ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑤】 ティアの大冒険 ~戦う理由~

勇者の泉に向かっていたある夜。

あたしは幽霊に「おまえは正式なサマルトリアの王女ではない」と襲いかかられたの。

 

幽霊はなんとかやっつけたんだけど、あたしは以前いじわるそうなおばあさんから

「前の王妃様が死んだから、仕方なくあんたの母親が後妻になった」と言われたことを

思い出して泣いちゃった。

 

あたしの話を聞いたクリフトは「お母様は立派な王妃様で、あたしも正式なお姫さま。

血のつながりなんて関係なく、おにいちゃんとお母様は仲の良い親子に間違いないし

おにいちゃんにとってあたしは大事な妹だ」と力強く断言してくれたわ。

 

オバケに襲われたショックで怖くて眠れなくなったあたしも、クリフトに慰められて

ようやく眠ることが出来たのよ。

 

 

次の日からは、また旅が始まったわ。

 

また同じことの繰り返しよ。

ホント勇者の泉は遠くてうんざりするわね。

 

でも、ガンバって歩き続けたおかげでようやくゴールが見えてきたわ。

砂地を抜けたあとはしばらく茂みを歩いて橋を渡れば、勇者の泉はもうすぐそこよ。

 

 

あたしたちは大きな橋を渡って、すぐの草原でひと休みすることにしたの。

 

 

もうすぐ勇者の泉ということで、リオスさんもティメラウスもリラックスしてるわね。

今までが砂地と草がぼうぼうに生えた茂みという歩きにくい場所だったこともあって

広々とした草原で気分も解放されたのか、2人は草の上にごろりと横になったの。

 

 

あたしは近くにある木の根元に座った。

クリフトはあたしと向かい合わせになって、草の上に腰を下ろした。

 

 

「姫さま、非常に申し上げにくいですが...」

 

クリフトが恐縮しながら話しかけてくる。

 

 

「なに? おどおどしないで、言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」

 

あたしは王女らしく誇り高く威厳のある感じを出して言ってみたわ。

 

 

「勇者の泉の洞窟はジメジメして.... ね、ねずみが育ちやすい環境らしいんです。でも

 洞窟内には充分な食料がないので、飢えたねずみたちが食べ物を求めてこの付近を

 うろついているんだとか.... つ、つまり、ここはねずみが出やすい場所なんです...」

 

 

ねずみがうろついてる?!

思わずゾゾッと寒気がする。

 

 

「ねずみは集団になって襲ってくるようです。姫さまも充分にお気をつけください。

 もちろん私クリフトは、いついかなるときも全力で姫さまをお守りします!」

 

 

1匹だけでも怖いのに、集団で襲ってくるなんて冗談じゃないわ!

 

 

でも.... そう言えば、ナナおねえちゃんも同じことを言っていたわね。

あたしが「ねずみ嫌い」と言ったら、ねずみと戦ったときのことを話してくれたのよ。

 

「風のマント」というものを取りに風の塔に登ったとき、おばけねずみの集団に

囲まれたことがあるんだって。

 

 

いきなり現れたおばけねずみの集団は、王子やおにいちゃんの武器を奪っていったり

お金を取っていったり、そりゃあもう好き勝手やりたい放題だったそうよ。

 

 

「あんなねずみなんかに、あたしたちの大事なお金を奪われるなんて許せないわよ!

 怖いとか気持ち悪いとか、そんなこと言ってられないわ! ティアちゃんだって

 同じ目に遭えばわかるわよ」

 

そのときナナおねえちゃんは話しながら興奮したのか、机をドンとこぶしで叩いたの。

 

 

「お金ぐらい、別にくれてやればいいじゃない」と思ったけど、あたしは黙ってたの。

 

 

だって、王子とおにいちゃんがいつも口をそろえて言ってたもの。

 

「ナナは怒らせると怖い」

「ナナは怒らせると怖い」って。

 

あたしだって、言って良いことと悪いことぐらいちゃんとわかってるわよ。

余計なことは言うもんじゃないわ。

 

 

 

「でもね、ティアちゃん...」

 

あたしが黙っていると、おねえちゃんはニヤニヤしながらあたしに顔を寄せてきた。

 

 

