ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 84】最適な管理方法

呪文を書いた巻物はローレシアで保管することに決まったが、ルビス様の力が宿った

紋章をどこで保管すれば良いのか、おれたち3人だけでは決めきれなかった。

 

おれたち3人は救いを求め、大司教の助言を聞こうと大聖堂へと向かった。

 

 

大聖堂では大司教が必死に祈りをあげていた。十字を切り、あたりに聖水をまき、

胸の前で手を組んで、人々の安全のために祈り続けていた。

 

おれたちがその迫力に気押されて立ち尽くしていると、大司教はおれたちに気づき

祈りをやめ、おれたちを迎え入れてくれた。

 

 

大聖堂の中には座って話が出来る小スペースが設けられていた。大司教はおれたちを

そこに案内すると、向かい合って座った。

 

 

王子がこれまでの経緯を話し、呪文を書いた巻物はローレシアで保管したいと言うと

大司教はおれたちを見て穏やかに微笑んだ。

 

「呪文を書いた巻物をわが城で保管することに関しては私も賛成ですな。みなさんで

 分析したとおり、他の地域に比べてわがローレシア魔法への関心は薄いですし、

 立地の面でここが攻められにくい場所にあるというのもそのとおり。私を信頼して

 まかせてもらえるのなら、呪文を書いた巻物はこの大聖堂で厳重に保管しますよ」

 

 

「ええ。大司教様が厳重に保管してくださるのなら、あたしたちも安心ですわ。

 巻物についてはそれで問題ないと思います。ただ、巻物とは違って、紋章はもっと

 重要なものでしょう。その管理をどうすればいいのかについては、あたしたちでは

 判断できなくて…」

 

不安げなナナの言葉に、大司教は目を輝かせると何度も大きくうなずいた。

 

 

「実は、紋章に関しては私も以前からずっと考えていたことがありましてな。ただ、

 ロトの子孫でもない私のような者が意見するのは、おこがましいことではないかと

 躊躇していたんですよ。みなさんが今こうして私を訪ねてきてくれたのは、きっと

 ルビス様の御導きによるもの。思いきって話しましょう。あくまでも私の考えですが

 1箇所に置かず、ロト3国で分配して持つのです」

 

 

「ロト3国で分配!?」

 

おれたち3人は揃って声をあげた。

 

 

「以前、5つの紋章はすべてムーンブルクにありました。5つすべてが揃うことで

 ルビス様の御力も強固に働いていたが、あの忌まわしいハーゴンのせいで、紋章は

 バラバラにされ、それによりルビス様の御力も一気に弱まってしまうことになった。

 ルビス様の御力が一気に弱まることがなければ、防げた悲劇もあるのではないか?

 以前の管理方法は本当に正しかったのだろうか? とずっと考えていたんです」

 

 

「ふむ。紋章が5つすべて揃っていることは、ルビス様の力が最大に発揮されるという

 利点がある反面、そこを壊されると一気に力をすべて失うという危険もはらんでいる

『諸刃の剣』になるってわけか…」

 

おれがポツリとつぶやくと、大司教の鋭い視線がおれをとらえた。

 

 

「カイン殿下の言うとおり。紋章が5つ揃っていることは強い効力を発揮する反面、

 崩されたときは、その効力を一気に失う恐れもある極めて危険な状態でもあった。

 このことに早く気づいていれば、ムーンブルクの惨劇は防げたのかもしれないと

 今となっては悔やまれるところです」

 

大司教はナナに深々と頭を下げた。

 

 

「3国で分配すると1国で保管するより効力は落ちてしまうが、ロト3国は距離的にも

 それほど遠くないし、特にローレシアサマルトリア非常に近い。3国で分けて

 保管したとしても、効力は高い水準を保てるはず。それにもし、遠い未来に再び

 魔の手がせまり紋章が奪われたとしても、1国が落ちた段階では、紋章の半分以上は

 まだこちらの手にありますからね、そこからでも充分に立て直せるでしょう」

 

大司教の主張は理にかなっていた。

 

 

大司教様の言い分はよくわかったよ。ぼくもそれがいいと思う。ただ、ロト3国で

 分配しろってことだけど、紋章は『5つ』あるだろう? 平等には分けられないよ。

 効力を高い水準で保つには、いったいどうやって分けたらいいのかな?」

 

王子が大司教に尋ねた。

 

 

「ナナ様がルビス様の御守りを持っているのであれば、ローレシアサマルトリア

 2つずつ、ムーンブルクで1つとするのが、バランスを考えるとちょうど良い。

 太陽・月・星・水・命はそれぞれ平等に尊いもの。紋章の力に特別な差はないから

 分け方については3人で話し合って、好きなように決めるといいでしょう」

 

 

「そうか。となると、太陽の紋章と水の紋章はカインが持つのがいいんじゃないかな。

 この2つの紋章はカインのおかげで手に入ったものだからね」

 

王子はおれを見てウインクしてきた。

 

 

太陽の紋章は、ベラヌール北のほこらから旅の扉で世界をまわったとき、たどり着いた

炎のほこらでおれがフレイムと一騎打ちして手に入れたものだ。

 

