ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 117】王子のプレゼント

バブルスライムハンター・オーウェンがナナに贈ったプレゼントは、泡粘膏を

改良してつくった美容液『泡美容(バブルボーテ)』だった。

 

小さな肌細胞に出来たケガを治し、解毒もすると謳った商品は、ムーンペタの住民にも

大好評で、大聖堂内は『泡美容』を買い求める奴らで大騒ぎになった。

 

 

「次は、ぼくで良いかな?」

 

ほとんどの奴らが『泡美容』を買い終えて、大聖堂の雰囲気も落ち着いてきたところで

王子がおれに尋ねてきた。

 

 

プレゼントは渡す順番も重要だ。

 

オルムとレオンが贈ったムーンブルク城のミニチュア模型』は、みんなを感動させ

オーウェンが贈った『泡美容』は、みんなを喜ばせ大いに盛りあげた。

 

大聖堂の空気が大きく盛りあがっている今、おれがナナにプレゼントを渡す前に

みんなをシラケさせる奴が必要になる。

 

 

ここで、王子が自ら次の贈呈者に立候補してくれたのはありがてえな。

 

『改良版・ロトの印のステッカー』を出して、今のあたたまった大聖堂内の空気を

一気に冷やしてもらおうじゃねえか!

 

 

  王子のプレゼントは『改良版・ロトの印のステッカー』なのか?!

 

 

「ああ、かまわねえぜ!」

 

おれは親指を立てて王子に応えた。

 

 

全員が『泡美容』を買い終え、場内が落ち着いたところで王子が立ち上がった。

 

 

「次は、ぼくからのプレゼントだよ」

 

王子はナナの真正面まで歩いて行くと、振り返ってミリアを小さく手招きした。

 

 

ミリアは王子の隣に駆け寄っていくと、バッグの中から大きな袋を取り出した。

袋はキラキラと光輝く素材で、中央には赤いリボンが結ばれている。

 

 

「ぼくは女の子へのプレゼントはよくわからないからさ、ミリアに協力してもらって

 ナナが好きそうなものを選んでもらったんだ。気に入ってもらえると良いけど」

 

 

「王子さまに話を聞いて、一緒にお店をまわったの。喜んでもらえるかしら...?」

 

王子とミリアは顔を見合わせて微笑むと、2人揃って大きな袋をナナに手渡した。

 

 

しまった! あいつ1人じゃなかった! 今、王子のそばにはミリアがいるんだった!

2人で... というか、ミリアが選んだプレゼントだろ?! くそっ、なんてこった!

ミリアなら同じ女同士。王子が1人で選ぶより、確実に良いものを選んでいるだろう。

 

 

 

「うふふ、なにかしら?」

 

オーウェンの美容液の影響で顔がキラキラと輝いているナナは、さらに瞳も輝かせて

王子とミリアから袋を受け取った。

 

 

「あのね、お洋服なの。この間、ナナが家に来てくれたとき、2人でいしょう... ううん

 お洋服についていっぱいお話ししたでしょ? あのときの話を参考にして、ナナは

 きっとこんなお洋服が好きだろうな~って思って、選んでみたのよ」

 

 

「開けてもいい?」

 

 

「もちろん」「もちろん」

 

王子とミリアは同時に言ったあと、2人で顔を見合わせて幸せそうに微笑みあった。

 

 

ナナはわくわくした様子でリボンをほどき、袋の中をのぞき込んで歓声をあげた。

 

「まぁ! すっごく素敵!」

 

 

「えー、なになに?」

「おねえちゃん、見せて!」

 

 

ナナは嬉々としながらドレスを取り出して、よく見えるように高く掲げて見せた。

 

ナナが見せたドレスは、紫とピンクが混じったような不思議な色の光沢のあるドレスで

フリルが多くあしらわれていた。

 

 

 

※ イメージ画像です(楽天市場さんから画像をお借りしました ヾ(*´∀`*)ノ)

 

 

「うわぁ、可愛い~!」

「おねえちゃんに似合いそう」

 

ティアとリーナの声に、ナナもドレスを身体にあてながら嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「ナナ、気に入ってもらえたかしら?」

 

ミリアがニコニコしながら尋ねた。

 

 

「ええ、もちろんよ。ミリア! とても可愛いわ。本当にありがとう!」

 

ナナも満面の笑みでミリアに答えた。

 

 

