ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 154】 腹ん中で笑う2人の男

おれは親父たちの通訳をレオンに依頼するためテパの村へ行き、夜は成り行きで

そのまま村で開催された宴に参加した。

 

村人に注がれるまま酒を飲み続けたおれは、酔いつぶれてしまったらしい。

ぶっ倒れたおれを村の奴らは担ぎ上げて宿屋に運び、宿代も出してくれたんだという。

 

 

翌朝、宿屋で目覚めたおれは頭痛と吐き気に襲われる酷い二日酔いに苦しんだが

村に古くから伝わるという秘伝の酔い覚ましを飲ませてもらい、よく効く薬のおかげで

1人でサマルトリアに帰れるまで回復した。

 

 

おれと入れ替わりで旅立つ予定になっている親父と王妃の特徴をレオンに告げると

おれは村人たちに見送られながらルーラの呪文でサマルトリアへと戻ってきた。

 

 

城に入ると、親父と王妃に謁見を求めた。

 

最初は王妃だけを呼び出して「おれ様が望み通りの通訳を見つけてきてやったぜ」

言うだけでも別に構わねえかと思ったが、城に入ってからふと考えをあらためた。

 

これからおれは親父の代わりに一応サマルトリア王代理」を務めるわけだからな。

 

旅立つ前に親父にも会って、きちんと話しておいた方が心証はイイだろう。

 


しばらく謁見の間で待っていると、親父と王妃が2人そろって入って来た。

 

 

テパの村へと向かい、お2人の通訳を手配して戻ってまいりました」

 

おれは胸に手を当て一礼した。

 

 

「うむ、ご苦労であった」

 

親父がおれを見て満足そうにうなずく。

 

 

「おかえりなさい、カイン」

 

親父の隣で王妃も微笑む。

 

 

おれは親父と王妃に今回の旅行で通訳を務めるレオンがどういう人物なのか、そして

おれたちとレオンがどのようにして知り合ったのかを簡単に説明することにした。

 

 

テパの村から水門の鍵を奪って逃げた盗賊ラゴスを捕まえるため、レオンが世界中を

旅しているときに出会い、お互いの目的を果たすために離れていた期間もあったが

最終的にぺルポイの町でおれたちは協力しあってラゴスを捕まえたこと。

 

デルコンダル城で、国王のちょっとした思い違いからおれたちが投獄されたときも

レオンが機転を効かせ助けてくれたこと。

 

水門の鍵を持ち帰ったレオンは、英雄として村でも一目置かれた人物であること。

 

通訳もこなせる有能さと、情に厚い人柄は村人たちからの強い信頼を集めていて

今回の訪問でも、レオンは観光客と村人の橋渡し役をやっていたことを話した。

 

 

「まぁ! そんな素晴らしい方に通訳をしていただけるなら、私たちも安心ですわね」

 

王妃が優雅に微笑む。

 


けっ! 王妃め

普段は口も悪くてガサツなくせに、親父の前だと変にかしこまって気色悪いな。

おれの前では1度も出したことのないような声色を使いやがってよ! 薄気味悪いぜ。

 

おれは心の中で王妃に毒づいた。

 


ただ、前に親父から聞いた話では、親父は王妃やティアの本性をすべて知ったうえで

王妃やティアが変にぶりっこするのを腹ん中でおもしろがっていると言っていたな。

 

「ひそかな楽しみなんだから、わしから楽しみを奪うなよ」と言われたこともあった。

 

王妃の振る舞いは気色悪いが、親父が黙認しているならこのまま放っておこう。

 

 

親父は王妃が「ウフフフ」と薄気味悪い笑い声を立てても、顔色ひとつ変えずにいる。

 

もっとも普段から親父は表情を崩さない。

おれもハーゴン討伐を終えて帰ってきて親父と腹を割って話す前は、常に冷静沈着で

威厳を保ったままの親父が何を考えているのかわからなくて苦手だった。

 

 

だが、実際の親父の腹ん中は真っ黒だ。

親父は今も涼しい顔をしながら、腹ん中では王妃の振る舞いを笑っているんだろう。

 

 

おれは相変わらず威厳のある表情を保ったままの親父を見ながら想像をめぐらせた。

 

サマルトリア王として毅然とした態度をとり、いつだって表情を崩さない親父があの

『仲直りのあいさつ』をやるとなったら...?

