ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 153】 口の悪さが直る場所

旅行でテパの村に行きたいという親父と王妃の希望を叶えるため、おれはテパの村

レオンに会い通訳を依頼した。

 

 

レオンは親父たちの通訳を快諾してくれて、おれはそのまま帰っても良かったんだが

観光でテパの村を訪れた子どもが奇怪な刺青の男におびえて泣いたことを受け、村では

怖がらせたことを詫びて、観光客と村人の親睦を深める宴が催されることになった。

 

通訳で招かれたレオンに誘われ、せっかくだからとおれも宴に参加することにした。

 

 

今にして思えば、宴なんか参加せずにとっとと帰った方が良かったのかもしれねえ。

 

宴の席で、これから家族全員が出かけて城にはおれだけになることをレオンに告げると

「それは好きな女と2人だけで過ごせる大チャンスじゃねえか!」と言われた。

 

そして、レオンの話を聞いた村の連中も一斉に騒ぎ出し、わけのわからねえ言葉で

おれをはやし立て始めた。

 

 

「@$#%”&*/¥~>+*}%'<)/&~#”@{#$(=%!」

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村の奴らはそろいもそろって同じ言葉を叫び、上機嫌でおれの周りをまわっている。

 

子どもがおれに言った

「おにいちゃん! 好きなおねえちゃんとのデート、がんばってね」という言葉を

現地の言葉で言っているらしい。

 

 

「うるせえ!」と怒鳴りつけてやりたいのをおれは必死でこらえていた。

 

この宴が催される前、子どもを泣かせたからという理由で刺青の男と子どもの父親が

『仲直りのあいさつ』をしていたからな。

 

 

『あいさつ』をやらされるのはごめんだ。

下手に怒るのはまずい。

 

 

手をつなぎ歌って踊ってぐるぐる回りながら、村の奴らはあふれてこぼれるのも構わず

おれのグラスに次々と酒を注いでくる。

 

おれは怒りをぐっとこらえながら、注がれる酒を黙って飲み続けていた。

 

 

強い酒を次々に飲まされて、大音量で妙な歌を聞かされて、ぐるぐる回っている奴らを

見ているだけで、おれの目もぐるぐる回るし、酔いも回ってくるよう... だ...... ぜ......

 

 

 

…... その後、どうなったのか記憶がない。

目が覚めると、おれはベッドに寝ていた。

 

 

身体が水を含んだ綿みてえだ。

このままズブズブと床にまで沈んでいきそうなほど重く、動くのがひどく億劫だった。

 

それでも、ここがどこなのかを確かめようと首を左右に動かすと、少し動くだけでも

頭が連動してズキズキと痛む。

 

 

くそっ!

完全に二日酔いだ。

頭は痛てえし、胃がムカムカする。

 

渾身の力でなんとか重たい身体を起こしてあたりを見まわすと、どうやら今いるここは

テパの村にある宿屋のようだ。

 

 

どうやって宿屋に来たんだ?

誰かが連れてきてくれたのか?

自分でここまで歩いてきたのか?

 

…… まったく記憶がない

 


おれはテーブルの水さしから水を1杯ついで飲み、立ち上がって大きく伸びをした。

 

 

身体を動かすのもつらかったが、だからといっていつまでも寝てるわけにもいかねえ。

ただ寝てるより少し動いた方が、身体に血がめぐって楽になるかもしれないしな。

 

 

とりあえず外に出るか。

 

部屋を出ると、受付にいた男がおれに気づきにこやかに笑いかけてきた。

 

 

「ゆうべはどうやってここに来たんだ?」

 

男に尋ねたが通じないようだ。

 

 

男は陽気にニコニコ笑いながら、おれの肩やら背中やらをバシバシ叩いてきた。

 

 

ちっ! とりあえずここを出て、すぐにでもレオンに会わねえとラチがあかねえな。

言葉が通じねえとホント厄介だぜ!

 

 

「宿代はどうなってる?」

 

おれは親指と人差し指で輪っかをつくって男に見せながら尋ねてみた。

 

 

この手の形は万国共通のようだな。

男は「大丈夫、大丈夫」と言わんばかりにおれの背中を叩いて宿から出してくれた。

 

 

いつの間に金を払ったんだろう?

 

無意識のうちに自分で払ったのか?

いや、無いな。ゆうべのおれはきっと立ち上がれないほど泥酔していたに違いない。

自分で金を出した可能性は低いだろう。

 

となると

レオンが払ってくれたのか?

それとも村の誰かが?

