ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 155】 偵察部隊をかわせ!

テパの村に行きたいという親父と王妃のため、おれは村を訪れてレオンに通訳を頼み

サマルトリアへと戻ってきた。

 

自分の務めを果たしたことを報告するのに、おれは謁見の間に親父と王妃を呼び出して

テパの村でレオンに会ったことを伝えた。

 

レオンの人柄を聞いた王妃は気色悪い声ではしゃぎ、甘ったるい声の話ぶりは

おれの笑いを誘ったが、親父の前ということもあっておれは何も言わず黙っていた。

 


親父は表情を変えずに王妃を見ていたが、おそらく腹ん中では笑ってるんだろう。

 

おれも人のことは言えねえが、親父はたいそう腹黒く性格の悪いおっさんだぜ!

 

 

腹ん中では笑いながらも、スンとすましたままの親父を見ているうちに、この親父が

『仲直りのあいさつ』をやる羽目になってどんな顔をするのかと想像して笑えてきた。

 


王妃の気色悪い声は受け流せたおれも、親父がテパの村のおっさんに抱きしめられて

鼻をなめられる姿を思い浮かべたら、我慢が出来ず吹き出してしまった。

 

 

親父に「今なんで笑ったんだ? 説明しろ」と言われたらどう答えようかと思ったが

上手くごまかせたのか、不審には思われなかったようで何も聞かれずに済んだ。

 

 

無事に親父たちの出発の日取りも決まり、あとはこいつらを見送ってからナナに

「遊びに来いよ」というだけだと思っていたのによ、親父の野郎め!

 

 

おれの補佐役をよりにもよって モルディウス に頼んだと言うじゃねえか!

 

冗談じゃねえぞ!

あいつに目つけられたら、面倒なことになるっていうのによ! ちくしょう!

 

 

ただ、今さら言っても遅い。

 

おれはなんとか上手く立ち回り、モルディウスの監視の目をくぐり抜けて、ナナを

サマルトリアに連れて来ねえとな。

 

 

おれは両親が出発するまでに作戦を練った。

 

そして、2日後の朝

おれは正門前で旅に出る両親を見送った。

 


よしっ、作戦開始だ!

 

 


おれはまず、親父の主治医を務めているじいさん医師に休暇を与えることにした。

 


国王の健康管理のため、主治医は毎朝必ず親父の診察に来ていたのだが、おれは前日に

主治医のじいさんに話をつけた。

 

「あんたも歳なんだし、親父がいないときぐらいはのんびりしろよ。おれは若いんだし

 体調にも問題ねえからよ。もし、何かあればサンチョに頼むから心配すんな」

 

 

最初はじいさんも恐縮していたが、それでも朝ゆっくり出来るのが嬉しかったのか

おれが「こんなときぐらいは何も気にせず休めよ」と言うと素直にうなずいた。

 


こうして、じいさん医師を休ませることに成功したおれは、親父たちを見送った後で

サンチョを自室に招いた。

 

 

  お久しぶりの登場・緑の騎士団の軍医サンチョさん (*´ω`*)

 

 

もし、おれがサンチョを呼び出した理由をモルディウスがネチネチ探ってきたときは

テパの村サマルトリアの寒暖差でちょっと風邪気味だ」とでも言えばいい。

 

 

部屋に来たサンチョに今回の作戦を話す。

 


おれの作戦はこうだ。

 

まず、ナナに宛てた手紙をサンチョに渡す。

 

サンチョは今日から4日の間に、治療だか診察だかの適当な理由をつけて、手紙を

おれの顔なじみの若い訓練兵に託す。

 

その兵士には4日後にムーンペタへ行って、ナナに手紙を渡してもらうという流れだ。

 

 

4日後は訓練が休みになる。

 

いくらモルディウスがおれのことを監視してるからといって、とある訓練兵の休日の

行動にまで目を光らせることはないだろう。

 

 

おれは手持ちからわずかばかりのゴールドを出し、追加でサンチョに預けた。

 

訓練兵の給金は安いからな。

少し謝礼金が出れば、休日に用事を言いつけられても喜んで動いてくれるだろう。

 

そしてさすがに4日経てば、モルディウスの監視も少しは落ち着いているに違いない。

 

 

「4日の間? 今日これからすぐにあの兵士を呼んで渡しちゃダメなんっすか?」

 

サンチョは首をかしげる

 

 

「へっ。おまえは甘いな、サンチョよ。今からこの部屋を出たとたんに、おまえも

 モルディウスの監視の対象になるぜ? やれ誰と会った、やれ何をしたと調べられて、

 少しでも不審な点があれば、徹底的に検査されて追及されるかもしれねえんだぜ」

 

おれが脅すとサンチョはブルっと震えた。

 

 

「だ、大丈夫でしょうか? モルディウス様の前で挙動不審になってしまって、もし

 この手紙を調べられたりしたら…」

 

