ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 152】 テパの村の風習

ティアが勇者の泉に行ってしまい、寂しくなって涙ぐむ王妃を慰めるために親父は

夫婦2人での旅行を提案したらしい。

 

ベラヌールペルポイなど、利便性が高くて活気のある町はたくさんあるというのに

王妃はテパの村に行きたいんだとか。ホント、困ったことを言い出すよな。

 

 

言葉も通じねえような場所に、サマルトリア王と王妃を2人だけで向かわせるのは

あまりにも危険だろ?

 

しょうがねえからおれは通訳になりそうな奴を探しにテパの村へ向かった。

 

 

オルムたちと一緒にテパの村に行ったときにおれたちを案内してくれたあの通訳か、

「しばらくは村にいるつもり」と言っていたレオンに会えれば御の字だと思いつつ

おれは久しぶりに村へと入った。

 

 

へへっ! おれ様は善良で日頃の行いもイイからな! ルビス様のご加護があるんだぜ!

 

村に入ったおれは、すんなりとレオンに会えて、親父たちの通訳も依頼できた。

 

レオンは通訳を快く引き受けてくれたぜ。

ひとまずはこれでひと安心だ。

 

 

通訳が決まりホッとしたおれが村の入口で観光客のトラブルが起きていると告げると

レオンはおれとの話もそこそこにして、村の入口へと走って行った。

 

 

村に来た用件は片づいたが、このままあいさつもせずに帰るというのもなんだからな。

 

1人残されたおれは走って行ったレオンを追い、ゆっくりと村の中を歩いていた。

 

 

向こうから、さっき村の入口でおびえながら立ち尽くしていた若い男女が軽やかに

弾むようにして歩いてくるのが見えた。

 

レオンからこの村のことや村人の気質について詳しく話を聞いたんだろう。

さっきまでとは打って変わって、笑いながら村の様子を興味深そうに眺めている。

 

あんなにおびえた目で見ていた村人にもニコニコ笑って手を振ったりしていた。

手を振られた村人がお返しにおどけて見せると、楽しそうにコロコロと笑っている。

 

 

はしゃぎながら歩いて行く2人とすれ違うと、村の入口から笑い声が聞こえてくる。

 

笑い声のする方に向かって行くと、さっきまでギャアギャア泣きわめいていた子どもが

何かを見てケタケタ笑っている。

 

 

ガキの視線をたどると、子どもの親父が刺青の男の鼻の頭を嫌そうな顔でなめていた。

 

おそらくレオンが仲裁に入り、2人に「仲直りのあいさつ」をさせたんだろう。

 

嫌そうな顔で鼻をなめる男を見て、泣いている子どもを心配して集まって来た村人と

当事者の子どもは腹を抱えて笑っている。

 

 

けっ! てめえのせいで親父はこんな目に遭ってんのによ、ひでえガキだぜ。

 

おれは心の中でガキに毒づきながらも、子どもの父親のあまりにも嫌そうな顔に

思わず一緒になって吹き出しちまった。

 

 

「どうだい、おれの手腕は? あっという間に解決してやったぜ。なかなかやるだろ?」

 

いつの間にかレオンが隣にいて、得意気な様子でおれの肩に腕をまわしてきた。

 

 

「へへっ。さすがだな。あんたにはこれぐらいのトラブルなんて朝飯前だろ!」

 

おれはレオンにウインクしてやった。

 

 

そうしながら、あることを思いついた。

 

「なぁ、あの『仲直りのあいさつ』ってどんな奴でも絶対にやるもんなんだよな?」

 

おれがレオンに尋ねると、レオンはきょとんとした顔でおれを見てきた。

 

 

「ん? おまえ、なんであれが『仲直りのあいさつ』だって知ってるんだ?」

 

あぁ、そうか。初めてテパの村に来たときは、レオンと別行動をとってたんだったな。

 

 

おれは初めて村を訪ねたとき、今まで見たこともない人種に遭遇したせいでお互いに

相手を「怪物」「魔王の使い」と勘違いして戦おうとしたこと、その仲直りとして

リーダーらしき男と鼻の頭をなめ合う羽目になったことを話して聞かせた。

 

 

「はははっ。そのときはおまえが代表してなめたのか。おまえはあの父親よりもっと

 嫌そうな顔したんだろうな。おれもその場にいておまえの顔を見てみたかったぜ」

 

レオンはくくくっと笑った。

 

 

「いいから、質問に答えろよ。あの『あいさつ』はどんな奴でも必ずやるんだよな?

