ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 88】化けの皮

王子が結婚するという嬉しい報告を聞き、翌日からは久しぶりに3人でサマルトリア

ラダトームルプガナまで一緒に旅が出来るということもあって、おれたちは浮かれて

大聖堂の中ではしゃぎまわっていた。

 

日も暮れたので、そのまま大司教の居室で簡単な食事を済ませ、夜遅くに大聖堂の前で

解散し、おれとナナは王子が用意してくれたそれぞれの部屋に泊まった。

 

そして翌朝、3人とも眠い目をこすりながらおれのルーラでサマルトリアへ向かった。

 

 

側近に親父との謁見を求めると、親父は上機嫌でわざわざおれたちを出迎えに来た。

そのまま謁見の間に通されたおれたちは、親父を前に3人で横並びに立った。

 

紋章の件に関しては、代表して王子から話してもらうことになっていた。

 

 

王子は大司教から「紋章は3国で分配した方が良い」と言われたこと、どう分けるかは

3人で話し合い、それぞれの功績に応じてどの紋章を持つか決めたことを話した。

 

 

王子は、『太陽の紋章』はおれがフレイムとの一騎打ちで勝って手に入れたものであり

『水の紋章』はサマルトリアハーゴン軍を撃退したとき、おれが悪魔神官デヌスから

奪い取って、海底洞窟で合流する際に持ってきてくれたんだと親父に伝えた。

 

「太陽の紋章と水の紋章が手に入ったのは、まぎれもなくカインの功績です。だから

 この2つの紋章は、サマルトリアで保管してもらおうと思っています」

 

王子がそう言うと、玉座に座った親父はあごひげに手をやって目を細めた。

 

 

「ほう。勇んで旅に出たものの、王子とナナの足手まといになっているのではないかと

 案じていたが、今の話を聞くと、わが息子にもそれなりの働きがあったようだな」

 

「恐縮です」

おれは姿勢を正して頭を下げた。

 

 

一礼して顔をあげたおれを、親父はなにか言いたそうな顔でじっと見つめていたが、

特になにも言わなかった。

 

 

王子はその後、『星の紋章』はペルポイラゴスを捕まえるときに、ラリホーを唱えた

ナナの功績で手に入れたものだから、ムーンブルクに置くことしにし、ローレシアでは

残りの『月の紋章』と『命の紋章』を保管するつもりであることを親父に伝えた。

 

 

「王子は残り物をローレシアに... みたいな言い方をしていますが、この2つの紋章は

 王子の活躍によって手に入ったものですの。だから分け方は正当だと思いますわ」

 

ナナが微笑みながら王子を見ると、王子は照れたように頭をかいた。

 

 

「はははっ。王子は必要以上に謙遜するところがあるからな。謙虚なのはいいのだが、

 王子は遠慮せず、もっともっと自分の活躍を誇りに思ってもいいのだぞ」

 

「いえ、ぼくはただの若輩者ですから」

 

 

「なんじゃ、なんじゃ。王子よ、わしの前でそんなに恐縮して固くなる必要ないぞ。

 ほれ、わしらはコレだろう?」

 

親父は懐から『ロトの印のステッカー』を取り出して王子に見せた。

 

 

「い、いつの間に?!」

 

おれが驚いて王子の顔を見ると、王子はおれを見て困ったような表情を見せた。

 

 

ムーンブルクデルコンダル王と同盟関係を結んだとき、カインがお父上にも

 ステッカーを渡してくれって言っていただろう? だから、ムーンブルクから帰って

 すぐにサマルトリアまで来たんだよ。事前にカインに会っておこうと思ったんだけど

 きみは出かけていて留守だったんだ」

 

ムーンブルクから帰ってすぐとなると、おれがベラヌールに種をもらいに行った頃か。

 

 

「確かに親父に会いに来たときにおれはいなかったかもしれねえけどよ、その後にも

 おれとおまえが会う機会は何度もあっただろ? なんで今まで言わなかったんだよ!」

 

 

「ぼくは言おうと思ったんだけど、きみのお父上に『わしらがこうして会ったのは、

 わしと王子の友情の話なんだから、カインは関係ない。言う必要はないぞ』って

 口止めされちゃっててさ…」

 

 

「わしと王子が仲間になることをなんでいちいちおまえに言わなきゃいけないんだ?」

 

 

「ちっ! ひっでえ言い草だな。おれはずっと一緒に旅した大切な仲間と息子だろ?

