ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ④】 ティアの大冒険 ~生い立ち~

勇者の泉に向かっていたある夜。

眠っていたあたしがふと目を覚ますと、目の前に幽霊がふわふわと漂っていたの!

 

 

  フハハハハ! 偽物の王女め、積年の恨み晴らしてやるぞ!

 

 

すぐ間近で見る幽霊の姿と、耳をしっかりふさいでも頭の中に響いてくる幽霊の声に

あたしは怖くなって、腰が抜けちゃったのか立ち上がれなくなってしまったのよ。

 

幽霊はどうやらあたしに恨みを持っているらしく、執拗にあたしを攻撃してきたわ。

 

 

ウトウトしていたクリフトが飛び起きてきて応戦してくれたんだけど、ほら幽霊って

ふわふわと浮いているでしょ? なかなか攻撃が当たらないし、幽霊はクリフトの脇を

すり抜けてあたしを襲ってくるし、悔しいけど大苦戦だったの。

 

絶体絶命のピンチをリオスさんが投げ縄で救ってくれ、ようやく勝つことが出来たわ。

 

 

幽霊を倒した後、クリフトはおにいちゃんにもらった薬草であたしの傷を治療して

もう休むようにと言ってくれたんだけど、怖くて眠れそうにないわよ。

 

「まだ眠れないようなら、火のそばであたたまりましょう」とクリフトに言われて

ついていくことにしたの。

 

 

そういえば眠る前にも、クリフトは「火のそばでおやすみください」と言ってたわね。

 

 

「そんなこと言って、あたしが寝たらこっそり寝顔を覗く気でしょ! クリフトの分際で

 あたしの寝顔を見ようだなんて、100万年早いわよ!」

 

あたしはふんっと言って、わざと火から遠く離れたところで寝ることにしたの。

今となっては大失敗だったわね。

 

 

 

あたしが寝ていたシートと毛布を手にして、クリフトは火の近くに歩いていく。

 

クリフトは火のそばにしゃがみこむと、シートに付いた砂埃をパンパンとはらって

丁寧に敷き直したの。あたしは敷き直されたシートの上にちょこんと座ったわ。

 

あたしのひざの上に毛布を掛けると、クリフトはそのままゆっくりと立ち上がり

足音を立てないように抜き足差し足で、リオスさんが眠っている近くへ向かう。

 

 

「なにするの?」

 

あたしが声をかけると、クリフトはこっちを見て「しーっ」と人差し指を立ててから

リオスさんの荷物に手を伸ばしたの。

 

そして、中から小袋をひとつ手に取ると、素早い動きで火のそばに戻ってくる。

 

 

小袋を器に入れ、さらに水を入れて火に近づけてから、あたしに器を手渡してきたの。

器からは湯気とともに甘くて爽やかな香りが立ち上ってくる。

 

 

「旅立つ前にリオス様から聞いたんです。姫さまの好きなお茶なんでしょう?」

 

クリフトが微笑みながら言ってくる。

 

 

器に入っていたのは、確かにあたしが好きなハーブのお茶だった。

ひとくち飲むと、まろやかな甘味が口の中に広がって心が和らぐのを感じるわ。

 

あたしはもうひとくちグイッと飲んで「ふ~っ」と大きく息を吐いた。

 

 

「王妃様が姫さまに飲ませて欲しいとリオス様に預けたそうなんです。これを飲めば

 気持ちも落ち着くかと思い、リオス様には失敬ですがここで1つ拝借したんですよ」

 

クリフトは、いびきをかいて寝ているリオスさんに向けて小さく頭を下げた。

 

 

「お母様......」

 

あたたかい器を両手で持ちながらつぶやくと、不意に涙がポロリとこぼれた。

 

 

リオスさんから視線を移したクリフトは、あたしが泣いているのを見てギョッとする。

 

懐をまさぐって涙をふくものを探したけどなにもなかったみたいで、クリフトは

自分の服の袖をつまんで、おそるおそるあたしのほっぺたをふいてくれたの。

 

 

「...... ねえ。さっきのオバケの言葉、クリフトも聞いたんでしょ?」

 

あたしは小さな声で尋ねた。

 

 

「あんな成仏できない未浄化霊のたわごとなんて、気にしなくて良いですよ!」

 

クリフトはキッパリと言ってくる。

 

 

 

「ううん.... あの幽霊が言った言葉、ホントのことなのよ」

 

 

「えっ?!」

 

クリフトは驚いた顔であたしを見る。

 

 

 

あたしは再び器に視線を落とした。

 

 

お母様....

可哀想なお母様...

