ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 104】アルファズルの答え

「ナナの誕生パーティーを、ムーンペタの教会で開催したい」というおれの言葉を

アルファズルは「どうせお祝いを理由にして、ただ騒ぎたいだけだろう」と一蹴した。

 

王子はアルファズルを説得するため、ナナと奇跡の再会を果たせた、ここムーンペタ

ナナが「今生きていること」をただ祝福したいだけなんだという想いを熱く語った。

 

 

リーナは初めて聞かされた壮絶な話に驚いて目を丸くしていたが、王子が語った話は

おれも初めて聞くことばかりで、おれ自身も驚きを隠せなかった。

 

最初にムーンペタでナナの情報を探ったとき、実は王子はひそかにナナの生存を疑って

人知れず苦悩していたこと。

 

ラーの鏡」を見つけてムーンペタに戻った矢先に、マンドリルの大群に襲われて

踏みつけられて死んだおれを見て、再びより深い絶望を感じたこと。

 

アルファズルが、マンドリルを正気に戻して森へ帰し、王子とおれを蘇生させたこと。

 

 

中でも1番驚いたのはこれだ。

 

アルファズルは本当にマンドリルを殺さずに、正気に戻して森へと帰していたのか!

 

 

以前、ナナの話で「王子は、勝ち目がないのに最期まで勇敢に戦った」と聞いたから、

王子もマンドリルとの戦いで死に、アルファズルが蘇生したのは容易に想像できた。

 

だが、おれがアルファズルの魔法で目を覚ましたときには、マンドリルとスモークは

影も形もなかったからな。

 

てっきり、アルファズルが強力な魔法を使って蹴散らしたもんだと思っていた。

 

 

そう言えば、竜王のおっさんにそそのかされて、王子とナナが魔物を仲間にしようと

おっさんにロトの印のステッカーを渡しちまったとき、ナナが言っていた気がするな。

 

「アルファズルが呪縛を解いてマンドリルを森に帰したように、呪縛が解けたら

 本来の性質に戻って、あたしたちの仲間になる魔物もいるはずだ」ってな。

 

あのときは簡単にだまされそうなナナと王子に腹が立って、よく聞いていなかったが

王子とナナによれば、アルファズルは本当に無傷でマンドリルを森に帰したのだろう。

 

 

アルファズルの蘇生で目を覚ましたとき、「白い小犬が無事に生きていること」

おれはとにかく心から安堵して、周りが見えていなかったし、小犬以外のことは

まったく頭になかった。

 

こうしてあらためて王子とナナに話を聞くことで、いろいろ見えてきたものがあるな。

 

 

さすが。アルファズルほどの大賢者になると、魔物の呪縛を解くことも出来るのか!

そいつはすげえや!

 

王子が熱く語った話の本筋とは関係のないことだが、アルファズルの潜在能力に

おれは興奮してしまい、気づけばアルファズルの顔を無遠慮にじろじろと眺めていた。

 

 

「2人を蘇生したのは神父としての当然の務めであり、正気を失って暴れる獣を鎮めて

 本来の場所へと帰したのも、私は務めを果たしただけ。礼には及ばない」

 

アルファズルはおれの視線など一切気にしていない様子で、平然と言い放った。

 

 

おれはアルファズルがまったく気にしていないのを良いことに、アルファズルのどこに

魔物を鎮める能力があるのか、目か? 手か? などと1人で思いを巡らせていた。

 

 

「ところで、カインよ。人の顔をじろじろ見る暇があるのなら、質問に答えて欲しい。

 誕生パーティーという場では、誕生日を迎えた者に贈り物をするのだろう?」

 

ずっと視線を動かさないまま、王子を真正面から見据えているはずのアルファズルに

いきなり質問されて、おれは虚を突かれた。

 

 

 きっと、第3・第4の目があるんだよ。アルファズルは ( *´艸`)

 

 

「えっ! あ、ああ...」

 

うろたえて思わず声が上ずった。おれはコホンと軽く咳払いして、話を続けた。

 

 

「ああ、あんたの言うとおりだ。誕生日のお祝いとして、パーティーに参加した奴は

 プレゼントを渡す。それが一般的だな。でも、それがどうしたんだよ?」

 