「あのおばけねずみたち、風の塔に次々とやって来るトレジャーハンターを襲って

 たくさん奪っていたみたいよ。あいつら、結構ためこんでいたわ」

 

おねえちゃんは親指と人差し指で輪っかをつくると「ふふっ」と笑った。

 

 

.... おねえちゃんの気持ちもわかるわ。

 

だって、ローレシアはもともと貧乏国なうえに、王子は警備の目をかいくぐって

こっそり城を抜け出してきたんだもの。ほぼ一文無しみたいなもんよね。

 

王子について旅に出たおにいちゃんも、テレパシーで助けを求めてきたおねえちゃんを

助けに行くと言ってお父様に信じてもらえず反対されたし、追っ手に捕まらないように

軽装で出かけて行ったんだもの。

 

おにいちゃんと王子の2人ともが貧しかったのはよ〜くわかるわ。

 

それにおねえちゃんは城を滅ぼされて犬の姿に変えられて、ムーンペタの町でエルフに

かくまわれていたんでしょ?

 

お金はおろか、着る服もなかったって言うんだもの。きっと大変だったわよね。

 

そりゃあ、おねえちゃんがお金に執着しちゃってもしょうがないと思うわ。

 

口が裂けても「がめつい」なんて言っちゃダメよ。わかってるわ、それぐらい。

 

 

「大事なお金をねずみなんかに奪われるのは許せないわ!」

 

うん、そうよね。ナナおねえちゃんにとっては、充分な「戦う理由」よね!

 

 

おねえちゃんとのおしゃべりを思い出していると、ふとなにかの気配を感じた。

近くでカサカサッと音がする。

 

 

視線を向けると、おにいちゃんからもらった袋に... ね、ね、ねずみが!!

 

 

「きゃあああ!」

 

 

 

お腹が空けばなんでもありなの?!

薬草も毒消し草も、青臭くて苦いだけで全然おいしくなんかないのに!

3匹のねずみが袋をかじって、中の草を食べようとしているわ!

 

 

いやあぁぁ!

怖い、気持ち悪い!

 

あたしは今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。

 

 

でも、おにいちゃんがくれた草をこのまま食べられるなんて絶対に嫌っ!

これはおにいちゃんがあたしのために用意してくれた薬草と毒消し草だもの!

 

 

 

「私におまかせください!」

 

袋にねずみがいることを知ったクリフトが、あたしとねずみの間に割って入って

銅の剣を鞘から抜いたけど、あたしはクリフトを押しのけて真正面に立った。

 

 

「あたしがやっつけるわ!」

 

怖さで脚はガクガク震えたけど、あたしは戦闘態勢に入った。

 

 

「大事なお金をねずみなんかに奪われるのは許せないわ! ティアちゃんだって

 同じ目に遭えばわかるはずよ。大事なものを守るためには『怖い』なんて

 言ってられないときがあるの!」

 

ナナおねえちゃんの言葉がよみがえる。

 

 

そうよ! 大事なものを守るためには、怖いなんて言ってられないわよ!

 

 

「おにいちゃんからもらった草なのよ! あんたたちに

 食べられるなんて、あたし絶対に許さないわ!」

 

あたしは大声で叫んだ。

 

 

★ 山ねずみ 3体 HP 12 攻撃力 6 守備力 4

 

 

山ねずみは3匹いるけど、見た感じ親分が1匹と子分が2匹といったところね。

 

まずは親分からねらうのが筋よね!

 

 

親分らしい大きなねずみはあたしとクリフトには目もくれず、袋をガジガジ噛んで

袋に穴を開けようとしている。

 

 

こっちを見ていない

今がチャンスよ!

