ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 109】もっと大きな野望

ナナの誕生日には、ナナが美しいと感動していたベラヌールの花を贈ってやりたい。

 

ぺルラという婆さんと王妃に「環境が合わないから無理」と言われ1度は諦めかけたが

王妃から「花を鉢に植え替えて涼しい室内に置けば、ムーンペタでも咲くよ」と聞き、

おれは裏庭の脇にある物置小屋に走って、植え替え用の鉢を探すことにした。

 

 

いざ、小屋に入ると、大小さまざまの鉢が所狭しと並んでいるのが見えた。

 

王妃のババアは「なるべく大きく、持ち運びしやすい軽いもの」と言っていたよな。

さて、どれが良いのか...

 

いくつか手に持ってみたが、どれも似たり寄ったりで違いがよくわからなかった。

 

まぁ、適当でいいか。

 

 

とりあえず目についた大きめの白い鉢を手に取ったとき、背後に人の気配を感じた。

これまで人が近づいてくる気配は全然なかったのに、誰かがおれのすぐ後ろにいる!

 

急いで振り返ると、リオスが小屋の入口に立ち、興味深そうにおれを見ていた。

 

 

「なんだ、リオスかよ~。驚かすなよ。いきなり現れたらビックリするだろうが!」

 

おれが警戒を解いてホッとひと息つくと、リオスはおれを見てニヤリと笑った。

 

 

「へへっ。あっしの得意技の1つ『忍び足』っす。有能な盗賊になるためには、まず

 この『忍び足』が出来るようにならねえと、話にならねえんすよ」

 

リオスは笑いながら小屋に入ってきた。

 

 

「なんだそれ? そんなおかしな技、別にここで使うこともねえだろ?」

 

おれがぼやくと、リオスは人差し指を立てて「チッチッチ!」と左右に振った。

 

 

「あっしは、あんたやおじょうちゃんに気に入られて、ティメラウスのじいさんが

 部屋を提供してくれてここにいますが、所詮はただの盗賊っすからね。城の中には

 あっしがウロウロするのを好ましく思わない奴もたくさんいる。だから、使える技は

 出来るだけ使っておかねえとね」

 

 

「へぇ。そんなもんか」

 

『忍び足』なんていう妙な技を使う方が、余計に嫌がられる気もするが、リオスには

リオスなりの苦労があるみてえだな。おれはとりあえずうなずいておいた。

 

 

「殿下はこんなところでなにをしてるんです? って、さっきここに来る前に裏庭で

 王妃様が人を集めて苗を植え替えるとか言ってたから、察しはつきますけどね」

 

リオスは再びニヤリと笑った。

 

 

「ナナ姫へのプレゼントに花をあげるんですよね。うん、なかなか良いセンスですよ」

 

 

「けっ。おまえに何がわかる」

 

『忍び足』なんていうわけのわからない技で驚かされたうえに、プレゼントのことで

生意気な口をきかれておれは毒づいた。

 

 

「ははっ。何もわかってないのは、あんたの方だ。ナナ姫へのプレゼントの花を

 まさか、こんな鉢に入れるつもりっすか? ああ、こりゃあダメだな~」

 

リオスはわざとらしくため息をついた。

 

 

「ちっ、なんだと?! てめえ、この鉢の何がダメだって言うんだよ!」

 

おれは声を荒らげた。

 

おれの怒声は気にせず、リオスは涼しい顔で、おれからひょいっと鉢を取り上げた。

 

 

「大きさ、軽さは、まあいいでしょう。でも、なんせ面白みがない。これでは姫を

 喜ばせるのは難しいっす。ここはひとまず、あっしにまかせてくださいよ」

 

リオスは足の間に鉢を置いてその場に座り込むと、懐から小刀を取り出した。

 

 

リオスの動きに合わせて、シュッシュッと音を立てて小刀が鉢の表面をなでていく。

何度も繰り返すうちに、鉢の表面に細かな模様が浮かび上がってきた。

 

削り方になにかコツがあるのか、外から物置小屋に入ってくるわずかな光を受けて

鉢がキラキラと輝いている。

 

 

「おまえ、器用なんだな」

 