おれが答えると、アルファズルはおれの顔をチラッと見て微かに表情を緩めた。

 

 

「次の質問だ。私からナナへの贈り物として、当日は『この場所を自由に使う権利』を

 与えるとしたら、それもおまえの言う『プレゼント』に該当するのか?」

 

 

「ホントかよ!?」

 

おれは大きく身を乗り出した。

 

 

「まずは質問に答えよ!」

 

アルファズルはピシャリと言った。

 

 

「ああ、もちろん。それも立派なプレゼントだ。それで、本当にくれるのかよ!?」

 

アルファズルはおれを見て唇の端を微かに吊り上げると、視線を王子に移した。

 

 

「王子の気持ちはよくわかった。絶望的な状況を乗り越えて、おまえたち3人が

 奇跡的な再会を果たしたこのムーンペタで、おまえたちの力で平和を取り戻した今、

 おまえたちでナナの誕生日を純粋に祝いたいということだな。心からの真っ直ぐな

 想いに対し、私が反対する点などひとつも無い。好きに祝ってやると良い」

 

アルファズルが王子を見つめる瞳は、いつもより柔らかく優しく感じられた。

 

 

「ありがとうございます!」

 

王子はアルファズルに深々と頭を下げると、おれを見て嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「ただし! 騒音などで近隣に迷惑をかけたり、神聖な教会を汚すおこないをすれば

 即刻退去を命じ、今後一切の出入りを禁じる。それでも良いか、カイン?」

 

優しく王子を見ていたアルファズルのグレイの瞳が、今度は真っ直ぐおれをとらえた。

 

 

「そんなことしねえよ、絶対に。約束するぜ。ただ、1つ疑問なのは、なぜその言葉を

 王子じゃなくおれに言うんだ?」

 

 

「ははっ。自覚がないというのは、かくも恐ろしいものだ。なぁ、リーナよ」

 

アルファズルはあきれた目をして、微かに笑いながら前に座るリーナに同意を求めた。

リーナは何も言わなかったが、おれを見て「うふふっ」と、いたずらっぽく笑った。

 

 

「まぁ、ナナの誕生日はここを自由に使うと良い。ただし『立つ鳥跡を濁さず』という

 言葉もあるように、終わったら綺麗に始末してから帰ることを肝に銘じよ」

 

 

「その言い分だと、あんたは誕生パーティーには出ないということか?」

 

 

おれの言葉を聞いたアルファズルは、片方の眉をグイッと引き上げた。

 

「今の話で、私からナナへの贈り物は済んだ。それで充分であろう?」

 

 

「へへっ。そこは強制しないさ。ここを使わせてもらえるだけでありがてえからな」

 

むしろ、監視する奴はいない方が助かるぜ... おれは心の中でつぶやいた。

 

 

アルファズルは静かに立ち上がると、正面に座るリーナに向けて言った。

 

「リーナ、これまで修行をがんばった分、ここで休暇を与えよう。おまえもナナに

 贈り物をしたいのだろう。これから、おまえもカインと一緒にサマルトリアへ行き

 カインの妹君と相談すると良い」

 

 

「はい! ありがとうございます」

 

リーナは嬉しそうに目を輝かせた。

 

 

アルファズルは音も立てずにゆっくり歩いていくと、扉の前で振り返った。

 

「裏口の使用を許可するから、ナナに見つからぬうちにさっさと行くが良いぞ」

 

 

おれたちがうなずくと、アルファズルはそのまま静かに部屋を出ていった。

 

 

「やったぁー!」と大声で叫びたくなるのをこらえながら、おれと王子とリーナは

小さく手を叩き合った。

 

ここで騒いで早速「即刻退去」「出入り禁止」なんてことになったら困るからな。

 

 

「良かったねぇ〜!」

 

リーナがニコニコしながら、小さな手でおれと王子の手をパチパチ叩いてくる。

 

 

「アルファズルの奴、もっとゴネるかと思ったけど、案外ちょろいもんだったな」

 

おれが笑うと、王子は吹き出し

 

 

「気をつけろよ、カイン。きみはアルファズルに目をつけられているんだから」

 

楽しそうに笑って警告してきた。

 

