ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 56】サプライズ決行

ルーラでデルコンダルからムーンブルクへ戻って来たおれは、上空を見上げた。

しばらくすると、東の方向からこちらへ飛んでくる竜の姿が見えた。

 

草原に集うおれたちを見つけた竜王のひまごは、いきなり急降下を始めた。

そして、大きな地響きと大量の砂ぼこりと共に地上に降りた。

 

さすがのガルダーでも、この急降下は身体に相当こたえたに違いない!

ニヤニヤするおれを尻目に

 

「あぁ、どうもな」

ガルダーは竜王のひまごに軽く頭を下げて、何食わぬ顔で鞍から降りてきた。

 

ちくしょう! やっぱりあいつらは、繊細なおれとは身体のつくりが違うんだ。

 

目を回してヘロヘロになるガルダーを見られず、おれは地団駄を踏んだ。

 

 

いや、今はガルダーや竜王のおっさんのことはどうだっていいんだ。

とりあえず人が揃ったのを見て、おれは全員に向けて注意事項を話した。

 

ムーンブルク城の周辺は、広く毒の沼地に覆われていること。

 

・ 随時、無毒化する粉をオーウェンたちが撒いていくので、城内への出入りは

 粉を撒いたところからおこなうこと。

 

・ やむを得ず、毒の沼地を通るときは、おれかグランログザー師匠、あとは

 これから来る予定のアルファズルに頼んで「キアリー」を唱えてもらうこと。

 

・「キアリー」を唱えてもらえないときは、代わりに毒消し草を3つ使うこと。

 

・ どちらもないときは、薬草を3つ使うなどでダメージの回復をおこなうこと。

 

・ 城内のがれきの下には、まだムーンブルクの兵士たちの遺骨が残されているため

 もし撤去中に遺骨を見つけた場合は、すみやかに西の修道院まで運ぶこと。

 

草原にはたくさんの人々がいたが、全員が静まりかえり真剣な顔で聞いてくれた。

 

おれがすべて話し終えると、あとは主役の登場を待つだけになった。

 

 

「おぉ、あれは姫様じゃねえか?」

 

ムーンペタ方面に目を向けていた男が声をあげた。この男はオルムと一緒に

雷神丸に乗っていた船員で、オルムから「千里眼」と呼ばれていた男だ。

 

おれの目ではよく見えないが、確かに馬が2頭、こちらに近づいてきていると言う。

 

「やっぱりそうだ。間違いねえ! 姫様だ、姫様がこっちに向かって来ているぞ!」

 

男が大声で叫ぶのに合わせて、あたりにはどよめきが起き、にわかに活気づいた。

 

最初は点のようにしか見えなかったが、おれの目でも見えるようになってきた。

 

2頭の馬が並んで、こちらに向かってゆっくりと歩いてきている。

1頭の馬には紫色の髪の女、もう1頭には銀髪の男と小さな少女が乗っている。

 

ナナは馬を止めた。草原に集うおれたちを見て、おどろきとまどっている。

アルファズルは馬を操り、ゆっくりとナナの馬に近づくと、先に進むように促した。

 

ムーンブルク再建のために集まった人たちだよ」とでも言ったのだろう。

ナナはアルファズルの言葉に何度もうなずきながら、うつむいて泣いている。

 

ナナたちが近づいてくるにつれ、割れんばかりの大きな拍手と大歓声が起こった。

 

2頭の馬はおれたちのそばで立ち止まったが、ナナは相変わらず泣きじゃくっていて

馬から降りられないようだった。

 

それを見たガルダーはナナの馬に近づき、ナナを抱きかかえ無理やり右肩に乗せた。

 

「ちょっと、おろしてよ」

「があっはっは」

 

ビックリして涙も引っ込んだらしい。ナナはいつもの調子に戻って草原に降り立った。

再び、大きな拍手と大歓声があたりを包む。

 

ナナは集まった男たちになにか言おうとしているが、うまく言葉が出ないようだ。

またすぐに泣いてしまいそうになるのを、顔をしかめて必死でこらえている。

 

おれはナナに近づいた。

 

「ずっとそんな顔してたら、シワになるぞ。もうババアなんだからよ」

 

「なんですってえ!」

 

ナナはキッとおれをにらんだ。

 