サンチョはおれが渡した手紙を震えながらギュッと握りしめた。

 

 

「へへっ、心配いらねえよ。あやしいことは書いてねえからな。それにこの手紙、

 封だってしてねえだろ? 仮に取り上げられて読まれたって何の問題もないからな。

 試しにおまえも読んでみるか?」

 

おれは笑ってサンチョの背中を叩いた。

 

 

「え? 読んでもいいんですか? じゃあ、失礼して。本当に本当に読みますよ?」

 

サンチョは念を押しながら手紙を読んだ。

 

 

『ナナへ

 ティアは勇者の泉に行ったぜ。

 おまえがサマルトリアに来たときに、詳しい話を聞かせてやるよ!  カインより』

 

 

 

「ん? これだけ?」

 

サンチョは他にも紙が入っているんじゃねえかと封筒の中身をあさっている。

 

 

「これだけか...。おかしいな、この手紙自体になにか仕掛けがあるんですかい?」

 

サンチョは今度は手紙を裏返したり、光にかざしてなにか浮き出ないかと探っている。

 

 

「へっ、別に何も仕掛けはしてねえぜ」

 

おれはふふんと鼻で笑った。

 

 

「え? この手紙だけで、ナナ姫はサマルトリアに来ますかね? 私がナナ様だったら

 自分が誘われてるとは気づかずに『ふーん』で終わっちゃいそうなんっすけど」

 

サンチョは不思議そうにおれを見た。

 

 

「はははっ、わかってねえな。ナナだったら、この手紙を読んだ瞬間に飛んで来るぜ。

 ティアが勇者の泉に行っただなんて、一体どういうことか話を聞かせろってな」

 

おれは得意げになって言い切った。

 

 

「ちょっと、カイン! ティアちゃんが勇者の泉に行ったですって? どういうことよ? 

 あんたが行けって言ったの? あたしが納得できるようにちゃんと話しなさいよ」

 

詰め寄ってくるナナの姿が目に浮かぶぜ。

 

 

「うーん。本当にこんな手紙を渡すだけでナナ姫を城に呼べますかねぇ? それに

 こんな手紙を届けるだけなら、モルディウス様の監視の目なんて気にせず堂々と

 渡して良いんじゃないですか?」

 

サンチョは納得していない顔だ。

 

 

「ふっ、ナナに手紙を渡す日を4日後に指定したのは、念には念を入れてのことさ。

 ナナは手紙を受け取ったらきっとすぐにサマルトリアに来るからな。親父たちが

 旅に出たのと入れ替わりみたいにナナがやって来きたら、あやしまれそうだろ?

 4日後ぐらいがちょうど良いんだよ。ほら、見てみろよ。今はこれなんだぜ」

 

おれはそう言いながら自室の扉を薄く開けて、サンチョに外の様子を見せた。

 

 

おれの部屋から出た先の廊下には、常に警備のための衛兵が立っている。

普段は新米の兵士が交代で警備を務めているが、今朝になって人が入れ替わっていた。

 

モルディウスが信頼を寄せるおっさん兵士が、気難しい顔で立っているのが見える。

 

 

「ひっくっ!」

 

サンチョはいつもモルディウスとあのおっさんに厳しくやられてるんだろう。

 

おっさんの顔を見たサンチョは、驚きのあまりしゃっくりをして慌てて口を押さえる。

 

 

「な、わかっただろ? モルディウスの野郎、初日だからって張り切ってあんな奴を

 寄こしてきやがった。監視されてるとおれが文句を言ったところで、モルディウスは

 親父が不在だから警備を通常より強化しただけだと言い逃れするぜ。だから数日は

 おとなしくするのが正解なのさ」

 

おれはサンチョにウインクした。

 

 

「はぁ〜、なるほど。それで、坊ちゃんはこれからどうするんです? あんな風に

 部屋の前で監視されているからって、ずっと部屋に閉じこもってるんですか?」

 

サンチョは心配そうに尋ねてくる。

 

 

「ちっちっち、同じ閉じこもるとしても場所が違うぜ。あいつらに見張られているのを

 利用して、おれは執務室にこもるのさ。真面目に勉強する姿を見せつけるんだよ。

 数日こもって真剣に学ぶ姿勢を見せれば、あいつらも考えを改めるだろう」

 

 

おれはサンチョに再び4日後に手紙を届けてもらうよう念押ししてから部屋を出た。

 

 

おれたちが部屋から出て来るのを見て、おっさん兵士の顔に緊張が走る。

 

 

「では、坊ちゃん。少し風邪気味なんですからお身体を大切に。私が処方した薬を

 きちんと忘れず飲んでくださいね」

 

部屋を出る前、打ち合わせしたとおりにサンチョがおれに声をかけてくる。

 

 