 

 

親父は肉付きのいい大きな鼻をしている。

この立派な鼻を、奇怪な刺青をしたおっさんにぺろぺろと舐められるんだぜ!

 

親父の口元は豊かな口ひげに覆われているが、このひげの間から舌を出して村人の鼻を

ぺろりとなめるんだぜ!

 

 

『仲直りのあいさつ』をやらなきゃ、村の掟に従わない反逆者になるからな。

 

いくら今回は身分を隠して旅をするとはいえ、一国の主・サマルトリア王たるもの

「やらない」とは言えないだろう。

 

 

「ぶはっっ!!」

 

テパの村のおっさんが親父を抱きしめて鼻の頭をなめる姿、親父が顔をしかめながら

村人の鼻をなめる姿を想像して、おれは思わず吹き出してしまった。

 

 

「う、ううん。こほんこほん」

 

おれは慌てて咳をしてごまかした。

 

 

「どうしたの、カイン?」

 

王妃が怪訝そうな顔で聞いてくる。

 

 

「いえ、別に何でもありません。テパの村は常夏の大変あたたかな気候ですからね。

 サマルトリアとの気温差に身体が反応して、咳きこんでしまったようです」

 

おれは平静を装って答えた。

 


「そうか。向こうは暑いのだな。体調管理には気をつけねばならぬな、王妃よ」

 

おれの言葉を聞いた親父は、微かに唇の端を吊り上げながら王妃に微笑みかける。

 

 

ほっ。

どうやら気づかれなかったようだな。

 


「そうですわね。王様がお風邪を召されては大変ですわ。気をつけなくては」

 

王妃もにこやかに応じた。

 

 

その後、話し合いの中で親父と王妃は明後日の早朝に旅立つことが決まった。

 

親父たちによると、この旅行の日程は長くても2週間ほどになるだろうという。

 

やはりティアが勇者の泉から帰ってくるまでには城に戻ってきて、2人そろって

ティアを出迎えてやりたいんだそうだ。

 


「カイン。わしらが不在の間、この城のことは頼んだぞ。ティメラウスがティアに

 同行して出かけてしまったからな、もしおまえ1人で困ったことがあったときは

 抱え込んだりせずに遠慮なく モルディウス を頼るといいぞ。あいつにも

 わしが留守の間、カインの力になって補佐をしてやってくれと伝えてあるからな」

 

親父はおれの肩をたたいた。

 


「はっ、かしこまりました」

 

胸に手を当ててうつむきながら、おれは見つからないようにペーッと舌を出した。

 


けっ、冗談じゃねえぜ。

誰があんな奴に頼るか!

 

 

 

その夜、自室に戻ったおれは親父たちが出かけた明後日以降について考えてみた。

 

レオンやテパの村の奴らにそそのかされたわけじゃねえが、ついさっきまではナナを

サマルトリアに招いてもいいと思っていた。

 

 

べ、別にレオンが言う「2人きりでうんぬんかんぬん...」のために呼ぶんじゃねえぞ!

 

 

おそらくナナはティアが勇者の泉に行ったことも知らねえだろうし、それがきっかけで

親父たちが旅に出ることも知らねえ。

 

 

久しぶりに会うあいつにこれらの経緯を話してやって、サマルトリア王代理を務める

おれ様の素晴らしい勇姿を見せてやるのもいいんじゃねえかと思ったんだ。

 

 

だが、親父が「モルディウス」におれのことを頼んだというのが厄介だよな。

 

ティメラウスがいないからしょうがねえんだが、あの野郎は変に張り切るんだよな。

 

 

きっと、おれの一挙手一投足を事細かに監視して「国王の器ではないですな」とか

「殿下にはまだまだ未熟なところがあります」とか、くだらねえことをあとで親父に

報告するに違いねえからな。

 

 

親父たちが出かけたのを見計らったようにナナを城に呼べば、モルディウスが親父に

どんな報告をするか目に見えている。

 

 

ちっ!くそっ!