「おぉ~、おっかねえ~」

おれが大げさにおどけて逃げるふりをすると、ナナは笑いながら追いかけてきた。

 

周囲に、なごやかな笑い声が起きる。

 

 

「グハッ、グハッ。おちびさんたち、相変わらずじゃな」

 

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一瞬、空が陰ったかと思うと、竜王のひまごがものすごい勢いで降りてきた。

目も開けていられないほどのすさまじい風圧で、草や砂が大量に巻き上げられた。

 

だが、それをほとんど苦にする様子もなく、ナナは竜王のひまごに駆け寄っていく。

 

「まぁ、あなたまで来てくれたのね!」

 

ナナは竜王のひまごの首に抱きついた。

 

 

「おい、おっさん。いったいどこをふらふらと飛びまわってるんだよ。

 おっさんが好き勝手に飛ぶ度に、風が巻き起こってこっちは大迷惑なんだからな」

 

ようやく周囲の風がおさまって、おれは竜王のおっさんに文句をつけた。

 

「なんじゃ? ぼうず、わしが好き勝手に遊びまわっているとでも言うつもりか? 

 わしはさっきあいつらを降ろしてから、再びデルコンダルの闘技場まで戻って、

 取り残された奴がいないか、わざわざ確認しに行ったのじゃぞ?」

 

デルコンダル?」

おっさんの首に抱きついたままのナナが、きょとんとした顔で尋ねてくる。

 

おれは、今日ここに集まっている男たちがもともとはデルコンダルの闘技大会に

出場する予定だったこと、デルコンダル王に頼んで闘技大会を中止してもらい

ムーンブルク再建に協力してもらうことにしたというこれまでの経緯を話した。

 

 

「無駄に戦って消耗するよりも、おれたちの力を有効活用しようと思ってよ!」

「男と戦うより、こんな美女のために力を使えるなんて、ありがてえことだぜ!」

「おれたち、体力だけはあるからよ。姫様、城の再建はおれたちにまかせてくれ!」

「おれの怪力はすげえぞ~!」

 

おれの話に続いて男たちから次々に声が上がり、再び拍手と歓声が起きた。

 

ナナは目に涙をためながら、男たちに向けて精いっぱい声を振り絞った。

 

「… みんな、本当にありがとう」

 

地面が揺れるほどの大歓声が起きる。

 

 

おれはこの大歓声に負けないように、大声を張り上げた。

 

「さあ、作業開始だ!」

 

 

 

ナナへのサプライズ大成功ヾ(*´∀`*)ノ

たくさんの人にあたたかく迎えられて、ナナもさぞ感激したことでしょう!

 

 

カインは、ガルダーが竜王のひまごの背中で乗り物酔いすることを期待したようですが

残念でしたぁ~ ( *´艸`)(また、作者のいじめっ子気質が発動しています (;´∀`))  

 

ガルダーは、乗り物酔いとは1番縁遠いキャラですよね。このゲームブックに出てくる

キャラクターで、カイン以外に乗り物酔いしそうな人を私の独断と偏見で選ぶとすれば

サイラスとモルディウスですかね ( *´艸`)

 

青の騎士団と緑の騎士団の団長が揃って乗り物酔いするんだけど、相手の騎士団には

絶対に悟らせないように、青白い顔で冷や汗たらしながら我慢するみたいな ( *´艸`)

 

と、物語とまったく関係のない乗り物酔いの話はこのへんにして (;´∀`)

 

 

竜王のひまごとナナの再会は、ナナが感激してひまごに抱きつく展開にしたかったので

ひまごには、いったんひっそりと退場してもらっていました ( *´艸`)

 

「まぁ、あなたまで来てくれたのね!」というナナのセリフに持っていくために

竜王のひまごをどう登場させようか迷いつつ、カインとナナの追いかけっこを

「変わってないな」と年長者の視点で笑ってくれるという展開にしてみました。

 

 

ゲームブック本編ではローレシアの王子が主人公なので、「さあ、行くぞ!」みたいな

みんなを鼓舞する言葉はいつも王子が発していましたが、この創作物語ではカインが

主人公なので「さあ、作業開始だ」は、カインに言ってもらいました (*´ω`*)

 

 

いよいよ、再建に向けてのスタートです☆

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