ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 27】 約束

「ナナーッ!」

海岸にナナがいるのを見つけたおれは、最後の力を振り絞って走った。

 

ようやくナナのそばにたどり着いたが、苦しくて息が出来ない。

おれはナナの横でしゃがみ込むと、ぜえぜえと肩で大きく息をした。

 

... 苦しい... 息が出来ねえ... 死にそうだ...... あぁ... 無事で良かった!

 

 

「カイン、どうしたの? ちょっと、大丈夫? こんなに汗だくになって...」

下を向いてハアハアと息を切らせているおれの肩に、そっとナナの手が触れる。

ナナの声がひどくのん気なものに聞こえて、カチンときた。

 

「ばかやろう! 勝手にいなくなったりするんじゃねえよ。夜中に突然姿を消して

 探しても探しても見つからねえし、おれがどれだけ心配したかわかってんのか!」

 

おれは怒りにまかせて顔をあげると、目の前にいるナナを大声で怒鳴りつけた。

 

「...... ごめんなさい...」

 

なによ、別に怒鳴らなくてもいいじゃない ぐらい言ってくるかと思ったのに

ナナは今にも消えそうな声で小さく謝ると、そのままうつむいた。

 

そんなナナを見ていると、渦巻いていた怒りが急速にしぼんでいった。

 

「いや、怒鳴ったりして悪かったよ。でも、急に消えたりしたら、心配するだろ。

 いったいどうしたんだよ、王子がいなくなって恋しくなっちまったのか?」

 

おどけた振りして、ナナにずっと聞きたかったことをからかい口調で問いかけたが

ナナはうつむいたまま答えなかった。

 

表情を探ろうとしたが、ナナがうつむいていることもあって暗くてよく見えない。

 

... もし、ここでナナに「うん」と言われたら...... おれはどうすればいいんだ...?

 

ナナを見ているのが急に怖くなった。

おれはナナの隣に並んで腰をおろすと、黙って波打ち際を見つめた。

 

小さな波が打ち寄せては離れていく...。

 

 

「...... 王子は... 帰る場所があっていいなって思ったの...」

 

打ち寄せる波をただぼんやり見ていると、隣でナナがつぶやくように言った。

横を見ると、ナナはひざを抱えて座り、うつろな目で自分の足元を見つめていた。

 

「...... 王子は、帰る場所があっていいな... 迎えに来てくれる人がいていいな...

 カインも... 安心してぐっすり眠れる場所があっていいな... うらやましいなって...

 あたしにはアルファズル、あなたやティアちゃん、リーナちゃんもいてくれる。

 あなたとアルファズルは本当に頼りになるし、ティアちゃんとリーナちゃんは

 実の妹のように可愛いわ。... それに、リーナちゃんは、あたしより幼いのに

 あんなに小さいのに両親がいなくって... でも、いつもけなげにがんばってて...。

 だから... あたしもしっかりしなきゃ...... いつも笑顔でがんばらなきゃって...。

 ......でも...... でも...... あたし......」

 

最後は声にならなかった。ナナは自分のひざに顔をうずめた。

 

 

おれはナナに背を向けた。

 

「ほらよ」

 

「... えっ...... なに...?」

 

「前に言っただろ。つらいことがあったら、無理しないで

 素直に泣けよ。背中ぐらい貸してやるからってさ。

 あのときの約束を、今ここで果たしてやるよ」

 

 

「...... カイン...」

 

 

おれはナナに背中を見せたままじっとしていた。背中が緊張でガチガチになる。

背後でおれの背中を見ながら、ナナは今どんな顔をしているんだろう...。

 

…... もし、迷惑していたら...?

 

「約束した」なんて勝手なことを言ってるが、おれが一方的に言っただけだ。

ナナは合意してない。いや、むしろ、おれの言葉を不快に思っていたかもしれねえ。

カッコつけてナナを守るつもりが、逆に苦しませているとしたら意味ねえぞ!

