ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 130】 待ってるから

王子はミリアの乗る馬車を追いかけ、2人は情熱的な別れを周囲に見せつけた。

 

そこには、ローレシア青の騎士団で王子の護衛を任された2人の兵士も含まれていて

護衛2人が見たままをサイラス団長に報告すれば、おれたちが嘘をついてサイラスを

追い払ったことがバレてしまう。

 

 

焦ったおれは、2人の兵士に「おまえたちの見たものは幻覚だ」と信じ込ませて

難を逃れようとしたが、ナナに「幻覚を見たと報告されたらどうする?」と聞かれた。

 

ナナの懸念に対しておれは妙案を思いつかなかったが、このさらなる窮地にナナは

「幻覚を人に話すと、何が現実かわからなくなる」と言って青の騎士団の2人を

おびえさせたことで、2人は「幻覚については誰にも話さない」と約束してくれた。

 

 

「王子がミリアを追いかけていた」とサイラスに報告される恐れは消え、おれたちも

安堵していたが、ナナに「幻覚は誰にも話さず、すぐに忘れれば大丈夫」と言われた

青の騎士団の兵士たち2人も、すっかり安堵しているようだった。

 

『出会いの酒場』に桶を返しに行って戻って来た2人の護衛は、すっきりとした表情で

王子の前に整列した。

 

 

「待たせて悪かったね。帰ろうか」

 

王子が声をかけると、護衛たち2人は「はっ!」と声を出してその場で一礼した。

 

 

「おーい、王子が帰るってよ」

 

おれは門の入口に向けて声を出した。

 

 

ティアとリーナは、門の前に来てしばらくはナナにくっついていたが、おれたちが

幻覚だの何だのと話し始めるとつまらなくなったのか、いつしかおれたちから離れて

おれが置いていた荷物を見に行き、中身を出してキャッキャとはしゃいでいた。

 

おれの声を聞いた2人は、ニコニコしながらこちらに駆け寄ってくる。

 

 

王子はその場にしゃがんで、ティアとリーナが走って来るのを受け止めた。

 

「2人とも、元気でね!」

 

 

「王子も元気でね!」

「また会おうね、おにいちゃん」

 

王子は、走って自分に抱きついてきたティアとリーナの頭を優しくなでてやると、

立ち上がっておれたちを見た。

 

 

「カインとナナも元気でね!」

 

「おう、また会おうぜ!」

 

「気をつけて帰ってよね。あと、ローラの門の視察もガンバってね!」

 

王子はうなずいて笑顔でおれたちに手を振ると、ひらりと軽やかに馬にまたがった。

 

 

同じように馬にまたがった2人の護衛は、おれたちを見てぺこりと頭を下げてきた。

おれは手をあげて2人に応じた。

 

 

王子の合図で、3頭の馬が歩きだす。

手綱を操りながら王子はときおり振り返り、おれたちに手を振って進んでいった。

 

3頭の馬は少しずつ走る速度を上げて、おれたちの視界から消えていった。

 

 

「けっ。さんざん引っ掻き回しておいて、やけにカッコよく帰っていったな、あいつ」

 

おれがつぶやくとナナが吹き出した。

 

 

「ふふっ、王子らしくていいじゃない」

 

 

「でもよ。王子の奴、ミリアとは手を振り合ってあんなに情熱的に別れたというのに、

 おれたちとの別れはあっさりしすぎじゃねえか? おれたちのことなめてんのか?」

 

王子のために手を尽くしてやったというのに、しれ〜っと帰っていったあいつを見て

おれはボヤキが止まらなかった。

 

 

「ふふ。いいじゃないの。あたしたちには気を遣わない。それも王子らしいわよ」

 

ナナは楽しそうに笑う。

 

 

やべえ...

 

きっと、ナナは今朝も『泡美容』とかいう美容液を顔中に塗りたくったに違いない。

 

ナナの笑顔はキラキラと光輝いていて、思わず吸い寄せられそうになった。

 

 

「おい、ティア! おれたちも帰るぞ。出した荷物はちゃんと片づけておけよ」

 

おれは不自然にならないようにナナに背を向けて、ティアに声をかけた。

 

 

「はーい」

「ティアちゃん、あたしも手伝うわ」

 

ティアとリーナはキャッキャしながら、再び荷物のもとに走って行った。

 

 

「ねえ、カイン」

 

ティアとリーナの様子を何気なく見ていると、ナナが背後から声をかけてくる。

 

 

これはマズいな...