ティメラウスが城に残っていれば、親父はティメラウスにおれの補佐を頼むだろうし

あいつなら多少のことは見て見ぬふりして受け流してくれるのにな。

 

 

ただ、ティアたちの旅にはティメラウスがいてくれねえと困るのも確かだ。

今さらティメラウスがいないことを嘆いてもしょうがねえ。現状で我慢するしかない。

 

 

モルディウスは、サマルトリア緑の騎士団長を務めていて暇なわけじゃねえからな。

親父たちが出かけている2週間、朝から晩までおれを監視することはないだろう。

 

注意すべきは最初の数日だ。

数日間、それなりに真面目におとなしくしていれば、奴の監視の目も緩むはずだ。

 

 

モルディウスの野郎に余計な口出しされないように、数日間は真面目に政務をこなし

頃合いを見て、ナナの方からサマルトリアを訪ねてくる形にした方が良さそうだな。

 

 

親父たちが出かける明後日の朝までに、おれは完璧なシナリオをつくり上げた。

 

 

そして、2日後の早朝。

おれは涼しい顔で両親の旅立ちを見送った。

 

親父と王妃は普通の町人と変わらない軽装で正門前に立ち、見送りに来た大臣たちや

おれに手を振り城下町へと歩いて行った。

 

 

よしっ、作戦開始だ!

 

 

 

 

腹ん中で笑う2人の男☆

 

1人めはカインパパ ( *´艸`)

カイン・王妃・ティアの3人が自分の前ではかしこまって気取った演技をするのを

すべて知ってて黙っているパパ

 

【創作 88】化けの皮 - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

 

「本性は知ってるけど、バレてないと思って演技してるのが面白いからやめさせない」

今回も優雅に微笑む王妃を見ながら、パパは腹ん中で笑っているんでしょう ( *´艸`)

 

 

(ちなみに余談ですが)先日、40〜60代の女子(?)が集まって雑談していたとき

「女はいくつになっても、好きな男の前ではぶりっこになるものだ!」

この意見が満場一致で可決しました☆

 

王様に対してだけは、カインが聞いたこともないような声色を使って話す王妃 (*´ω`*)

それだけ王様が好きなんでしょうね♡

 

 

2人目の腹ん中で笑う男はカイン

(コチラは1人目とは違い、こらえきれずに吹き出しちゃいましたが (;´∀`))

 

キリッと威厳を保つお父さんが村人に鼻をなめられて、お返しになめるんですからね!

笑っちゃうのもしょうがない ( *´艸`)

 

吹き出しちゃったけど、怪しまれずにやり過ごせて良かった良かった。

 

 

さて、親父たちを追い出してナナを招くだけだと思っていたのに想定外の難敵が… (*_*;

 

 

「ティメラウスがいないんだからモルディウスを頼れ」という流れは自然なんだけど

よりにもよってモルディウス... (>_<)

 

 

「カイン殿下はまだ若く未熟ですからねぇ。王様の代理を務めるのはちょっとね…」

難癖つけられるのは確実でしょう (-"-)

 

さてさて、モルディウスの厳しい監視の目とイチャモンづけをかわし、カインはナナを

サマルトリア城に招けるでしょうか?

 

 

ちなみにカインは「完璧なシナリオをつくり上げた」と言っていますが、私自身は

完璧にノープランですわ… (;´∀`)

 

ここからどうしよう (;'∀')?

 

 

 

次回もお楽しみに〜ヾ(*´∀`*)ノ