 

また涙がこぼれて、わずかに残っていたハーブティーの中にポチャンと落ちた。

 

 

「おにいちゃんがハーゴンをやっつけて帰って来たとき、みんながおにいちゃんを

 勇者だと言って褒め称えたのよ。もちろんおにいちゃんはすごいんだけど、あたし

 心の中では悔しかったの。あたしだって旅に出ていれば、ハーゴンをやっつけた

 勇者になれたかもしれないのに! って。それで、城の外へ行って誰にも言えない

 悔しい気持ちを吐き出していたの。そしたらね、意地悪そうなおばあさんが来て

『あんたには無理だ』って言ってきたの。あたし、頭に来て『なんでよ』と聞いたわ。

 そしたらおばあさんが『あんたは後妻の娘だからだ』って言ってきたの...」

 

 

....... あの日のことを思い出すと、今でも悲しい気持ちになってくる。

 

 

サマルトリア王には別の王妃様がいたんだ。王妃様はカイン殿下を産んですぐに

 死んじゃったからね。しかたなくあんたの母親が後妻になったんだよ」

 

おばあさんは嫌らしい顔であたしをにらむように見て「ヒヒッ」と笑ったの。

 

 

「王妃様がご存命なら、あんたの母親が王妃になることはなかったし、あんただって

 生まれてくることもなかったんだ。そんなあんたが勇者になれるわけないんだよ」

 

おばあさんは吐き捨てるように言うと、もう一度あたしをギロリとにらみつけてから

くるっと背を向けて去っていったわ。

 

 

あたしはおばあさんの話にショックのあまりしばらく立ちつくしていたんだけど、

ふと我に返って、走って城に戻るとばあやのところへ向かったの。

 

ばあやにおばあさんから聞いた話を伝えると、ばあやの顔色がサッと変わったわ。

 

 

あぁ、この話は本当なんだ...

 

ばあやの顔でハッキリわかったの。

 

 

 

あたしがポツポツとこの日の出来事を話すのを、クリフトは隣で黙って聞いていた。

 

 

「お母様は本当の王妃様じゃなかったの。そして、あたしも本当の姫じゃないの。

 サマルトリアの正式な王位継承者はおにいちゃんだけで、あたしとお母様は

 本来は のけ者 なのよっ!」

 

そこまで話すと、再び瞳から大粒の涙が一気にポロポロあふれ出した。

 

 

クリフトはあたしにピッタリ寄り添って座ると、あたしの背中を優しくさすった。

 

 

「前王妃様がいらっしゃったとはいえ、王妃様も正式な王妃様に変わりありませんよ。

 姫さまも立派なサマルトリアのお姫さまです! のけ者だなんて思わないでください」

 

クリフトは、穏やかだけど力強い口調であたしに言い聞かせてくる。

 

 

「.... でも、おにいちゃんとお母様は本当の親子じゃないのよ。おにいちゃんとあたしも

 お母様が違うんだもの。本当の兄妹だとは言えないわよ...。おにいちゃんはあたしに

 優しくしてくれるけど、のけ者のあたしをあわれんでるだけかもしれないわ」

 

話すうちに、涙が止まらなくなった。

 

 

「王妃様とカイン殿下が話しているところを何度も見ましたが、お互いに信頼しあって

 自然体でのびのびすごせる間柄のように思いました。血のつながりなんて関係なく

 誰がなんと言おうとお2人は立派な親子だと思います。カイン殿下と姫さまも同じく

 とても仲の良い理想的なご兄妹ですよ」

 

クリフトが背中をさすりながら言ってくる。

 

 

「でも、あたしは...」

 

言い返そうとするあたしの口に軽く手を添えて、クリフトは静かに首を横に振った。

 

 

「どうか今は私の意見を聞いてください。姫さまは自分がのけ者だとおっしゃいますが

 カイン殿下の立場で考えてみたら、また話が違ってきませんか?」

 

クリフトはあたしの背中を優しくなでながら、穏やかな声で聞いてきたの。

 

 

「おにいちゃんの立場って?」

 

あたしは首をかしげた。

 

クリフトの言う「おにいちゃんの立場で考える」という意味がよくわからないわ。

 

 

「カイン殿下は幼い頃にご自分のお母様を亡くされています。今のご家族といえば

 王様と王妃様、お2人の娘である姫さまです。3人だけが本当の家族で、自分は

 家族の中で のけ者 だと、カイン殿下も思われたことがあるかもしれません」

 

 

クリフトの言葉にハッとなった。

 

 

「そして、カイン殿下が『王妃様や姫さまが優しくしてくれるのは、のけ者の自分を

 あわれんでいるだけだ』と思われていたら、姫さまはどう感じますか?」

 

 

「そんなことないわよ! おにいちゃんはあたしにとって大事なおにいちゃんだもの!」

 

あたしは思わず叫んでいた。

 

クリフトはあたしの言葉を聞くと、唇を大きく引き伸ばしてニッコリと微笑んだ。

 

 

「カイン殿下も同じですよ。決してあわれみで優しくしているわけじゃないですよ!

