ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 57】適材適所

「あっ、いてて。おおーい、カイーン! 頼む、キアリーしてくれよ~」

「カイン! おれの方も頼むよ!」

「おれにもかけてくれよ、カイーン!」

 

おれの掛け声でムーンブルク城のがれきの撤去作業が始まったが、始まったとたんに

地下室のある付近で作業する男たちから、次々におれを呼ぶ声が上がる。

 

「だあぁ、うるせーな! てめえら、さっきのおれの話聞いてたのかよ!」

 

おれが声を荒らげると、1人の男が「だってよぉ~」と近くの沼地を指さした。

 

 

男たちの言い分も仕方ない。

 

オーウェン・ナナ・ティア・リーナで分担して、毒を無効化する粉を撒いているが

なんせ城の周辺を覆いつくすように毒の沼地があるから、作業が追いつかないのだ。

 

特に、地下室のあるあたりは1番毒性が強く、一面が深い沼地で覆われているため

撒いても撒いてもキリがない状態だ。

 

ある程度、粉が撒けたところから出入りしようにも、そこにはたくさんの人たちがいて

すんなりとは出られない。となると、毒の沼地を歩くしかないというわけだ。

 

 

おれとグランログザー師匠、アルファズルとで手分けして、男たちにひっきりなしに

キアリーをかけているが、キアリーは1人1人にかけなければいけない呪文なので

時間がかかり効率も悪い。

 

ローレシアサマルトリアリリザの町とムーンペタの町から、今日の日のために

毒消し草が無償提供されていたが、それもあっという間に底をついていた。

 

グランログザー師匠やアルファズルは、多くの呪文を唱えるのに充分な魔力を持つし、

おれもこの2人ほどではないにしろ、修行をしてそこそこの魔力は持っている。

とはいえ、このままキアリーをかけ続けるのはおれたちにとっても厄介な作業だ。

 

 

くそっ! こんなことで足止めを食らうなんてな。まったく想像もしていなかったぜ。

 

おれは粉を撒くことを軽く考えすぎていた。

 

当初は無毒化の粉を撒きながら、同時にがれきの撤去作業も出来ると思っていたが、

実際に作業を始めてみると、毒の沼地の無毒化が進まないと、がれきの撤去作業も

まったく出来ないことに気づいた。

 

 

ちくしょう! どうする?

粉を撒く作業にもっと人員を費やすか?

 

だが、バブルスライムハンターのオーウェンが用意した粉の入ったカゴは4つしかなく

新たにカゴを用意して粉を振り分けるとなると、さらに無駄な時間がかかる。

 

 

「ぐわっはっはっは! わしにまかせろ」

 

少し離れたところからおれたちの様子を見ていた竜王のひまごが近づいてきて、

オーウェンの持っていた無毒化の粉が入ったカゴをひょいっとくわえた。

 

竜王のひまごは翼を左右いっぱいに伸ばして、地面すれすれの低空飛行をした。

そのままくわえているカゴを少し傾けて、粉を撒きながらぐるぐる旋回する。

 

「すっげえ~!」

「あっという間だな」

 

男たちから驚嘆の声が上がる。

 

外側から粉を撒きながら、少しずつ近づいていくしかなかった沼の中心部にも

竜王のひまごが飛びまわることによって、あっという間に粉が撒かれていった。

 

「わ~! おじちゃん、すご~い」

「すごい、すごい!」

 

縦横無尽に飛びまわる竜を見て、ティアとリーナが手を叩いて大喜びしている。

 

やれやれ。これでまた、このおっさんは鼻高々で調子に乗るだろうな。

いい気になられるのはちょっと癪に障るが、やってくれたことは素直にありがてえ。

 

とにかく、竜王のおっさんのおかげで、毒の沼地の問題はあっという間に解消された。

 

 

毒の沼地問題が解消されたので、おれと師匠とアルファズルは地下室から離れ、

それそれケガ人の治療にあたった。

 

おれはケガの治療に加えて、男たちと一緒にがれきの撤去も手伝うことにした。

 

 

バブルスライムハンターのオーウェンがつくった粉は、毒の沼地を無毒化するが

そこで再び花を咲かせる土にするためには、さらに土壌改良も必要になるらしい。

 

粉を撒く作業が想定より早く終わったので、オーウェンと3人の女たちは、これから

土壌改良に取り掛かるようだ。

 

 

そして、城内でのがれきの撤去作業でも進展があった。

 

デルコンダルがバピラスの大群に襲われたとき、城の修繕をおこなった建築士たちが

デルコンダル王の命令を受けて派遣されてきていた。その建築士たちが現場に入り、

がれきの中でも練り直し固めて再利用できそうなものと、できそうにないものとを

細かく選別している。

 

建築士たちが選別したがれきを、男たちがそれぞれ所定の場所に運ぶ。

 

再利用できそうなものは、その場で砕いて粉末にし、水をくわえて練り直して固める。

できそうにないものは焼却処分になるのだが、そこには竜王のひまごが待ち構えていて

運ばれてきたものは、竜王のひまごが吐く炎ですぐに燃やされていった。

 

 

デルコンダル王が、それぞれの適性を見極めて人物を選定したというだけあって

作業は滞りなく順調に進んでいた。

 

スムーズに作業が進んでいることが、さらに人々のやる気向上につながっているようで

現場も活気のある声が出て、ときに笑いも起き、とても良い雰囲気だった。

 

 

大勢で1つのことに取り組むのも良いもんだな、などと和やかな空気を楽しんでいると

後ろから肩をトントンと叩かれた。

 

振り向くと、ティメラウスがいた。

 

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ティメラウスは、この現場の雰囲気にそぐわない神妙な顔をしていた。

 

「なんだ?」と目で訴えたおれに対し、ティメラウスはつらそうにそっと目を伏せると

そのまま無言で歩き出し、振り返っておれを手招きする。

 

なにがあったのかさっぱりわからないが、とにかくついていくしかなさそうだ。

おれはティメラウスについて歩いた。

 

 

ティメラウスはずっと無言のままおれを先導し、玉座の近くへと案内した。

 

そこにはリオスもいたが、リオスもティメラウスと同じような暗い表情をして

押し黙ったまま突っ立っていた。

 

 

リオスまでこんな深刻そうな顔をするなんて。いったい、なにがあったんだ?

 

ティメラウスとリオスに挟まれるような格好になり、おれは立ち止まった。

そして、2人の目線を追って、おれはようやく2人の表情が示す意味を理解した。

 

 

「あぁ...」 ため息のような声にならない声が、思わず口からもれた。

 

ようやく、見つかった…

 

 

 

 

ゲームをしていたとき、ムーンブルク城の地下室って行きにくかったですよね。

ずっと毒のダメージを受けながら進んでいた記憶があったので、それをもとに

今回の話をつくってみました。

 

今回もまた、作者の好きな推しキャラ「竜王のひまご」と「デルコンダル王」が

活躍する話になりました (;´∀`)

 

さて、和やかで楽しい現場とは真逆の深刻な空気を持つティメラウスとリオス。

2人に促されて、カインは「なにか」を見つけたようですね。

 

カインはなにを見つけたのでしょう?

想像しながら次回をお待ちください (^_-)-☆

 

 

次回もお楽しみにヾ(*´∀`*)ノ