 

怖くて身体がブルブルと震える。

 

 

あたしは怖いのを我慢しながら、目をギュッとつぶって親分っぽい1匹を蹴飛ばした。

 

ドスッという嫌な感触が足に響いてきて、ゾワゾワと全身に鳥肌が立つ。

 

 

蹴ってどうなったのか確かめたくておそるおそる目を開けると、あたしにお腹を

蹴られた山ねずみはお腹を押さえながらすたこらさっさと逃げていった。

 

 

「ねずみめ! 立ち去れっ!」

 

クリフトは剣を振り、親分の次に大きいねずみを剣のひらで思いっきり殴りつけた。

 

クリフトに剣で顔を殴られた山ねずみは真っ赤に腫れた鼻先を押さえて、親分に続いて

さっさと逃げていった。

 

 

最後に残った1匹は、逃げていった仲間たちの行方とあたしたちを交互にチラチラ見て

「どうもすいませんでした」とでも言うかのように、ペコペコと何度も頭を下げながら

そそくさと去っていった。

 

 

 

「や、やったわ...」

 

あたしはへなへなと腰砕けになった。

 

 

「姫さま、大丈夫ですか?」

 

ペタリとへたりこんだあたしをクリフトが立たせて、木の根元に座らせてくれる。

 

 

 

「ありと戦ったときも思ったけど、おじょうちゃんの蹴りの威力はすげえなぁ~!」

 

声がして振り返ると、リオスさんが寝転がったままあたしを見て愉快そうに笑ってる。

 

 

「姫さま、恐怖を乗り越えて見事に弱点を克服できましたな!」

 

起きあがったティメラウスは腕で大きな丸を作って、あたしに微笑みかけてきた。

 

あたしも笑って2人に親指を立てた。

 

 

「それに引き換えクリフトよ、姫さまを守ると言いながらまだまだ動きが鈍いぞ。

 姫さまを守るのならおまえが真っ先に行動するところなのに、ねずみが怖いはずの

 姫さまに先を越されるとはなんと情けないことだ。もっと精進せねばならぬ!」

 

笑顔から一転して、ティメラウスはクリフトには厳しい口調で言ってきた。

 

 

「はい.... 本当に情けないことです...」

 

クリフトはしょんぼりうなだれた。

 

 

「でもっ! 次こそは命をかけて、しっかりと姫さまを守ってみせます!」

 

クリフトは顔を上げてあたしに目を向けると、力強く宣言してきた。

 

 

「どうかしらねぇ.... クリフトがあたしを守るより、あたしがクリフトを守るというのが

 正解なんじゃない? まぁ、あたしは まっっったく 期待しないで待ってるわ」

 

あたしが笑いながら言うと、クリフトはまた「そんなぁ~」と情けない声をあげた。

 

 

 

 

 

そろそろ勇者の泉に着いてもいい頃だなと思ったんですが、ティアが苦手を克服して

「大嫌いなねずみと戦って勝つ」を書きたいな~と思って追加しました (・∀・)

 

勇者の泉でも山ねずみは出るので、洞窟内で遭遇させようかとも思ったんですが

洞窟内では「キングコブラとの死闘(仮)」がある予定なので(← 予告 (;´∀`)?)

泉に到着する前に戦わせました☆

 

 

「大切なものを守るためには、たとえ怖くても勇敢に戦う!」

 

ティアには強い決意で山ねずみに立ち向かってもらおうと思って、この想いを

誰がティアに教えるかを考えたところ、なぜかナナが浮かんできました ( *´艸`)

 

(ねずみとの戦いってことで、ゲームブックで「風の塔のコミックシーン」を

 読み直した影響ですね (^_-)-☆)

 

 

ナナが思い浮かんだことで「大事なお金を奪われるなんて絶対に許せないわ!」となり

ただ、ナナの「お金にうるさいがめついエピソード」になった感もありますが ( *´艸`)

 

「大事なお金を奪う奴とは、たとえ怖くても勇敢に戦う」というナナの精神が

「大事な草を奪う奴とは、たとえ怖くても勇敢に戦う」とティアに継承されました◎

 

 

私の推し・クリフトを活躍させたいところなんですが、今回はヘタレでしたね... (;'∀')

 

ティアの大嫌いなねずみとの戦いということで、もっと前面に出て来ればいいのに

ティアに押しのけられたうえ、またしても先手はティアに奪われちゃう始末... (;´Д`)

 

私(きっと読者のみなさまも)の想いをティメラウスに代弁してもらいました☆

 

もっと精進しろ、クリフト!

 

 

さて(もう5話なので (;'∀'))次の回あたりは「勇者の泉」に到着しますよ(たぶん)

 

素早さでいつもティアにかなわないですが、勇者の泉の毒蛇退治では私の推しメン

クリフトの活躍が見られるでしょうか?!

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