 別に減るもんじゃねえんだし、何回も顔を合わせているんだからよ、ただひとこと

『2人で会った』って言ってくれたっていいじゃねえか! 黙ってるなんて冷てえよな。

 ったく、親父も親父でよ…」

 

言いかけて、ハタと気づいた。

 

 

しまった! やべえ...。今は親父の目の前だった!

 

親父の前だとすっかり忘れて、つい、いつもの調子でしゃべっちまったぜ。

 

 

恐る恐る親父を見ると、好奇心いっぱいのキラキラした目でおれを見つめていた。

 

「ん?『親父』がどうしたって?」

 

豊かなひげで見えづらいが、親父が唇の端を吊り上げて笑っているのはわかった。

 

 

「え... いや… あの...」

 

全身から一気に汗が噴き出した。

くそっ。ここからどう切り返せばいい? おれはうろたえて、しどろもどろになった。

 

 

「はっはっはっは」

親父はそんなおれを見て豪快に笑った。

 

 

「わしをなめてもらっちゃ困るな、カインよ。わしはこれでも1国を治める君主だぞ。

 わしが、おまえたち3人の本性に気づいていないとでも思っていたのか?」

 

 

「おまえたち… 3人?」

 

 

「ははっ。おまえと王妃、ティアの3人だよ。おまえたちは、わしの前ではそれぞれ

 慎ましい妻・礼儀正しい息子・おしとやかな娘を演じておったようだが、わしには

 おまえたちの本当の姿はすべてお見通しだ。わしが簡単にだまされると思うなよ」

 

親父は自分のひざをバンバン叩き、大きく背をそらせ、天を仰いで大笑いしている。

 

困ったおれが隣にいる王子とナナを見ると、2人ともおれを見ながら笑っていた。

 

 

「えっと、い... いつから...?」

 

「いつから気づいていたかって? そりゃあもう、ずーっと前からわかっておったわい」

 

親父はまだ豪快に笑い続けている。

 

 

なんてこった。ずっと前から気づいていただと?! 親父は長い間、平然とした顔で

接しながら、陰でおれたち3人のことを笑い者にしてたってことか!

 

おれの中で何かがプチッと切れた。

 

 

「なんだよ、くそ親父! てめえ、本当に性格悪いよな!

 おれたちの本性をとうにわかっていたくせに、ずっと

 気づいてないふりして腹ん中で笑ってたってことかよ」

 

笑い者にされた怒りで頭が真っ白になったおれは、思わず大声で叫んでしまった。

 

 

「はははっ。いいぞ! ようやくわしに『本当のおまえの姿』を見せたな。

 よしよし、隠さなくていい。むしろ、それでいいんだぞ。カイン」

 

親父は優しい声でおれの名前を呼ぶと、穏やかに微笑んだ。

 

 

「わしの前だからって何も遠慮する必要などないんだよ、

 カイン。おまえは、いつでもどこでも誰の前にいても、

 変わることなく、おまえらしくいればいいんだ」

 

 

「親父...」

 

 

「王子もナナも同じだぞ。遠慮したり恐縮してかしこまる

 必要なんてない。わしらはみんな『仲間』なんだから」

 

 

親父は微笑んで玉座から立ち上がると、『ロトの印のステッカー』を高く掲げた。

 

 

王子とナナは大きくうなずくと、懐から『ロトの印のステッカー』を取り出して

親父と同じように高く掲げた。

 

親父・王子・ナナの視線を受けて、おれもステッカーを懐から出して高く掲げた。

 

 

 