 

...... そうだ。今なら、まだ引き返せる。

振り向いて「へっ、本気にしたのかよ。単純な女だな」とでも言えばいい。

ナナは怒って引っ叩くかもしれないが、ナナを困らせているよりはずっといい。

 

 

「ハハハッ、バーカ。冗談だよ!」と言って振り返ろうとした、まさにその瞬間

おれのわき腹のあたりに、ナナの腕がそっとまわされた。

 

腕がまわされるのと同時に、ナナの頭がおれの背中に押しつけられるのを感じた。

 

まわされたナナの腕に力が入り、おれのわき腹のあたりをやわらかく締めつける。

 

ナナの身体から甘い香水の香りがほのかに漂ってきて、おれの鼻腔をくすぐる。 

 

おれの背中に頭をあずけて、かすかに小刻みに震えながら泣いているナナの振動が

中越しに伝わってくる。

 

 

感激で胸がいっぱいになった。

おれは背中を揺らさないように気をつけながら、ゆっくりと息を吐き出した。

 

 

静かな夜だった。

背中でナナが小さくもらす嗚咽だけが、静寂の中でかすかに響いていた。

 

さっきナナの後ろ姿を見つけたとき、ナナはまっすぐ海を見ていたことを思い出し

おれは首だけを動かして海を見た。

 

夜だから見えるはずはないのだが、大きな満月から降りそそぐ月明かりを受けて

海のはるか先に、塔が2つ並んでぼんやりと浮かびあがっているように見えた。

 

海のかなたにそびえ立つ双子の塔... きっとナナもさっきはこれを見ていたのだろう。

この海岸に着いたときに思い出した言い伝えが脳裏によみがえってくる。

 

「男女が2人で双子の塔を見ると、その2人は永遠に結ばれる♡ 」

いかにも頭の悪い女どもが喜びそうな、くだらない言い伝えだ。

くだらないが...... 真実であって欲しい...!

 

 

おれはさらに目線をあげ、空を見上げた。

大きくて丸い満月がそこにあった。

 

かつて、こんなに明るく光り輝く月を見たことがあっただろうか。

 

「... 月が綺麗だな」

普段のおれなら絶対に言わないような言葉が、思わず口をついて出た。

 

一緒に旅をしていた頃、ナナは「今夜は月が綺麗よ」「星がよく見えるわ」などと

いつも言っていたが「そんなもん、何の足しにもならねえよ」と相手にしなかった。

 

今までずっと月が満ちてても欠けててもこれっぽっちも興味を示さなかったおれが

みずから「月が綺麗だ」と言うなんてな。

 

後ろで泣いているナナは、おれの言葉をどんな思いで聞いているのだろうか。

 

ナナは言葉を発することもなく、おれの背中にすがりついて泣き続けていた。

 

 

......2人きりの静かな夜

 

大きな満月から放たれる白く輝く月光が、お互いのぬくもりを感じながら寄り添う

おれとナナを包み込んでいた。

 

 

この創作物語を書くにあたって、どうしても書きたかったのがコレです ↓↓

 

カインがナナに背中を貸す

 

どうせなら2人きりのときに最高にイイ雰囲気の中で背中を貸して欲しいと思い

カインを迷走させて、ここまでダラダラと引っ張ってみました~ (;´∀`)

 

月夜の晩・静かな海辺・永遠に結ばれるというジンクス・月が綺麗=愛してる

 

私が思いつく限りの最大級のロマンティックを詰め込んでみました~ (*´ω`*)

 

汗だくでカインの背中はベッタベタでは?という下世話な心配もありますが (;´∀`)

カイン殿下の着ている服は上質で、汗が染み出さないという設定にしましょう!

 

ナナはただ、カインのぬくもりだけを感じて安心して泣けたってことで (*´ω`*)

 

 

一番書きたかったシーンが結構イイ感じに書けて、個人的には大満足ヾ(*´∀`*)ノ

 

「今まで長い間、ご精読ありがとうございました~!さよ~なら~ヾ(*´∀`*)ノ」

 

 

...... というわけにもいかないので (;´∀`)(こんな中途半端では終われまテン)

物語はこれからも続けていきますね (^_-)-☆

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