ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 74】誤算

ベラヌールに行き、ぺルラという婆さんからナナが好きな花の種をもらったおれは

意気揚々とサマルトリアへ戻った。

 

あとは、城にいる花に詳しい誰かに頼んで、この種を植えてもらえば良いだけだと

明るい見通しを立てていたのだが、ここで思わぬ壁にぶち当たることになった。

 

 

城に戻ったおれは、さっそく種を手に庭の管理をしている女中のもとへ行ったのだが

女中はおれの申し出に表情を曇らせた。

 

「私は王妃様の指示に従ってお花の世話をしているだけで、花には詳しくないのです。

 坊ちゃんがその種を植えたいのであれば、王妃様に頼まれた方が良いと思います」

 

声をかけた女中は申し訳なさそうにペコリと一礼して去って行った。

 

 

他にもいる世話人たちにも声をかけてみたが、みんな似たような返答だった。

 

「私ではなく王妃様にお頼みください」

「お花のことは王妃様が1番詳しいです」

「王妃様なら立派に咲かせるでしょう」

 

みんな王妃を言い訳にして、おれの頼みはことごとく断られた。

 

 

花なんてまったく興味のないおれは知らなかったのだが、サマルトリア城に咲く花は

すべて王妃が手を加え咲かせたものらしい。

 

王妃はプロ級の腕前で、園芸のことに関したら王妃の右に出る者はいないのだという。

 

 

王妃がすごいことはわかった。

ただ、尋ねた奴らみんなが口々に王妃の名前を出すことにおれはイラついた。

 

「なんだよ、全員が『王妃様、王妃様』ってよ! おまえたちだって、王妃がいないと

 何も出来ねえわけじゃねえだろ? ずっと世話してきて、多少の知識ぐらいあるだろ?

 こんな種を植えることぐらい、おまえたちだけでなんとかならねえのかよ!」

 

1番年配の女中頭におれは食ってかかった。

 

 

おれの一方的なただの八つ当たりに対し、女中頭は顔色も変えず冷静に答えてきた。

 

「この国の皇太子さまである坊ちゃんの持って帰ってきた大切な種が芽吹かなければ

 我々がどれだけ責任追及されることになるか、坊ちゃんはおわかりですか?」

 

「あぁ? そんな大げさなことかよ?」

 

「皇太子さまのお身体や持ち物を傷つけた際は、誰が傷つけたのか徹底追及された上、

 当事者は全責任を負って、それ相応の厳しい罰を受けることになります」

 

「ええ? 本当かよ。全然知らなかったぜ。おまえたちもいろいろと大変なんだな。

 こっちも軽い気持ちで頼んだりして悪かったよ。じゃあ、もし芽が出なくても絶対に

 文句は言わねえって約束するからよ、おれから頼まれたってことは他の奴らに隠して

 この種を植えてくれねえかな? 花についてまったく知識がないおれと比べたら

 あんたたちが代わりに植えてくれた方が芽が出る可能性が高いだろ?」

 

 

「それは無理ですね。『坊ちゃんの種』ということを伏せて植えようとなった場合は、

 さらに大きな困難に直面するので」

 

「さらに大きな困難?」

 

「女中が『正体不明の種』を植えると言い出したら、国として許されると思いますか?

 何が咲くかもわからないのに。もしや、毒花を植えようとしているのではないか。

 毒花を育てて、国家転覆を企てているのではないかと疑われることになるのですよ」

 

ぐうの音も出ないとはこのことだ。女中頭のまっとうな言葉に声が出なくなった。

おれは城内のことに疎すぎるのかもしれねえ。城で働く奴らはおれが思っている以上に

厳しい管理下で働いているようだ。

 

 

「我々も、坊ちゃんの種を植えて差し上げたい気持ちはもちろんございます。ただ、

 大切な種だけに失敗は許されない。そんな思いもあってお断りしているのです。

 お花に詳しい王妃様なら、必ず坊ちゃんの望みどおりお花を咲かせてくださいます。

 それに王妃様が植えるのであれば、誰も文句は言いません。ですから坊ちゃん、

 その種を植えたいと思われるのでしたら、どうぞ王妃様をお訪ねくださいませ」

 

女中頭はぴしゃりと言い切った。

 

 

 

女中たちに断られて自室に戻り、おれはベッドにあおむけに倒れ込んで天井を眺めた。

 

女中頭の話を聞く限り、種を植えるのは簡単に頼める話ではないことはよくわかった。

どうしても植えたいと思うのであれば、王妃に話をつけておくより他ない。

 

それに女中によると、王妃に頼めばあいつはどんな花でも見事に咲かせるのだという。

 

確かに、サマルトリア城に咲いている花々を見れば、王妃の能力は明らかだ。

ローレシアなんか比べものにならないぐらい、サマルトリアの花は見事に咲いている。

 

王妃は、とにかくいろんな種類の花を育てるのが大好きなんだそうだ。

おれがめずらしい花の種を持ち帰ったと聞けば、嬉々として植えてくれるだろうし、

あいつらの言うとおり、美しい花を咲かせてくれるのだろう。

 

 

だが…。

おれは深いため息をついた。

 

