を貸して乗せてやった。

おれが後ろに乗り、手綱を握る。

 

修道院に向かう道中、ナナは白い布を抱きしめたまま、ひとことも話さなかった。

おれもナナにかける言葉が見つからず、無言のまま静かに馬を走らせた。

 

 

ムーンブルク西の修道院に着くと、修行僧が入口の門を掃除していた。

おれは先に馬から降り、修行僧にムーンブルク王妃の遺骨が見つかったことを告げた。

 

おれがナナに手を貸して馬から降ろしてやっている間に、修行僧が呼んでくれたらしく

修道院の入口では、3人の僧侶が手を合わせておれたちを待っていた。

 

おれたちは僧侶の案内で安置室へ入った。

 

 

安置室は、石造りでひんやりとしていた。

 

前回は、ムーンブルク王の遺骨を持ってのいきなりの訪問だったので、とりあえず

急場しのぎで仮に安置するという感じだったが、今回は事前に話をしてあったため

安置室の中も整然と整えられていた。

 

壁に沿ってムーンブルクの兵士たちの遺骨が入った棺が置かれ、部屋の中央に

ムーンブルク王の棺が置かれていた。その隣には、空の棺が用意されている。

 

それぞれの棺の前には、ろうそくが灯されており、香が焚かれていた。

 

「王妃様のご遺骨も必ず見つかると信じて、事前にご用意しておりました」

 

僧侶の一人がそっとナナのそばに行き、ナナが抱いている白い布を恭しく受け取った。

 

僧侶は白い布を大事そうに手に持つと、空の棺に向かってゆっくりと歩みを進めた。

残りの2人の僧侶が手を合わせ、経を読みながら祈りを捧げている。

 

おれとナナも僧侶にならって、静かに手を合わせて目を閉じた。

 

僧侶の手によって、ムーンブルク王妃の遺骨が丁重に棺に納められると、新たに

ろうそくが灯され、香が焚かれた。

 

 

ナナは部屋の周りに置かれている兵士たちの棺を、1つ1つ丁寧に撫でていた。

 

すべての骨が揃っている遺体はほとんどなく、棺の中は鎧の一部と骨の一部だけ…

そんな棺ばかりだったが、ナナは愛おしそうに1つ1つ優しく撫でていく。

 

兵士たちの棺をすべて撫でたあとは、あらためて両親の遺骨と向き合うのだろう。

 

気持ちを整理するには充分な時間が必要だ。

おれがここにいては邪魔になる。

 

そう気づいたおれは、物音を立てないように静かに安置室を出ると、修道院の外で

ナナを待つことにした。

 

 

外に出ると、相変わらず抜けるように澄んだ青空がおれを出迎えた。

 

乗って来た馬に近づいていくと、先ほどの修行僧が桶に水を入れて手渡してくれた。

おれは修行僧に礼を言い、桶に入った水を馬に飲ませながら馬の横顔を撫でてやった。

 

 

どれぐらい経っただろうか?

人の気配を感じて振り向くと、修道院の入口からナナがゆっくりと外に出てきた。

 

泣き続けてボロボロになっているかと思いきや、ナナは目を赤く腫らしているものの、

スッキリとした顔をしている。

 

ナナはゆっくりおれの前まで歩いて来ると、少しはにかんだ笑顔を見せた。

 

「もう、大丈夫よ。お父様とお母様、城の兵士たちも供養してもらえてホッとしたわ。

これからはあたしも前を向かなきゃね!」

 

「つらいときはよ、無理しないで素直に泣けよ。背中ぐらい貸してやるからさ」

 

前にも言った言葉が、自然と口から出た。

 

「その言葉、前にも聞いたわよ。それに… 背中はもう貸してもらったわ」

 

ナナは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

「これからだって貸してやるよ。おまえが泣きたくなったときは何度でもな」

 

おれがそう言うと、ナナは真っ赤になりながらも、微かにうなずいた。

 

 

そのまましばらく沈黙が続いたが

 

「カインも、泣きたくなったら素直に泣いていいのよ。背中ぐらい貸してあげるわ」

 

ナナは胸を張り、誇らしげに言ってきた。

 

「へっ、いらねえよ。ババアの背中なんか」

 

おれがそう軽口をたたくと

 

「カインったら! もう!」

 

ナナはプーッと頬をふくらませた。

 

 

ナナの明るい表情を見ておれは安心した。

 

「そろそろ戻るか? みんなが待ってる」

 

「そうね、帰りましょう」

 

おれたちは僧侶たちに丁重に礼を述べて、修道院をあとにした。

 

 

 

最初にお詫びというかなんと言うか… (*>д<)

 

私は宗教にはまったく詳しくないので、神父と僧侶の違いがわかりません

 

アルファズルは賢者だけど、普段は教会にいて、神父の仕事をしていますよね?

 

ムーンブルク西のほこらは、ゲームブックでは、修道院で「僧侶」がいる設定です。

(読み直して確認しました)

 

私のイメージでは、祈りを捧げるとき「神父は十字を切る」「僧侶は合掌する」なので

(文字からの勝手なイメージです (;´∀`))

 

ムーンブルク王妃の遺骨を前に

アルファズルは十字を切って祈り、僧侶は合掌して経を読むという展開にしました。

 

キリスト教と仏教が入り雑じったような内容になりましたが、ご了承ください。

 

ハーゴンみたいな邪神教じゃなければ、多少の違いは良いかなと思っています ( *´艸`)

 

 

さて、母親の遺骨を修道院まで運ぶなんて、つらい経験ではありますが… (´;ω;`)

 

ずっとがれきの下に放置されたままで、長く野ざらしにされていたことを思えば、

棺にきちんと納められ、丁寧に供養してもらえたら、少し気持ちは楽になりますよね。

 

気持ちの整理が出来て、スッキリしたナナの姿を書けて、個人的には満足しています。

 

 

そして、大好物の「カインとナナのイチャイチャ」も書いてみましたよ~ ( *´艸`)

 

「背中ぐらい貸してやるよ。ナナが泣きたくなったときは何度でも貸してやる」

書いて自分で大喜びしましたヾ(*´∀`*)ノ

 

読んでくださるみなさまも、同じように喜んでもらえたなら嬉しいです (*´ω`*)

 

 

気持ちを整理して、スッキリできたナナ。

心配しながら帰りを待っているムーンブルク城のみんなのもとへ帰りますよ。

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