 

今までは王子やミリアたちがいたから、おれは他の奴らに目を向けるようにして

今朝からは意識的にナナのことをあまり見ないようにしていた。

 

でも、今は2人きりだ。

 

 

「ああ、なんだよ?」

 

おれは首だけを動かし、ナナの顔を直視しないようにして応じた。

 

 

「あんた、どうせ暇なんでしょ? またすぐに会いに来なさいよね」

 

 

「えっ?!」

 

ナナの言葉に驚いて、おれは思わず振り返ってナナの顔を見てしまった。

 

バチっと目が合う。

 

 

ナナの透き通るような肌が一瞬で桜色に染まるのを見て、おれは慌てて目をそらした。

 

 

「あ、あのっ... お、おばさんによ。おばさんに会いに来なさいって言ったのよ」

 

ナナはおれから顔を背けながら、早口でまくしたてるように言った。

 

 

  おばさんこと、カインのムーンペタの母ちゃん」

 

 

「おばさん、あんたが帰っちゃうって寂しそうにしてたでしょ? トンヌラさんたちに

 会わせたいとも言っていたし。早く会いに来てあげた方がいいと思うのよ」

 

ナナはおれから目を背けたまま、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 

 

「おお、そうだな。暇だと言われるのは癪だけど、この先は特に予定もねえしな。

 またすぐに会いに来るよ」

 

ナナのキラキラした顔を見てしまった動揺を隠しつつ、おれは平静を装って答えた。

 

 

「ええ、約束よ。...... 待ってるから

 

ナナは小さな声で何か言った。

 

 

「ん? 何か言ったか?」

 

おれが尋ねると、ナナは顔を真っ赤にして「何も言ってないわよ」と言い返してきた。

 

 

小声で何を言ったのかは聞きとれなかったが、慌てて否定してくるこの照れたような

ツンツンした表情も可愛い...

 

くそっ! さっきから2人きりでナナの顔を見ていると、どうにも落ち着かねえ!

 

 

どうしたものかと思っていると、助け舟のようにティアがやって来た。

 

 

「おねえちゃーーん」

 

ティアは走ってくるとナナに抱きついた。

 

 

「どうしたの、ティアちゃん?」

 

ナナは笑顔でティアの頭をなでた。

 

 

戻って来たのはティアだけか? リーナはどうした? と思い荷物の方に目を向けると、

どうやらリーナは花を摘んでいるようだ。

 

 

「あのね、おにいちゃんがおねえちゃんにプレゼントしたお花、サマルトリアのお庭に

 たくさん植えてあるの。おねえちゃん、サマルトリアに見に来てよ!」

 

はしゃいだ声でティアが言う。

 

 

「まぁ! そうなのね。あのお花、大好きなの。ええ、あたしもぜひ見に行きたいわ」

 

ナナは嬉しそうにうなずきながら、チラッとおれの方を見てきた。

 

 

サマルトリアでは、まだ花は咲いてねえかもしれねえけどな。もうしばらくすると

 咲き始めるだろうから、見たいならしばらくしてから見に来いよ」

 

サマルトリアでいつ咲くのかは知らねえが、王妃からの受け売りで適当に答えた。

 

 

「わかったわ。もう少し待ってから、あたしサマルトリアに見に行くわね、いい?」

 

ナナが小首をかしげて聞いてくる。

 

小首をかしげて、少し上目遣いでおれを見てくるナナがとても可愛く見えた。

 

 

「お、おれはいつでも構わねえよ、どうせ暇だしな。来たいときに来ればいいさ」

 

おれは高鳴る胸を必死に抑えつつ答えた。

 

まだナナに言いたいことがあったが、気恥ずかしくてとても言えそうにねえ。

 

 

ふと目をやると、花を摘んだリーナがこっちに走ってくるのが目の端に映る。

 

 

ナナに向かってはとても言えそうにねえが、ナナを見ないようにすれば、もしかしたら

言えるかもしれねえ。おれはリーナに視線を向けながらつぶやいた。

 

「...... 待ってるから」

 

 

ここに地獄耳のオルムや船員たちがいたら、このつぶやきも聞かれたかもしれねえが、

ナナには聞こえなかったらしい。

 

 

「え? 何か言った?」

 

ナナは無邪気に聞き返してくる。

 

 

デカい声で言えるわけねえだろ!

