ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 22】 ナナのぬくもり

一晩ゆっくり休んだことで、翌朝には全員が元気を取り戻していた。

このまま問題なく進むことが出来れば、今日中にローラの門までたどり着けそうだ。

 

おれはティアを呼び寄せて、今日はサイラスの馬に乗るよう伝えた。

 

ティアは「まかせといて!」と言って、サイラスのもとへ駆け寄って行くと

「サイラス、今日はあたしをあなたの馬に乗せなさい。サマルトリアのお姫様を

 乗せて走るんだから、相当な覚悟が必要なことぐらいはわかっているわよね。

 今日も乱暴な乗り方したら、お父様に言いつけてやるから!と言い放った。

 

さすがは、わが妹だ。

何も説明しなくても、ひと言だけでティアはおれの意図を完璧に理解していた。

 

サイラスはティアの迫力にたじたじになりながら、その場にひざまずいた。

不肖サイラス、姫様を安全にお連れすることを今ここに誓います!

 

ティアは振り向いておれにウィンクしてきた。おれも親指を立ててティアに応えた。 

 

さらにダメ押しとばかりに、馬に乗ったアルファズルが2人のそばに近づき

「サイラス殿が昨日みたいに暴走せぬよう、わしが並走してやろう」と言った。

 

サイラスはひざまずいたまま、眩しそうに馬上にいるアルファズルを見上げると

胸に手を当て「ははーっ」と一礼した。

 

こうしてアルファズルの馬が先導し、ティアを乗せたサイラスの馬が並走して

昨日と同じくリーナを乗せた王子の馬と、ナナの馬が後に続いた。

 

今日は快適に乗れているようだ。リーナはご機嫌で王子とナナに話しかけている。

「おにいちゃん、風が気持ちいいね~♪」

「おねえちゃん、あれは何ていう山?」

 

王子とナナがリーナの言葉に応えている。

王子とナナ、2人の息はピッタリだ。

 

おれは最後尾を追走しながら、昨日からずっと考えていたことを思い返してみた。

 

ミリアの泣き顔、王子の困り顔、船団長やオルムの怒った顔が浮かんでは消えた。

どいつもこいつも、みんなおれの大切な仲間たちだ。できれば傷つけたくはない。

 

ただ、それ以上にナナが隠れて1人でこっそり泣く姿はもう見たくなかった。

 

... やっぱり、おれが悪者になるしかねえ!

 

夕方、無事にローラの門入口へと到着したころ、おれはある覚悟を決めていた。

 


ローラの門のサマルトリア側は、門兵が常駐する関所になっている。

 

昔はただの洞窟で、サマルトリアムーンブルクをつなぐ一本の道だったが

ムーンペタの町から少し離れていて、さらに入口付近は海に囲まれているため

海賊や盗賊、異端者がローラの門を通ってサマルトリアに侵入することがあった。

そのため、よからぬ者たちの侵入に備え、サマルトリア兵が警備にあたっている。

 

ハーゴン軍がムーンブルクに侵攻し、ムーンブルク城が落城した際は

ローラの門はサマルトリア兵によって完全に封鎖され、厳戒態勢がとられた。

平和な今は、ほんの数人の兵士がぼんやりと門の入口に立っているだけだった。

 

おれたちは門番をしている兵士に乗ってきた馬をあずけ、事情を話した。

そして今夜は、兵士の詰所としてつくられたほこらを借り、一晩休むことにした。

 

 

明日からはローラの門の視察に入る。

下手したら、明日のうちに視察を終えて王子は帰ってしまうかもしれない。

 

夜になっておれは「ちょっと話がある」と言ってナナを呼び出した。

 

2人だけで話したい。おれたちは、ほこらの外に出て話をすることにした。

月明かりとローラの門入口に焚かれているたいまつとで周囲は明るかった。

 

おれはナナと向き合った。たいまつの炎を受けて、ナナの顔は橙色に輝いている。

 

「ナナ。おれには遠慮したりごまかしたりせず、素直に思っていることを言えよ。

 おまえが嫌だと思うなら、おれは王子とミリアの結婚をぶっ壊してやってもいい。

 その責任は全部おれがとる。おまえが責められるようなことには絶対しねえ。

 だから、自分の気持ちを抑えたりせずに、嫌なら嫌だって素直に言ってくれ」

 

おれの覚悟を決めた言葉に、ナナは目をぱちくりさせ、きょとんとした顔をした。

 

「...... カイン。なにを言っているの?

