ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 86】例の話

紋章の分配を決めるにあたって旅の思い出を語り合っていると、王子の成長を感じた

大司教が感極まって泣き出してしまった。

 

しばらくして泣き止んだ大司教に再び大聖堂の中へと通されたおれたちは、大司教

「あの話をしたのか?」と聞かれ、王子が動揺し赤面するのを目の当たりにした。

 

 

大司教の言葉に、王子は照れたように顔を真っ赤にして頭をかいている。

 

こいつのこんな顔を見るのは初めてだ。

いったい、なんの話だ?

 

 

「私から言ってもいいのだが、大切な話だから自分で言った方がいいのではないか?」

 

大司教に促されて、王子は意を決したようにうなずくと、おれとナナを見つめた。

 

 

「実はぼく、正式に結婚が決まったんだ」

 

 

「え、そうなの?!」

「ほんとかよ!」

 

なんの話かと心配したが、これか!

王子の結婚については、以前からずっとそのうちするだろうなとは思っていたが

こうしてあらためて「正式に決まった」と言われるとやっぱり驚くな。

 

 

「うん。城のみんなと、もちろんミリアとも話し合ってね。日取りが決まったんだよ」

 

婚儀をあげる日として王子が言った日付は、おれたちがハーゴンを倒してローレシア

凱旋した日と同じだった。

 

「1年前のこの日は、悪が滅び世界に平和が訪れた記念すべき日であり、前国王からの

 王位継承が宣言された日。さらに、この日は国王の誕生日でもある。こんなに重ねて

 おめでたい日は他にないから、満場一致でこの日に決まったんだ。まだ先の話だから

 正式な発表はもっと後になるが、お2人には事前に伝えた方がいいと思ってね」

 

 

「そうなのね。良かった、あたしも嬉しいわ。王子、おめでとう!」

 

「良かったじゃねえか! ただ、思っていたよりも早くて驚いたけどな」

 

 

「2人とも、どうもありがとう。ぼくもね、ちょっと早いかなとは思ったんだけど、

 父上と母上のことを考えると早い方がいいって大司教様が言うから…」

 

両親のことを考えると早い方がいいって…。

もしかして、王子の親父とおふくろはそんなに悪い状態なのか?

 

ハッとなって大司教を見たおれとナナの視線を受け、大司教は穏やかに微笑んだ。

 

 

「今すぐにどうこうという話ではないので、まずはご安心ください。前国王ご夫妻は

 国王の無事の帰還を受け、生まれ変わったように元気になったんでね。ただ、人間は

 歳月の経過による衰えからは生きている限り逃れられないもの。私が国王の結婚を

 早い方がいいと言うのは、前国王ご夫妻が少しでもお元気なうちに、最愛の息子の

 幸せな晴れ姿を見てもらうのが最高の親孝行になると思っての話だよ」

 

 

サマルトリアでは、前サマルトリア王が世継ぎのないまま亡くなられ、地方領主だった

おれの親父が推挙されて国王になった。そのとき聞いた話が正しければ、王子の親父は

サマルトリア王よりもいくつか年上だったはずだ。となると、大司教が王子の親父の

年齢の問題を言うのもわかる気がするな...

 

おれとナナが神妙な顔でうなずくと、この場の雰囲気を変えたかったのか、大司教

明るい声で切り出した。

 

 

「今の治療を続けていれば、お2人とも少なくともまだ数年はお元気でいられるはず。

 こればっかりは『授かりもの』だから何とも言えないが、上手くいけば数年の間に

 前国王ご夫妻に『新しい世継ぎ』を抱かせてあげることも出来るんじゃないかとね、

 ひそかに期待しているんだよ」

 

「まぁ! それは素敵!」

 

大司教の言葉にナナも目を輝かせた。

 

 

大司教とナナが明るい表情で話しているのに対し、王子はさっきから顔を真っ赤にして

ずっと落ち着かない様子のままだった。

 

大司教たち2人の話が「世継ぎ」になると、王子はさらにそわそわと落ち着きを失くし

ますます赤面して目を白黒させた。

 

 

はは~ん、そういうことか。

 

おれはここにきてようやく、さっきからずっと王子の様子がおかしい理由がわかった。

 

おれの考えが合っているならば、サイラスが「自分の口からはとても言えないから、

ローレシアに戻ったら大司教様から話してもらう」と言っていた『例の話』

おそらく王子は聞いたのだろう。

 