おれは「何も言ってねえよ」と否定した。

 

 

ナナには聞かれなかったが「待ってる」と言ったことが、急に照れ臭くなってきた。

 

 

「ティア、もう帰るぞ」

 

おれはティアに言いながら、門の入口に置いた荷物を取りに向かった。

 

ここに来たときのように袋を肩にかけ、バスケットを手に持って3人のもとに戻る。

 

 

「ティアちゃん、これおみやげ」

 

リーナがさっき門の入口で摘んだ花をティアに手渡している。

 

 

「けっ、まったく。イイご身分のお姫様だな。おれにはこんなに荷物を持たせておいて

 てめえが持つのは花だけかよ」

 

いつもの調子を取り戻そうと、おれはティアに嫌味を言ってやった。

 

 

「まぁ、おにいちゃんって本当にダメね。女の子の荷物は、文句も言わずに黙って

 持ってあげるのが紳士なのよ」

 

ティアが負けじと言い返してくる。

 

 

「ったく、口の減らねえ奴だな」

 

おれは空いた手でティアを軽く小突いた。

 

 

よし、ティアとしゃべっているうちに、いつもの調子が戻ってきたぜ!

 

おれはこの勢いでナナにも話しかけた。

 

 

「おまえが言うとおり、母ちゃんは寂しがってたし、トンヌラとマリアとかいう奴に

 会う約束もあるし、またすぐに戻って来るさ。特に別れの挨拶は必要ねえだろ」

 

おれが言うと、ナナもうなずいた。

 

 

「そうね、あんたにはどうせすぐに会うんだもん。特に何も言うことはないわね」

 

 

「おい、さすがにそれはねえだろ。こっちが別れの言葉はいらないと言ったとしても

 そっちは気を遣って、せめて『気をつけて帰ってね』ぐらい言えよな」

 

ナナに「何も言うことがない」と言われたことに、おれは笑いながら文句をつけた。

 

 

「あら、王子みたいに馬で帰るのなら気をつけてって言うけど、あんたはどうせ

 ルーラで帰るんでしょ? ルーラで帰るのに、気をつけるも何もないじゃない」

 

ナナもおれを見て笑った。

 

 

「ちっ、可愛くねえ女だな」

 

おれは小さく舌打ちした。

 

 

「まあ、いいや。リーナ、いい子にしてろよ。アルファズルの修行もがんばれよ。

 じゃあな、おれたち帰るぜ」

 

おれはしゃがんで空いている手でリーナの頭をなでてやると、立ち上がった。

 

 

「ええ、また会いましょうね」

「おにいちゃん、ティアちゃん。またね」

 

ナナとリーナがおれたちに手を振ってくる。

 

 

「おねえちゃん、リーナちゃん、またね。サマルトリアにも遊びに来てね」

 

ティアは2人に手を振ると、おれに近づいてきておれの腕をつかんできた。

 

 

おれは呪文の詠唱に向けて呼吸を整えた。

身体に魔力がみなぎってくる。

 

よし、準備は整ったぜ。

 

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

 

 

少し前、王子とミリアが別れ際に抱き締め合ってイチャイチャするのを書きながら

「カインとナナもイチャイチャさせたい~!」という熱が沸騰していた私 (;´∀`)

 

これを「イチャイチャ」と呼べるかどうかは微妙だけど、次に会うときを

「待ってるから」とカインとナナがお互いに言い合うことにしました~ (*´ω`*)♡

 

声が小さすぎて相手には聞こえないというのが、もどかしいですよね~ ( *´艸`)

 

今の言葉でいうと「じれキュン」?

(最近の言葉に疎い昭和世代 (;'∀'))

 

じれったいけどキュンキュンする感じが伝わったなら、とても嬉しいです ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

あと、ミリアとは熱いハグを交わして、お互いの姿が見えなくなるまで手を振り合って

別れを惜しんでいた王子が、カインとナナには「じゃあね」と軽くバイバイするのが

個人的にはお気に入り (*´ω`*)

 

カインは「あっさりしすぎ」ってボヤいていたけど、本当に気心の知れた仲良しって

軽く「バイバイ」しますよね?

 

 

たとえしばらく会えなくても、ぼくらはずっと仲良しだし、また会えるときが来るし☆

 

そんな強い信頼関係があるのを王子が出してくれて、個人的には大満足です (≧∇≦)♪

 

 

さて、長かった(ホントに長かった...)ムーンペタからサマルトリアへ帰りますよ~☆

サマルトリアでは何があるのでしょう?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