水の紋章は、悪魔神官デヌスがドラゴンを率いてサマルトリアに攻め入ったのを撃退し

敗走するデヌスのマントを斬り裂いたとき、奴のマントから落ちたものだ。

 

 

「ああ。確かに、どちらの紋章もおれ様の働きによるものだな。じゃあ、この2つは

 おれがもらうことにするか」

 

おれの言葉を聞くと、王子とナナはにっこり笑って大きくうなずいた。

 

 

 

「その理論でいくと、星の紋章を持つのはナナになるんじゃねえか?」

 

 

星の紋章は、ラゴステパの村から水門の鍵と一緒に盗んでいったものだ。

 

ペルポイの牢屋からラゴスが脱獄しようとしていることを聞きつけたおれたちは

手引きする奴らに先回りして牢屋の鍵を手に入れ、ラゴスを倒して紋章を手に入れた。

 

そのとき、留置場の壁の奥に隠れていたラゴスにナナのラリホーが効いたのだ。

 

 

ラゴスを倒せたのはレオンの執念が実を結んだものだけど、あたしのラリホー

 効いたのも確かよね。じゃあ、星の紋章はあたしがもらうことにするわ」

 

ナナの言葉に今度はおれと王子がうなずく。

 

 

「となると、月の紋章と命の紋章を王子が持つのね。これもまったく異論はないわ。

 だってこの2つの紋章が手に入ったのは、まさしく王子のおかげなんだもの」

 

 

月の紋章は、デルコンダル王が持っていた。王子はデルコンダル王の求めるままに

猛獣と一騎打ちをして勝ち、その後はガルダーとも戦って手に入れたものだ。

 

命の紋章も、ロンダルキアの洞窟でドラゴンと戦ったとき、王子がドラゴンの首を

斬り落として、ドラゴンが飲み込んでいた紋章が手に入ったのだ。

 

 

「確かにな。この2つの紋章は王子の力によるものだ。おまえが持つべきものだな」

 

「そう? 2人が賛成してくれるなら、月と命の紋章はぼくが持つことにするよ」

 

「もちろん、大賛成よ。特にドラゴンとの戦いはすごかったわよね。一太刀で首を

 斬り落としてしまうんだもの」

 

「あのときオークキングもドラゴンと戦っていたけど、おれたちの強さに恐れをなして

 すごすごと逃げていったもんな」

 

「だって王子の手にかかったら、オークキングなんて一瞬で真っ二つにされちゃうわ」

 

「2人とも褒めすぎだよ。ドラゴンのときはたまたま攻撃が上手くいっただけだよ」

 

おれたちが王子の戦いぶりを褒め称えると、王子は照れ臭そうに笑った。

 

 

 

「そんなことないわよ。あなたの剣術は見事なものだわ。ほら、あのときだって…」

 

それまで楽しげに話していたナナが、いきなり身体をビクンと振るわせて硬直した。

目を見開いて前を見据えている。

 

ナナの視線をたどったおれも、ビックリして思わず身体がビクンと跳ねあがった。

 

怪訝な顔をしておれたちの視線をたどった王子も、驚いた表情で固まってしまった。

 

 

おれたちの前に座っていた大司教が、声も出さずにハラハラと涙を流しているのだ!

 

 

 

王子とカインがムーンブルク城を訪れたとき、カインは紋章が置かれていた祭壇を見て

ハーゴンが真っ先にムーンブルクを攻めたのは紋章を引きちぎるためだったんだ」

断言していたんですよね。

 

カインが気づいたなら、大司教も当然ムーンブルクが攻められた原因に気づいたはず。

「紋章を1箇所に集めるのは危険なのでは?」という考えに至ったというわけです。

 

 

紋章の分配方法については、正当な勝ちゲームで進んでいった場合を想定しました。

 

この中で、水の紋章だけは確かにカインが手に入れたものですが、他は... ね ( *´艸`)

 

太陽の紋章は、カインがフレイムとの一騎打ちに負けたら、カインは死んじゃって

王子とナナが「カインの仇☆」として戦って手に入れることになるし (´;ω;`)

 

星の紋章に関しては、こちらが特に動かなくても、レオンが勝手にラゴスと戦って

手に入れてくれるし ( *´艸`)

 

月の紋章についても、きっと初手でガルダーには勝てないですよね~ 。゚(゚´Д`゚)゚。

会心のいちげきが出ないと厳しい... (-_-;) おそらく通常はロンダルキアの洞窟入口で

ガルダー、サイラス、アルファズルと別れるときにガルダーから手渡されるかと...。

 

命の紋章に関しても、ドラゴンに負けた場合は王子はドラゴンに首を絞めあげられて

絶体絶命のときにカインの起死回生のザラキが効いてドラゴンを倒すことになるし…

 

このように、負けた場合は紋章を手に入れた功労者が変わってしまいますが (;´∀`)、

今回はすんなり勝ったパターンで、それぞれの功労者が紋章を自国で保管するという

流れにしてみました (^_-)-☆

 

 

さて、3人での楽しい会話の最中に突然、声も出さずに泣き出してしまった大司教

いったいなぜ?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