 

「でもよ、おかしくねえか? おれだってサマルトリアの皇太子で、王子とも身分は

 大して変わらねえのによ、おれに対しては常にからかい口調なんだよな、あいつ。

 王子に対する敬意が、おれに対してはまったく感じられないんだよ、あの野郎!」

 

 

「ははっ。自覚がないというのは、かくも恐ろしいものだ。なぁ、リーナよ」

 

王子はおれを見て大笑いしながら、アルファズルの口真似をしてきた。

 

いつも生真面目な王子が、誰かの口真似をしておれを小馬鹿にするなんてめずらしい。

大きな重圧から解放されて、こいつもよっぽど嬉しいのだろう。まぁ、許してやるか。

 

 

「こいつ! おれを馬鹿にしやがって」

 

おれは王子のおでこを軽く小突いた。

 

 

おれたちはすっかり浮かれて話し続けていたが、そろそろ帰った方がいいだろう。

 

 

「さてと。こんなところで、ダラダラといつまでもしゃべってるわけにもいかねえ。

 アルファズルの言うとおり、ナナに見つかる前にとっとと退散しようぜ」

 

おれたちは扉を開け、注意深くあたりを見渡してから裏口へと向かった。

 

 

「まずはローレシアにおまえを送ってから、リーナと2人でサマルトリアに帰るよ」

 

裏口からこっそり外に出て、呪文のために精神を集中しながら王子に伝えると、王子は

「いや。いいよ、帰らなくて。ぼくも一緒にサマルトリアに行くよ」と言い出した。

 

 

「なんでだよ? 急にそんなこと言い出すなんて。ローレシアに帰りたくないのか?」

 

「ううん、違うよ。別に帰りたくないとか、そういうわけじゃないんだけど...」

 

王子はもごもごとハッキリしない。

 

 

「なんだよ、ハッキリ言えよ」

 

「うーん。これを言ったらきみはまた馬鹿にするかもしれないけど、ローレシアには

 キメラの翼が売ってないだろ」

 

 

「うん? キメラの翼が売ってないって、それが何だ… あぁ~、そういうことか」

 

おれがニヤニヤしながら王子を見ると、王子は恥ずかしそうに目をそらした。

 

 

「別にいいぜ。サマルトリアと言わず、なんだったらルプガナに送ってやろうか?」

 

おれがからかうと、王子は赤い顔で「だからカインには言いたくなかったんだよ」

ブツブツ言い出した。

 

 

こいつをからかうのは本当におもしれえ。次はなんと言ってやろうかと考えていると

 

「ねえ、おにいちゃんたち。早く行きましょうよ。おねえちゃんが起きたら大変よ」

 

リーナが袖をつかんで急かして来た。

 

 

確かに。こんなところでナナに見つかったら、まったく言い訳が思いつかない。

まずは出発だ。王子をからかうのはサマルトリアに着いてからでも遅くねえ。

 

 

「じゃあ、一緒にサマルトリアに行くぞ。王子、それでいいんだな?」

 

呪文を唱える前に再び確認すると、王子は何度も大きくうなずいた。

 

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

 

 

今回、アルファズルのキャラ設定が、なんだかよくわからなくなりまして... (;´∀`)

 

王子に対しては丁重な扱い、カインとナナにはちょっと上からエラそうな感じだと

思って書いていたら、なぜかカインをいじって笑うおじさんになっちゃった ( *´艸`)

賢者らしくないけど、おもしろいのでこのままでいこうと思います ( *´艸`)

 

 

王子の純粋な想いに対するアルファズルの答えは、ナナへの誕生日プレゼントとして

「当日は教会をパーティー会場にする権利を与える」でしたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

「パーティー用の場所は提供するけれど、自身はパーティーには参加しない」

アルファズルらしい答えになったな~と思うんですが、いかがでしょうか ( *´艸`)?

 

 

さて。会場も決まり、リーナを連れてサマルトリアに帰るだけだと思っていたカイン。

どうやら、王子もサマルトリアに(別の理由で ( *´艸`))同行するみたいですね!

 

またひと波乱あるかも!?

 

 

 

次回もお楽しみにヾ(*´∀`*)ノ