 だって、あれをご覧ください」

 

クリフトは3つの袋を指さす。

 

 

「あの袋に入っている薬草と毒消し草、すべて姫さまのものですからね」

 

クリフトは愉快そうに笑った。

 

 

「カイン殿下が袋を持ってきたとき、姫さまにもお見せしたかったですよ。まず殿下は

 ティメラウス様とリオス様に『おまえたちは使うなよ!』と念を押したんです」

 

 

「え、そうなの?」

 

 

「ええ。カイン様は『おまえたちが怪我をしたり毒を受けても、大したことねえだろ。

 ツバつけときゃ治るさ』と言い、お2人には薬草も毒消し草も使うなと命じました。

 私に関しては姫さまとともに戦うので、ケガをしたり毒を受けることもありますし

 絶対に使うなとは言わないけど、この草はすべて姫さまのために用意したものだから

 おまえも出来るだけ我慢して、姫さまの治療を最優先しろよと命じられました」

 

 

「...... おにいちゃんが?」

 

 

「ここにある大量の草は、すべて姫さまのためだけにカイン殿下が用意したものです。

 カイン様のような優しいおにい様は、私の知る限りそうそういらっしゃいませんよ。

 血のつながりとかお母様が違うとか、そんなことはどうでも良いじゃないですか。

 カイン殿下もきっとそう思っているんでしょう。お母様が違っても、姫さまは

 大切な妹君に間違いありません!」

 

 

クリフトの言葉を聞きながら、あたしは砂の上に置かれた3つの袋に目を向けた。

 

 

草がパンパンに詰まった3つの袋

 

あたしのためにおにいちゃんが用意してくれた大量の薬草と毒消し草....

全部… あたしのために...…

 

あたしの瞳からまた涙がこぼれた。

 

 

クリフトは泣き続けるあたしの背中を黙ったままさすり続けていた。

 

 

 

 

「....... 少し落ち着きましたか?」

 

 

どれぐらい時間が経ったのかしら?

クリフトがあたしの背中をゆっくりさすりながら、静かな声で聞いてくる。

 

 

火のそばに来てあったかくなったのと、さっき飲んだハーブティーが効いたのね。

クリフトに背中をなでられているうちに、なんだかだんだん眠たくなってきたわ。

 

あたしは「ふぁあぁ~」とあくびした。

 

 

 

「朝まであまり時間がありませんが、姫さまは少しだけでもおやすみください」

 

クリフトはシートから腰を浮かし、自分が座っていた場所をサッサッと手ではらうと

あたしを見て微笑んだ。

 

 

もう眠くて目が開かないわ。

 

クリフトに促されるまま、あたしはシートの上に横になり毛布にくるまった。

 

 

 

 

ティアが『自分の出生』のことをどれぐらい知っていることにしようか?

考えた挙句「お母様が後妻で、カインおにいちゃんとは異母兄弟」までにしました。

 

お父様がロトの子孫じゃないとか、実はおにいちゃんだけロトの血を引いているとか

今のティアには重すぎますから (T_T)

 

 

幽霊が言い放った「正式な血統じゃない」

おそらく「ロトの血を引いていない」という意味で発した言葉だと思われますが

 

ティアは「お母様が後妻で本当の意味での王妃様ではないから」と受け取りました (;_;)

 

 

 

「おにいちゃんが正式な王位継承者で、あたしとお母様はのけ者よ」と泣くティア。

サマルトリア王室の中で自分は正式な姫じゃないと疎外感を感じていましたが

 

「生みの母親を亡くしたカインも『自分だけが本当の家族じゃないのけ者だ』

 感じて淋しい思いをしているかも?」とクリフトに言われてハッとなります☆

 

 

つらいのは自分だけじゃないと知り、血のつながりに関係ないおにいちゃんの愛を感じ

ようやく落ち着いたようです (*´ω`*)

 

 

16歳になったばかりの少年が、このような深い話を出来るのか疑問ですが... (;´∀`)

 

クリフトは私の『推し』なので ( *´艸`)♡

 

いつもはむっつり発言をブツブツつぶやいてるけど、ここぞというときは決めるぜ!

今後も、クリフトにはおいしいところをすべて持っていかせようと思いますヾ(*´∀`*)ノ

 

 

クリフトと2人で話したおかげで、安心して眠りにつくことが出来たティア (*´ω`*)

 

明日からまた冒険の始まりですよ♪

 

 

 

ちなみにティアが立てるようになったのを見届けてから寝た、ティメラウス&リオス。

本当に寝ていたのでしょうか ( *´艸`)?

 

この点に関しては、読者のみなさまのご想像におまかせしようと思います (^_-)-☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