さっきまでの怒りを忘れ、おれはリオスの手の動きにすっかり魅了されていた。

 

 

「へへっ。大きな声では言えませんが、あっしは盗んだお宝を、人様に売りさばいて

 生きていますからね。高く売れるようにするための努力は惜しまないんですよ」

 

「高く売る努力?」

 

 

「宝石なんかを買いたがる奴は、とにかく美しく見えるものが好きっすから。ただの

 木箱に入ったものは、それが本物の宝石でも高値はつかねえ。逆に、質の悪い宝石も

 美しく装飾された箱に入れて売れば、驚くほどの高値で売れるってことっす」

 

リオスは得意げに鼻の下をこすった。

 

 

「それで、おまえは美しい箱を作り出す技術を身に着けたってことか」

 

「ええ、そういうことっす」

 

リオスはうなずきながら手を止めて、鉢を持ち上げると外の光にかざした。

鉢は、まるでそれ自体が宝石になったかのように、キラキラと輝きを放っている。

 

 

「なぁ。おまえさ、やっぱりおれたちと一緒にナナの誕生パーティーに行かねえか?

 この鉢の模様をおまえがつくったって言えば、ナナは絶対に感激するぜ。おまえも

 今の機会でナナに気に入られれば、ムーンブルクにも帰りやすくなるだろ?」

 

おれの言葉にリオスの小さい目がおれをとらえ、眼光鋭くギラリと光った。

 

 

「今だから打ち明けますが、あっしも以前は、あんたやおじょうちゃんを利用して、

 ナナ姫に取り入ろうと考えていました。でも、ちょっと事情が変わってね」

 

リオスはそう言うと「くくくっ」と意味ありげな含み笑いをした。

 

 

「事情が変わった?」

 

「ええ。あっしがサマルトリアに来たのは、あんたやおじょうちゃん、ティメラウスの

 じいさんがあっしを受け入れてくれたからっす。あっしのことを良く思う奴がいない

 ムーンブルクにいずれは帰るのがいいか、それともこのままサマルトリアに残って

 この地に骨をうずめるのがいいか、あっしも一時期は迷っていたんっすよ」

 

 

「ああ、それはわかった。それで? 事情が変わったって言うのはどういうことだよ?」

 

おれは話の続きを促した。

 

 

ムーンブルクがもっと居心地のいい場所になれば良いと思いながら、その方法が

 見つからなかったんですけどね、どうやら居心地のいい場所になりそうな予感が

 プンプンするんですよ」

 

リオスはおれに鼻を近づけて、クンクンと匂いを嗅ぐまねをした。

 

 

「なんだよ。おれの匂いを嗅ぐなよ、気持ち悪りーな。 なぁ、どういうことだ?

 回りくどい言い方してねえで、事情がどう変わったのかハッキリ言えよな」

 

おれはシッシッと手を振って、近づいてきたリオスの鼻を押しのけた。

 

 

「へへっ。じゃあ、ズバッと言わしてもらいます。ムーンブルクがあっしにとって

 今よりもっと居心地のいい場所になるには、あっしを認めて受け入れてくれる奴が、

 向こうにも居ればいいってことになります。ここまではわかりますか?」

 

「ああ、わかるさ」

 

 

ムーンブルクで、あっしを認めて受け入れてくれる奴、それはナナ姫しかいないと

 最近まで思っていたんですが、どうやら他にも居そうなんですよね~」

 

リオスは鉢を抱えて、おもしろそうにクックッと笑い声をあげた。

 

 

「ナナ以外におまえを受け入れる奴? いったい誰だ? アルファズルのことか?」

 

なぜ、リオスが笑っているのかまったくわからねえ。こいつを認めて受け入れる奴が

ナナ以外にもいるだと!? ムーンブルクにはいったい誰がいるって言うんだ?

 

 

「へっ。それはなにかの冗談ですか、それとも本気で言ってます? アルファズルなんて

 偉い奴だって言ったところで、ムーンペタの賢者じゃないっすか。ムーンブルクには

 まったく関係ねえ人物だ。まさかあんた、まだバレてねえとでも思ってるんっすか?