黙って植えてくれるならこちらも喜んで頼むが、あのババアはそうじゃねえからな。

 

「どこからもらってきた?」「なんのために?」と、さんざん質問攻めにあった挙句

「あんた、ナナとはいったいどうなってるんだい?」と聞かれるのがオチだ。

 

ナナとは何もねえと知られたら、また「情けない」だの「育て方を間違えた」だの

好き勝手なことを言われるだけだからな、ババアには出来るだけ関わりたくない。

 

 

女中たちにも王妃にも頼らずに植えるとなると... おれが自分で植えるしかねえな。

 

ババアからの質問攻めをなんとか逃れたいおれは、翌日から城の書庫にこもった。

これだけたくさんの蔵書があれば、花の育て方に関する本もきっとあるだろう。

 

サマルトリアでも見たことのない花の種を、いつ、どのように植えたらいいかなんて

城の古い文献を漁ったところでわかるわけないのだが、少しでも知識が得られれば...

 

おれは一縷の望みを託し、数日かけてだだっ広い書庫の中で本を探し回った。

 

 

だが、書庫にあるのは城の軍事や法律に関する本がほとんどで、園芸に関するものは

ほんのわずかしかなかった。

 

たとえあったとしても、どうでもいいようなことを小難しい表現で書いているだけの

最初から読む気にもならねえようなくだらない本しか置いてなかった。

 

もちろん、この地域で見たこともない花をどうやって植えるかなんて書かれていない。

 

 

 

ちくしょう! 手詰まりか...。

 

夕方になり、なんの知識も得られずがっくり肩を落としておれが書庫を出たところで

警備をしていた若い兵士が「今日、ティメラウスが城に戻って来た」と教えてくれた。

 

 

ムーンブルク城再建の当番がローレシア青の騎士団とサマルトリア緑の騎士団になり

両騎士団の対立を懸念したティメラウスは、ムーンブルクに残って監視していたのだ。

 

常に監視していなくても、両騎士団はしっかり務めを果たすと判断したのだろう。

ティメラウスは単身で戻って来たらしい。

 

老騎士は疲れも見せず元気そうで、今は自分に与えられた控室で休んでいるそうだ。

 

 

剣術一筋の老戦士・ティメラウスが種の植え方を知っているとは到底思えなかったが

歳を取ったじいさんなだけあって、何かしらの知識は持っているかもしれねえ。

ダメもとで聞いてみてもいいだろう。

 

 

それにティメラウスはおれの剣の師匠も務めたし、モルディウスに後任を譲るまでは

長くサマルトリア緑の騎士団の団長だった。

 

家臣たちの中でも極めて高い地位を誇るティメラウスだ。皇族には及ばないとしても

ティメラウスがやろうとすることにも、おそらく誰も文句は言わないだろう。

 

女中たちとは違い、責任問題を追及されることもないし、国家転覆を企てるなどと

くだらない疑いもかけられない。

 

 

そうだ。ティメラウスが種を植えるといえば、城の奴らは誰も反対しないはずだ!

ティメラウスに少しでも知識があれば!

 

おれは最後の望みをかけて、ティメラウスの部屋へと向かった。

 

 

 

種をもらってあとは植えるだけ~♪  そんな淡い期待を打ち砕かれたカイン ( *´艸`)

冷たく断られてしまいました (´;ω;`)

 

 

女中頭の話は重い話でしたね (>_<)

 

自由気ままに世界をまわって、誰とでもすぐに打ち解けちゃう人たらしのカインですが

自国に帰れば王位継承者の皇太子さま。

 

皇太子さまの身体や所有物を傷つけるようなことがあれば、臣下は罰を受けるだろうし

誰が傷つけた当事者かという責任問題にも発展するでしょう (´;ω;`)

 

それに国の治安を守るとなれば、城内に持ち込まれるものにも監視の目が光ります。

城内でわけのわからない種を植えようなんて、簡単に通る話ではないでしょう。

 

女中頭の言葉にもありましたが、植えただけで謀反の疑いをかけられるなんてことも

普通にあるでしょうね。

 

いつもは気楽な創作話ですが、今回はあえて重い部分も書いてみました。

 

 

ただ、今回の話は女中たちにそんな嫌な思いをさせなくても、王妃に頼みさえすれば

なんの問題にもならずにすんなり解決する話なんですけどね... (;´∀`)

 

 

おばさんになって図太くなった私からすれば「ママがあれこれうるさく言ってきても

気にせずに頼めばいいやん♪」と思うのですが、カインも母親の存在がウザく感じる

年頃の男の子ですから (;´∀`)

 

ここはなんとか母の手を借りずに種を植えようと必死ですよ ( *´艸`)

 

 

一応、自力で植えようとして本を探しまわるところまでは認めるとしても、さすがに

ティメラウスは無理でしょうよ ( *´艸`)

 

なんせ相手は、長く騎士団長も務めたごりっごりのおじいちゃん老騎士だから ( *´艸`)

お花と結びつく要素がいっさいないですよね。ティメラウスがお花に詳しかったら、

物語の設定がすべて混乱しますわ (;´∀`)

 

それでも最後の望みをかけて、ティメラウスのもとへと向かったカイン☆

どんな展開が待っているのでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