 

まずはレオンに会わねえとな。

 

 

宿屋を出たおれは、昨日レオンと会った村の中心に向かって歩いていった。

 

 

南国の村は今日も快晴だ。

ギラギラと強い陽射しが照りつけてくる。

 

二日酔いの身体にはこたえるな。

頭がクラクラしてくるぜ…

 

 

このままふらついてサマルトリアに帰れば、おれのつらそうな様子を見て、親父たちも

テパの村に行くのをやめるだろうか?

 

いや。いくらおれがつらそうでも、これだけ酒の匂いをさせていては説得力がねえ。

 

 

「ふんっ、子どものくせに調子に乗って飲むからだ! 謹慎して反省するが良い!」

 

親父に叱られて謹慎処分を喰らうのがきっとおれの末路だろうな。

 

 

そんなことを考えながら村の中心まで行くと、昨日と同じ場所にレオンたちはいた。

 

 

「コニチハー!」

 

おれを見つけた村人たちが叫んでくる。

 

 

腹ん中がぐるぐるしていて声を出す元気もなく、おれは手を振って応じた。

 

 

「おう、大丈夫かよ。ひでえ顔だな」

 

レオンがおれを見て苦笑いする。

 

 

「だめだ、最悪だぜ。なぁ、昨日はどうなったんだ? おれはどうやって宿屋に?」

 

おれはレオンの隣に座り込んだ。

 

身体が重だるいせいか、頭がガンガン痛いせいか、絶えず吐き気が襲ってくるせいか?

ここまで歩いただけで息があがっている。

 

 

レオンは昨夜のことを話してくれた。

 

村人から注がれるまま飲み続けていたおれは、その場で突っ伏してしまったらしい。

ぶっ倒れたおれを村の奴らが担ぎ上げて、そのまま宿屋に連れて行ったんだとか。

 

 

「じゃあ、宿代は村の奴らが?」

 

 

「みんなで少しずつ出し合ったそうだぜ。別に返す必要はないさ。そもそも宴自体も

 村の奴らの奢りだったし、こいつらにとってはおまえと姫さまが上手くいくように

 願掛けしたつもりらしいからな」

 

レオンはカラカラと笑った。

 

 

レオンがそう言うのなら、ゆうべの宿代はありがたく受け取っておくか。

今さら返すとなっても、誰にいくら返せばいいのかさっぱりわからないもんな。

 

 

不意にとんとんと背中を叩かれた。

振り返ると、村の女が妙な液体の入った器をおれに差し出してくる。

 

 

「村に古くから伝わる酔い覚ましだ。相当まずいが、二日酔いにも効くぜ」

 

女に代わってレオンが説明してきた。

 

 

「あ、あぁ。ありがとな」

 

おれが器を受け取ると、女は微笑んだ。

 

 

派手な色の奇怪な刺青が邪魔をしているが、目鼻立ちの整った美しい女だった。

刺青のせいでよくわからねえがまだ若く、身体も程良く引き締まったイイ女だ。

 

女から受け取った器からは香ばしいというか、焦げ臭いというか、鼻を刺すような

妙な匂いがたちのぼってくる。

 

 

匂いがキツくて飲む気がしないが、この酷い二日酔いをなんとかしたい気持ちもある。

 

我慢して息を止めてひと口飲んでみた。

...... ひどく苦い。

 

 

「うえぇ。かなり苦いな、これ...」

 

あまりの苦さに思わず吐き出しそうになりながらも、おれは何とか飲み込んだ。

 

 

「あぁ。確かにかなり苦くてまずいけど、効果は抜群だぜ。ここは騙されたと思って

 我慢して全部飲んでみろよ」

 

レオンが飲み干すよう勧めてくる。

 

 

レオンの背後では器を渡してきた美しい女を筆頭に、おれがこの苦い汁を飲み干すのを

期待するたくさんの村人たちの視線がおれに圧力をかけてきていた。

 


おれはふうぅ~と大きく息を吐き出し、覚悟を決めて器の液体を一気に飲んだ。

 

 

うげえぇぇ~

 

口の中が苦みで満たされ、焦げ臭いような匂いが絶えず鼻を突いてくる。

 

 

だがしばらくすると、まるで口の中に涼風が吹いたようにスッキリしてきた。

あの苦い液体によって口の中のすべてが一気に洗われたような感覚だ。

 

 

洗われたのは口の中だけに留まらず、気持ち悪りい胃のムカムカも、頭の鈍痛も

綺麗さっぱり洗われたように感じた。

 

 

「どうだ? 効いただろ?」

 

おれの様子を見てレオンがニヤリと笑う。

 

 

「あぁ、一気にサッパリしたぜ」

 

おれは親指を立てて同意した。

 

 

「それにしても、カイン。昨日からおまえ、なんか別人のように従順になってねえか?