 あっしが言っている『ムーンブルクであっしを受け入れるもう1人の人物』。それは

 あんたですよ、カイン殿下」

 

リオスはビシッとおれを指差してきた。

 

 

「なっ!」

 

おれは思わず声を失った。こいつ、いきなり何を言い出すんだ?

 

 

「へへっ。カイン殿下よ、大盗賊を名乗るあっしの目をなめてもらっちゃ困ります。

 おじょうちゃんが女王になりたいと言い出したとき、あんたがナナ姫を見つめながら

 ひそかにほくそ笑んでたこと、あっしはこの目ですべて見てるんっすよ」

 

 

くそっ! やっぱりあのとき、こいつに見られていたのか!

 

 

「おじょうちゃんが女王になるって張り切って言っている横で、あんたがナナ姫を見て

 ひそかにニヤニヤしているのを見たとき、あっしは、渡りに船だと喜んだんっすよ。

 あんたの本当の野望は、ムーンブルクでナナ姫と一緒になること。あっしの野望は

 ムーンブルクでもサマルトリアと変わりなく自由にすごすこと。お互いの利益が

 バッチリ嚙み合っているじゃないっすか。これは協力しない手はないと思ってね。

 あんたを探してここまで来たんだ」

 

鉢の模様をすべて掘り終えたリオスは、小刀を空中でクルクルと振りまわした。

 

 

「この鉢の模様をあっしがつくったと言って、ナナ姫に多少は気に入られるよりも

 この鉢に入れた花をナナ姫にプレゼントして、あんたたちの仲がもっと深まる方が

 あっしの得るものは大きいってことっす。だから、あっしはパーティーには行かず

 ここに残ってじいさんと優雅に遊びながら、さらに大きな獲物を狙うんっすよ!」

 

リオスはニヤリと笑うと、小刀の先をおれに突き付けてきた。

 

 

「へへっ。悪い話じゃないでしょう。あっしらは、これまで何度も助け合ってきた。

 今回も、お互いの野望を果たすため、手を組んで協力し合いましょうって話だ。

 この鉢、他では手に入らねえ。これに花を植え替えてナナ姫に渡せば、姫は絶対に

 感激するだろう。どうだい、殿下。この話に乗る気はあるか?」

 

 

くそっ! リオスに見抜かれたのは癪に障るが、こいつの言い分も確かに理解できる。

 

リオスは頼りになる男だ。

弱みを握られているようで気分は悪いが、こいつと手を組んでおいて損はねえだろう。

 

なにより、リオスが彫りあげた宝石のようにキラキラと輝く鉢はかなり魅力的だ。

この鉢だけでも、ナナは確実に魅了されて歓声をあげて喜ぶだろう。

 

 

「へっ! しょうがねえな。てめえの未来のために、おれ様も協力してやるよ」

 

おれは、リオスが足元に抱えていた鉢を拾い上げながら言った。

 

 

「へへっ。そうこなくっちゃ!」

 

リオスは嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

少し前に張ってあった伏線をここで回収してみました~ヾ(*´∀`*)ノ

 

【創作 90】小競り合い - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

 

女王になりたいという野望を持つティアに「お互いに切磋琢磨しようぜ」と言いつつ

ティアがサマルトリアの女王になれば、おれはナナと...♡ とほくそ笑むカイン。

そんなカインを見て、すべてを察したかのようにニンマリ笑ったリオス。

 

女王になりたいティア、ティアに城を任せてムーンブルクに行きたいカイン。

あのとき、ひそかに野望を抱いていた人物がもう1人いたんですね ( *´艸`)

 

 

リオスはリオスで

 

「カインがムーンブルクに行ってくれれば、あっしも生まれ故郷に帰りやすくなるぜ!

 ここはカインに協力して、堂々とムーンブルクに帰れるようにしよう♪」

 

こんな野望を抱いていました ( *´艸`)

 

 

そして、お互いの野望を知ったカインとリオスは、強力タッグを組むことにヾ(*´∀`*)ノ

 

王妃・オルム・レオンなど、ナナと上手くいくように応援してくれる人は多いけど、

リオスと手を組んで、ナナ攻略に向けて心強い仲間が出来ましたね (≧∇≦)

 

王妃とリオスの協力を得て、ナナへのプレゼントが完成に向かっていきますよ~☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