「正装には及ばないかもしれないけど、ちょっとしたパーティーに出席するときに

 着てもらうには充分じゃないかと思ったんだ。喜んでもらえて良かったよ」

 

ナナの笑顔に、王子も嬉しそうに笑った。

 

 

「本当に素敵なドレスだわ。こんなドレス、着てみたかったの。ありがとう、王子!」

 

 

 

「ねえ。せっかくだから、おねえちゃん着替えてきて。着たところを見たいわ!」

 

「うんうん。あたしも見てみたいわ。今は、おねえちゃんの誕生パーティーだもん。

 主役のおねえちゃんこそ、ドレスを着ているべきだわ。ねえ、着て見せてよ!」

 

ティアとリーナの提案に、ムーンペタの住民たちもどんどん賛同の声をあげた。

 

 

「いいわね! あたしも見たい!」

「せっかく素敵なドレスもらったんだ。やっぱりみんなにお披露目しねえとな!」

 

 

 

「そりゃ、いいな。いつもの元気なお姫様もいいけど、これぞお姫様だっていう姿を

 おれたちも見てみたいぜ!」

 

 

「今日はアルファズルと出かけて、普段着のままここに来たもんな。パーティー

 主役としては物足りねえ。やっぱり、ここは着替えて来るべきだぜ、姫様!」

 

オルムとレオンも囃し立てる。

 

 

 

「じゃあ、ちょっと失礼して。あたし、着替えてきてもいいかしら?」

 

ナナはドレスを抱きしめながらウキウキした様子で立ち上がると、飛び跳ねるように

軽やかな足取りで大聖堂を出ていった。

 

 

「ミリアおねえちゃん、センスがいいわ。ナナおねえちゃんに絶対に似合うドレスを

 見つけてきたんだもん。王子だけだったら、こうはいかなかったわよ」

 

ティアが王子をからかうように言うと、ムーンペタの住民たちからも笑いが起きた。

 

 

「今となっては『仲間の証』として大ヒット商品になったけど、昨年の王子からの

 プレゼントは『ロトの印のステッカー』だったもんなぁ!」

 

オルムは、王子をひじで突きながら「わははー」と豪快に笑った。

 

王子は照れたように頭をかいている。

 

 

「あのときは、カインも言ってたよな! 女の子にステッカーなんて普通贈るかってよ!

 あれ? おい、どうした、カイン? なんだか顔色が悪いような気がするけど?」

 

 

「... あ? なんでもねえよ。朝から動きっぱなしで、ちょっと疲れただけだ...」

 

おれは、血の気が引いて額に冷や汗が浮いているのを誤魔化しながら答えた。

 

 

「大丈夫かい? カイン」

 

王子が心配そうに顔をのぞき込んでくる。

 

 

てめえのせいだろ! と激高したくなるのを、おれはなんとかこらえた。

 

 

ま... まさか。王子まで、こんなすげえプレゼントを出してくるなんてな。

ほとんどはミリアの功績だが、ミリアに協力を依頼したのは王子の功績だ。

 

くそっ! プレゼントをミリアに選んで欲しくて、あのとき王子はローレシアに帰らず

おれたちとサマルトリアに来て、翌日すぐにルプガナに向かったのか!

 

ただミリアに会いたいだけだと決めつけて、深く考えなかったのはおれの失策だ。

ちくしょう! どうする?

 

くそっ! おれからのプレゼントは「まだ咲いていない花」なんだぞ!

どうせ他がろくでもないものばかりだから、花が咲いてなくても勝てると思ったのは、

大きな間違いだった。

 

ここで王子が場をシラケさせて、満を持しておれが登場するつもりだったのに!

 

残っているのは、ティアたちとおれだ。

最後に「まだ咲いていない花」を出したら、今までの雰囲気を一気にぶち壊すだろう。

 

次だ。おれの番は次しかねえ。

場は確実にシラケるが、最後になるぐらいなら早いうちにシラケさせた方がマシだ。

 

 

 

「プレゼント渡し、次はおれがいくぜ」とティアとリーナに言おうとしたところで、

入口からわぁっと大歓声があがった。

 

ナナが戻って来たのだ。

 

 

羨望の目を浴び、ドレスの裾を揺らしながら優雅に歩いてくるナナを見ていると

自分がいったいどこにいて、何を見ているのかよくわからなくなった。

 

見慣れた大聖堂の中で、見慣れたナナを見ているはずなのに、ナナだけが風景から

浮き上がっているように見える。

 

 

これは本当にナナか?