 今までのおまえなら、昨夜のようにからかわれたまま黙ってるなんてありえねえし、

 こんな苦い酔い覚ましの薬を文句も言わずにおとなしく飲んだりもしねえだろ?

 まずいだの臭いだの、絶対に文句が出るはずなのによ。一体どうしちまったんだ?」

 

レオンがおれを見て首を傾げた。

 


「おい、おれを考えなしの暴れ猿みたいに言うなよ。おれだって一国の皇子だからな。

 自分の我を通すことなく、必要に応じてちゃんと礼節をわきまえるんだぜ」

 

いつも好き勝手わめいている奴みたいに言われておれはレオンに抗議した。

 


「はははっ。誰も暴れ猿だなんて言ってないぜ! そんなに怒るなよ。でもよ、本当に

 今はかしこまる必要もないだろ? 別に気を遣うような偉い奴がいるわけでもないし。

 サマルトリアの皇太子なんだから、今ここではおまえが1番偉い奴だぜ! それなのに

 妙に素直でおとなしいなと思ってよ」

 

レオンはまだ不思議そうな顔をしている。

 


こいつとは付き合いも長いし、レオンはおれの性格をよくわかってるからな。

適当にごまかしても納得しないだろう。

 


「あぁ。実を言うと村の奴らとささいなことでもめて、あの『仲直りのあいさつ』を

 やらされるのが嫌なんだよ」

 

おれは正直に伝えた。

 

 

「ぶはっ、そりゃあいいじゃねえか! おまえ、しばらくこの村に滞在したらどうだ?

 仲直りのあいさつが嫌だってだけでこんなにおとなしくなるんなら、ここにいれば

 おまえの短気なところや口の悪さも、少しは改善されるかもしれねえぜ!」

 

レオンはおれの言葉に盛大に吹き出すと、愉快そうに笑いながら言った。

 


「けっ、冗談じゃねえよ。確かに村の連中はみんな親切でいい奴だけどな。でも、

 こんな言葉も通じねえようなところは何かと不便だからよ。あんたが親父たちの

 通訳を引き受けてくれたことだし、目的は果たせた。おれはそろそろ帰るぜ」

 

おれはペーッと舌を出してやった。

 


「ああ、そうだ。目的ってところで思い出したけどよ。おまえの親父さんたちは

 いつこっちに来るんだ? おまえが城に戻ったら入れ替わりで出発する感じか?」

 

レオンは真面目な顔になって聞いてきた。

 

 

「そうだった、悪りい悪りい。おれも大事なことを言い忘れてたな。妹のティアが

 1カ月足らずで戻ってくる予定だからよ。親父たちもティアが戻ってきたときは

 城で出迎えるだろうから、すぐに出発して早々に帰るつもりだと思うぜ」

 

おれは親父と王妃の特徴をレオンに伝えた。

 


「あぁ、わかった。カインが言ったような雰囲気の2人が来たら、その人たちは

 おれの客だってみんなに話しておくよ」

 

レオンはおれにウインクしてきた。

 


「ありがとよ、あんたのことは頼りにしてる。親父たちのこと、くれぐれも頼んだぜ」

 

おれたちは再び固い握手を交わした。

 

 

次にムーンブルクに来るときに親父たちの旅の思い出話を聞かせてもらう約束をして

おれはレオンに別れを告げた。

 

レオンは近くに座る村の連中におれがもう帰る旨を現地の言葉で伝えている。

 

 

「マタキツェヌェ~」

「サヨヌラ~」

「ジャワァネェ~」

 

おれが村の入口へと歩き出すと、村人たちもついてきて手を振って見送ってくれた。

 


「おう、また来るぜ。じゃあな!」

 

おれも村人に手を振って呪文を用意した。

 

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

 

 

テパの村の話は今回でひと区切り☆

 

酔いつぶれたカインを担ぎ上げて宿屋まで連れて行ってくれて、宿代も払ってくれて

「よく効く酔い覚まし」も用意してくれるなんてテパの村人はイイ奴らですね (*´ω`*)

カインが帰るときは、覚えたての言葉を使って見送ってくれましたよヾ(*´∀`*)ノ

 

 

ここでちょっと気になるのは、カインに酔い覚ましを手渡してくれた美しい女性☆

なにやらレオンと親しそうな雰囲気がありますが、いったい誰なんでしょう?

 

レオンはラゴスを捕まえて水門の鍵を取り戻した「テパの村の英雄」ですからね!

これ以上は、読者のみなさまのご想像におまかせしましょうか ( *´艸`)

 

 

さて(宴で村人たちにいじられたのは余計だったけど)レオンに通訳も頼めたので

あとはサマルトリアに帰って親父たちを追い出して、ナナを招くだけですね ( *´艸`)

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