「あぁ、わかったよ。でも、国王の代理もしっかり務めねえとな。執務室に行って

 今の我が国の状況について調べてくるよ。無理はしないから安心してくれ」

 

おれもおっさん兵士に聞こえるようにハキハキした声で答え、サンチョと別れると

そのまま執務室へと向かった。

 

 

執務室は親父がいるときは入らない部屋だ。

国家機密に関わる資料がたくさん置かれた部屋で、親父は膨大な資料に目を通したり

大臣から現在の我が国が抱えている問題点について報告を受けたりする。

いわば、国政をになう場所ってわけだ。

 

 

親父が出かけるにあたり鍵を預かったおれは、初めて執務室に足を踏み入れた。

 

わざとカーテンを大きく開け放つ。

部屋の中があらわになり、あの警備のおっさんもおれの様子を盗み見できるはずだ。

 

 

おれはまず近くにあった国家予算に関する資料を手に取ってパラパラと眺めた。

 

 

ちっ、ハーゴンの野郎がムーンブルクを滅ぼしてから、軍備費が跳ね上がっているな。

 

ムーンブルク落城の一報を受けてすぐさまローラの門を閉鎖して兵を配置したんだから

当然なんだけど、ローラの門の警備にはかなり高額の費用が使われたんだな。

 

 

そして、サマルトリアが悪魔神官デヌス率いるハーゴン軍に包囲され籠城していたとき

実は国家予算は破綻寸前の酷い状態だったということもこの資料で初めて知った。

 

 

あのときを思い出す。

おれがサマルトリアに戻って来たとき、グランログザー師匠もここへやって来た。

 

 

「見る目があり、運命を動かす力のあるものがここに集まってくるのは当然」

 

師匠はそう言っていたが、運命を動かす力のある奴っていうのも納得できるな。

 

あのとき、おれたち各々が勇気を出して運命を動かさなければ、サマルトリア

内部から崩壊していたかもしれない。

 

 

いっとき国家転覆するかもしれねえ危機的状況にあったサマルトリアも、ハーゴン軍を

撃退してからは上向いてきていた。

 

ドラゴンの炎で焼かれた城壁の修繕などにある程度まとまった費用は発生していたが

ローレシアがおこなうローラの門の修繕や、ムーンブルク城の再建のため支援金を

捻出できるほど回復している。

 

 

1番の危機的状況下でも、貧乏国ローレシアの平常時より豊かだったかもしれねえな。

 

そんなことを思いふっと笑みがもれると、おれは急に王子に会いたくなった。

あいつは温厚で気のいい奴だが、ローレシアを馬鹿にされたときは目の色が変わる。

 

 

「国家破綻の危機にあったサマルトリアより、今のローレシアの方が貧乏だぜ」

 

おれがそう言ったら、あいつはムスッと不機嫌になって怒り出すだろうな。

 

ナナを呼んで問題ないようなら、王子もここに来るよう誘っても良いかもしれねえ。

 

あいつにもサマルトリア王代理を務めるおれの勇姿を見せてやりたいぜ。

 

 

こんな風に、ときに考え事をしながら適当に資料を読みあさって1日目は乗り切った。

 

 

そして翌日も、朝から執務室のカーテンを大きく開けて廊下から丸見え状態にして

おれはくだらねえ資料を読んでいた。

 

 

2日目の夕方になった。

 

初日はおっさん兵士が1日中おれを見張っていて、今日も早朝はモルディウスの手下が

おれの部屋の前に立っていたが、午後からは警備も普段の若い兵士に戻っていた。

 

 

少し監視も緩んできたか?

 

執務室にこもることには完全に飽き飽きしていたが、あと2日の辛抱だと思いながら

執務室を出て自室に戻ろうとしたとき、扉を遠慮がちにノックする音が聞こえた。

 

 

 

ん? 誰だ?!

 

 

 

 

カインが考えた作戦。

ナナへの手紙をサンチョに託して顔なじみの兵士に渡してもらい、4日後の訓練兵の

休日に合わせてムーンペタへ行って、手紙を届けてもらうというもの (・∀・)ノ

 

王と王妃が出かけてすぐにナナが来たら不自然な気がしますが、王様たちが出かけて

4日後にナナが訪ねて来ても「親の不在をねらって呼んだ」とは思われないヾ(*´∀`*)ノ

 

しかも、カインがナナに書いた手紙に誘い文句は何も書いていないので、読まれても

「カインがナナを誘ってサマルトリアに呼び寄せた」とは思われないヾ(*´∀`*)ノ

 

完璧(?)ですね (^_-)-☆

 

 

完璧な作戦遂行のため、4日間は我慢して執務室で勉強するふりを装うカインですが

誰かが訪ねてきたようです Σ(・ω・ノ)ノ!

 

いったい誰が?

カインに何の用で...?

 

 

 

次回もお楽しみにヾ(*´∀`*)ノ