 おれなんて通訳の男に『やらなかったら死刑だぞ』と脅されたんだぜ?」

 

おれは急かすように再び尋ねた。

 

 

「まぁ、友好の証みたいなもんだからな。死刑はさすがに大げさかもしれねえけどよ、

 断るような奴はこの村の敵と見なされて、どんな目に遭うかわかんないぜ」

 

レオンの答えを聞いて、おれは内心ニヤニヤしてくる気持ちを抑えられなかった。

 

 

これは……

おもしれえことになりそうだ!

おれは城に残るから自分の目で見れないのは残念だが、想像するだけで笑えるぜ!

 

 

「あんたさ、おれの親父たちが村に来たときはただ通訳だけすればイイんだからな。

 村の文化とか風習とかは、別にこっちからわざわざ教えてやらなくてイイんだぜ」

 

へへっ。おれの話を聞くうちに、どうやらレオンもピンときたらしいな。

 

 

「カイン、おまえ悪い息子だな。親父に何も教えずに鼻の頭をなめさせるつもりかよ」

 

口ではおれを咎めるようなことを言いながら、レオンもニヤニヤ笑っている。

 

 

「へへっ、別にいいだろ? おれはただ親父たちにテパの村の風習を実体験を通じて

 知ってもらおうとしてるだけさ」

 

おれも共犯者の顔でニヤリと笑った。

 

 

おれたち2人がほくそ笑んでいると、1人の若い男がおれたちのそばにやって来て

レオンに何やら話しかけてきた。

 

レオンは村の男の話に2、3回うなずくと、おれの顔を見た。

 

「カイン、今日はここに泊まっていくだろ? 良かったらおまえも宴に来いよ」

 

 

レオンの話によると、泣いていたガキたち親子を誘って、お詫びの宴を催すらしい。

宴にレオンは通訳として呼ばれたそうだ。

 

 

別に急いで帰ることもないか。

 

すぐに帰れば王妃は「なぁんだ。通訳なんて簡単に見つかるんじゃないの」とか言って

鼻で笑うに違いねえからな。

 

通訳を見つけたことをありがたく思わせるためにも、今晩はここに泊まっていくか。

 

おれもレオンの誘いを了承して宴に参加することにした。

 

 

 

「…... へぇ〜。じゃあ親父さんたちだけじゃなく、妹も今は城に居ないってわけだ」

 

親父たちが旅行に行くことになった経緯についてレオンに話すと、レオンは手にした

酒を飲みつつおれを見てニヤッと笑った。

 

「そりゃあ、絶好のチャンスじゃねえか」

 

 

「絶好のチャンス?」

 

なんのことだ? とおれは首をかしげた。

 

 

「あぁ、そうか。おまえは王族だから、たとえ家族が出かけていても城には使用人とか

 他にもいろんな奴らがいっぱいいるんだもんな。元々おれたちとは立場が違うから

 そんなおまえにはピンと来ない話かもしれないけどよ、この村ではおまえぐらいの

 歳の若い男たちにとって、親が不在になるのは大チャンスなんだよ。親や家族が

 出かけている隙に、好きな女の子を家に呼ぶんだ。女の子も家に他の家族がいると

 気を遣って来たがらないけど、誰もいないとなると気楽に来てくれるんだよ。そして

 ずっと2人ですごすわけだから...」

 

レオンは話の続きを耳打ちしてきた。

 

 

「あ... あぁ~、そういうことか…」

 

おれはさりげなさを装い酒をあおった。

 

 

強い酒を一気に飲んだせい... だよな?

顔が一気に紅潮してくる。

 

 

「はははっ、おまえにはちょっと刺激の強い話だったか? なんでもないふりしてるけど

 耳が真っ赤じゃねえか!」

 

レオンがおれの耳たぶをつかんで大声で笑いながらからかってくる。

 

 

「うるせえ! 耳が赤いのは酒のせいだ」

 

おれはレオンの手を振り払い、舌打ちしてレオンを怒鳴りつけた。

 

 

「@;-&'/#&%@*?」

 

ほろ酔い状態の村の男が、酒のビンを片手に持ちながらふらふらと近づいてきた。

 

 

レオンが大笑いしているのが気になるのか、レオンを真似ておれの耳たぶをつまみ

なにか尋ねているようだ。

 

言葉は聞きとれねえが「なんでこいつの耳は赤いんだ?」とでも聞いているんだろう。

 

 

レオンが現地の言葉で何か伝えると男は陽気に笑い、大きな声でなにか言いながら

おれのグラスに酒を注いできた。

 

男は満面の笑みを浮かべながら、身振り手振りで「飲め、飲め!」と伝えてくる。

 