 

今までの王子なら、あっさりと「ミリアと結婚するんだ」と言えるはずだ。

 

世継ぎについても「仲良くしていれば、そのうち生まれるんじゃない?」みたいに

本当にわかっているのか、それともわかっていないのか? みたいなとぼけた発言をして

聞いているおれたちの方がドギマギするというのがいつもの流れだからな。

 

 

そんな王子が「結婚する」と言うだけで、こんなに恥ずかしがるなんておかしい。

ただ、それもすべて『例の話』を聞いたとなれば、納得がいく。

 

王子は『例の話』について、おそらくここで大司教から手ほどきを受けたのだ。

それで、こんなにモジモジしているのだ。

 

 

大司教とナナは、そんな王子の様子にまったく気づいていないようで、さっきから

2人ではしゃいだ声をあげている。

 

「王子とミリアの赤ちゃん、きっとすごく可愛い子が産まれるんでしょうね!」

 

「どちらが生まれても、美男美女になることは間違いないだろうな」

 

「世継ぎと考えたら、男の子の方がいいかもしれないけど、女の子もいいわよね。

 絶対に可愛いお姫様になるもの!」

 

「どちらかにこだわらず、男の子と女の子の両方を生めばいいのではないか?」

 

「そうよね! たくさん子どもが出来たら、ローレシアも賑やかになっていいわよね!」

 

 

大司教とナナが「王子とミリアで子どもをたくさんつくるといい」と言っているのを

王子は真っ赤な顔で、硬直したまま目を見開いて聞いている。

 

 

こいつは… おもしれえや!

 

上機嫌で楽しそうな大司教とナナ、石のように固まる王子、おかしな3人のやりとりを

おれは少し離れたところで、穏やかに(?)微笑みながら見守っていた。

 

 

 

みんな大好き『おたのしみ』の話 ( *´艸`)

 

 

創作物語を書こうと決めたときに、王子の誕生日に「王子&ミリア」を結婚させよう!

そんな思いはありました。

 

なので、どこかのタイミングで「王子、結婚するってよ!」の話を出すつもりでいて

ちょうどローレシアに来ているし「今がいいかな~」と書くことにしました。

 

「王子、結婚するってよ!」の当初は『おたのしみ』を完全に忘れていて... (;´∀`)

 

ただ、王子が「ぼく、この日に結婚するって決まったんだ」とカインとナナに告げる...

それだけの予定だったんですが...

 

あれ?! 待てよ?

今、大司教も近くにいるやん!

 

大司教といえば『おたのしみ』やん ( *´艸`)

(この表現は誤解を招くな...(;´∀`))

 

ということで、こんな形になりました☆

 

 

ちなみに大司教といえば『おたのしみ』」になった経緯はここ↓↓ で読めます ( *´艸`)

 

【創作 23】 王子がリセット - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

 


紋章について「大司教様に相談に行こう!」と言っている場面を書いたときは、

この流れをまったく想定していなかったので、『おたのしみ』を思い出したときは

「狙ったかのように大司教に会いに来てるやん! おれ様って天才ヾ(*´∀`*)ノ

自画自賛の嵐でした ( *´艸`)

 

 

ゲームブックで「ナナもカインも好きだぜ!」と言って、自分の発言のおかしさに

まったく気づいていないことから「王子は恋愛に疎い」「『おたのしみ』も知らない」

その設定で話を進めていますが ( *´艸`)、17歳まで『おたのしみ』を知らずにいたら

初めて知ったときの衝撃はきっと、とてつもないものですよね (;´∀`)

 

明るく「世継ぎ」の話をされたら、どぎまぎしちゃうんだろうな~と思います ( *´艸`)

 

 

ちなみに創作話の中でカインが「王子なら言いそうだ」と考えた「仲良くしていたら、

そのうち生まれる」は私の実体験 ( *´艸`)

 

「神様が仲良しだと思ったら、赤ちゃんが生まれるんだよ~」と子どもの頃に言われた

言葉をそのまま使ってみました☆

 

 

今のご時世では「世継ぎ」の話を大っぴらにするのはよろしくない風潮ですが、ここは

ただの創作物語。しかも、王子で笑いたいだけなので、どうぞご了承ください m(_ _)m

 

 

大司教様との話はあと少しだけ続きます!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