おれはまたいつの間にか幻覚の中に入っていて、女神を見ているんじゃねえか?

 

 

夢の世界にいるような気分だった。

自分の頬をつねって夢かどうか確かめようと思ったが、ゆっくりこちらに歩いてくる

女神の美しさに圧倒されて、おれは動くことさえ忘れて、ただ見入っていた。

 

 

 

「... いちゃん、おにいちゃんってば!」

 

ティアに激しく揺すぶられて、おれはようやく現実に戻って来た。

 

 

 

今のは何だったんだ?

おれはどうしちまったんだ?

 

 

「大丈夫なの? おにいちゃん?」

 

ティアが心配そうにおれの顔を見てきた。

 

 

「ああ、別に平気だよ。なに言ってんだよ、おれはずっと普通にしてたぜ!」

 

自分に起きたことがよくわからず、とりあえずティアの手前、おれは強がってみせた。

 

 

「ほんと? じゃあ、さっきのあたしの話も、ちゃんと聞いてた?」

 

 

さっきの話?

いったいなんのことだ?

 

ティアに話しかけられた記憶がねえ。おれの目には、女神しか映ってなかったからな。

 

おいっ! ちょっと待て!

おれが見たのは本当に女神なのか? それとも、ドレスを着たナナが女神に見えたのか?

ナナが女神に見えたんだとしたら、今日のおれは本当にどうかしているぜ。

 

 

おれは、いつからおかしくなった?

そうだ。オーウェンの美容液を塗ったナナの顔を見たときからだ。

 

おれも美容液を顔に塗った。

あの中にヤバいものでも入ってたんじゃねえか? くそっ! オーウェンの野郎め!

 

 

「ねえ、おにいちゃんってば! なんで返事しないのよ? 本当に聞いてるの?」

 

ティアがまたおれを揺すぶってくる。

 

 

「ああ、聞いてるぜ」

 

おれは適当に答えた。

 

 

「じゃあ、本当にいいのね?」

 

ティアが聞いてくる。

 

 

なにがいいのかはわからねえが、ティアのことだ。どうせくだらねえ話だろう。

 

 

「ああ、いいぜ」

 

おれはぼんやりした頭で答えた。

 

 

 

 

ブログに画像を添付すると「アイキャッチ画像」としてトップに出て来ちゃうんです。

最初はドレスの画像だけ貼っていましたが、プレゼントのネタバレになっちゃうので

急きょ、ロトの印のステッカーを持ってきて、アイキャッチ画像にしましたよ ( *´艸`)

 

 

ゲームブック上巻で、3人でドラゴンの角に登ったとき、「雨露の糸」を拾ったナナに

カインが『水の羽衣』の話をしたところ、ナナは「雨露の糸」を抱きしめながら

「そういうのって、あたし欲しいな」とカインを見つめ、カインはナナを見て、一瞬

ほうけた表情をするんですよね (*´ω`*)♡

 

その場面を見たときから、いつかカインがナナに見惚れる話を書きたいと思っていて

今回のプレゼントを考えたときに、これだ! って思いました ( *´艸`)

 

 

ゲームブック下巻、ザハンでナナのポシェットを奪って、走り去って行くワンコを

「全財産が入っているのよ!」と追いかけるナナを見ながら、「あんなナナが好き」

言う王子に「おれは王宮でのナナの方が良い」カインは反論するんですよね ( *´艸`)

 

だから今回は、カイン好みに合わせて「お姫様らしいドレス姿のナナ」を見せて

カインをメロメロにしてやりました ( *´艸`)

 

 

ドレスについては、ナナの髪色に合わせたパープル系か?、ムーンブルクの赤系か?

この2択で画像を見ていたんですが、パープル系も赤系も、妖艶というか ( *´艸`)

色気たっぷりのお姉さんドレスばかり (;´∀`)

 

 

妖艶なドレスを着せてカインを悩殺するのもアリかと思ったんですが、ナナはまだ

18歳だから、悩殺するのはもっと大人になってからにしようと、画像の中でも

可愛い系のドレスを選びました (≧∇≦)

 

 

ナナが女神に見えて、夢見心地のカインはティアに話しかけられてもうわの空 ( *´艸`)

 

ティアは何かを「いいの?」と確認して、カインは何を問われているのかまったく

聞きもしないで「いいぜ」と答えました。

 

さて、ティアは何を聞いたのでしょう?

カインは確認もせずに了承しちゃって、本当に良かったのでしょうか!?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