 

男のデカい声を聞いた村の連中たちも、一気にわけのわからない言葉で騒ぎ始めた。

 

おれのグラスに次々と酒が注がれる。

 

 

老若男女関係なく村人たちは続々とおれのそばに集まってくると、おれの周りを囲んで

なにやら妙な歌を歌いながら、手をつなぎ円になってぐるぐる回り始めた。

 

 

「あの... 何があったんですか?」

 

いきなり村の奴らが豹変して大騒ぎを始めたので、さっき村人の鼻を嫌々なめていた

子どもの父親がレオンに尋ねてきた。

 

 

「おい、余計なこと言うなよ」

 

おれはレオンをたしなめた。

 

 

だが、レオンの野郎はおかまいなしだ。

 

「へへっ。こいつさ、両親や妹が旅行に出た隙に好きな女を家に招くつもりなんだよ。

 で、この話を聞いた村の奴らが、成功を祈って歌と踊りで激励してるってわけさ」

 

ニヤニヤしながら男に話している。

 

 

話を聞いた子どもの父親は、おれを見て微笑みながら酒のグラスを掲げてきた。

 

そして、レオンから聞いた話を隣にいる妻と息子に伝えている。

 

 

「おにいちゃん! 好きなおねえちゃんとのデート、ガンバってね!」

 

父親から話を聞いた子どもが無邪気な笑顔でおれに言ってきた。

 

 

陽気に歌ってぐるぐる回りながら、村の奴らがレオンに何か話しかけている。

レオンが答えると、村人たちは大喜びして踊ったまま口々になにやら叫び始めた。

 

 

「@$#%”&*/¥~>+*}%'<)/&~#”@{#$(=%!」

「@$#%”&*/¥~>+*}%’<)/&~#”@{#$(=%!」

「@$#%”&*/¥~>+*}%’<)/&~#”@{#$(=%!」

「@$#%”&*/¥~>+*}%'<)/&~#”@{#$(=%!」

 

なんと言ってるかは聞き取れねえが、全員が同じ言葉を叫びながら回っている。

 

 

「こいつら、なに言ってんだ?」

 

おれがレオンに尋ねると、レオンは自分の膝をバンバン叩いてひーひー笑いながら

 

 

「『おにいちゃん! 好きなおねえちゃんとのデート、ガンバってね!』だってよ」

 

そう言って再び盛大に吹き出した。

 

 

 

ちっ! くそっ!

 

おれは「うるせえっ!」と叫んで大暴れしたいのをなんとかこらえていた。

 

 

ここでおれが村人たちに怒って、それが原因でまたあの『仲直りのあいさつ』

やらされるのだけはごめんだからな。

 

 

言葉も通じねえし、風習も違う。

ちょっとした行き違いがあって仮に村人と言い争いにでもなれば、あの気持ち悪りい

『仲直りのあいさつ』なんてやらされる。

 

 

くそっ!

王妃のババアめ! なぜわざわざ好き好んでこんな辺鄙な村に来たがるんだよ!

おれがこんな目に遭ってるのは全部おまえのワガママのせいだぞ、ちくしょう!

 

 

おれはムカムカと湧いてくる怒りを必死に抑えながら、酒をあおり続けていた。

 

 

 

 

当初はすぐにサマルトリアに帰る予定だったんですが、せっかくレオンに会えたので

このまま帰るのはもったいないなと思い、テパの話をもう少し引っ張りました ( *´艸`)

 

 

テパの村の風習といえば、カインがやらされた『仲直りのあいさつ』ですよね ( *´艸`)

 

そして新たな風習(?)として

テパの村の若者は、親の不在時に好きな女の子を家に招く」も出てきました ( *´艸`)

 

これはテパの村とは違う世界線にある日本にも存在する風習かもしれないですね☆

(まぁ、私自身は若かりし頃そんな風習に遭遇しないまま歳を取りましたが... (;'∀'))

 

 

「両親もティアも出かけた隙に、ナナを城に招いてあわよくば...♡」

 

レオンの提案を軽く聞き流そうとしながらも、動揺で耳が真っ赤になるカイン ( *´艸`)

 

 

レオンに笑い者にされて、さらには村の奴らにもからかわれて、村中を巻き込んで

盛大にいじられちゃいました~ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

本来なら「イジり」には黙っていないカインも、あの『仲直りのあいさつ』があるため

必死に怒りをこらえています ( *´艸`)

 

 

怒りを抑えながら飲み続けるカイン

果たして大丈夫でしょうか (;´∀`)?

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