掲げた『ロトの印のステッカー』を懐にしまいながら、おれは親父に尋ねてみた。

 

「親父、ひとつ聞いてもいいか? おれはずっと、親父の前で生意気なことを言ったら

 親父は怒り出すと思っていたんだよ『この、無礼者め!』ってな。でも、親父は

 さっき『むしろそれでいい』って言っただろ? 親父はずっと前から、おれが本当は

 生意気な奴だと知っていて、生意気なままでいいと思っていたのに、なんで今まで

 ずっと黙っていたんだ? なんでおれに『演技は止めろ』って言わなかったんだ?」

 

 

「ああ、それか? わしが今まで黙っていた理由はただ1つ。『おまえたちの

 下手くそな演技がおもしろいから』だ。わしがもう気づいていると

 知って、みんながあの下手な演技を止めてしまったら、つまらんじゃないか」

 

親父は再び大きな笑い声をあげた。

 

 

「おまえも王妃もティアも、わしの前ではかしこまって気取っているだろう? 本当は

 全部バレているのに、バレているなんて思いもしないで気取ってるんだぞ。それが

 とにかくおもしろくておもしろくて。今回は話の流れで仕方がないから、おまえには

 気づいていることを明かしたけど、おまえはあの2人には絶対に言うんじゃねえぞ!

 わしの楽しみを奪わんでくれよな」

 

親父はニヤニヤ笑いながらおれの方に歩み寄ると、おれの肩をパンパンッと叩いた。

 

 

「おまえも今度、王妃やティアに会うときには同席するといいぞ。あの2人の演技は

 まぁ、特に笑えるからな」

 

王妃とティアの演技を思い出したのか、その場で親父は腹を抱えて笑い出した。

 

 

おれは…

おれと親父は似てないとずっと思っていた。

 

風貌はともかく、性格に関しては「魔法嫌い」と「魔法に執心」と真逆だったし

親子なのに似てないなと感じていた。

 

 

だが、それは間違いだったようだ。

 

 

親父は、はるか昔からおれたちの本性に気づいていて、自分を隠したり抑えたりせず、

もっとありのまま、自分らしく自然体でいればいいのに… とずっと思っていたらしい。

 

そう思っていたにもかかわらず、これまで黙ったままおれたちを放置していた理由が

「おれたちの下手な演技がおもしろいから」だとはな!

 

 

親父、おれは間違いなくあんたの息子のようだぜ

ちくしょう!!

 

 

 

 

ゲームブックのエンディングでは、ローレシアに凱旋したときに父上と母上の前で

ひざまずいた王子をカインは後ろから蹴飛ばすんですよね ( *´艸`)

 

1国の皇太子さまを国王夫妻の目の前で蹴る他国の皇太子。それが笑って許されるのは

カインの人柄ですよね (^_-)-☆

 

 

そんなカインが、父上の前ではかしこまって敬語を使うのが(カッコイイんだけど)

ちょっと違和感があって (´・ω・`)

 

国の大事を決めるときなどは敬語を使うことがあっても良いけど、それ以外のときには

もっと自由奔放に、いつものカインらしくいて欲しいなと思ってこの話を書きました。

 

 

人間の和を大事にして努力を重ねてきたサマルトリア王には、妻と子どもたちの演技は

バレバレでしたよって ( *´艸`)

 

「いつでもどこでも誰の前にいても、変わることなく、おまえらしくいればいい」

このパパの言葉には息子のすべてを認めてくれる深い愛情が感じられますよね (*´ω`*)

 

 

「かしこまることなく本音で話せばいいのに」と思いながらも、それを今まで本人に

言わなかったのは「下手くそな演技がおもしろいから」( *´艸`)

 

いかにも「カインのパパ」っていう台詞が書けて個人的には満足していますヾ(*´∀`*)ノ

 

 

パパの前でも飾らずに素の自分を出せるようになったカイン (*´ω`*)

ますます良い父子になりそうですね☆

 

せっかく3人でサマルトリアに来たので、もうちょっとだけここで話を続けますよ♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