 あたしは別にミリアのこと嫌いじゃないって前にも言ったでしょ」

 

「ちがうっ! ミリアじゃなくて、おまえは王子のこと......」

 

「えっ? あたしが王子のことを嫌ってるって言うの? そんなわけないじゃない」

 

そうじゃねえ! と言おうとしたき、ナナがグッとおれのふところに入ってきた。

ナナは心配そうにおれの顔をのぞきこむと、おれの額にスッと手を伸ばしてきた。

やわらかくてあたたかい小さな手のひらが、そっとおれの額に触れた。

 

突然のことに、顔が一気に紅潮する。

 

「う~ん。熱はないみたいね。でも、顔が赤いわ。これから熱があがるのかしら」

 

「熱なんかねえよ! おれはなんともない。おれのことはどうだっていいんだ!

 おれはただ、... ただ... おまえに... 後悔して欲しくなくて......」

 

「ねえ、カイン。あなた、お父様にあたしと王子を助けてやれって言われたでしょ。

 そのお父様の言葉が重圧になって、1人で考えすぎてるんじゃない?」

 

ナナはおれの額にあてた手をそっと離すと、両手でおれの手をつつみこんだ。

 

「サイラスたちが来てから、あなたの元気がないように見えて心配していたのよ。

 あたしや王子の力にならなきゃって、気を遣いすぎて疲れてるんじゃないかしら。

 ねえ、カイン。お願いだから、なにもかも自分1人で背負って苦しまないでよね。

 あなたが苦しむ姿はもう見たくないわ。あなたは今のままでいてくれたらいいの。

 あなたにはこれからも変わらずに、ずっと元気で笑っていて欲しいのよ...」

 

うっすらと涙を浮かべて潤んだナナの瞳が、まっすぐにおれを見つめている。

おれの手を優しくつつみこんでいるナナの手に、ギュッと力が入る。

あたたかい手のひらを通じて、ナナのまごころが伝わってくるようだ。

 

「ナナはあんたに気があるよ! 間違いない」... 王妃の言葉が脳内でこだまする。

 

 

脳内で馬鹿みてえにこだまする王妃の言葉を振り払うように、おれは軽く腕を振って

ナナの手を振りほどいた。突然のことに驚いたナナがビクッと身体を震わせる。

 

「おれのことは気にすんなって言ってんだろ。おれのことは心配しなくていいから

 おまえは素直になれよな。つまんねえ意地はってたっていいことなんかねえぞ。

 あとになってから後悔しないように、今の自分の素直な気持ちを大切にしろよ!

 おれが言いたかったことはそれだけだ。あとは自分で考えて答えを出せよな」

 

おれはひと息で一気にそれだけ言うと、困惑した表情を浮かべているナナを残し

くるっと踵を返して、まっすぐ足早にほこらの中へ向かった。

 

おれの言動がナナを混乱させてることはわかってたが、どうしようもなかった。

...... ナナを気遣う余裕がないくらい、おれ自身が混乱していた。

 

 

 ナナが笑ってくれるなら~、おれは悪にでもなる~♪ 

(え? 聞いたことあるフレーズだって?? 小さいことは気にしない、気にしな~い ( *´艸`))

 

カインはナナのためなら、友情も・国家間の良好な関係も・自分への信頼も

大切なものすべてを捨てる覚悟で「王子とミリアの結婚をぶっ壊す」宣言!! 

  

カインが一大決心で言ったのに、ナナはきょとん顔...(そりゃそうだよね (;´∀`)) 

逆に「大丈夫? 熱あるんじゃない? 疲れてる?」と心配されちゃう始末... (;´∀`)

 

「ナナの笑顔のためなら、どんなことでもしてやる!」と固く心に決めていたのに

予想外のナナの反応にうろたえて、ナナの手を振りほどき逃げるカイン…(´;ω;`)

(ここは【 今 ひとときの幸せに身をゆだねる 】ところでしょーが ヽ(`Д´)ノ!)

 

ナナが悲しむのは絶対に嫌なカイン

カインが苦しむのは絶対に嫌なナナ

 

想いあっているのに、お互いの気持ちがわからなくてすれ違う2人... (´;ω;`) 

 

 

いや~、盛り上がってきましたね~ (≧▽≦)(←私だけ... (;´∀`)??)

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